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王国との戦争
294:『ナニカ』の正体
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風を纏い、加速しながら体当たりを仕掛けてきた獣のような『ナニカ』に対し、俺は自身の目の前に収納魔術を盾として展開する。
真っ直ぐ突っ込んで来た『ナニカ』は、突然現れた収納魔術の渦を避ける事なくそのままぶつかる。
が、『ナニカ』はすぐに弾かれる事はなく、そのまま少し耐えた後についに耐えきれなくなったのか後方へと弾かれた。
後方へと弾かれたままそいつは、禍々しい牙を剥き出しにして距離を詰めることなく二本の足で立ってこちらの睨んでいる。
そうしてやっとまともにその姿を見る事ができたが、その姿はなんというか、獣と人が混じったような醜悪な姿だった。
獣と人とが混じったと言っても、獣人のような見た目ではない。
目の前のこいつは昔のSF映画のハエと人との融合みたいに、獣と人がそのまま重なり合って融合したようなそんな姿だった。
一応人型をしているものの、二の腕や腿などは肥大し、まさに丸太のような手足となっている。
だが逆に胴体はその腕に対してアンバランス過ぎるぐらいに細く、痩せ細った犬のように骨が剥き出しになっている。
そしてその表面は緑っぽい色が混じった混沌とした黒とでもいうような色の毛に覆われており、それらは妙にぬらっと光っている。
顔は基本は獣の形をしているのだが、どことなく平べったくなっていて人間っぽさを感じさせる。
もっとも、目にはまぶたなど存在せずに剥き出しになっており、口は大きく裂かれダラダラとよだれをこぼしているのだから到底人間には見えないが。
「カエセッ! カエセェェェェ!!」
そして大きく裂けた口を開かせ咆哮を放つ『ナニカ』だが、その叫びの意味はわからない。
『カエセ』と言っているが、一体何を返せって言うんだ?
「ガアアアァァアアァアアア!」
今度は言葉となっていない声で叫びながら再び突っ込んで来た。
「チィッ! なんて速さだよ、くそっ!」
それをもう一度収納魔術で受け止めるが、思わず舌打ちしてしまう。
その速さは、予想はしていたが俺の動きよりも圧倒的に速い。もし収納魔術を使わずに身体強化で避けようとしていたら、完全に避け切る事はできなかっただろう。
だが、できる事ならば収納魔術で受け止めることもしたくない。
今はまだ何とかなっているが、この敵を受け止め続ける事で発生する魔力の消費がバカにならないのだ。
いかに俺が収納特化型だとしても、このまま持久戦が続くようならいずれは魔力が尽きる可能性だってあり得る。
流石にそうなる前に終わらせられるとは思うけど、まともに剣を振っても倒せるとは思えない。そもそも当てられるかどうか疑問だ。
となると、収納の中に入ってる武具でどうにかするか収納そのものでどうにかするかしかないんだけど……さて、どうしたものか……。
「イ゛リ゛イイィィイィンンン!!」
俺が目の前の化け物にどう対処するべきか悩んでいると、『ナニカ』は再び叫び声を上げた。
そして『ナニカ』がそう叫ぶと同時に、収納魔術の横を迂回するように何かが伸びてきて俺を掴もうとしてきた。
「なんっ──!?」
思わずその場を飛び退いてさがったが、それの動きはかなり速く全力で下がったにも関わらず腕を掠め、つけていた肩当てが毟り取られた。
「チイッ! なんだってんだ!」
背後に飛び退きつつも俺を掴もうとしたものを観察するが、それは腕だった。それも人間の腕。
最初から備わっていた丸太のような手足は獣のものだったが、今生えてきたのはまるで人間の手のようだ。
その腕は歪に細長く赤とピンクの肉の塊であり所々が膨れているが、全体を見ればその形はしっかりと人間の手の形をしている。
「ジャマダアアァァアア!! オレハッ! アイツハオレノダ! オレノモノダッ! カエセエエエエエエエ!!」
叫びととも俺を掴もうと伸びてくる手。
収納魔術が邪魔で見えていないはずなのにその狙いは的確で、俺はその腕を避けはするが再び掠ってしまう。
「邪魔なのはお前だよ! 喰らっとけ!」
収納魔術に掴みかかるように突進を続けたまま一歩も退かない『ナニカ』。
このまま腕を避けているだけではまずいと判断し、その『ナニカ』が掴んでいる収納魔術から大量の剣を射出させる。
突進を続けている状況では到底避けられないと思っていたその攻撃は、だが『ナニカ』が咄嗟に回避し、その場から飛び退いたせいでまともに当たる事はなかった。
それでも数本は刺さっていて、『ナニカ』は苦悶の声を上げている。
だが、その瞳に宿る怨嗟は欠片も鈍ることがなく俺を射抜く。
「……お前。ウースか?」
先ほどから聞こえる咆哮のような言葉。
『イリン』『カエセ』『ジャマ』『オレノモノ』
そしてこれほどまでの俺への怨み。
それらから考えるに目の前の『ナニカ』は、ウース。……その成れの果てではないだろうか?
