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獣人国での冬
215:誰かと同居してるとよくある事
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「見せたい魔術具とはどのような物でしょうか?」
「こいつだ」
シアリスは俺が収納から取り出した魔術具を手にとってじっくりと観察する。
「これは……形状としては腕輪のようにも感じられますが、腕輪にしては太い気がしますね」
出した魔術具とは、以前俺がイリンに渡したが壊れてしまった鞄の代わりに作ったチョーカー型の収納具だ。
だが、俺の出したチョーカーはどんな道具なのか理解されなかった。どうやらエルフの文化には首につけるチョーカーという文化はないらしい。
……そういえばこっちの世界では見たことない、か? 首輪と勘違いされるからだろうか?
「それは首につけるんだよ。一種の首飾りだ」
説明してやると、シアリスは物珍しげに見ている。
「これが首飾りですか」
「……それで、どうだ?」
「ここまで詰め込まれていると、詳しく解析するには時間がかかります。ですが、これは空間系? この程度の大きさで転移はありえない。なら結界? でも何かが違う気がしますし……収納、ですか?」
ケイノアは設計図を見ただけでなんの魔術具か分かったが、シアリスは即座に分からなかったようで、少し考えを口にしてから呟くように正解を口にした。
実物を設計図では条件が違うが、それでも一瞬で看破したケイノアは魔術に関しては本当に優秀なんだろう。他は残念すぎるけど。
「正解だ。それは収納の魔術が込められてる」
「入れ物ではなく装飾品型ですか。珍しいですね」
シアリスはそう言うと、自身の手の中にある首飾りを時折角度を変えながらじっくりと調べ始めた。
「……ざっと見た限りでは問題はないように思えます。ですがこれ以上正確にとなると、時間が欲しいですね。やはりお姉様に見ていただいた方が確実かと思いますよ」
「そうか。まあそれならそれでケイノアのところに行くか」
俺とシアリスはケイノアの部屋に向かい、俺は中にいるであろうケイノアに声をかけながらドアを開けるべく手を伸ばした。
「ケイノア。用があるんだが、いいか? 開けるぞー」
「ふぇっ!? ちょ、ちょっと待ちなさい!」
だが、俺はその言葉を聞く前にすでに扉を開けにかかっていた。そのため、すでに動き出していた体を止める事はできず、ケイノアの言葉も虚しく扉は開いてしまった。
そして俺はケイノアが止めた理由を知った。
部屋の中には森から帰ってきていたために汚れていた服を着替えているケイノアがいた。
丁度服を脱いだところだったのか、下は下着をつけていたが、上は何も来ていなかった。
一応さっきまで来ていた服を使って胸を隠そうとしていたが、動揺していたのか隠し切ることが出来ていないため、その慎ましやかな胸が露わになっていた。
そんな場面に遭遇してしまった俺たちはその動きを止める。ケイノアは見られた状態のまま固まり、シアリスもどうしていいのか分からないからか動かない。
「ああ、悪い」
だが、俺としてはこいつに性的な興味はない。どちらかというと、俺の中ではこいつは手のかかる妹的ポジションになってきている。
だって、なんとなくこいつの行動原理が俺と似てるんだもんなぁ。怠けたいとか、辛い事は嫌だとか。
俺だってこの世界に来る前とは変わってるとは思うけど、それでも基本的なところは変わらない。だからだろう。俺はケイノアの事を他人とは思えなかった、んだと思う。
だからまあ、俺的には妹の着替えを見たような感覚なので、悪いとは思うが特にどうこう思ったりはしない。
だが、流石にそのまま話をするわけにもいかないので一旦部屋の外にでたのだが、俺が部屋から出た直後、混乱から回復したのか、部屋の中からガタガタと暴れるというか、動き回る音が聞こえた。
だが仕方がない。誰かと同居してるとよくある事だ。
「……アンドウさん? 少し、お話ししましょうか」
……なんだろう。背後にいるシアリスから異様な圧力を感じるぞ。嫌な予感しかしないや。
「悪かったな。まあ見られて減るもんでもないし許せ」
「うるさい、バカー!」
シアリスとのお話しの後今度はシアリスだけが部屋の中を確認して、それから俺の入室許可が出た。
側にあった花瓶が飛んでくるが、俺の体に触れた瞬間に花瓶は収納された。
何かを投げたくなる気持ちはわからないでもないし、俺も悪かったと思うが、花瓶は危なくないか? なんの対策もしなければ一般人な俺には結構なダメージだぞ?
