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第五章 領地発展編
第204話 組閣
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それから数日後。
ちょろいと思っていた担当者決めは、エレインに何度もダメだしされながらもなんとか終える事が出来た。
その出来にはちょっとした自信がある。
社蓄時代の仕事の担当者アサインの記憶が蘇って、胃がきりきりしたが。
なにせ仕事の量に対して、アサインできる人数が少なすぎるからね!
まあ、そんなトラウマは置いておいて。
今日は、そんな担当者の発表日である。
せっかくなので、学校の体育館に村人全員を集めて発表することになった。
村の大事だし、300名くらいしかいないので、体育館には全員入るのだ。
教室と同じく板張りの床にした体育館に、土魔法で作ったパイプ椅子っぽいものを並べていた。
壇上には担当者としてアサインされた者達が座る席が並べられている。
ちらほらと村人たちが集まってくる。
アンとヴァンダレイジジイ、ラッセルズ、野球馬鹿たち、ロビンジジイとマリーババア夫妻など。
全員が顔見知りだ。
ダークエルフさん達も全員やってきた。
わずか300名とは言え、一度に集まると、なかなか壮観である。
体育館の窓からは、桜の花びらが舞い込んでいた。
庭師の骸骨に頼んで、学校の周りにも桜を植えて貰ったのだ。
植えてすぐに満開の花を咲かせるあたり、あの骸骨の非凡さが伺える。
なんというか。
桜と体育館というと入学式を思い出す。
ここは異世界なのに、ノスタルジックな気分になって不思議だった。
「えー皆様。本日はお忙しい所をお集まり頂き……ってこの村に忙しい人なんていませんよね……」
司会進行を務めるエレインがそんな挨拶をして村人たちがドッとウケていた。
たぶん、狙ったんじゃなくて素で言ったんだろうけど。
堅苦しいエレインにしては、好調な滑り出しである。
「では、早速ですが、領主アサギリ子爵が考案された村の行政担当者を発表いたします」
そして、名前を呼び上げていくエレイン。
俺が苦労して考えたのは以下の通りだ。
総理大臣 エレイン
国土交通大臣 アサギリ・コウ
文部科学大臣 ルーナ(補佐エレイン)
農林水産大臣 ミレイ
経済産業大臣 ケイト
防衛大臣 キリア
戦技教導官兼治安維持担当 ジジイ
特別相談役 セレナ
法務大臣 エレイン
外務大臣 エレイン
厚生労働大臣 エレイン
その他、困ったときには エレイン
ふふふ。
どうよ。
この完璧な布陣。
なんかエレインの名前が出すぎな気がするが、仕方ない。
場内はエレインの発表を聞いてざわざわしだす。
名前を呼ばれた者達が、壇上に上ってくる。
「……あ、あの大臣って地方領主が任命していいものなのでしょうか?」
「わかってます。体外的には呼び名は別のものに変えます。……閣下が仕事をしてくださっただけで、私は満足でしたので、細かい事はどうでもいいかなって、ううっ」
不安そうなミレイにエレインがなぜかメガネの下にハンカチを当てながら答えていた。
まあ、完全に日本のパクリだけど、大切なのは気分である。
「ただ、閣下? やっぱりどう見ても、まるで閣下が私の部下みたいになってるのが気になるんですが?」
総理大臣がエレインで、俺が国交相な件だろうか。
だって、建築は俺が仕切りたいもん!
