悪役令嬢の生産ライフ

星宮歌

文字の大きさ
376 / 412
第三章 少女期 女神編

第三百七十五話 上書き(イルト視点)

しおりを挟む
 ユミリアが奪われて、気色の悪いことを言われ、嫌がっている様子を見て、僕の中の何かがブチッと切れた。
 後から思えば、イリアスの記憶があるからこそ、この神力に満ちた神界で、神力を操れる存在へと進化できたのだろう。それとともに、僕の動きを阻害しようとする呪いも、膨大な神力の力業で引きちぎり、投げ捨てる。その過程で、ついでとばかりに、変態の両腕をもいだのは、もちろん、これ以上ユミリアに触れられるのが我慢ならなかったから、という理由だ。


(潰す)


 グチャリとその両腕を潰した僕は、まだユミリアに固執しようとするやつの眼前に、一瞬で飛び立ち、神力を伴った重力魔法で、文字通り潰す。


(ユミリアに触れた体を潰す。ユミリアを見た目を抉る。ユミリアを嗅いだ鼻を削ぎ落とす。ユミリアに囁いた舌を炙り落とす)


 邪神ムエリス。やつの全てが気に入らない僕は、そんな膨大な殺意を浴びせながら、やつの魂を砕いていく。こうして砕けば、やつは、僕が想像した通りの拷問をその魂に受けると知っているから。どんなに転生しても、その罪を償うために、何度も、何度も、その拷問が繰り返されることを知っているから。だから、容赦なく、殺意を込めて、砕いていく。

 憎しみのあまり、頭がどうにかなりそうな感覚を抱えたまま、砕いて、砕いて、砕いていく。


「イルト様……」


 だから、その声が聞こえたのは、偶然だったかもしれない。


「っ……」


 急に視界が開けて、すぐ側で、セイ達が神に戻っている様子を確認する。そして……ユミリアが、心細そうな顔を、泣き出しそうな顔をしているという事実に気づいた途端、僕は、目の前の小者・・をセイ達に任せて放り出す。


「ユミリア」


 偶然だろうがなんだろうが、ユミリアの声が聞こえた。その事実は変わらないし、ユミリアが辛そうであれば、何を置いても側に居たい。

 すぐに、レインボードラゴンの背に飛び移って、ユミリアを抱き締めればユミリアは自分の耳に、何度も浄化をかけていた。しかも、それだけでは足りないのか、粗い生地のタオルでゴシゴシとこすっている。


「大丈夫。もう、大丈夫だよ」


 その様子だけで、ユミリアが何をされたのか理解した僕は耳をこする手に自分の手を重ね、そっと、耳から離させる。


「イルト、様……」

「ユミリアは、全部、僕のもの。この、可愛い耳だって、僕のものだよ」


 準備もなしに、魂を砕くなど、どうやら温かったと。先に、顔が陥没するまで殴り続ければ良かったと思うものの、それは、今は後回しだ。
 僕は、そっと、ユミリアの耳を食んで、治癒魔法を行使する。僕の神としての性質上、治癒はあまり得意ではないものの、引っ掻いて赤くなった程度であれば、そう時間もかけずに治せる。

 不安そうなユミリアに、一つ一つ、何をされたのかを説明してもらって、全てを上書きしていく。


「ユミリア。愛してる。もう、二度と手放したりしない」

「あ、うぅ……」


 上書きが全て終わる頃には、ユミリアは真っ赤になってぐったりとしていたが、まだまだユミリア不足が深刻だ。力も取り戻したことだし、早急に、マリフィーを捕まえて、目的を達成してしまおうと、虫の息となったムエリスを頑丈に拘束して、レインボードラゴン達とともに、また飛び立った。
しおりを挟む
感想 344

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された悪役令嬢の心の声が面白かったので求婚してみた

夕景あき
恋愛
人の心の声が聞こえるカイルは、孤独の闇に閉じこもっていた。唯一の救いは、心の声まで真摯で温かい異母兄、第一王子の存在だけだった。 そんなカイルが、外交(婚約者探し)という名目で三国交流会へ向かうと、目の前で隣国の第二王子による公開婚約破棄が発生する。 婚約破棄された令嬢グレースは、表情一つ変えない高潔な令嬢。しかし、カイルがその心の声を聞き取ると、思いも寄らない内容が聞こえてきたのだった。

《完》義弟と継母をいじめ倒したら溺愛ルートに入りました。何故に?

