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第二章 吸血鬼編
第34話 退魔師
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今日も俺は朝から、丸太作りに勤しむ。
倒木に《下級丸太生成》をかけて片っ端から丸太にしていくのだ。
ルーナとフィリスも一緒だ。
ただ、先程から全然作業が進まない。
なぜならルーナとフィリスが数分に一度のペースでケンカを始めるからだ。
「ちょっと! ルーナお嬢様、さっきからコウ様に触りすぎですよ? なんなんですか? 痴女なんですか?」
「はあ!? 私がこいつと何しようがお前には関係ないだろう? だいたい、飽きちゃったんだからしょうがないじゃないか」
「なんで飽きたらコウ様にベタベタするんですか! その辺で遊んでればいいじゃないですか! 蝶々でも追いかけまわして」
「あっ! 今私の事バカにしたな? 私が蝶々追いかけ回して楽しめるように見えるのか?」
「見えます。だってルーナお嬢様、言っちゃ悪いと思って言いませんでしたけど、ちょっとバカっぽいですよ?」
「あっ! バカって言った! ひどいぞ! これでも私は学生の頃は一番頭良かったんだ。主席卒業なんだぞ!」
「ルーナお嬢様が主席って……、いくらお金積んだんですか?」
「ああっ! お前までそんな事を言うのか、うわーん」
他の人にも言われていたらしいルーナが泣きながら抱きついてくる。
というか、こいつ今日フィリスに泣かされるの何回目だろう。
最初ルーナとフィリスがケンカを始めた時、フィリスは問答無用でルーナを殴ろうとしたので、暴力はいけないと窘めておいた。
そうしたら、フィリスはしょんぼりしながらも、精神的な死を与えればよいのですね、とか怖いことを言い始めた。
そして、現在の醜い罵り合いに至るのだ。
「……だから、なんでそこでコウ様に抱きつくんですか!」
「お前が私をいじめるからだ」
「じゃあ、なんで足まで絡めるんですか! そういう所が痴女っぽいんですよ!」
確かにルーナの白い太ももが俺の足に絡みついていた。
俺としては素敵な感触なので、なんの文句もないのだが。
ただ本当にもうやめて欲しい。
胃がキリキリする。
ギャーギャーした女の罵り合いを聞いているだけで、頭がクラクラする。
人間嫌いの俺にとって、この空間は毒にしかならない。
「……ちょっと向こうで休憩してくるから、あとは2人でごゆっくり」
俺は纏わりつくルーナをひっぺがすと、そそくさと逃げることにした。
ルーナとフィリスはケンカに夢中で、俺が立ち去っても気にしなかった。
和を以て貴しとなせ。
聖徳太子は本当に良いことを言うと思いながら、俺はとぼとぼと自宅まで戻ってきた。
ほとぼりが冷めるまで、この辺で休憩してよう。
そんな事を思っていると、急に聞き慣れぬ声がした。
「……あのもし、そこのお方」
振り向くと、そこには教会の神父さんのような格好をしたおじさんが2人と、シスターの格好をした女性がいた。
俺は心臓が凍りつくのが分かった。
「少々、伺いたい事があるのですが」
シスターさんがこちらに向かって何かを言っている。
俺はおどおどしながら、振り返ってみた。
しかし、そこには誰もいない。
全身から汗が滝のように溢れてくる。
これはもしかして、俺に話しかけているのだろうか。
「あなたに聞いているのです。他に誰もいないじゃないですか」
話しかけられているのは俺だった。
以前、街なかで見知らぬ女性に話しかけられたと思ったら、俺の後ろにいる人に話しかけていたと知った時のあの感覚。
恥ずかし恥ずかしと地面をのたうち回った後、思わず駅のホームから飛び降りたくなるあの感覚が恐くて、俺は基本的に知らない人に話しかけられても、まずは勘違いを疑う癖がついていた。
しかし、今回は残念な事に話しかけられたのは俺のようだ。
だが、これはまずい。
見た感じ、シスターさんも神父さんたちも人間ぽい。
