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獣人国での冬

224:ケイノア達の状況確認

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 シアリスが最後にうちに来てから数日。ケイノアが依頼に出かけてから十日がたった。

 シアリスはあの日以来うちに来ていない。まあ、もともとケイノアに会うために来てたんだからおかしくはないのだが、数日おきに来ていただけに、いきなり来なくなると寂しくもあるな。

 ケイノアの方はそろそろ終わってもいい頃だと思う。あいつから受けた依頼の内容としては早ければ一週間で終わるみたいだし。

 んー、ちょっと冒険者ギルドに状況の確認に行ってみるか? 後方支援なんて用意するぐらいの規模のイベントなんだから、途中経過くらいは入ってるだろ。

 特に気にする必要はないと言えばないのだが、なんとなくケイノアのことが気になった。
 それは別に、この間のシアリスの話で異性として意識したからとかではないが、本当になんとなく気になったのだ。
 多分、手のかかる妹が家に帰ってくるのが遅いから心配になった、みたいな感じだろう。

「イリン。ちょっとギルドまで出かけるけど、どうする?」

 俺はリビングのソファーから立ち上がり、二階で掃除をしていたイリンの方に歩き声をかけた。

 そこまで毎日掃除することがあるのか、と思うのだが、イリンは暇があれば掃除をしているように思える。もしくは料理だが、どちらにしても自分の時間というものをあまりとっていないんじゃないだろうか?

 まあ本人は楽しそうなので止めはしないけど。

「あっ、はい。私もご一緒させていただきます!」
「ん、なら行こうか。片付けは……」

 俺がそう言っていると、いつのまにかイリンの手元にあった掃除道具の類は消え去っていた。
 恐らくは俺がプレゼントした装飾品型収納具を使ったのだろう。活用してくれて何よりだよ。

 片付けに時間はかからなかったとはいえ、多少なりとも準備は必要だろう。着替えとか化粧とか。ん? そういえばイリンが化粧してるの見たことないな。まあこの世界では一般人が化粧をすることなんてほとんどないからおかしくはないか
 それでも着替えくらいはするだろう。掃除した格好のまま外に出かけるってのはイリンもいやだろうし。俺も今着てるのは家着だから着替える必要があるし

「準備してくるからイリンもその間に準備しておいてくれ」
「はい。かしこまりました」

 俺はそのまま二階に上がって自分の部屋に入ると、収納の中から外行き用の服に着替え、簡単ながら軽く武装を整える。
 冒険者ギルドに行くんだからある程度の装備はあったほうが面倒に出くわしづらいからな。それに、もし不足の事態が起こった場合にはいちいち着替えてる時間なんてない。
 一応、これでも俺は王国の奴らから命を狙われてる立場なんだから気をつけないとな。自業自得っぽい気もするけど。そもそも俺の生存が気づかれてるかは分からないけど、用心するに越したことはない。

 着替えてから一回に降りると、そこには既に準備を終えたイリンが俺を待ち構えていた。

「待たせたな。準備はいいか?」
「はい。戸締りも既に行いました」
「ん、ありがとう。じゃあ行こうか」



「あら?」
「ん?」

 俺達は家を出てギルドに向かったのだが、その途中で最近見ることのなかったシアリスに出会った。

「……久しぶりだな」
「……そうですね」

 決して喧嘩したとかじゃないが、最後の別れ方があんなだっただけに少しばかり気まずい。
 それはシアリスも同じようで、俺たちの視線が合うことはない。

「買い物か?」

 そのままでいるというのもできないので何か話しかけようと思っていると、シアリスがその手に荷物を持っていたのが見えたので、とりあえずそう話しかけてみる。

「ええ。少しばかり足りないものがあったので。……そちらはお二人でお出かけですか?」

 シアリスは一瞬だけ躊躇った後、今度はシッカリと俺のことを見て話し始めた。

 二人なのは見れば分かるはずのことだが、この場合はデートなのか、と言う意味だろうな。
 だが、残念ながらデートと呼べるかは微妙なところだ。

「ちょっとギルドに用があってな。そろそろケイノアの依頼が終わってもいい頃なのに帰ってこないから途中経過でも聞けたらって思ってな」
「そうでしたか」

 言ってからケイノアの事を話に出すのは少し不味かったかな? と思ったけど、俺の考えすぎだったようで、シアリスは特には気にしていないようだ。

 だが、そう言って俺の言葉に納得を示したシアリスは、戸惑ったように視線を彷徨わせると、再び俺のことを見据えて口を開いた。

「……あの、私も付いて行ってもよろしいでしょうか?」
「ん? まあ、構わないが……」
「ありがとうございます」

 そうしてギルドへの同行者としてシアリスが増えたがその手には荷物を持ったままだ。ケイノアは荷物があるとすぐに収納魔術の中にしまうが、シアリスは終わないのだろうか?

「なあ、その荷物収納魔術の中にしまわないのか? それほど量はないようだけどしまった方が楽だろ」
「……私は収納魔術は使えませんよ。おそらくお姉様を基準としているのでしょうけれど、それはやめた方がよろしいかと」

 そう言われて思い出した。アレを一般的なエルフだと思っていたが、そういえばケイノアは天才だって言ってたな。普段の行動からは全くそうとは思えないが、確かに時折見せる知性はすごいものではあった。

「お姉様はまごうことなき天才です。私などでは足元にも及ばないほどに。あなたはあなた自身も使っていますし、お姉様が使っているのを普段から見ているので容易いことのように思っているかもしれませんが、普通は適正がないのにも関わらず空間系の魔術を使うことは出来ませんよ」

 そう言ったシアリスの顔にはどこか陰があるように見えた。



 冒険者ギルドについた俺たちは早速とばかりに受付の女性に話しかけようと思ったのだが、なんだろうか? どことなく慌ただしいような感じがする。

 その事に嫌な予感を感じつつも受付に近づき話を聞いてみる事にした。

 だが──

「救援とはどういうことですか!?」

 受付の人から話を聞くなり、シアリスが大声を出して問い詰めた。
 どうやら予想通りというべきか、ケイノアたちに何か問題が起こったらしい。
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