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獣人達の国
159:二度目の会談
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俺は会場を後にし、一旦イリンと合流する事にした。
早く事情を聞きに行きたいが、約束を投げ出すわけにはいかない。
「お疲れ様でした。ご主人様」
……観客席からここに来るよりも、俺が会場から戻ってくる方が早いはずなんだけど、どうしてもういるんだ?
「頑張りました」
……そうか。まあいいとしよう。今更気にしたところで何があるってわけでもないし。
「俺はこれからグラティースのところに用があるんだけど、イリンはどうする?」
「もちろん、ご一緒させて頂きます」
「ん。じゃあ行くぞ」
「ここからは立ち入り禁止だ。迷ったのであればすぐに引き返しなさい」
俺達はグラティースのところへと行こうとしたのだが、当然ながら警備がいて止められてしまった。
「俺たちはグラティース、王に用があるんだ。通してくれないか?」
「……何を言っている。お前達のようなものを通すはずがないだろう」
これも当然と言うべきか、断られてしまった。
だがどうしようか? とりあえず勢いのままここに来てしまったが、会う方法がない。
「通してくれないか? アンドウが来たって言えば通してくれるはずなんだが」
「アンドウだと? そんな話は聞いていない。約束されているのなら話が通っているはずだ。それがないと言う事は会わせるわけにはいかない」
特に約束しているわけではないが、俺が来たのを知れば通してくれると思うんだが。
さて、本当にどうしようか。いっそ力尽くで通るか? 向こうとしては、俺が問題を起こしても大会から外すわけにはいかないんだから、どうにかならないわけではない。
ただ、その場合は向こうに貸しが出来てしまうのが面白くない。
別に、目的さえ果たせば貸しなんて踏み倒せばいいんだけど、それをすると後々面倒になる。
ここに来るまでに多少は冷静になった頭は、その状況を拒否している。
だがここで帰るつもりなんてない。
ではどうしよう、と考えがループしたところで状況に変化が訪れた。
「アンドウ様、どうぞ此方へ」
通路の奥から一人の男がやって来てそう言った。
「よろしいのですか?」
「陛下の御命令です。以降、この方が来られた場合は通してくださって構いません」
どうやらその人物は、この騎士達も知っている人物のようだ。
俺たちを止めていた騎士は、まさか俺がそんな扱いを受けるほどの者だとは露ほども思っていなかったようで、驚きに目を開いている。
「陛下の元へと御案内いたします」
くるりと身を翻し歩いていく男。
……随分と用意がいいな。これはやっぱりわざとか。
もしかしたら手違いだったっていうのも考えたんだが、俺が来るのに合わせて人を寄越すくらいだから、予め俺がここに来ることを予想していたんだろう。
とはいえ、それだけなら手違いで対戦相手がズレてしまい、向こうも慌てている。という可能性もあるのだが、恐らくは違うだろう。
手違いで慌てていたのだとしたら、もっと早くにあの騎士達に伝えておいてもよかったはずだ。それが、俺が来るのに合わせて案内役を寄越すというのは、やはりわざととしか思えない。
……俺は今まで逃げてばかりだった。
それはこっちに来てからだけではなく、日本にいた時からそうだ。
辛い事も、苦しい事も、悲しい事も嫌だから、すべてから逃げて来た。
頑張る事は辛いから怠惰に生きて来た。
笑われるのは苦しいから普通を演じた。
誰かがいなくなるのは悲しいから関わりをもたないようにして来た。
こっちに来てからだってそうだ。
死ぬのは辛いから逃げた。
死なないように抗うのは苦しいから逃げた
そして今だって、拒絶されたら悲しいからイリンと向き合う事から逃げている。
そんな俺が、逃げずにやり遂げたいと思った事があるんだ。
そうすれば、多少は前を向いてこの世界に向き合えると思ったから。
そうすれば、自分なりの正義をもって、この世界を生きていけると思ったから。
……だから、そんな俺の思いを邪魔するんだったら、その時は容赦なんてしない。
前を歩いていく男の後を追って、俺たちも進んでいく。
「此方になります」
着いたのは、一目でここだとわかるような精緻な模様の彫られた扉のつけられた部屋だった。
コンコン
「サーズです。アンドウ様をお連れ致しました」
「入れ」
そうして開かれた扉の中には、椅子に座ったグラティースと他に六人がいた。
その人数からして全員使用人かと思ったが、アグティースもいる。だが、それにしては数が少なすぎるように感じる。必要最低限だとしても、王なんだからもっと使用人がいてもいいはずだ。現に、前回会った時はもっといた。
どういう事か、と考えていると、思考を遮るようにグラティースから声がかけられた。
「ようこそ。この度は大会に出場していただき、ありがとうございます」
椅子に座りながら俺に挨拶をするグラティース。
現れた俺に椅子を勧めてきたが、俺がそれに答える事はない。
「あの試合はどういう事でしょうか?」
「あの試合とは? 何かおかしなことでも?」
俺が断ることも予想していたのか、グラティースはいつもと変わらない、落ち着いた様子でそう嘯く。
そんな様子が余計に俺を苛立たせる。こいつが王でなかったら、俺は既に手を出していたかもしれない。
「惚けないで頂きたい。俺と戦うはずだった選手が別の人物に変わっていました。どういう事ですか?」
「いいえ。そのような事はありません。最初からあなたと戦う相手は間違えていませんでしたよ」
「ふざけるな!」
早く事情を聞きに行きたいが、約束を投げ出すわけにはいかない。
「お疲れ様でした。ご主人様」
……観客席からここに来るよりも、俺が会場から戻ってくる方が早いはずなんだけど、どうしてもういるんだ?