でも、総理大臣はどう考えてもエレインだろう。
なのでエレインの疑問は無視する。
「ふおおおおおおお! 龍神王様! わ、私にこんな重要な役目を下さるなんて……ババア感激です!」
キリアがそんな事を言いながら涙を流していた。
軍事関係はキリアに一任しようと思う。
ヒラだヒラだってうるさかったし。
ヒラババアの汚名返上である。
「おい、小僧。あの戦技教導官兼治安維持担当ジジイってのは誰の事じゃ?」
次にやってきたのはヴァンダレイジジイだった。
そんなの。
「お前に決まってんだろうが。ジジイっつんてんだから。老いぼれなのに悪いが、少し働いて貰うぞ?」
常に抜き身の剣を持ってフラフラしている件について、エレインがぷんぷん怒っていた。
なので、帯剣が許されそうな役職を与えてみた。
「ぐぬぬぬぬ! わしをジジイ呼ばわりとはちょこざいな……! ま、まあお主がそこまで言うのならやってやってもよいがのう。ふふふ」
怒りながらもまんざらでもなさそうなジジイ。
ツンデレジジイとか誰得だよ。
「あの領主様。私が役を引き受けるのは結構なんですが……」
営業スマイルを浮かべながらも、困ったような顔をしているのは、ケイトさんだった。
何か困っているなら、なんでも助けてあげたい。
「さすがに店との掛け持ちが難しくなるので、主人がやっている深夜営業をお許しいただいて、昼間だけの営業にして頂くわけには参りませんか? そうすれば、昼間は主人が店を見れますので」
ケイトさんはそんな事を言うのだが。
はて。
深夜営業?
確かにコンビニは深夜も営業すべきだけれども。
そんなのやっていたんだろうか。
大体、シュジンって誰だよ。
まあいいけど。
「いいよー」
なので即答でオーケーしておいた。
「軽っ!」
驚きながらもケイトさんは安心してくれたので、よかった。
村人達は、エレインの発表を聞いて、おおむね満足しているようだった。
ちなみに、壇上には担当者が書かれた大きな紙を張ってある。
「それでは、何か異議のある方はいらっしゃいますか?」
エレインがそう聞くと、ババっと手を上げるものが2名。
ソフィさんとこの筋肉と、なんか見覚えのある冴えない男だった。
なんだよ、雑魚どもかよ。
じゃあ、いいか。
「解散! みんな気をつけて帰れよー」
「「ええ!?」」
筋肉たちが驚いているが、当然のごとく無視をする。
「閣下! 民の訴えを無視するとは何事ですか!? ちゃんと聞いてあげてください!」
エレインに怒られてしまった。
だって絶対ロクな事言わないのに……。
「なんだよ、二人共? とりあえず、言ってみ?」
「コウの一番の子分なのに、俺の名前がないじゃないか!」
「そうですぞ! 私の名前もありません!」
二人共、組閣に呼ばれなかった事が不満らしい。
だってさ。
「……何ができんのお前ら?」
「ええ!?」
「私にはこの筋肉があります! 筋肉大臣とかはいかがですかな? はっはは!」
戸惑う雑魚と、なぜか筋肉を自慢しだす暑苦しい男。
筋肉大臣ってなんだよ。
その隣には、慌てながら筋肉を座らせようとするソフィさんの姿があった。
健気で泣かせる。
「異議あり! 筋肉大臣とは聞き捨てなりませんね!?」
そんな事を言いながら、メイド姿のフィリスが立ち上がる。
また面倒くさいのが……。
「ほほう、面白い。どっちが筋肉大臣に相応しいか、勝負しますか、フィリスさん? 腕相撲で!」
筋肉が腕の筋肉にめきいっと力を入れる。
暑苦しい。
「いいでしょう、その勝負受けて立ちますよ!!」
そしてフィリスも腕をまくりあげて、白くて細い腕をめきいっと――はできなくて、すべすべとした肌触りの良さそうな腕のままだった。
ぱっと見はどう見ても筋肉の勝ちなのだが。
「あの……いつの間にか筋肉大臣を作る流れになっているんですが……いいんですか? ちゃんと大臣手当とか発生するんですよ?」
エレインが不安そうにしていた。
まあ、面白そうだからやらせとけばいいさ。
手当はやらんが。
そんなわけで、体育館の中央の椅子がどかされ、筋肉VSフィリスのアームレスリングが行われることになった。
場内は意外と盛り上がっていて、どっちが勝つかの賭けも行われていた。
金もないくせに。
「それじゃあ、いくぞい? 両者、手を握るんじゃ」
なぜかレフリーはヴァンダレイジジイだった。
台の上に腕を乗せて、がっちりと手を握り合う筋肉とフィリス。
傍から見ると、痴漢を働いている筋肉達磨と被害者の図にしか見えなかった。
「ふぁいっ!」
ジジイの開始の合図に、腕に力を込める両者。
先行したのは意外にも、筋肉だった。
「ぬぐうああああああああ!」
妙な奇声を上げて、身体を思い切り倒している。
全体重をかけているらしい。
その暑苦しい筋肉は、気持ち悪いほどに盛り上がり、汗が吹き出している。
徐々に身体を倒していく筋肉。
倒しきったら筋肉の勝ちだ。
フィリス相手に意外と善戦する。
しかし、最後の一押しが足りない。
「がんばって、あなた!」
そんな時、心配そうに見守っていたソフィさんの声援が聞こえる。
ぴくんとなる筋肉。
最愛の妻の声援によって、筋肉は最後の力を振り絞る。
「ふんぬらああああああ!」
だから、何そのキモい奇声。
とはいえ、徐々に筋肉の身体は倒れていき――。
「だっしゃああああああ!」
――そして、完全に倒れきった。
やりやがったあいつ。
軍隊じゃないと勝てないと言われた上位吸血鬼のフィリスに勝つとか。
――めきめき! ぼきぼき!
