上 下
251 / 330

逆襲 ④

しおりを挟む
【嵐side】

随分ずいぶんとボロボロにされましたね、左慈。
 貴方が手こずるとは、嵐くんの弟妹たちは強敵だったのですか ?」

 于吉の質問に嫌そうな顔をした左慈は俺に向かって、

「嵐、てめえの弟妹たちは悪魔か !
 躊躇ちゅうちょなく、気絶した俺を解体しようとしたぞ !」

 一応、女神と神なんだが、邪神ユリリンも混じっているから、あながち間違いでも無いんだな。

「それくらいなら私もやりますが、左慈」

「貴様は黙っていろ、マッドサイエンティストめ !」

 苦々しく言う左慈に少しだけ同情していると、

「嵐、てめえだけには同情なんて、されたくは無いからな! 」

 身構えて、今にも俺に襲いかかろうとしている左慈に向かい、

「大丈夫か ?」

 と聞いたら勘違いしたらしく、

「てめえの弟妹たちは、于吉の特性『睡眠香』で眠っているぞ !
 ラベンダーの香りに包まれて夢の中にお出かけ中と云う訳だ 」

 いや、妹たちの心配では無くて、お前左慈の心配をしていたんだが、言ったら怒るだろうから黙っておこう。

「私共の売れ筋商品のアロマオイルなんですよ。
 どうです、おひとつサービスでお安くしますよ 」

「「こんな時に商売しているんじゃねぇー !」」

 思わず、左慈とかぶってしまった。

 「苦労しているな、左慈も」

「敵じゃなかったら、朋友ぽんゆうに成ってたかもな、嵐」

 拳を交えたからこそ判るが、立場が違ったらダチ公親友に成ってかも知れない。

ひどいですね、私一人が悪者ですか、左慈」

 そうだ、お前(于吉)腹黒メガネが一番悪い !

「こんな奴でも同志だから、ニ対一でも文句を言わないでくれよ、嵐。
 負けっぱなしだと、他の同志に申し訳が立たないからな 」

「本当に酷い扱いですね、左慈。
 後で、貴方とは話し合いを持たないとイケマセンが、とりあえずは嵐くんを排除してからにしましょうか 」

 左慈と于吉が相手か。
 いささか骨が折れるが、主人公の宿命だから仕方ないか。
 そんな風に考えていたら、

「ニ対一 じゃ無くて、ニ対ニだぜ、妖仙道士 !」

 声のする方を見ると、天龍八部衆・迦楼羅かるら  に乗った、こけると海里が上空に居た。
 迦楼羅から舞い降りた、こけるは俺の隣に並びながら、

「海里のことは頼んだぞ、迦楼羅 !」

 こけるからの頼みを聞いた迦楼羅は、海里を乗せて離れて行った。

唵阿爾怛摩利制曳莎訶 おん あにちゃ まりしえい そわか
 摩利支天まりしてん太陽剣たいようけん!」

 こけるの金剛杵からビームサーベルのような光の刃が出てくる。

 科学と陰陽師か、燃えるぜ !

「『リターン・マッチ』と云う訳ですね。
 望むところです、それでも私達のるぎませんけどね!」

 コノヤロ腹黒メガネ、まだ隠し球を持っていやがるな !
 こけるに合図をすると、俺の意図が判ったのかうなずいてくれた。
 頼むぜ、相棒こける !

「う~ん、ボクのライバルは蝶子や蛍じゃ無くて、こける なのかなぁ~ 」

 ベルの不穏なつぶやきは無視するとして、やっぱり俺の相手は左慈に成りそいだな。

 一触即発に成りそうに成った時、

「待ちなさい ! 」

 振り向くと武器を持った、明日菜と英里香、パラスが居た。
 明日菜とパラスは木刀の薙刀ナギナタだけど、英里香はガトリング銃を持っている。
 ジト目で英里香を見ると、

「安心して !
 本物じゃ無くて、合法のガス銃よ。
 少しだけ改造しているけど……」

 おそらく、ヘパイストスが改造したんだろうから、ただのガス銃な訳無いだろうな。

「残念ですが事情は変わりました。
 私達は戦略的撤退をさせてもらいます。
 分の悪い賭けはしない主義なので失礼させてもらいます 」

 言うが早いか、術札を数十枚、左慈の下に円上に展開させると、

「太平要術 『転移』!」 

 左慈は落とし穴に落ちたみたいに消え去り、続いて于吉も穴に飛び込むと穴は消えてしまった。

「クッ、南華老仙なんかろうせんまで居るのかよ、チクショウ ! 」

 こけるのつぶやきだけが、俺たちの頭にこびり付いていた。

しおりを挟む

処理中です...