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獣人達の国

176:ガムラ戦終了

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こちらは予約ミスったお詫びです!
明日からは気をつけますのでお許しくださいm(__)m
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 今度はどんな武器を使うんだろうか、と少しばかり楽しみだった。

 最初は重量のある大きな剣で、その次はまったく系統の違う槍。なら次も別の系統の武器なのではないだろうかと予想している。
 鎌とかはどうだろうか? だとしたらちょっと胸が熱くなるんだけどな。

 だが、俺の予想は外れた。と言うよりも、予想もしない方法でガムラはかかってきた。

 ガムラはまだ捨てずに持っていた槍の残骸を俺に向かって投擲してきた。
 その速さはかなり速いが、投げられるまでそんなそぶりなど全くなかった。

 虚を疲れた俺は防御のために渦を出したが、咄嗟であったがためにその大きさは自身の視界を邪魔してしまうようなものだった。

 渦の中にガムラが投げた槍の残骸が収納された事を認識すると、俺は収納魔術を解除して渦を消す。
 だが、渦を消した先にはさっきまでいたはずのガムラの姿はなかった。

「っ! どこにっ……」
「こっちだ!」

 見失ったガムラの声が右からきこえ、咄嗟に其方に振り向く。

「がっ!」

 だが、そんなものが間に合うはずもなく、また意味もなかった。

 俺は横から受けたガムラの攻撃を腹にまともに受けてしまい、痛みに襲われた。

「このっ……!」

 追撃を防ぐために持っていた剣を振るったが、そんなものは当たらず、簡単に避けられてしまった。

「もういっちょ!」

 そうして行われるガムラの攻撃。
 俺はそれを、ガムラと俺の間に渦を発生させることで防ごうとしたが、さっきと同じように横に回り込まれた。

 だが、今度は予想していたので右か左かのどちらかからやってくるガムラに備えていた俺は、渦ではなく剣を振り下ろすことで対応する。

 それをガムラは受ける事はせずに、後ろに下がる事でやり過ごした。

 そこで初めてガムラが持っている武器がなんであるのかがわかった。
 ガムラが持っていたのは、さっきまでの両手で扱う武器ではなく、それぞれ片手で振るう事のできる短剣だった。

 そういえば、イリンはガムラの戦い方を予想していたな。どうも俺の中のガムラのイメージと合わなくて忘れてたけど。

「やっぱ予想通りだったな。お前のそれは自動じゃねえんだろ?」

 その言葉でガムラが何を狙ったのかを察っすることが出来た。

「……渦を作る前に攻撃すればいいってか」

 俺がそう言うと、ガムラはニッとその凶暴な顔に浮かべていた笑みを深めた。

「そいつはいきなりは使えねぇみてぇだからな」

 ……確かに。収納魔術で作った渦は、魔術の発動から少ししないと現れない。
 だが、そんなのはほんの一瞬だぞ? いくら魔術を発動してからだと出現位置を動かせないとは言っても、発動から渦の発生までは一秒もないくらいの時間でしかない。

 だが、ガムラにはその僅かとも言えないような短い時間で十分だったんだろうな。

 発動後に発生させた渦を動かせればさっきのは防げたのだが、それは出来なかった。
 最初から動かす気で魔術を組めば渦を動かす事はできるが、それをやると魔力の消費が多くなるし、発生までの時間も延びるので普段はやっていない。さっき作ったのも普通のやつだ。

「まだまだいくぞ!」

 そうして始まるガムラの連撃。
 正面から突っ込んできたと思ったら右から攻撃が来て、右だと思ったら左から。背後に回ったかと思えば、今度は正面から。
 それらをさっきのように渦と剣で対処しようとするが、さっきまでは手を抜いていたのか、今行われているガムラの攻撃は比べ物にならないほど速い。
 それなりに防げて入るけど、これが続くようならそのうち防ぐことが出来なくなるだろう事は容易に想像できた。

 ……仕方がない。あんまり見せたくはないんだけど、本気を出すって言ったしな。

 俺がそう覚悟を決めて行動を起こすと、ガムラはそれまで続けていた連撃を止めてその場から離れた。

「チッ! それが本気の姿ってわけかよ!」
「本当の姿というか……まあ奥の手の一つではあるな。疲れるからあんまり使いたくはなかったんだけどな」

 俺が何をしたかって言うと、やってる事自体はさっきまでとさほど変わらない。収納魔術を使って黒い渦を発生させているだけだ。
 ただまあ、その場所と形がそれまでとは違うってだけで。

 さっきまでが平らな渦のような状態であったのに対して、今俺が発生させた収納の渦は、俺の体を覆うように現れている。
 外から見た俺のことを表するのなら、『なんだか蠢いているような黒で出来た人の形をした何か』と言った感じだろうか?

 平面であれば単なる渦のように見えたとしても、それが人の形をしていれば到底渦には見えない。
 結果、『蠢く黒』と言う微妙なものが出来上がった。

「そうかよっ!」

 そう言いながら、ガムラはいつのまにか取り出していたナイフを俺に向かって投げた。
 だが、全身を収納魔術で覆っている以上、その程度の攻撃は対応するまでもない。投げられた刃物は音もなく飲み込まれた。

「やっぱり効かねえかよ」

 ガムラは持っていた短剣をしまうと、今度は最初と同じような身の丈ほどの大きさの剣を取り出した。

「どうやらこれで仕舞いみてぇだな。俺の攻撃がとどきゃあいいんだが、まあ無理だろうな」

 ガムラは次の一撃で終わらせる気なのだろう。妥当なところか。
 武器を使う以上、その攻撃は通らないし、仮に通ったとしても、その攻撃に全力を尽くすのであればその後が続かない。だから、ガムラは攻撃の結果にかかわらず降参するしかないのだ。

「それでも、最後の一撃だ。後のことなんざ考えずに全力でやらせてもらうぜ!」

 ガムラはポーチから薬のようなものを取り出すと、ためらうことなくそれを一気に飲んだ。

 ……なんだ今のは? 強化系の薬か?

「っくううぅぅ~! あ~、久しぶりだと結構な。……けど、これでやれるぜ」

 持っていた薬の空き容器を乱暴にポーチの中に突っ込むと、ガムラは歯をむき出しにして笑った。

「いくぞ、アンドウ!」 

 雄叫びを上げながらガムラが武器を構えて今までと間比べ物にならないほどの速度で突っ込んできた。
 そして、その速度を落とすことなくその鈍器のような大剣を振り下ろした。
 それを喰らえばひとたまりもないだろう事は見ていれば誰にでもわかるだろう。それが叩きつけられてしまえば、生き物など、地面ごと粉砕されてしまうと、そう思わせるほどの一撃。

 だが、その剣は観客の思った通りの結果を生む事はなかった。
 俺に叩きつけられた剣は収納魔術によって収納され、その勢いのまま体勢を崩し俺に突っ込んだガムラだけが弾かれて終わった。

「……ああ、くそっ。やっぱ無理だったか……」

 弾かれ、倒れたまま起き上がる事のないガムラは呟くようにそう言った。そして──

「俺の負けだ」
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