『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―

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友人達の村で

409:知り合い

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 女は剣を地面に突き立ててそれを頼りに何とか立っているが、その体は痙攣しているようから、俺の剣の効果はしっかりと現れているのだろう。

「……」

 村に急がないとと焦っていたから突然襲いかかってきたこいつは賊だと判断したが、斬られてまともに動いていない体を動かして戦おうとする女は、どうにも賊には見えない。賊というには、あまりにも根性がありすぎる気がする。

 だがたとえ賊ではなかったとしても、今はそのことを考えている暇はない。もし賊でなかったとしても、向こうから襲ってきたんだから殺さないだけありがたいと思ってもらおう。

「俺は急いでるって言ったろ。今は寝てろ」

 もう一度剣で切りつけようと思ったが、賊ではないかもと思ってしまった上、これ以上の抵抗は出来なさそうだから剣できるのはやめて、収納から睡眠薬を取り出して顔面に向けてバシャリとかける。

 女はまともに体を動かすことができないのか、避けようとして避けきれずにまともに顔面に喰らった。

「まだ……まだだ!」

 いくら即効性があると言っても一瞬で効くわけではない。だがもうしばらくすれば動くことはできなくなるはずだ。
 そう思って今度こそ村へ急ごうと思ったところで再びその足を止めることとなった。

「イリン」

 ガサガサと茂みが揺れ、そこからイリンが現れたのだ。

「遅れました。申し訳ありません」
「いや、いい。それより村が……」
「はい。わかっております。ですがもう問題ないかと」
「問題ない? 環とガムラが向かったのか?」

 イリンは来たが、一緒にいったはずの環の姿が見えない。だからガムラと一緒に村の防衛に向かったのかと思ったのだが、イリンは首を振った。

「いえ、ガムラは向かいましたが、環は……ああ。ちょうど来ました」
「ハァハァ……イ、イリンッ。は、速過ぎるわよっ……」
「私はあなたに後から来ても良いと言ったと思いますが?」
「お、置いていかれるのは……嫌よ」

 イリンは自分がやってきた茂みを見ると、そこから息を切らした環がやってきた。
 速度が尋常じゃないイリンに後衛型の環が追いつくのは難しいどころか不可能だろう。
 それでも置いていかれまいと環は全力で走ってきたようだ。多分イリンも手心は加えたのだろう。

「なら問題ないってのは?」

 そんな環に内心で労いの言葉をかけつつも、村のことについてイリンに聞く。
 労いは後でしっかりしておこう。

「村の方から何か感じませんか?」

 イリンに言われて集中してみると、確かに何か強い力を感じた。
 それなりに強い魔力なんかは近くにいれば感じ取ることができるが、ここまで離れていても感じるとなると、強いなんて言葉じゃ全然足りない。

 ……だがこれは、なんだろうか。この感じはどこかで感じたことがあるような気がする。

「……これは、ナナか?」

 その感じに思い当た流ことがあった。以前街道でナナに出会った時に感じたものと似ていたのだ。
 あの時はこれほど強大ではなかったが、受ける感じとしては似ていた。

「はい。おそらくは本気を出したのだと思います」
「本気……そうか。なら、問題ないか」

 本気を出したということは、神獣として全力で戦うということだろう。なら問題ない。
 あのイリンの故郷にいたゲロ犬だってまともに戦っていればかなり苦戦したはずだ。実際、あいつから感じた力は今までに感じたことがないくらいに強力なものだった。
 俺があいつにあれだけ簡単に勝てたのは、環のおかげで周りの分身を排除できたのと、あいつが俺を舐めてたからこっちのペースで封じ込めることができたからだ。あいつが長期戦狙いであせらずに俺を殴り続けていたら、俺は魔力切れで死んでたと思う。

「はい。それよりも今はこちらですね」

 俺が安堵したのをみると、イリンは俺が倒した女の方へと歩いていく。
 それを止めようと思ったが、イリンが行動するんだから何かしらの理由があるんだろうと止めるのをやめた。

「……んん?」

 何をするんだろうと見ていると、イリンは女のそばにしゃがみ込み、俺が渡した収納具から何かを取り出した。あれは回復薬だろうか?

 そしてその薬を倒れている女に飲ませ、更に別の薬も飲ませていく。

 女性が倒れているのが心配だった、とかそんな理由じゃないことはわかる。イリンは敵であれば誰であろうと即座に切り捨てるはずだから。それでも助けたってことは……

「知り合いか?」
「はい、そうです。……ニナさん。大丈夫ですか? 落ち着いてください。こちらはあなたと敵対するつもりはありません」
「な……なんで、私の名前をっ……!?」

 自身の名前を呼ばれた女──ニナはもう体を動かすことができるようになったのか、顔を上げてイリンのことを見つめながらまだ少し苦しげにそう言った。

「お久しぶりです。と言ってもこの姿となってからはお会いするのは初めてですが」

 やっぱり知り合いなのだろう。
 だがニナは動けるようになったと言ってもまだ万全ではないだろうに、必死に体を動かして起き上がろうとしながら訝しげな顔をしている。

「……この姿、だと?」
「私はイリンです。いつも里でお会いしていましたよね」
「はあ? お前は何言って……イリンは拐われたんだ。それに、あの子はもっと小さい。成長したにしても、お前は大きすぎる。もう少し物を考えてから言え」

 ああ、ニナはイリンの故郷の成人の儀式について知らないのか。なら仕方がないな。俺だってイリンが当然大きくなった事に驚いたし、最初はイリンだと気がつかなかった。

「確かに拐われましたが、助けていただきました。それにこの姿は儀式を経て成長しました。ニナさんは私たちの里の儀式についてご存知のはずでは?」

ニナはイリンの言葉に顔をしかめ、考え込むように視線を俺たちから逸らして唸り声をあげた。
そして何か思い当たったことがあったのか、ニナは勢いよく顔を上げてイリンの顔をじっと見つめた。

「…………はあぁぁぁぁ。確かに儀式については一度遭遇したことがある。それに賊が今の時点で私の名前を知ってるとも思えない。……本当に、イリンなのか?」
「はい。お久しぶりです」
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