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新しい職場
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お昼ご飯をごちそうになり、お腹が一杯だ。
前菜からデザートまで残さず食べたので、苦しいのなんのって。
食後の運動がてら、バス停までのんびりと歩くことにした。
行きはテツと車で一緒に来たけど、帰りは別だ。
テツは送るから帰る前に連絡しろって言ってたけど、仕事中なのに申し訳ない。
自分で調べたら、デザイン事務所からテツのマンションまではバスで通えることが分かった。
事務所から少し歩いた場所にバス停がある。
そこに止まるバスに乗れば、テツのマンションの近くにあるバス停まで行ける。
時刻表を見ると、あと五分でバスが来くる。
念のため、時刻表の写メを撮った。
ほどなくしてバスが止まり、それに乗り込んだ。
バスに揺られること約二十分。
マンション近くのバス停に着き、バスから降りて歩いている時にテツから着信があった。
『おい、どういうことだ!』
電話越しにテツの怒った声が聞こえ、耳がキーンとなった。
緑さんから私が帰ったということを聞いて、速攻で電話をかけてきたらしい。
「どういうことって、今日はもう帰ってもいいって言われたから帰ったんだけど」
『お前はバカなのか?バカだろ!帰る前に連絡しろって言わなかったか?』
「言われたけど、仕事中だし邪魔したら悪いかなと思って……」
何度もバカとか酷い言われ様だ。
私はテツのことを考えてのことだったのに。
『仕事中でも何でも連絡しろよ。お前、ストーカーのことを忘れた訳じゃないだろうな』
「忘れてはないけど」
『だったら、もっと危機感を持て。一人でフラフラ歩いていてそいつと出くわしたらどうするんだ』
「昼間だし、向こうも仕事をしてるから大丈夫だよ。それに、前のお店と事務所は距離的にも離れているから遭遇することはないと思うよ」
前に車で配達した時にお店から会社までは十五分ぐらいかかった。
だから、そう簡単に会うことはないと思う。
私の言葉に電話の向こうでテツがため息を吐くのが聞こえた。
『お前、そいつは昼は弁当を買いに出歩いていたんだろ!距離が離れているからって油断するな。帰るなら帰ると一言連絡してくれ』
「うん。ごめんね。次からはちゃんと連絡する」
最初は怒っていたのに、徐々にテツの声色が変化し、私を心配してくれているというのが伝わってきた。
だから、私は素直に謝罪の言葉が出た。
『それならいいけど』
「テツ、心配してくれてありがとね」
『……はぁ、ホント美桜はズルイよな。まぁそういうところが可愛いんだけど』
か、可愛いって……。
サラリとそういうことを言わないで欲しい。
あー、耳が熱い。
「きょ、今日の晩ご飯は何がいい?」
強引に話題を変えた。
帰り道、テツのリクエスト次第ではスーパーに寄って買い物が出来る。
『ごめん、今日は急遽接待が入ったんだ。おば、社長に頼まれて。そのことも伝えたくて電話したんだ』
「そうなんだね。分かった」
会社に勤めたことがなかったので接待と言われても、テレビで見るぐらいであまりピンとこなかった。
急遽、入るものなんだな。
『少し遅くなるかもしれないけど、戸締りちゃんとしろよ』
「分かってるって」
子供に言い聞かせるみたいで、思わずムッとした。
「テツも仕事頑張ってね」
『ありがと。じゃ、気を付けて帰れよ』
「うん。じゃあね」
電話を切り、スマホをバッグにしまった。
そっか、今日は一人なのか。
マンションにつき、バッグの中から鍵を取り出した。
一緒に住むようになって、テツの部屋のスペアキーを預かっている。
出掛ける時はいつもテツと一緒だったので、この鍵を使うのは初めてだ。
鍵を開けて誰もいない静かな部屋に足を踏み入れた。
前菜からデザートまで残さず食べたので、苦しいのなんのって。
食後の運動がてら、バス停までのんびりと歩くことにした。
行きはテツと車で一緒に来たけど、帰りは別だ。
テツは送るから帰る前に連絡しろって言ってたけど、仕事中なのに申し訳ない。
自分で調べたら、デザイン事務所からテツのマンションまではバスで通えることが分かった。
事務所から少し歩いた場所にバス停がある。
そこに止まるバスに乗れば、テツのマンションの近くにあるバス停まで行ける。
時刻表を見ると、あと五分でバスが来くる。
念のため、時刻表の写メを撮った。
ほどなくしてバスが止まり、それに乗り込んだ。
バスに揺られること約二十分。
マンション近くのバス停に着き、バスから降りて歩いている時にテツから着信があった。
『おい、どういうことだ!』
電話越しにテツの怒った声が聞こえ、耳がキーンとなった。
緑さんから私が帰ったということを聞いて、速攻で電話をかけてきたらしい。
「どういうことって、今日はもう帰ってもいいって言われたから帰ったんだけど」
『お前はバカなのか?バカだろ!帰る前に連絡しろって言わなかったか?』
「言われたけど、仕事中だし邪魔したら悪いかなと思って……」
何度もバカとか酷い言われ様だ。
私はテツのことを考えてのことだったのに。
『仕事中でも何でも連絡しろよ。お前、ストーカーのことを忘れた訳じゃないだろうな』
「忘れてはないけど」
『だったら、もっと危機感を持て。一人でフラフラ歩いていてそいつと出くわしたらどうするんだ』
「昼間だし、向こうも仕事をしてるから大丈夫だよ。それに、前のお店と事務所は距離的にも離れているから遭遇することはないと思うよ」
前に車で配達した時にお店から会社までは十五分ぐらいかかった。
だから、そう簡単に会うことはないと思う。
私の言葉に電話の向こうでテツがため息を吐くのが聞こえた。
『お前、そいつは昼は弁当を買いに出歩いていたんだろ!距離が離れているからって油断するな。帰るなら帰ると一言連絡してくれ』
「うん。ごめんね。次からはちゃんと連絡する」
最初は怒っていたのに、徐々にテツの声色が変化し、私を心配してくれているというのが伝わってきた。
だから、私は素直に謝罪の言葉が出た。
『それならいいけど』
「テツ、心配してくれてありがとね」
『……はぁ、ホント美桜はズルイよな。まぁそういうところが可愛いんだけど』
か、可愛いって……。
サラリとそういうことを言わないで欲しい。
あー、耳が熱い。
「きょ、今日の晩ご飯は何がいい?」
強引に話題を変えた。
帰り道、テツのリクエスト次第ではスーパーに寄って買い物が出来る。
『ごめん、今日は急遽接待が入ったんだ。おば、社長に頼まれて。そのことも伝えたくて電話したんだ』
「そうなんだね。分かった」
会社に勤めたことがなかったので接待と言われても、テレビで見るぐらいであまりピンとこなかった。
急遽、入るものなんだな。
『少し遅くなるかもしれないけど、戸締りちゃんとしろよ』
「分かってるって」
子供に言い聞かせるみたいで、思わずムッとした。
「テツも仕事頑張ってね」
『ありがと。じゃ、気を付けて帰れよ』
「うん。じゃあね」
電話を切り、スマホをバッグにしまった。
そっか、今日は一人なのか。
マンションにつき、バッグの中から鍵を取り出した。
一緒に住むようになって、テツの部屋のスペアキーを預かっている。
出掛ける時はいつもテツと一緒だったので、この鍵を使うのは初めてだ。
鍵を開けて誰もいない静かな部屋に足を踏み入れた。
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