「悪いと思ってるのは本当だ。だからお詫びに、これをやろう」
俺は収納から一つの丸められた紙を取り出すと、それをケイノアに差し出す。
「……何よこれ?」
「お前の借金の借用書の一つだ。その借用書の分の借金はなしにしてやるよ」
「……これ、結構な金額ですが、よろしいのですか?」
シアリスもケイノアの広げた紙を覗き込むが、そこに書かれている金額を見て驚きながら聞いてきた。
そこに書かれている額は一般家庭の年収分くらいは書かれてるんだかた当然か?
というかそんな額の借金をいくつもしてるって、ある意味ではケイノアはすごいな。
「ああ。悪かったと思ってるんだ」
借金の無効は、実際に悪かったとは思っているからでもあるが、それよりもこいつの借金をなくすためだ。借金がなくならない限りこいつはずっとこの家に居座るだろう。
だが、借金がなくなれば、こいつがここにいる理由はなくなる。なにせ、こいつがこの家に居られるのは、借金を返済するまでなんだから。
借用書を手に入れるためにそれなりに金を使ったので、できれば回収したいとは思うが、ケイノアから全額回収するのは不可能だとも思ってる。
それよりは全額を回収するのは諦めて早くこの家を出て行ってもらった方がいいかな、というわけだ。
「そ、そう? まあ、そんなに反省してるんだったら許してあげるわ」
俺の思惑に気付くこともなくケイノアはご機嫌になった。
「こいつだ」
シアリスは俺が収納から取り出した魔術具を手にとってじっくりと観察する。
「これは……形状としては腕輪のようにも感じられますが、腕輪にしては太い気がしますね」
出した魔術具とは、以前俺がイリンに渡したが壊れてしまった鞄の代わりに作ったチョーカー型の収納具だ。
だが、俺の出したチョーカーはどんな道具なのか理解されなかった。どうやらエルフの文化には首につけるチョーカーという文化はないらしい。
……そういえばこっちの世界では見たことない、か? 首輪と勘違いされるからだろうか?
「それは首につけるんだよ。一種の首飾りだ」
説明してやると、シアリスは物珍しげに見ている。
「これが首飾りですか」
「……それで、どうだ?」
「ここまで詰め込まれていると、詳しく解析するには時間がかかります。ですが、これは空間系? この程度の大きさで転移はありえない。なら結界? でも何かが違う気がしますし……収納、ですか?」
ケイノアは設計図を見ただけでなんの魔術具か分かったが、シアリスは即座に分からなかったようで、少し考えを口にしてから呟くように正解を口にした。
実物を設計図では条件が違うが、それでも一瞬で看破したケイノアは魔術に関しては本当に優秀なんだろう。他は残念すぎるけど。
「正解だ。それは収納の魔術が込められてる」
「入れ物ではなく装飾品型ですか。珍しいですね」
シアリスはそう言うと、自身の手の中にある首飾りを時折角度を変えながらじっくりと調べ始めた。
「……ざっと見た限りでは問題はないように思えます。ですがこれ以上正確にとなると、時間が欲しいですね。やはりお姉様に見ていただいた方が確実かと思いますよ」
「そうか。まあそれならそれでケイノアのところに行くか」
俺とシアリスはケイノアの部屋に向かい、俺は中にいるであろうケイノアに声をかけながらドアを開けるべく手を伸ばした。
「ケイノア。用があるんだが、いいか? 開けるぞー」
「ふぇっ!? ちょ、ちょっと待ちなさい!」
だが、俺はその言葉を聞く前にすでに扉を開けにかかっていた。そのため、すでに動き出していた体を止める事はできず、ケイノアの言葉も虚しく扉は開いてしまった。
