『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民ヤズ―

文字の大きさ
124 / 499
獣人国での冬

190:お断りさせていただきます

しおりを挟む
「なんとか言いなさいよ!」

 部屋の中にいたのは、金色の長い髪に蒼い瞳をした綺麗な少女。その耳は腰まで伸びる髪に隠される事なくピンと尖っている。見た目で決めつけるのは良くないと思うが、まあエルフで間違い無いだろうと思う。これは召喚時に与えられた脳内辞典がなかったとしても間違う事はないだろうと確信できる。

 そんなエルフの少女は、その整った顔を怒りに染めて仁王立ちしている。

「……えっと、何か話しました?」
「は、はい。本日アンドウ様がお会いになられるという事と、昨日言っていた破棄の件についてあらかじめ説明をしておいたほうがいいかと思いまして、それを……」

 俺たちをこの部屋まで案内してくれた職員の女性に聞いてみるが、彼女の言葉は途中で遮られた。

「あんた! 私が受けた依頼を勝手に破棄しようとするなんて、ちょっと冒険者をバカにしてんじゃ無いの!?」

 確かに誰かが受けた依頼を依頼主の都合で勝手に破棄するというのは自分勝手すぎる。冒険者をバカにしていると言っても過言では無い。……ないのだが、少しぐらいこっちの話を聞いて欲しいと言うのは贅沢だろうか?

「あの、アンドウ様は──」
「ああ、大丈夫です。後はこっちでなんとかしますので、貴女は仕事に戻っていただいて構いませんよ」
「……分かりました。では失礼いたします」

 エルフの少女を抑えようとしてくれた職員の女性を下がらせる。このままここにいても彼女の時間を無駄にするだけだろう。

「とりあえず座りましょうか」

 俺は少女を落ち着かせるために一旦話を切ろうと、部屋に備え付けられているソファに座る。

 向こうもそんな俺の行動を見て対面に座ったが、その顔は未だ険しく、俺を睨みつけている。

「で、依頼についてですが……」

 俺がそう言うと、よほど言いたい事があったのだろう。目の前のエルフ少女はダンッと机を強く叩きつけた。

「~~~っ!」

 だが、自分で叩きつけておいて痛かったのだろうか。叩きつけた拳を自分の方に引き寄せて若干涙目になりながらさすっている。

 ……なんだかこのエルフ、残念な感じがするんだが気のせいだろうか?

「依頼についてですが──」
「い、依頼の破棄は認めないわよ!」

 目の前のエルフ少女は、最初と同じようにそう言って俺の言葉を遮りながら、涙目でこちらを睨みつける。

「こちらも今更依頼を破棄するつもりはありませんよ」
「……そうなの?」
「ええ。破棄、というのは昨日の時点で依頼の受注者がいる事を知らなかったものでして、既に受注者がいるのでしたらしっかりと依頼通りに話を進めるのが筋でしょう」
「そう。そうね。分かっているのならいいのよ!」

 どこかホッとしてように呟いてから、腕を組んでふんぞりかえるエルフ少女。

 というか、いい加減自己紹介ぐらいしないとだな。いつまでも名前も知らないっていうのは面倒だ。

「ところで、お名前を伺っても? 私は安堂彰人と言います」
「ふ~ん。アキト、ね。いいわ。私の名前を教えてあげる! 私はケイノアよ! ケイノア・ケルヴァーリスが私の名前。しっかり覚えておきなさい!」

 ケイノアね。了解っと。
 さて、名前がわかったのはいいんだが、これまでの対応からしてなんか傲慢な感じがするな。知識にも種族的にそんな感じだってあるから間違ってはいないだろう。

「それではケイノアさん。依頼した部位の欠損を治癒する方法ですが、それはどのようなものですか?」
「その前に一ついいかしら?」

 なんだ? まあ、聞いてみるしかないか。

「どうぞ」
「私が教える方法は一族の秘密なの。正直に言って今回の依頼の対価では割りに合わないわ」

 ……価値が合わないというのなら、なんで依頼を受けたんだこいつ? 教えないんだったら依頼を受けた意味がないだろうに。

「でしたら──」
「そこで! 私の情報に相応しい対価を要求します!」

 ああ、なるほど。つまりは値上げ要求か。

 ……どうしたものか。昨日考えた通り、保険というのはいくらあってもいい。いざという時のために多少高くなっても聞いとくべきか?

