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獣人達の国
117:再開?
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イリンの故郷を出てからもう何日も経った。
森の中を歩くのは疲れるというよりも面倒くささの方が強かったが、問題というほどのことは何も起こらずに無事森を抜けることができた。
そして俺たちは今獣人の国の首都の近くまで来ていた。
人間の国は外敵から身を守るために壁を厚く、高くして街を囲うから街の外からでは街の中の様子が全く見えない。
だが、この街は視線を遮るような壁など存在しない。壁自体が存在しないわけではないのだが、それは人間の国に比べれば圧倒的に脆く、その気になって攻められればすぐにでも壊されてしまいそうなほどだ。
しかし、そのおかげで街の外から中の建物が見えるのだからそう悪いことでもないように思える。好きか嫌いかでいうのなら、俺はこっちの方が好きだ。
「はああ~。すごいな~」
一応街を守る門番はいたものの、大した検査もせずに中に入ることができた。それで良いのかと思ったが、この街の場合は人間と違って怠けからくるものではなく強さの自負からくるものなんだろうと素直に思えた。
街の中に入ると、まず目につくのがそこにいる人々だ。人々とは言ってもそこにいる大半が人間じゃない。ほとんどが亜人で、中には魔物もいる。魔物と言っても言葉を理解して共存できるようなものしかいないが、それでも人間の国、俺が召喚された国では考えられないことだ。この街にいる人間は一割にも満たないだろう。だがこの街にくる途中に立ち寄った村では人間が一人もいない場所など珍しくなかったのでここはまだ多い方なのかもしれない。
「とりあえずどうすっかな……」
「まずはギルドに行くのはどうでしょう? 宿も良い場所があるのならそちらで聞けば良いかと」
「ん。そうだな。そうすっか」
そう言うわけで、俺たちは冒険者ギルドに向かいながら屋台で色々と買いつつ情報を集めるが、特に何も集まらない。強いて言うのなら屋台の料理が集まったぐらいだ。
……特になにが欲しいってわけでもないんだけど、できることならなにかしらの指標になりそうな情報は欲しかったんだけどな。
と、思いながらも、一応冒険者ギルドに向かう。ギルドに行けば多少なりとも情報があるはずだ。オススメの宿だったり、凄い回復薬や魔術の使い手だったり、人間の国の情報だったり。まあなんでもいいが、とにかく何かしらはあるはずだ。何もないのならそれはそれでこの街について知ることができる。なんの情報もないなんてまずあり得ないからな。その場合は意図的に隠されているのだろう。
そんなことがあるかはわからないけど、最悪を考えるのは悪くない。
冒険者ギルドまで来たが、見事に人間がいない。これも人間と亜人の確執のせいか?それでももっといてもいいと思うんだけどな…。
「お?…おお!久しぶりだな!」
俺が受付に行こうとしたら前から来た獣人の男にいきなり声をかけられた。
灰色の髪をして、顔付きは人間だが、獣成分が多めで毛がわさわさと生えている犬系の耳をした獣人。思い返しても知り合いにいるとは思えなかった。
「ん?……誰だ?」
「おいおい。それはひどくねえか?友達じゃねえかよ」
友達?こんな知り合いがいただろうか?イリンの里にいた奴らならわかるけど、こいつの髪は緑じゃないからあの里の奴らじゃないだろう。
「……人違いでは?貴方と会ったことはないと思いますが」
自分で言うのもなんだが俺の知り合いはかなり少ない。王国の中でも王城にいた一部の人間と、王国を出る時に関わった冒険者と騎士。それとイリンの故郷の里。あとは旅の途中で立ち寄った街で少し話したぐらいだろうが友達と言うほどのやつはいなかったはずだ。
だが、俺がそう言っても相手は驚くだけで引くことはなかった。
「え……?……マジか?え?アンドウだよな?」
「そうですが…。どこかでお会いしました?」
「なんだよやっぱお前かよ~。驚かせんなよ!」
考えるがわからない。だが向こうは俺のことを知っているようだ。名前を知っているんだから話した事があるんだろうけど…。
「……マジでわかんねえのか?」
マジでわからない。
「ほら俺だよ!連合国からこの国に入る手前あたりの村にお前らが立ち寄った時に会っただろ!?」
この国に入る前に寄った村と言われてもいくつか寄ったからどれだかわからない。だが一つづつ思い出していくと、そういえばこんな奴もいたな。となんとか思い出すことができた。
「……ああ、もしかしてあのとき殴りかかってきた言いがかり男か?」
「ぐっ。間違っちゃいねえしあの時は悪かったと思うけどよぉ、…その覚え方はあんまりじゃねえか?」