今までのように明らかに人間離れしていたルーナやセレナ達とは違う。
こいつらは、本物の人間ぽいのだ。
俺は一瞬で、対人恐怖症をMAXで発動させた。
「……る、る、るー」
別にキタキツネを呼んでいるわけではない。
「ルーナ! ルーナさん! ルーニャああああああ!」
俺は全力でルーナを呼んだ。
俺がこの世界で頼れるのはルーナしかいない。
「……どうしたんだ? 寂しくなっちゃったのか? だから、私から離れるなと言っているだろう」
呑気にやってきたルーナに飛びつく。
「わわっ! もう仕方のないやつだな」
俺はルーナの背後に隠れるようにして、神父さんたちを指差す。
俺の指は情けなくも震えていた。
「うん? なんだ客か」
ルーナは少しも動揺せずに、神父さんたちに目を向けた。
やだ、すごい頼もしい。
惚れてしまいそうだ。
「おお、これはエルフ様。こんな所でお目にかかる事ができようとは」
神父さん達がルーナに向かって、恭しく頭を下げている。
ルーナが美人だからだろうか。
「教会の人間か。お前たちこそこんな所になんの用だ?」
ルーナがそう聞くと、シスターさんが一歩前に出て口を開く。
「申し遅れましたが、我々は教会の巡礼者です。お二人はここで暮らしてらっしゃるご夫婦ですか?」
「ご夫婦……。うん。そうだ。私たちは夫婦だ」
ルーナがさらっと嘘をつくので、俺はルーナのくびれをバシッと叩く。
「痛っ! 何をするんだ」
「うふふ、仲がよろしいのですね。人間とエルフの夫婦なんて珍しいですが」
シスターさんは朗らかに笑った。
シスターさんが代表して話している所を見ると、この人がリーダーっぽい。
普通は神父さんの方が偉そうだけど。
シスターさんは、なかなか整った顔立ちをしていた。
白い肌に茶色い瞳をしている。
髪は修道服のような頭巾に覆われていて見えないが。
体つきも修道服に覆われていてよく分からないが、背は結構低い。
フィリスと同じくらいだろうか。
「……あのご主人は、先程からどうしたのでしょうか? 何か私達が気に触るような事をしてしまったのでしょうか?」
シスターさんが俺に注意を向けたので、俺はルーナの背中に顔を押し付けて隠れた。
「……ああ、気にしないでくれ。ちょっと人見知りなんだ」
「そうですか。……それで、奥様? 最近この辺りで変わったことはありませんでしたか?」
「奥様……」
ルーナは感動したようにシスターさんのセリフを反芻している。
ちょっとツッコミを入れたくなったが、ルーナの背に隠れている今の俺には黙っていることしか出来なかった。
「奥様? 聞いていらっしゃいますか?」
「うん? ああ、変わったことだったか? 特にないぞ」
「……そうでございますか。この辺りに強いアンデッドの気配を感じたのですが」
その言葉に、俺とルーナは身体を強張らせた。
脳裏にセレナの顔が浮かぶ。
やっぱりあいつってアンデッド科の生き物なんだろうか。
俺はルーナと短く目を合わせると、小さく首を振った。
ルーナも小さく頷く。
「アンデッド? それは怖いな。だが、私たちは見たことはないぞ。気のせいじゃないか?」
ルーナが胡散臭くもシラを切る。
「……コウ様、用事がお有りでしたら、ルーナお嬢様ではなく私を呼んで頂きたいのですが」
その時、ちょっと怒った顔をしたフィリスがやってくる。
物凄く悪いタイミングだ。
フィリスは真っ青な顔に、赤い目をしていて、場違いなメイド服も合わさって、なんというか物凄くソレっぽい。
「……吸血鬼(ヴァンパイア)!」
突然、シスターさんたちが距離を取る。
シスターさんは修道服の裾をめくると、太ももに挿してあった銀色の片手剣を抜く。
神父さんたちもどこからかクロスボウを取り出して構えていた。
場に緊張が走る。
フィリスはちらりとシスターさんたちを一瞥すると、吐き捨てるように言った。
「……教会の退魔師(エクソシスト)共ですか」
フィリスは構えもせずに、背筋を伸ばして立っているだけだった。
「フィリス!」