そんな嫌な音が、体育館に響いたのは、そんな時だった。
音がしたのは筋肉の腕。
見れば、倒れたのは身体だけで、その腕は普通にフィリスの方に倒れていた。
腕は変な方向に曲がっている。
「いえ、開始してすぐに私が勝ったのに……この筋肉人間がやめないから……」
あのフィリスがたじたじと焦っていた。
それだけで筋肉は健闘したと言えるんじゃないかな。知らんけど。
「勝者! フィリーーース!」
ヴァンダレイジジイがフィリスの小さな手を高々と上げる。
「コウ様、コウ様! これで私が筋肉大臣ですからね?」
フィリスが嬉しそうにやってくる。
いや、いいけどさ。
筋肉大臣って何やるの? マジで。
まあいいか。
ギャグ枠が一個くらいあってもいいだろう。
見世物としてはいい対決だった。
腕を抑えた筋肉がタンカで運ばれていき、青い顔をしたソフィさんがついていったけど。
夫がバカだと苦労する。
早く俺の女になっちゃえばいいのに。
さて、そろそろ帰ろう。
隣りに座っていたルーナの手を取って立ち上がる。
「ちょ、ちょっと待てって!」
そんな声をかけてきたのは、雑魚臭が漂う一般人だった。
ええと。
なんつったかな、こいつ。
「備長炭じゃないか。なんか用か?」
「ピートだってば!!! それ誰だよ!?」
誰っていうか、備長炭は人間じゃないんだけど。
いちいち面倒くさい奴である。
「……なんだよ、ピート。これからルーナを抱くんだから早くしろよ」
「えへへ。コウったら」
ルーナが嬉しそうに肩に頭を乗せてくる。
可愛い。
「俺の役がまだ決まってないんだけど?」
ピートの役?
そんなもんねえから。
「……うーん、ピートにも何か担当をつけてあげればいいじゃないか。いきもの係とか」
おお。ルーナにしては冴えている。
「よし、それで行こう」
「やだよ!! 何育てるんだよ!?」
わがままな雑魚である。
「……はあ。まあピート君もまだ若いですし、これから重臣に育ってくれる事を願って、ヴァンダレイさんが兼任されている治安維持担当を任せてみてはいかがでしょう? 風紀は乱れているものの、この村は妙に治安がいいですから。ピート君には丁度よいでしょう」
「エレインさん……」
エレインの提案にピートが涙ぐんでいる。
「儂もそれでかまわんぞい。ピートの補佐くらいはしてやるわい」
ジジイもそう言っているのだが。
治安維持担当って警察みたいなことをするやつだ。
ピートが警察って。
ピートに平和を守られる村。
そんな村に俺は住みたくない。
「頼むよ、コウ! 俺一生懸命、がんばるから!」
まあ、エレインの言う通りピートに勉強させるのも良いかもしれないけど。
「本当に頑張れるか?」
「おう!」
「結構きついと思うぞ? あとで文句は言うなよ?」
「もちろんさ!」
「じゃあ、レティーお嬢様俺が寝取っても文句言うなよ?」
「ええええ!?」
よし、これにて一件落着。
「ちょっと待てよ! なんでレティーお嬢様が出てくるんだよ!?」
真っ赤になったピートが慌ててしがみついてくる。
こいつが早くモノにしないから悪いのに。
「まあ、冗談だよ。冗談。半分は」
「残り半分は!?」
うるせえモブである。
「……そういえば、閣下。ずっと疑問に思っていたことがあるんですが、今お聞きしてもよろしいでしょうか?」
突然、エレインがそんな声をかけてくる。
はて、なんだろう。
「この村ってなんていうお名前なんでしょうか?」
エレインの疑問に、その場が凍りついた。
「え?」
「「「「「「「「「え?」」」」」」」」」
俺が聞き返すと、その場にいた全員が同じく聞き返す。
「いえ、え? ではなくて。なんで誰も知らないような顔をされてるんですか?」