だが、名前は聞いたはずだが思い出せないのだから仕方がない。
森の中を歩くのは疲れるというよりも面倒くささの方が強かったが、問題というほどのことは何も起こらずに無事森を抜けることができた。
そして俺たちは今獣人の国の首都の近くまで来ていた。
人間の国は外敵から身を守るために壁を厚く、高くして街を囲うから街の外からでは街の中の様子が全く見えない。
だが、この街は視線を遮るような壁など存在しない。壁自体が存在しないわけではないのだが、それは人間の国に比べれば圧倒的に脆く、その気になって攻められればすぐにでも壊されてしまいそうなほどだ。
しかし、そのおかげで街の外から中の建物が見えるのだからそう悪いことでもないように思える。好きか嫌いかでいうのなら、俺はこっちの方が好きだ。
「はああ~。すごいな~」
一応街を守る門番はいたものの、大した検査もせずに中に入ることができた。それで良いのかと思ったが、この街の場合は人間と違って怠けからくるものではなく強さの自負からくるものなんだろうと素直に思えた。
街の中に入ると、まず目につくのがそこにいる人々だ。人々とは言ってもそこにいる大半が人間じゃない。ほとんどが亜人で、中には魔物もいる。魔物と言っても言葉を理解して共存できるようなものしかいないが、それでも人間の国、俺が召喚された国では考えられないことだ。この街にいる人間は一割にも満たないだろう。だがこの街にくる途中に立ち寄った村では人間が一人もいない場所など珍しくなかったのでここはまだ多い方なのかもしれない。
「とりあえずどうすっかな……」
「まずはギルドに行くのはどうでしょう? 宿も良い場所があるのならそちらで聞けば良いかと」
「ん。そうだな。そうすっか」
そう言うわけで、俺たちは冒険者ギルドに向かいながら屋台で色々と買いつつ情報を集めるが、特に何も集まらない。強いて言うのなら屋台の料理が集まったぐらいだ。
……特になにが欲しいってわけでもないんだけど、できることならなにかしらの指標になりそうな情報は欲しかったんだけどな。
と、思いながらも、一応冒険者ギルドに向かう。ギルドに行けば多少なりとも情報があるはずだ。オススメの宿だったり、凄い回復薬や魔術の使い手だったり、人間の国の情報だったり。まあなんでもいいが、とにかく何かしらはあるはずだ。何もないのならそれはそれでこの街について知ることができる。なんの情報もないなんてまずあり得ないからな。その場合は意図的に隠されているのだろう。
そんなことがあるかはわからないけど、最悪を考えるのは悪くない。
冒険者ギルドまで来たが、見事に人間がいない。これも人間と亜人の確執のせいか?それでももっといてもいいと思うんだけどな…。
「お?…おお!久しぶりだな!」
俺が受付に行こうとしたら前から来た獣人の男にいきなり声をかけられた。
灰色の髪をして、顔付きは人間だが、獣成分が多めで毛がわさわさと生えている犬系の耳をした獣人。思い返しても知り合いにいるとは思えなかった。
「ん?……誰だ?」
「おいおい。それはひどくねえか?友達じゃねえかよ」
友達?こんな知り合いがいただろうか?イリンの里にいた奴らならわかるけど、こいつの髪は緑じゃないからあの里の奴らじゃないだろう。
「……人違いでは?貴方と会ったことはないと思いますが」
自分で言うのもなんだが俺の知り合いはかなり少ない。王国の中でも王城にいた一部の人間と、王国を出る時に関わった冒険者と騎士。それとイリンの故郷の里。あとは旅の途中で立ち寄った街で少し話したぐらいだろうが友達と言うほどのやつはいなかったはずだ。
だが、俺がそう言っても相手は驚くだけで引くことはなかった。
「え……?……マジか?え?アンドウだよな?」
「そうですが…。どこかでお会いしました?」
「なんだよやっぱお前かよ~。驚かせんなよ!」
考えるがわからない。だが向こうは俺のことを知っているようだ。名前を知っているんだから話した事があるんだろうけど…。
「……マジでわかんねえのか?」
マジでわからない。
「ほら俺だよ!連合国からこの国に入る手前あたりの村にお前らが立ち寄った時に会っただろ!?」
この国に入る前に寄った村と言われてもいくつか寄ったからどれだかわからない。だが一つづつ思い出していくと、そういえばこんな奴もいたな。となんとか思い出すことができた。
「……ああ、もしかしてあのとき殴りかかってきた言いがかり男か?」
「ぐっ。間違っちゃいねえしあの時は悪かったと思うけどよぉ、…その覚え方はあんまりじゃねえか?」
だが、名前は聞いたはずだが思い出せないのだから仕方がない。
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