俺は嫌な予感がしたので、ルーナの背中から飛び出して、フィリスを守るようにシスターさん達の前に立ちふさがる。
「お、おい!」
ルーナが短い制止の声をあげる。
「……ご主人。どいて頂けますか? ソレは凶悪な吸血鬼(ヴァンパイア)ですよ? 我ら人間の敵です。見た目に騙されてはいけません。ソレは人間の生き血をすするのです」
銀の剣を構えながら、シスターさんが俺を鋭く睨む。
確かに、吸血鬼は人間の血をすする。
というか、現に俺は血を吸われている。
でも。
「それがどうした」
セレナもフィリスも美人なのだ。
血を吸うくらい大したことはない。
現に俺はそんな被害を受けていない。
強いていうならば、ルーナが夜大変な事になるだけだ。
「……コウ様。素敵です。たくましい背中。はあはあ」
フィリスが怯えたように、荒い息をついている。
「……おい」
ルーナが呆れたような声を上げる。
空気を読めと言ってやりたい。
「ご主人。哀れにも吸血鬼の色香に惑わされたようですね。こんなにお綺麗な奥様がいらっしゃるのに……」
「もっと言ってやってくれ」
ルーナはいつの間にか、シスターさんの側に立っていた。
後でお仕置きをしなければ。
「まあ、いいでしょう。その吸血鬼を滅ぼした後で、みっちりお説教して差し上げます」
シスターさんから、魔力の流れを感じる。
俺は瞬間的に、目の前に土壁を生成する。
もうルーナの時のような失敗はしない。
「無駄です。聖門(ディバインズゲート)」
突然、足元から白い光が立ち上る。
やばい、俺がよく使う火柱のように、ゾーン系の魔法か。
俺は咄嗟にフィリスを庇おうとする。
しかし、俺達を包み込むように、白い光の柱が出現して――。
「あっ……」
短い悲鳴を残して、フィリスは光りに包まれていく。
「フィリーーース!」
俺は思わずフィリスを抱きしめた。
白い光は、俺達を消し去るように地面から立ち上り、そして消えた。
辺りには、光の残滓が僅かに宙を舞い、俺は膝から崩れ落ちるフィリスを抱きとめるように、ゆっくりと地面に座り込む。
「……あなたが魔法を使ったのには驚きましたが、聖門(ディバインズゲート)は魔を滅する究極の魔法。もうその吸血鬼は長くありません」
シスターさんが何かを言っているがどうでもいい。
俺の腕の中で、フィリスはわずかに目を開いた。
その身体は力尽きる寸前のように、小刻みに震えている。
「……コウ様。あなたの、ような方に、出会えて、よかった」
フィリスは弱々しくも、そんな泣かせる事を言った。
「フィリス。そんな事を言わないでください」
俺は涙ぐみながらそんな事を言うと、フィリスは弱々しく手を上げて、俺の頬を撫でた。
俺は思わずそんなフィリスの手を掴む。
「……コウ様、最期に浅ましい吸血鬼の願いを聞いて頂けますか? キスしてください」
「はあ!?」
ルーナが場違いな声を上げる。
本気で空気を読んで欲しい。
フィリスの最期の願いなんだ。聞いてやらないでどうする。
「そんな事でいいのなら」
俺は今にも死に絶えそうなフィリスの唇に口づけをする。
フィリスの唇は、冷たくも柔らかかった。
「ああっ、コウ様! むちゅ、うむぅ、ちゅば」
軽く触れるだけのキスをするつもりが、思い切りフィリスの舌が入り込んでくる。
突然の出来事に脳がついてこなかったが、反射的に舌を絡めてしまった。
「うわー! お前たち、何をやっているんだ!」
ルーナが割り込んできて、俺とフィリスを引き離そうとするが、フィリスの力は凄まじく全く離れようとしない。
「うむぅ、ちゅばっちゅば、ああ、コウ様、大好きです」
「なっ! このメイド、どさくさに紛れて何言ってるんだ!? ちょっと、もう本当にやめてよー! こいつは私のなんだからー!」
ルーナがもはや泣き出す。
俺もさすがにおかしいと思い始めたが、フィリスがガッチリと背中に手を回していて離れられない。
結局、そのまま数分間、フィリスに口内をいいようにされ続けた。
「……ああ、美味しゅうございました」