「ルーナ知ってる?」
「わ、私が知ってるわけないじゃないか!? み、ミレイなら……」
「いえいえ、私より先に住んでらしたお二人が知らない事を私が知っているわけないですよね?」
そんなわけで誰も知らなかった。
「もしかしてまだ名前がないんですか? 300名もいて? なんで誰もその事を疑問に思わなかったんですか!?」
エレインがドン引きしていた。
「……んだども、村の名前なんてそんなに重要じゃないべ?」
「んだんだ。どうでもいいべ」
「ヤキュやるのに忙しかったし」
村人たちが口々に言い訳を始める。
「どうしてこの村はこういう人達ばかりなんですか!? 村の名前は重要です。だいたいあなた達、他所で住所を聞かれたらなんて答えるんですか!?」
エレインの言うことももっともだった。
このままでは住所不定無職になってしまう。
無職は変える気はないが。
まあ、丁度みんな集まっているし、今決めればいいじゃん。
ということで、みんなのアイディアを募集する。
まずはルーナ。
「ええ!? 私から!? え、ええと……コウとルーナだから……コルコルぽんぽん村?」
お前の脳みそ豆腐かよ!
大体ぽんぽんはどっから来たんだよ。
次にセレナ。
「ブラッドサクリファイス村とかがいいんじゃないかしら」
お前が言うと洒落にならねえんだよ!
次にミレイ。
「そうですね。神々しい名前がいいですね。……ムーンエンジェル村とかは?」
ラブホか!
「わたしは、ばなな村がいいです!」
バカか!
勝手に喋りだしたメグの意見も却下する。
「遺伝子村!」
それ関係あんのお前らラッセルズだけだから!
「やっぱり、ここは涙と女と晩酌村とかかのう」
昭和か!
「うーん、姉と弟のイケナイ関係村とかいいんじゃないかってお姉ちゃんは思います」
エロビか!
「痰村なんかいいと思うがのう」
汚物か!
ってなんで俺のツッコミ練習道場みたいになってんだよ!!
あーイライラする。
「……ちなみに閣下はどんな名前がいいんですか?」
「ええ!?」
突然エレインがキラーパスを放ってきた。
めちゃくちゃ汗が出てくる。
そんないきなり面白い事を言えるわけ無いじゃん。
「び、美人ばかりだから、いつも俺はムラ村! なんちゃって……」
そう言い放ってみたら、みんなが俺から視線を反らす。
こいつら。
「だ、大丈夫だ! 私はいつもお前と一緒だからな!」
ルーナが優しく抱きしめてくれた。
ちょっと泣いちゃいそうだった。
「……はあ。まあここはセラン荒野ですから、通例通りならばセランディアとかでよろしいんじゃないでしょうか?」
ため息をついたエレインが凄くまともな名前を言っている。
そんなんあるなら先に言えよ。
他の奴らも同じことを思ったようで、パチパチと拍手をしていた。
そんなわけで、この日、我が村の名前と政治担当が決まった。
なんか結構ちゃんとしてきたよね。
村名:セランディア村
総理大臣 エレイン
国土交通大臣 アサギリ・コウ
文部科学大臣 ルーナ(補佐エレイン)
農林水産大臣 ミレイ
経済産業大臣 ケイト
防衛大臣 キリア
戦技教導官 ヴァンダレイ
おまわりさん ピート
特別相談役 セレナ
法務大臣 エレイン
外務大臣 エレイン
厚生労働大臣 エレイン
その他、困ったときには エレイン
筋肉大臣 フィリス
ちょろいと思っていた担当者決めは、エレインに何度もダメだしされながらもなんとか終える事が出来た。
その出来にはちょっとした自信がある。
社蓄時代の仕事の担当者アサインの記憶が蘇って、胃がきりきりしたが。
なにせ仕事の量に対して、アサインできる人数が少なすぎるからね!