そして俺はケイノアが止めた理由を知った。
部屋の中には森から帰ってきていたために汚れていた服を着替えているケイノアがいた。
丁度服を脱いだところだったのか、下は下着をつけていたが、上は何も来ていなかった。
一応さっきまで来ていた服を使って胸を隠そうとしていたが、動揺していたのか隠し切ることが出来ていないため、その慎ましやかな胸が露わになっていた。
そんな場面に遭遇してしまった俺たちはその動きを止める。ケイノアは見られた状態のまま固まり、シアリスもどうしていいのか分からないからか動かない。
「ああ、悪い」
だが、俺としてはこいつに性的な興味はない。どちらかというと、俺の中ではこいつは手のかかる妹的ポジションになってきている。
だって、なんとなくこいつの行動原理が俺と似てるんだもんなぁ。怠けたいとか、辛い事は嫌だとか。
俺だってこの世界に来る前とは変わってるとは思うけど、それでも基本的なところは変わらない。だからだろう。俺はケイノアの事を他人とは思えなかった、んだと思う。
だからまあ、俺的には妹の着替えを見たような感覚なので、悪いとは思うが特にどうこう思ったりはしない。
だが、流石にそのまま話をするわけにもいかないので一旦部屋の外にでたのだが、俺が部屋から出た直後、混乱から回復したのか、部屋の中からガタガタと暴れるというか、動き回る音が聞こえた。
だが仕方がない。誰かと同居してるとよくある事だ。
「……アンドウさん? 少し、お話ししましょうか」
……なんだろう。背後にいるシアリスから異様な圧力を感じるぞ。嫌な予感しかしないや。
「悪かったな。まあ見られて減るもんでもないし許せ」
「うるさい、バカー!」
シアリスとのお話しの後今度はシアリスだけが部屋の中を確認して、それから俺の入室許可が出た。
側にあった花瓶が飛んでくるが、俺の体に触れた瞬間に花瓶は収納された。
何かを投げたくなる気持ちはわからないでもないし、俺も悪かったと思うが、花瓶は危なくないか? なんの対策もしなければ一般人な俺には結構なダメージだぞ?
「悪いと思ってるのは本当だ。だからお詫びに、これをやろう」
俺は収納から一つの丸められた紙を取り出すと、それをケイノアに差し出す。
「……何よこれ?」
「お前の借金の借用書の一つだ。その借用書の分の借金はなしにしてやるよ」
「……これ、結構な金額ですが、よろしいのですか?」
シアリスもケイノアの広げた紙を覗き込むが、そこに書かれている金額を見て驚きながら聞いてきた。
そこに書かれている額は一般家庭の年収分くらいは書かれてるんだかた当然か?
というかそんな額の借金をいくつもしてるって、ある意味ではケイノアはすごいな。
「ああ。悪かったと思ってるんだ」
借金の無効は、実際に悪かったとは思っているからでもあるが、それよりもこいつの借金をなくすためだ。借金がなくならない限りこいつはずっとこの家に居座るだろう。
だが、借金がなくなれば、こいつがここにいる理由はなくなる。なにせ、こいつがこの家に居られるのは、借金を返済するまでなんだから。
借用書を手に入れるためにそれなりに金を使ったので、できれば回収したいとは思うが、ケイノアから全額回収するのは不可能だとも思ってる。
それよりは全額を回収するのは諦めて早くこの家を出て行ってもらった方がいいかな、というわけだ。
「そ、そう? まあ、そんなに反省してるんだったら許してあげるわ」
俺の思惑に気付くこともなくケイノアはご機嫌になった。
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