さっきまで死にかけていたはずのフィリスは、いつものように背筋をピンと伸ばして立っていた。
心なしか肌艶がよくなっているようにすら見える。
「ひっく……ひどい……あんまりだ……私の目の前で……他の女と……あんなに」
俺は仰向けに倒れていて、馬乗りになったルーナが泣きべそをかきながら、俺の唇をハンカチで拭き続けている。
そろそろ摩擦熱で火傷しそうなので、やめて欲しい。
なんというか、どうやら俺はフィリスに一杯食わされたようだ。
まんまと騙された。
演技力高すぎだろ。
「……あのう、ちょっと何が起きているのかわからないんですけど」
不意に掛けられた声に振り向けば、途方に暮れたようにポカンと立ち尽くしているシスターさん達がいた。
ああ、そういえばいたな。
すっかり忘れていた。
「まだいたのですか? この上位吸血鬼(デイライトウォーカー)たる私が人間の神聖魔法如きでやられるはずがないでしょう?」
フィリスが底冷えのする声で言う。
「ひいっ! 上位吸血鬼(デイライトウォーカー)!」
「気づいていなかったのですか? 吸血鬼が昼間に外を出歩いている時点で気づきなさい」
突然、ガタガタと怯え始めるシスターさん達。
俺はハンカチで拭き続けるルーナの手を止めて起き上がる。
とりあえず泣きじゃくるルーナを抱きしめる。
「そんなにすごいのか? 上位吸血鬼(デイライトウォーカー)って」
「ぐす、ひっく、人間が倒そうとしたら、軍隊でもつれてこないと無理だ」
なにそれかっこいい。
俺を倒したいのなら、軍隊でも連れてくるんだな!
男なら一度は言ってみたいセリフの一つだ。
というか、ルーナが全くフィリスの心配をしていなかった理由がわかった。
初めからシスターさん達に倒されるとは思っていないのだろう。
「……すごいな。うん? フィリスで軍隊ってことは、セレナは?」
不意にそんな疑問が湧いた。
フィリスの主人たるセレナはもっと強いんじゃないのか。
「…………全人類が束になってかかっていっても勝てないと思う。あいつは真祖だから」
「…………」
俺、そんなのと戦っていたのか。
ちょっと背筋が冷たくなった。
「さて、コウ様。この教会の犬どもをどういたしましょうか?」
フィリスはいつもと変わらない感じで俺に聞いてくる。
亜麻色の髪に陽光が反射して綺麗だった。
なんだろう。
ちょっとドキドキする。
「がぶっ!」
そんな事を考えていたら、突然ルーナに肩を噛まれた。
倒木に《下級丸太生成》をかけて片っ端から丸太にしていくのだ。
ルーナとフィリスも一緒だ。
ただ、先程から全然作業が進まない。
なぜならルーナとフィリスが数分に一度のペースでケンカを始めるからだ。
「ちょっと! ルーナお嬢様、さっきからコウ様に触りすぎですよ? なんなんですか? 痴女なんですか?」
「はあ!? 私がこいつと何しようがお前には関係ないだろう? だいたい、飽きちゃったんだからしょうがないじゃないか」
「なんで飽きたらコウ様にベタベタするんですか! その辺で遊んでればいいじゃないですか! 蝶々でも追いかけまわして」
「あっ! 今私の事バカにしたな? 私が蝶々追いかけ回して楽しめるように見えるのか?」
「見えます。だってルーナお嬢様、言っちゃ悪いと思って言いませんでしたけど、ちょっとバカっぽいですよ?」
「あっ! バカって言った! ひどいぞ! これでも私は学生の頃は一番頭良かったんだ。主席卒業なんだぞ!」
「ルーナお嬢様が主席って……、いくらお金積んだんですか?」
「ああっ! お前までそんな事を言うのか、うわーん」
他の人にも言われていたらしいルーナが泣きながら抱きついてくる。
というか、こいつ今日フィリスに泣かされるの何回目だろう。
最初ルーナとフィリスがケンカを始めた時、フィリスは問答無用でルーナを殴ろうとしたので、暴力はいけないと窘めておいた。
そうしたら、フィリスはしょんぼりしながらも、精神的な死を与えればよいのですね、とか怖いことを言い始めた。
そして、現在の醜い罵り合いに至るのだ。
「……だから、なんでそこでコウ様に抱きつくんですか!」