まあ、そんなトラウマは置いておいて。
今日は、そんな担当者の発表日である。
せっかくなので、学校の体育館に村人全員を集めて発表することになった。
村の大事だし、300名くらいしかいないので、体育館には全員入るのだ。
教室と同じく板張りの床にした体育館に、土魔法で作ったパイプ椅子っぽいものを並べていた。
壇上には担当者としてアサインされた者達が座る席が並べられている。
ちらほらと村人たちが集まってくる。
アンとヴァンダレイジジイ、ラッセルズ、野球馬鹿たち、ロビンジジイとマリーババア夫妻など。
全員が顔見知りだ。
ダークエルフさん達も全員やってきた。
わずか300名とは言え、一度に集まると、なかなか壮観である。
体育館の窓からは、桜の花びらが舞い込んでいた。
庭師の骸骨に頼んで、学校の周りにも桜を植えて貰ったのだ。
植えてすぐに満開の花を咲かせるあたり、あの骸骨の非凡さが伺える。
なんというか。
桜と体育館というと入学式を思い出す。
ここは異世界なのに、ノスタルジックな気分になって不思議だった。
「えー皆様。本日はお忙しい所をお集まり頂き……ってこの村に忙しい人なんていませんよね……」
司会進行を務めるエレインがそんな挨拶をして村人たちがドッとウケていた。
たぶん、狙ったんじゃなくて素で言ったんだろうけど。
堅苦しいエレインにしては、好調な滑り出しである。
「では、早速ですが、領主アサギリ子爵が考案された村の行政担当者を発表いたします」
そして、名前を呼び上げていくエレイン。
俺が苦労して考えたのは以下の通りだ。
総理大臣 エレイン
国土交通大臣 アサギリ・コウ
文部科学大臣 ルーナ(補佐エレイン)
農林水産大臣 ミレイ
経済産業大臣 ケイト
防衛大臣 キリア
戦技教導官兼治安維持担当 ジジイ
特別相談役 セレナ
法務大臣 エレイン
外務大臣 エレイン
厚生労働大臣 エレイン
その他、困ったときには エレイン
ふふふ。
どうよ。
この完璧な布陣。
なんかエレインの名前が出すぎな気がするが、仕方ない。
場内はエレインの発表を聞いてざわざわしだす。
名前を呼ばれた者達が、壇上に上ってくる。
「……あ、あの大臣って地方領主が任命していいものなのでしょうか?」
「わかってます。体外的には呼び名は別のものに変えます。……閣下が仕事をしてくださっただけで、私は満足でしたので、細かい事はどうでもいいかなって、ううっ」
不安そうなミレイにエレインがなぜかメガネの下にハンカチを当てながら答えていた。
まあ、完全に日本のパクリだけど、大切なのは気分である。
「ただ、閣下? やっぱりどう見ても、まるで閣下が私の部下みたいになってるのが気になるんですが?」
総理大臣がエレインで、俺が国交相な件だろうか。
だって、建築は俺が仕切りたいもん!
でも、総理大臣はどう考えてもエレインだろう。
なのでエレインの疑問は無視する。
「ふおおおおおおお! 龍神王様! わ、私にこんな重要な役目を下さるなんて……ババア感激です!」
キリアがそんな事を言いながら涙を流していた。
軍事関係はキリアに一任しようと思う。
ヒラだヒラだってうるさかったし。
ヒラババアの汚名返上である。
「おい、小僧。あの戦技教導官兼治安維持担当ジジイってのは誰の事じゃ?」
次にやってきたのはヴァンダレイジジイだった。
そんなの。
「お前に決まってんだろうが。ジジイっつんてんだから。老いぼれなのに悪いが、少し働いて貰うぞ?」
常に抜き身の剣を持ってフラフラしている件について、エレインがぷんぷん怒っていた。
なので、帯剣が許されそうな役職を与えてみた。
「ぐぬぬぬぬ! わしをジジイ呼ばわりとはちょこざいな……! ま、まあお主がそこまで言うのならやってやってもよいがのう。ふふふ」
怒りながらもまんざらでもなさそうなジジイ。
ツンデレジジイとか誰得だよ。
「あの領主様。私が役を引き受けるのは結構なんですが……」
営業スマイルを浮かべながらも、困ったような顔をしているのは、ケイトさんだった。
何か困っているなら、なんでも助けてあげたい。
「さすがに店との掛け持ちが難しくなるので、主人がやっている深夜営業をお許しいただいて、昼間だけの営業にして頂くわけには参りませんか? そうすれば、昼間は主人が店を見れますので」
ケイトさんはそんな事を言うのだが。
はて。
深夜営業?