どうしてこうなったのかは分からないが、状況から考えるとそれが一番しっくりくる。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」
俺の答えが正しいと証明するかのように『ナニカ』となったウースが叫び、体に刺さっていた剣を抜いて襲いかかってきた。
真っ直ぐ突っ込んで来た『ナニカ』は、突然現れた収納魔術の渦を避ける事なくそのままぶつかる。
が、『ナニカ』はすぐに弾かれる事はなく、そのまま少し耐えた後についに耐えきれなくなったのか後方へと弾かれた。
後方へと弾かれたままそいつは、禍々しい牙を剥き出しにして距離を詰めることなく二本の足で立ってこちらの睨んでいる。
そうしてやっとまともにその姿を見る事ができたが、その姿はなんというか、獣と人が混じったような醜悪な姿だった。
獣と人とが混じったと言っても、獣人のような見た目ではない。
目の前のこいつは昔のSF映画のハエと人との融合みたいに、獣と人がそのまま重なり合って融合したようなそんな姿だった。
一応人型をしているものの、二の腕や腿などは肥大し、まさに丸太のような手足となっている。
だが逆に胴体はその腕に対してアンバランス過ぎるぐらいに細く、痩せ細った犬のように骨が剥き出しになっている。
そしてその表面は緑っぽい色が混じった混沌とした黒とでもいうような色の毛に覆われており、それらは妙にぬらっと光っている。
顔は基本は獣の形をしているのだが、どことなく平べったくなっていて人間っぽさを感じさせる。
もっとも、目にはまぶたなど存在せずに剥き出しになっており、口は大きく裂かれダラダラとよだれをこぼしているのだから到底人間には見えないが。
「カエセッ! カエセェェェェ!!」
そして大きく裂けた口を開かせ咆哮を放つ『ナニカ』だが、その叫びの意味はわからない。
『カエセ』と言っているが、一体何を返せって言うんだ?
「ガアアアァァアアァアアア!」
今度は言葉となっていない声で叫びながら再び突っ込んで来た。
「チィッ! なんて速さだよ、くそっ!」
それをもう一度収納魔術で受け止めるが、思わず舌打ちしてしまう。
その速さは、予想はしていたが俺の動きよりも圧倒的に速い。もし収納魔術を使わずに身体強化で避けようとしていたら、完全に避け切る事はできなかっただろう。
だが、できる事ならば収納魔術で受け止めることもしたくない。
今はまだ何とかなっているが、この敵を受け止め続ける事で発生する魔力の消費がバカにならないのだ。
いかに俺が収納特化型だとしても、このまま持久戦が続くようならいずれは魔力が尽きる可能性だってあり得る。
流石にそうなる前に終わらせられるとは思うけど、まともに剣を振っても倒せるとは思えない。そもそも当てられるかどうか疑問だ。
となると、収納の中に入ってる武具でどうにかするか収納そのものでどうにかするかしかないんだけど……さて、どうしたものか……。
「イ゛リ゛イイィィイィンンン!!」
俺が目の前の化け物にどう対処するべきか悩んでいると、『ナニカ』は再び叫び声を上げた。
そして『ナニカ』がそう叫ぶと同時に、収納魔術の横を迂回するように何かが伸びてきて俺を掴もうとしてきた。
「なんっ──!?」
思わずその場を飛び退いてさがったが、それの動きはかなり速く全力で下がったにも関わらず腕を掠め、つけていた肩当てが毟り取られた。
「チイッ! なんだってんだ!」
背後に飛び退きつつも俺を掴もうとしたものを観察するが、それは腕だった。それも人間の腕。
最初から備わっていた丸太のような手足は獣のものだったが、今生えてきたのはまるで人間の手のようだ。
その腕は歪に細長く赤とピンクの肉の塊であり所々が膨れているが、全体を見ればその形はしっかりと人間の手の形をしている。
「ジャマダアアァァアア!! オレハッ! アイツハオレノダ! オレノモノダッ! カエセエエエエエエエ!!」
叫びととも俺を掴もうと伸びてくる手。
収納魔術が邪魔で見えていないはずなのにその狙いは的確で、俺はその腕を避けはするが再び掠ってしまう。
「邪魔なのはお前だよ! 喰らっとけ!」
収納魔術に掴みかかるように突進を続けたまま一歩も退かない『ナニカ』。
このまま腕を避けているだけではまずいと判断し、その『ナニカ』が掴んでいる収納魔術から大量の剣を射出させる。
突進を続けている状況では到底避けられないと思っていたその攻撃は、だが『ナニカ』が咄嗟に回避し、その場から飛び退いたせいでまともに当たる事はなかった。
それでも数本は刺さっていて、『ナニカ』は苦悶の声を上げている。
だが、その瞳に宿る怨嗟は欠片も鈍ることがなく俺を射抜く。
「……お前。ウースか?」
先ほどから聞こえる咆哮のような言葉。
『イリン』『カエセ』『ジャマ』『オレノモノ』
そしてこれほどまでの俺への怨み。
それらから考えるに目の前の『ナニカ』は、ウース。……その成れの果てではないだろうか?
どうしてこうなったのかは分からないが、状況から考えるとそれが一番しっくりくる。
「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!!」
俺の答えが正しいと証明するかのように『ナニカ』となったウースが叫び、体に刺さっていた剣を抜いて襲いかかってきた。
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