「お前が私をいじめるからだ」
「じゃあ、なんで足まで絡めるんですか! そういう所が痴女っぽいんですよ!」
確かにルーナの白い太ももが俺の足に絡みついていた。
俺としては素敵な感触なので、なんの文句もないのだが。
ただ本当にもうやめて欲しい。
胃がキリキリする。
ギャーギャーした女の罵り合いを聞いているだけで、頭がクラクラする。
人間嫌いの俺にとって、この空間は毒にしかならない。
「……ちょっと向こうで休憩してくるから、あとは2人でごゆっくり」
俺は纏わりつくルーナをひっぺがすと、そそくさと逃げることにした。
ルーナとフィリスはケンカに夢中で、俺が立ち去っても気にしなかった。
和を以て貴しとなせ。
聖徳太子は本当に良いことを言うと思いながら、俺はとぼとぼと自宅まで戻ってきた。
ほとぼりが冷めるまで、この辺で休憩してよう。
そんな事を思っていると、急に聞き慣れぬ声がした。
「……あのもし、そこのお方」
振り向くと、そこには教会の神父さんのような格好をしたおじさんが2人と、シスターの格好をした女性がいた。
俺は心臓が凍りつくのが分かった。
「少々、伺いたい事があるのですが」
シスターさんがこちらに向かって何かを言っている。
俺はおどおどしながら、振り返ってみた。
しかし、そこには誰もいない。
全身から汗が滝のように溢れてくる。
これはもしかして、俺に話しかけているのだろうか。
「あなたに聞いているのです。他に誰もいないじゃないですか」
話しかけられているのは俺だった。
以前、街なかで見知らぬ女性に話しかけられたと思ったら、俺の後ろにいる人に話しかけていたと知った時のあの感覚。
恥ずかし恥ずかしと地面をのたうち回った後、思わず駅のホームから飛び降りたくなるあの感覚が恐くて、俺は基本的に知らない人に話しかけられても、まずは勘違いを疑う癖がついていた。
しかし、今回は残念な事に話しかけられたのは俺のようだ。
だが、これはまずい。
見た感じ、シスターさんも神父さんたちも人間ぽい。
今までのように明らかに人間離れしていたルーナやセレナ達とは違う。
こいつらは、本物の人間ぽいのだ。
俺は一瞬で、対人恐怖症をMAXで発動させた。
「……る、る、るー」
別にキタキツネを呼んでいるわけではない。
「ルーナ! ルーナさん! ルーニャああああああ!」
俺は全力でルーナを呼んだ。
俺がこの世界で頼れるのはルーナしかいない。
「……どうしたんだ? 寂しくなっちゃったのか? だから、私から離れるなと言っているだろう」
呑気にやってきたルーナに飛びつく。
「わわっ! もう仕方のないやつだな」
俺はルーナの背後に隠れるようにして、神父さんたちを指差す。
俺の指は情けなくも震えていた。
「うん? なんだ客か」
ルーナは少しも動揺せずに、神父さんたちに目を向けた。
やだ、すごい頼もしい。
惚れてしまいそうだ。
「おお、これはエルフ様。こんな所でお目にかかる事ができようとは」
神父さん達がルーナに向かって、恭しく頭を下げている。
ルーナが美人だからだろうか。
「教会の人間か。お前たちこそこんな所になんの用だ?」
ルーナがそう聞くと、シスターさんが一歩前に出て口を開く。
「申し遅れましたが、我々は教会の巡礼者です。お二人はここで暮らしてらっしゃるご夫婦ですか?」
「ご夫婦……。うん。そうだ。私たちは夫婦だ」
ルーナがさらっと嘘をつくので、俺はルーナのくびれをバシッと叩く。
「痛っ! 何をするんだ」
「うふふ、仲がよろしいのですね。人間とエルフの夫婦なんて珍しいですが」
シスターさんは朗らかに笑った。
シスターさんが代表して話している所を見ると、この人がリーダーっぽい。
普通は神父さんの方が偉そうだけど。
シスターさんは、なかなか整った顔立ちをしていた。
白い肌に茶色い瞳をしている。
髪は修道服のような頭巾に覆われていて見えないが。
体つきも修道服に覆われていてよく分からないが、背は結構低い。
フィリスと同じくらいだろうか。