確かにコンビニは深夜も営業すべきだけれども。
そんなのやっていたんだろうか。
大体、シュジンって誰だよ。
まあいいけど。
「いいよー」
なので即答でオーケーしておいた。
「軽っ!」
驚きながらもケイトさんは安心してくれたので、よかった。
村人達は、エレインの発表を聞いて、おおむね満足しているようだった。
ちなみに、壇上には担当者が書かれた大きな紙を張ってある。
「それでは、何か異議のある方はいらっしゃいますか?」
エレインがそう聞くと、ババっと手を上げるものが2名。
ソフィさんとこの筋肉と、なんか見覚えのある冴えない男だった。
なんだよ、雑魚どもかよ。
じゃあ、いいか。
「解散! みんな気をつけて帰れよー」
「「ええ!?」」
筋肉たちが驚いているが、当然のごとく無視をする。
「閣下! 民の訴えを無視するとは何事ですか!? ちゃんと聞いてあげてください!」
エレインに怒られてしまった。
だって絶対ロクな事言わないのに……。
「なんだよ、二人共? とりあえず、言ってみ?」
「コウの一番の子分なのに、俺の名前がないじゃないか!」
「そうですぞ! 私の名前もありません!」
二人共、組閣に呼ばれなかった事が不満らしい。
だってさ。
「……何ができんのお前ら?」
「ええ!?」
「私にはこの筋肉があります! 筋肉大臣とかはいかがですかな? はっはは!」
戸惑う雑魚と、なぜか筋肉を自慢しだす暑苦しい男。
筋肉大臣ってなんだよ。
その隣には、慌てながら筋肉を座らせようとするソフィさんの姿があった。
健気で泣かせる。
「異議あり! 筋肉大臣とは聞き捨てなりませんね!?」
そんな事を言いながら、メイド姿のフィリスが立ち上がる。
また面倒くさいのが……。
「ほほう、面白い。どっちが筋肉大臣に相応しいか、勝負しますか、フィリスさん? 腕相撲で!」
筋肉が腕の筋肉にめきいっと力を入れる。
暑苦しい。
「いいでしょう、その勝負受けて立ちますよ!!」
そしてフィリスも腕をまくりあげて、白くて細い腕をめきいっと――はできなくて、すべすべとした肌触りの良さそうな腕のままだった。
ぱっと見はどう見ても筋肉の勝ちなのだが。
「あの……いつの間にか筋肉大臣を作る流れになっているんですが……いいんですか? ちゃんと大臣手当とか発生するんですよ?」
エレインが不安そうにしていた。
まあ、面白そうだからやらせとけばいいさ。
手当はやらんが。
そんなわけで、体育館の中央の椅子がどかされ、筋肉VSフィリスのアームレスリングが行われることになった。
場内は意外と盛り上がっていて、どっちが勝つかの賭けも行われていた。
金もないくせに。
「それじゃあ、いくぞい? 両者、手を握るんじゃ」
なぜかレフリーはヴァンダレイジジイだった。
台の上に腕を乗せて、がっちりと手を握り合う筋肉とフィリス。
傍から見ると、痴漢を働いている筋肉達磨と被害者の図にしか見えなかった。
「ふぁいっ!」
ジジイの開始の合図に、腕に力を込める両者。
先行したのは意外にも、筋肉だった。
「ぬぐうああああああああ!」
妙な奇声を上げて、身体を思い切り倒している。
全体重をかけているらしい。
その暑苦しい筋肉は、気持ち悪いほどに盛り上がり、汗が吹き出している。
徐々に身体を倒していく筋肉。
倒しきったら筋肉の勝ちだ。
フィリス相手に意外と善戦する。
しかし、最後の一押しが足りない。
「がんばって、あなた!」
そんな時、心配そうに見守っていたソフィさんの声援が聞こえる。
ぴくんとなる筋肉。
最愛の妻の声援によって、筋肉は最後の力を振り絞る。
「ふんぬらああああああ!」
だから、何そのキモい奇声。
とはいえ、徐々に筋肉の身体は倒れていき――。
「だっしゃああああああ!」
――そして、完全に倒れきった。
やりやがったあいつ。
軍隊じゃないと勝てないと言われた上位吸血鬼のフィリスに勝つとか。
――めきめき! ぼきぼき!