「因みに、今回の依頼の報酬は収納具でしたが、貴女はどんなものが相応しいとお思いでしょう?」
「ふん! 一族の秘密を教えるのよ? 収納具程度じゃ十個あっても足りないわ!」

 収納具はいくらでも作れるが、流石にそれはぼりすぎじゃないか? まあエルフの秘密って言うんだからそれなりに価値はあるのかもしれないけどさぁ。



「でも、貴方は怪我をしていないのに欠損の治癒方法を探してるって事は人助けなんでしょ? だったらもっと安くしておいてあげる! ……そうね収納具三つでどうかしら?」
「いきなり下がったな」

 おっと。つい口から漏れてしまった。
 三つぐらいなら渡したところでどうでもいいんだが、なんというか、どうにも怪しい気がするんだよな。いや『怪しい』というよりは『おかしい』の方があってるか?

「ま、まあね。……それで! どうかしら?」

 どうしようか。収納具三つで欠損の治癒っていう保険が手に入るならほしいんだけど……

 俺はチラリとケイノアの様子を伺う。
 すると、向こうも俺の様子を見ていたのか目があって、その途端に目を逸らされた。

 やっぱり何か隠してるよなぁ……。

「そうですね。では──お断りさせていただきます」
「フンッ、そうよね! 受けるわよ……え?」
「今回はご縁がなかったということで」

 何かを隠してる奴の頼みを聞くなんて面倒にしかならなさそうだからな。
しおりを挟む
感想 317

あなたにおすすめの小説

ひっそり静かに生きていきたい 神様に同情されて異世界へ。頼みの綱はアイテムボックス

於田縫紀
ファンタジー
 雨宿りで立ち寄った神社の神様に境遇を同情され、私は異世界へと転移。  場所は山の中で周囲に村等の気配はない。あるのは木と草と崖、土と空気だけ。でもこれでいい。私は他人が怖いから。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる

グリゴリ
ファンタジー
『旧タイトル』万能者、Sランクパーティーを追放されて、職業が進化したので、新たな仲間と共に無双する。 『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる』【書籍化決定!!】書籍版とWEB版では設定が少し異なっていますがどちらも楽しめる作品となっています。どうぞ書籍版とWEB版どちらもよろしくお願いします。 2023年7月18日『見捨てられた万能者は、やがてどん底から成り上がる2』発売しました。  主人公のクロードは、勇者パーティー候補のSランクパーティー『銀狼の牙』を器用貧乏な職業の万能者で弱く役に立たないという理由で、追放されてしまう。しかしその後、クロードの職業である万能者が進化して、強くなった。そして、新たな仲間や従魔と無双の旅を始める。クロードと仲間達は、様々な問題や苦難を乗り越えて、英雄へと成り上がって行く。※2021年12月25日HOTランキング1位、2021年12月26日ハイファンタジーランキング1位頂きました。お読み頂き有難う御座います。

最強の職業は解体屋です! ゴミだと思っていたエクストラスキル『解体』が実は超有能でした

服田 晃和
ファンタジー
旧題:最強の職業は『解体屋』です!〜ゴミスキルだと思ってたエクストラスキル『解体』が実は最強のスキルでした〜 大学を卒業後建築会社に就職した普通の男。しかし待っていたのは設計や現場監督なんてカッコいい職業ではなく「解体作業」だった。来る日も来る日も使わなくなった廃ビルや、人が居なくなった廃屋を解体する日々。そんなある日いつものように廃屋を解体していた男は、大量のゴミに押しつぶされてしまい突然の死を迎える。  目が覚めるとそこには自称神様の金髪美少女が立っていた。その神様からは自分の世界に戻り輪廻転生を繰り返すか、できれば剣と魔法の世界に転生して欲しいとお願いされた俺。だったら、せめてサービスしてくれないとな。それと『魔法』は絶対に使えるようにしてくれよ!なんたってファンタジーの世界なんだから!  そうして俺が転生した世界は『職業』が全ての世界。それなのに俺の職業はよく分からない『解体屋』だって?貴族の子に生まれたのに、『魔導士』じゃなきゃ追放らしい。優秀な兄は勿論『魔導士』だってさ。  まぁでもそんな俺にだって、魔法が使えるんだ!えっ?神様の不手際で魔法が使えない?嘘だろ?家族に見放され悲しい人生が待っていると思った矢先。まさかの魔法も剣も極められる最強のチート職業でした!!  魔法を使えると思って転生したのに魔法を使う為にはモンスター討伐が必須!まずはスライムから行ってみよう!そんな男の楽しい冒険ファンタジー!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。