「……あのご主人は、先程からどうしたのでしょうか? 何か私達が気に触るような事をしてしまったのでしょうか?」
シスターさんが俺に注意を向けたので、俺はルーナの背中に顔を押し付けて隠れた。
「……ああ、気にしないでくれ。ちょっと人見知りなんだ」
「そうですか。……それで、奥様? 最近この辺りで変わったことはありませんでしたか?」
「奥様……」
ルーナは感動したようにシスターさんのセリフを反芻している。
ちょっとツッコミを入れたくなったが、ルーナの背に隠れている今の俺には黙っていることしか出来なかった。
「奥様? 聞いていらっしゃいますか?」
「うん? ああ、変わったことだったか? 特にないぞ」
「……そうでございますか。この辺りに強いアンデッドの気配を感じたのですが」
その言葉に、俺とルーナは身体を強張らせた。
脳裏にセレナの顔が浮かぶ。
やっぱりあいつってアンデッド科の生き物なんだろうか。
俺はルーナと短く目を合わせると、小さく首を振った。
ルーナも小さく頷く。
「アンデッド? それは怖いな。だが、私たちは見たことはないぞ。気のせいじゃないか?」
ルーナが胡散臭くもシラを切る。
「……コウ様、用事がお有りでしたら、ルーナお嬢様ではなく私を呼んで頂きたいのですが」
その時、ちょっと怒った顔をしたフィリスがやってくる。
物凄く悪いタイミングだ。
フィリスは真っ青な顔に、赤い目をしていて、場違いなメイド服も合わさって、なんというか物凄くソレっぽい。
「……吸血鬼(ヴァンパイア)!」
突然、シスターさんたちが距離を取る。
シスターさんは修道服の裾をめくると、太ももに挿してあった銀色の片手剣を抜く。
神父さんたちもどこからかクロスボウを取り出して構えていた。
場に緊張が走る。
フィリスはちらりとシスターさんたちを一瞥すると、吐き捨てるように言った。
「……教会の退魔師(エクソシスト)共ですか」
フィリスは構えもせずに、背筋を伸ばして立っているだけだった。
「フィリス!」
俺は嫌な予感がしたので、ルーナの背中から飛び出して、フィリスを守るようにシスターさん達の前に立ちふさがる。
「お、おい!」
ルーナが短い制止の声をあげる。
「……ご主人。どいて頂けますか? ソレは凶悪な吸血鬼(ヴァンパイア)ですよ? 我ら人間の敵です。見た目に騙されてはいけません。ソレは人間の生き血をすするのです」
銀の剣を構えながら、シスターさんが俺を鋭く睨む。
確かに、吸血鬼は人間の血をすする。
というか、現に俺は血を吸われている。
でも。
「それがどうした」
セレナもフィリスも美人なのだ。
血を吸うくらい大したことはない。
現に俺はそんな被害を受けていない。
強いていうならば、ルーナが夜大変な事になるだけだ。
「……コウ様。素敵です。たくましい背中。はあはあ」
フィリスが怯えたように、荒い息をついている。
「……おい」
ルーナが呆れたような声を上げる。
空気を読めと言ってやりたい。
「ご主人。哀れにも吸血鬼の色香に惑わされたようですね。こんなにお綺麗な奥様がいらっしゃるのに……」
「もっと言ってやってくれ」
ルーナはいつの間にか、シスターさんの側に立っていた。
後でお仕置きをしなければ。
「まあ、いいでしょう。その吸血鬼を滅ぼした後で、みっちりお説教して差し上げます」
シスターさんから、魔力の流れを感じる。
俺は瞬間的に、目の前に土壁を生成する。
もうルーナの時のような失敗はしない。
「無駄です。聖門(ディバインズゲート)」
突然、足元から白い光が立ち上る。
やばい、俺がよく使う火柱のように、ゾーン系の魔法か。
俺は咄嗟にフィリスを庇おうとする。
しかし、俺達を包み込むように、白い光の柱が出現して――。
「あっ……」
短い悲鳴を残して、フィリスは光りに包まれていく。
「フィリーーース!」
俺は思わずフィリスを抱きしめた。
白い光は、俺達を消し去るように地面から立ち上り、そして消えた。