そんな嫌な音が、体育館に響いたのは、そんな時だった。
音がしたのは筋肉の腕。
見れば、倒れたのは身体だけで、その腕は普通にフィリスの方に倒れていた。
腕は変な方向に曲がっている。
「いえ、開始してすぐに私が勝ったのに……この筋肉人間がやめないから……」
あのフィリスがたじたじと焦っていた。
それだけで筋肉は健闘したと言えるんじゃないかな。知らんけど。
「勝者! フィリーーース!」
ヴァンダレイジジイがフィリスの小さな手を高々と上げる。
「コウ様、コウ様! これで私が筋肉大臣ですからね?」
フィリスが嬉しそうにやってくる。
いや、いいけどさ。
筋肉大臣って何やるの? マジで。
まあいいか。
ギャグ枠が一個くらいあってもいいだろう。
見世物としてはいい対決だった。
腕を抑えた筋肉がタンカで運ばれていき、青い顔をしたソフィさんがついていったけど。
夫がバカだと苦労する。
早く俺の女になっちゃえばいいのに。
さて、そろそろ帰ろう。
隣りに座っていたルーナの手を取って立ち上がる。
「ちょ、ちょっと待てって!」
そんな声をかけてきたのは、雑魚臭が漂う一般人だった。
ええと。
なんつったかな、こいつ。
「備長炭じゃないか。なんか用か?」
「ピートだってば!!! それ誰だよ!?」
誰っていうか、備長炭は人間じゃないんだけど。
いちいち面倒くさい奴である。
「……なんだよ、ピート。これからルーナを抱くんだから早くしろよ」
「えへへ。コウったら」
ルーナが嬉しそうに肩に頭を乗せてくる。
可愛い。
「俺の役がまだ決まってないんだけど?」
ピートの役?
そんなもんねえから。
「……うーん、ピートにも何か担当をつけてあげればいいじゃないか。いきもの係とか」
おお。ルーナにしては冴えている。
「よし、それで行こう」
「やだよ!! 何育てるんだよ!?」
わがままな雑魚である。
「……はあ。まあピート君もまだ若いですし、これから重臣に育ってくれる事を願って、ヴァンダレイさんが兼任されている治安維持担当を任せてみてはいかがでしょう? 風紀は乱れているものの、この村は妙に治安がいいですから。ピート君には丁度よいでしょう」
「エレインさん……」
エレインの提案にピートが涙ぐんでいる。
「儂もそれでかまわんぞい。ピートの補佐くらいはしてやるわい」
ジジイもそう言っているのだが。
治安維持担当って警察みたいなことをするやつだ。
ピートが警察って。
ピートに平和を守られる村。
そんな村に俺は住みたくない。
「頼むよ、コウ! 俺一生懸命、がんばるから!」
まあ、エレインの言う通りピートに勉強させるのも良いかもしれないけど。
「本当に頑張れるか?」
「おう!」
「結構きついと思うぞ? あとで文句は言うなよ?」
「もちろんさ!」
「じゃあ、レティーお嬢様俺が寝取っても文句言うなよ?」
「ええええ!?」
よし、これにて一件落着。
「ちょっと待てよ! なんでレティーお嬢様が出てくるんだよ!?」
真っ赤になったピートが慌ててしがみついてくる。
こいつが早くモノにしないから悪いのに。
「まあ、冗談だよ。冗談。半分は」
「残り半分は!?」
うるせえモブである。
「……そういえば、閣下。ずっと疑問に思っていたことがあるんですが、今お聞きしてもよろしいでしょうか?」
突然、エレインがそんな声をかけてくる。
はて、なんだろう。
「この村ってなんていうお名前なんでしょうか?」
エレインの疑問に、その場が凍りついた。
「え?」
「「「「「「「「「え?」」」」」」」」」