「頑張りました」
……そうか。まあいいとしよう。今更気にしたところで何があるってわけでもないし。
「俺はこれからグラティースのところに用があるんだけど、イリンはどうする?」
「もちろん、ご一緒させて頂きます」
「ん。じゃあ行くぞ」
「ここからは立ち入り禁止だ。迷ったのであればすぐに引き返しなさい」
俺達はグラティースのところへと行こうとしたのだが、当然ながら警備がいて止められてしまった。
「俺たちはグラティース、王に用があるんだ。通してくれないか?」
「……何を言っている。お前達のようなものを通すはずがないだろう」
これも当然と言うべきか、断られてしまった。
だがどうしようか? とりあえず勢いのままここに来てしまったが、会う方法がない。
「通してくれないか? アンドウが来たって言えば通してくれるはずなんだが」
「アンドウだと? そんな話は聞いていない。約束されているのなら話が通っているはずだ。それがないと言う事は会わせるわけにはいかない」
特に約束しているわけではないが、俺が来たのを知れば通してくれると思うんだが。
さて、本当にどうしようか。いっそ力尽くで通るか? 向こうとしては、俺が問題を起こしても大会から外すわけにはいかないんだから、どうにかならないわけではない。
ただ、その場合は向こうに貸しが出来てしまうのが面白くない。
別に、目的さえ果たせば貸しなんて踏み倒せばいいんだけど、それをすると後々面倒になる。
ここに来るまでに多少は冷静になった頭は、その状況を拒否している。
だがここで帰るつもりなんてない。
ではどうしよう、と考えがループしたところで状況に変化が訪れた。
「アンドウ様、どうぞ此方へ」
通路の奥から一人の男がやって来てそう言った。
「よろしいのですか?」
「陛下の御命令です。以降、この方が来られた場合は通してくださって構いません」
どうやらその人物は、この騎士達も知っている人物のようだ。
俺たちを止めていた騎士は、まさか俺がそんな扱いを受けるほどの者だとは露ほども思っていなかったようで、驚きに目を開いている。
「陛下の元へと御案内いたします」
くるりと身を翻し歩いていく男。
……随分と用意がいいな。これはやっぱりわざとか。
もしかしたら手違いだったっていうのも考えたんだが、俺が来るのに合わせて人を寄越すくらいだから、予め俺がここに来ることを予想していたんだろう。
とはいえ、それだけなら手違いで対戦相手がズレてしまい、向こうも慌てている。という可能性もあるのだが、恐らくは違うだろう。
手違いで慌てていたのだとしたら、もっと早くにあの騎士達に伝えておいてもよかったはずだ。それが、俺が来るのに合わせて案内役を寄越すというのは、やはりわざととしか思えない。
……俺は今まで逃げてばかりだった。
それはこっちに来てからだけではなく、日本にいた時からそうだ。
辛い事も、苦しい事も、悲しい事も嫌だから、すべてから逃げて来た。
頑張る事は辛いから怠惰に生きて来た。
笑われるのは苦しいから普通を演じた。
誰かがいなくなるのは悲しいから関わりをもたないようにして来た。
こっちに来てからだってそうだ。
死ぬのは辛いから逃げた。
死なないように抗うのは苦しいから逃げた
そして今だって、拒絶されたら悲しいからイリンと向き合う事から逃げている。
そんな俺が、逃げずにやり遂げたいと思った事があるんだ。
そうすれば、多少は前を向いてこの世界に向き合えると思ったから。
そうすれば、自分なりの正義をもって、この世界を生きていけると思ったから。
……だから、そんな俺の思いを邪魔するんだったら、その時は容赦なんてしない。
前を歩いていく男の後を追って、俺たちも進んでいく。
「此方になります」
着いたのは、一目でここだとわかるような精緻な模様の彫られた扉のつけられた部屋だった。
コンコン
「サーズです。アンドウ様をお連れ致しました」
「入れ」
そうして開かれた扉の中には、椅子に座ったグラティースと他に六人がいた。
その人数からして全員使用人かと思ったが、アグティースもいる。だが、それにしては数が少なすぎるように感じる。必要最低限だとしても、王なんだからもっと使用人がいてもいいはずだ。現に、前回会った時はもっといた。
どういう事か、と考えていると、思考を遮るようにグラティースから声がかけられた。
「ようこそ。この度は大会に出場していただき、ありがとうございます」
椅子に座りながら俺に挨拶をするグラティース。
現れた俺に椅子を勧めてきたが、俺がそれに答える事はない。
「あの試合はどういう事でしょうか?」
「あの試合とは? 何かおかしなことでも?」
俺が断ることも予想していたのか、グラティースはいつもと変わらない、落ち着いた様子でそう嘯く。
そんな様子が余計に俺を苛立たせる。こいつが王でなかったら、俺は既に手を出していたかもしれない。
「惚けないで頂きたい。俺と戦うはずだった選手が別の人物に変わっていました。どういう事ですか?」
「いいえ。そのような事はありません。最初からあなたと戦う相手は間違えていませんでしたよ」
「ふざけるな!」
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