辺りには、光の残滓が僅かに宙を舞い、俺は膝から崩れ落ちるフィリスを抱きとめるように、ゆっくりと地面に座り込む。
「……あなたが魔法を使ったのには驚きましたが、聖門(ディバインズゲート)は魔を滅する究極の魔法。もうその吸血鬼は長くありません」
シスターさんが何かを言っているがどうでもいい。
俺の腕の中で、フィリスはわずかに目を開いた。
その身体は力尽きる寸前のように、小刻みに震えている。
「……コウ様。あなたの、ような方に、出会えて、よかった」
フィリスは弱々しくも、そんな泣かせる事を言った。
「フィリス。そんな事を言わないでください」
俺は涙ぐみながらそんな事を言うと、フィリスは弱々しく手を上げて、俺の頬を撫でた。
俺は思わずそんなフィリスの手を掴む。
「……コウ様、最期に浅ましい吸血鬼の願いを聞いて頂けますか? キスしてください」
「はあ!?」
ルーナが場違いな声を上げる。
本気で空気を読んで欲しい。
フィリスの最期の願いなんだ。聞いてやらないでどうする。
「そんな事でいいのなら」
俺は今にも死に絶えそうなフィリスの唇に口づけをする。
フィリスの唇は、冷たくも柔らかかった。
「ああっ、コウ様! むちゅ、うむぅ、ちゅば」
軽く触れるだけのキスをするつもりが、思い切りフィリスの舌が入り込んでくる。
突然の出来事に脳がついてこなかったが、反射的に舌を絡めてしまった。
「うわー! お前たち、何をやっているんだ!」
ルーナが割り込んできて、俺とフィリスを引き離そうとするが、フィリスの力は凄まじく全く離れようとしない。
「うむぅ、ちゅばっちゅば、ああ、コウ様、大好きです」
「なっ! このメイド、どさくさに紛れて何言ってるんだ!? ちょっと、もう本当にやめてよー! こいつは私のなんだからー!」
ルーナがもはや泣き出す。
俺もさすがにおかしいと思い始めたが、フィリスがガッチリと背中に手を回していて離れられない。
結局、そのまま数分間、フィリスに口内をいいようにされ続けた。
「……ああ、美味しゅうございました」
さっきまで死にかけていたはずのフィリスは、いつものように背筋をピンと伸ばして立っていた。
心なしか肌艶がよくなっているようにすら見える。
「ひっく……ひどい……あんまりだ……私の目の前で……他の女と……あんなに」
俺は仰向けに倒れていて、馬乗りになったルーナが泣きべそをかきながら、俺の唇をハンカチで拭き続けている。
そろそろ摩擦熱で火傷しそうなので、やめて欲しい。
なんというか、どうやら俺はフィリスに一杯食わされたようだ。
まんまと騙された。
演技力高すぎだろ。
「……あのう、ちょっと何が起きているのかわからないんですけど」
不意に掛けられた声に振り向けば、途方に暮れたようにポカンと立ち尽くしているシスターさん達がいた。
ああ、そういえばいたな。
すっかり忘れていた。
「まだいたのですか? この上位吸血鬼(デイライトウォーカー)たる私が人間の神聖魔法如きでやられるはずがないでしょう?」
フィリスが底冷えのする声で言う。
「ひいっ! 上位吸血鬼(デイライトウォーカー)!」
「気づいていなかったのですか? 吸血鬼が昼間に外を出歩いている時点で気づきなさい」
突然、ガタガタと怯え始めるシスターさん達。
俺はハンカチで拭き続けるルーナの手を止めて起き上がる。
とりあえず泣きじゃくるルーナを抱きしめる。
「そんなにすごいのか? 上位吸血鬼(デイライトウォーカー)って」
「ぐす、ひっく、人間が倒そうとしたら、軍隊でもつれてこないと無理だ」
なにそれかっこいい。
俺を倒したいのなら、軍隊でも連れてくるんだな!
男なら一度は言ってみたいセリフの一つだ。
というか、ルーナが全くフィリスの心配をしていなかった理由がわかった。
初めからシスターさん達に倒されるとは思っていないのだろう。
「……すごいな。うん? フィリスで軍隊ってことは、セレナは?」
不意にそんな疑問が湧いた。
フィリスの主人たるセレナはもっと強いんじゃないのか。
「…………全人類が束になってかかっていっても勝てないと思う。あいつは真祖だから」