俺が聞き返すと、その場にいた全員が同じく聞き返す。
「いえ、え? ではなくて。なんで誰も知らないような顔をされてるんですか?」
「ルーナ知ってる?」
「わ、私が知ってるわけないじゃないか!? み、ミレイなら……」
「いえいえ、私より先に住んでらしたお二人が知らない事を私が知っているわけないですよね?」
そんなわけで誰も知らなかった。
「もしかしてまだ名前がないんですか? 300名もいて? なんで誰もその事を疑問に思わなかったんですか!?」
エレインがドン引きしていた。
「……んだども、村の名前なんてそんなに重要じゃないべ?」
「んだんだ。どうでもいいべ」
「ヤキュやるのに忙しかったし」
村人たちが口々に言い訳を始める。
「どうしてこの村はこういう人達ばかりなんですか!? 村の名前は重要です。だいたいあなた達、他所で住所を聞かれたらなんて答えるんですか!?」
エレインの言うことももっともだった。
このままでは住所不定無職になってしまう。
無職は変える気はないが。
まあ、丁度みんな集まっているし、今決めればいいじゃん。
ということで、みんなのアイディアを募集する。
まずはルーナ。
「ええ!? 私から!? え、ええと……コウとルーナだから……コルコルぽんぽん村?」
お前の脳みそ豆腐かよ!
大体ぽんぽんはどっから来たんだよ。
次にセレナ。
「ブラッドサクリファイス村とかがいいんじゃないかしら」
お前が言うと洒落にならねえんだよ!
次にミレイ。
「そうですね。神々しい名前がいいですね。……ムーンエンジェル村とかは?」
ラブホか!
「わたしは、ばなな村がいいです!」
バカか!
勝手に喋りだしたメグの意見も却下する。
「遺伝子村!」
それ関係あんのお前らラッセルズだけだから!
「やっぱり、ここは涙と女と晩酌村とかかのう」
昭和か!
「うーん、姉と弟のイケナイ関係村とかいいんじゃないかってお姉ちゃんは思います」
エロビか!
「痰村なんかいいと思うがのう」
汚物か!
ってなんで俺のツッコミ練習道場みたいになってんだよ!!
あーイライラする。
「……ちなみに閣下はどんな名前がいいんですか?」
「ええ!?」
突然エレインがキラーパスを放ってきた。
めちゃくちゃ汗が出てくる。
そんないきなり面白い事を言えるわけ無いじゃん。
「び、美人ばかりだから、いつも俺はムラ村! なんちゃって……」
そう言い放ってみたら、みんなが俺から視線を反らす。
こいつら。
「だ、大丈夫だ! 私はいつもお前と一緒だからな!」
ルーナが優しく抱きしめてくれた。
ちょっと泣いちゃいそうだった。
「……はあ。まあここはセラン荒野ですから、通例通りならばセランディアとかでよろしいんじゃないでしょうか?」
ため息をついたエレインが凄くまともな名前を言っている。
そんなんあるなら先に言えよ。
他の奴らも同じことを思ったようで、パチパチと拍手をしていた。
そんなわけで、この日、我が村の名前と政治担当が決まった。
なんか結構ちゃんとしてきたよね。
村名:セランディア村
総理大臣 エレイン
国土交通大臣 アサギリ・コウ
文部科学大臣 ルーナ(補佐エレイン)
農林水産大臣 ミレイ
経済産業大臣 ケイト
防衛大臣 キリア
戦技教導官 ヴァンダレイ
おまわりさん ピート
特別相談役 セレナ
法務大臣 エレイン
外務大臣 エレイン
厚生労働大臣 エレイン
その他、困ったときには エレイン
筋肉大臣 フィリス
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