桐生桜月姫
恋愛
公爵令嬢たるクラウディア・ローズバードは自分の前に現れた天敵たる天才な義弟と継母を追い出すために、たくさんのクラウディアの思う最高のいじめを仕掛ける。 だが、義弟は地味にずれているクラウディアの意地悪を糧にしてどんどん賢くなり、継母は陰ながら?クラウディアをものすっごく微笑ましく眺めて溺愛してしまう。 「もう!どうしてなのよ!!」 クラウディアが気がつく頃には外堀が全て埋め尽くされ、大変なことに!? 天然混じりの大人びている?少女と、冷たい天才義弟、そして変わり者な継母の家族の行方はいかに!?

生まれ変わりも楽じゃない ~生まれ変わっても私はわたし~

こひな
恋愛
市川みのり 31歳。 成り行きで、なぜかバリバリのキャリアウーマンをやっていた私。 彼氏なし・趣味は食べることと読書という仕事以外は引きこもり気味な私が、とばっちりで異世界転生。 貴族令嬢となり、四苦八苦しつつ異世界を生き抜くお話です。 ※いつも読んで頂きありがとうございます。誤字脱字のご指摘ありがとうございます。

転生したら悪役令嬢だった婚約者様の溺愛に気づいたようですが、実は私も無関心でした

ハリネズミの肉球
恋愛
気づけば私は、“悪役令嬢”として断罪寸前――しかも、乙女ゲームのクライマックス目前!? 容赦ないヒロインと取り巻きたちに追いつめられ、開き直った私はこう言い放った。 「……まぁ、別に婚約者様にも未練ないし?」 ところが。 ずっと私に冷たかった“婚約者様”こと第一王子アレクシスが、まさかの豹変。 無関心だったはずの彼が、なぜか私にだけやたらと優しい。甘い。距離が近い……って、え、なにこれ、溺愛モード突入!?今さらどういうつもり!? でも、よく考えたら―― 私だって最初からアレクシスに興味なんてなかったんですけど?(ほんとに) お互いに「どうでもいい」と思っていたはずの関係が、“転生”という非常識な出来事をきっかけに、静かに、でも確実に動き始める。 これは、すれ違いと誤解の果てに生まれる、ちょっとズレたふたりの再恋(?)物語。 じれじれで不器用な“無自覚すれ違いラブ”、ここに開幕――! 本作は、アルファポリス様、小説家になろう様、カクヨム様にて掲載させていただいております。 アイデア提供者:ゆう(YuFidi) URL:https://note.com/yufidi88/n/n8caa44812464

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

【完結】私ですか?ただの令嬢です。

凛 伊緒
恋愛
死んで転生したら、大好きな乙女ゲーの世界の悪役令嬢だった!? バッドエンドだらけの悪役令嬢。 しかし、 「悪さをしなければ、最悪な結末は回避出来るのでは!?」 そう考え、ただの令嬢として生きていくことを決意する。 運命を変えたい主人公の、バッドエンド回避の物語! ※完結済です。 ※作者がシステムに不慣れかつ創作初心者な時に書いたものなので、温かく見守っていだければ幸いです……(。_。///) ※ご感想・ご指摘につきましては、近況ボードをお読みくださいませ。 《皆様のご愛読に、心からの感謝を申し上げますm(*_ _)m》

悪役令嬢に転生したので地味令嬢に変装したら、婚約者が離れてくれないのですが。

槙村まき
恋愛
 スマホ向け乙女ゲーム『時戻りの少女~ささやかな日々をあなたと共に~』の悪役令嬢、リシェリア・オゼリエに転生した主人公は、処刑される未来を変えるために地味に地味で地味な令嬢に変装して生きていくことを決意した。  それなのに学園に入学しても婚約者である王太子ルーカスは付きまとってくるし、ゲームのヒロインからはなぜか「私の代わりにヒロインになって!」とお願いされるし……。  挙句の果てには、ある日隠れていた図書室で、ルーカスに唇を奪われてしまう。  そんな感じで悪役令嬢がヤンデレ気味な王子から逃げようとしながらも、ヒロインと共に攻略対象者たちを助ける? 話になるはず……! 第二章以降は、11時と23時に更新予定です。 他サイトにも掲載しています。 よろしくお願いします。 25.4.25 HOTランキング(女性向け)四位、ありがとうございます!

処理中です...