「…………」
俺、そんなのと戦っていたのか。
ちょっと背筋が冷たくなった。
「さて、コウ様。この教会の犬どもをどういたしましょうか?」
フィリスはいつもと変わらない感じで俺に聞いてくる。
亜麻色の髪に陽光が反射して綺麗だった。
なんだろう。
ちょっとドキドキする。
「がぶっ!」
そんな事を考えていたら、突然ルーナに肩を噛まれた。
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欲望に取りつかれた権力者が企んだ「スキル強奪」のための勇者召喚。
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彼に与えられたのは、派手な攻撃魔法ではない。
【鑑定】【いんたーねっと?】【異世界売買】【テイマー】…etc.
その一つ一つが、世界の理すら書き換えかねない、規格外の「便利スキル」だった。
欲望者から逃げ切るか、それとも、サラリーマンとして培った「知識」と、チート級のスキルを武器に、反撃の狼煙を上げるか。
気のいいおっさんの、優しくて、ずる賢い、まったり異世界サバイバルが、今、始まる!
【書誌情報】
タイトル: 『45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる』
著者: よっしぃ
イラスト: 市丸きすけ 先生
出版社: アルファポリス
ご購入はこちらから:
Amazon: https://www.amazon.co.jp/dp/4434364235/
楽天ブックス: https://books.rakuten.co.jp/rb/18361791/
【作者より、感謝を込めて】
この日を迎えられたのは、長年にわたり、Webで私の拙い物語を応援し続けてくださった、読者の皆様のおかげです。
そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
本当に、ありがとうございます。
【これまでの主な実績】
アルファポリス ファンタジー部門 1位獲得
小説家になろう 異世界転移/転移ジャンル(日間) 5位獲得
アルファポリス 第16回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞
第6回カクヨムWeb小説コンテスト 中間選考通過
復活の大カクヨムチャレンジカップ 9位入賞
ファミ通文庫大賞 一次選考通過
初期スキルが便利すぎて異世界生活が楽しすぎる!
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神によって人生を狂わされた主人公は、異世界で便利なスキルを使って生きて行くそんな物語。
書籍8巻11月24日発売します。
漫画版2巻まで発売中。
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Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――
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◆ ◆ ◆
今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。
あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。
不定期更新、更新遅進です。
話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。
※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。
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