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第二章 少女期 瘴気編
第百六十九話 壊れゆく(イルト視点)
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ユミリアを心配しながら、屋敷に泊まらせてもらった翌日。ユミリアはちゃんと目を覚ましてくれたものの、なぜか、僕達が近づくのを拒否し続けていた。
「ユミリア……」
「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ」
今にも泣き出しそうな表情で、僕やセイ、コウ、ローランを拒絶するユミリア。いや、それだけではない、先ほどまでは、ユミリアの父であるガイアスも、母であるミリアも、そして、大切なメイドであるはずのメリー達に対しても、拒絶していた。しかし……。
「姉上っ、大丈夫だよっ。ほら、落ち着こう?」
七歳になる、ユミリアの弟、ギリアだけは、ユミリアに拒絶されなかった。
それに嫉妬しなかったかといえば、嘘になるが、それでも、今はユミリアの側に誰も居ないよりは安心できる。それがたとえ、他の男であろうとも、ユミリアと父親が同じ兄弟であるのならば、我慢くらいできる。
「ユミリア、僕は、あの小屋があった場所を調べに行くつもりだよ」
ユミリアが落ち着いたのを見計らって、僕は、扉越しにしか声をかけられない愛しい婚約者へと声をかける。
「あそこには、何もありませんよ?」
「ユミリアはないと思っていても、もしかしたら見落としているだけかもしれない」
幾分か落ち着きを取り戻したユミリアの声に安心しながら、僕は、扉を開けたい衝動をグッと堪える。
「ユミリア様の護衛は、俺がこのままここで担当する」
「っ、ぼく、ユミリアと遊びたいけど、我慢するっ。ここで、一緒に待つ!」
「ぼ、僕は……仕方がないから、何か素材を集めてきてあげるよっ」
そして、続いたローラン達の言葉に安心していると、扉越しに、鋭い声が響く。
「ダメッ」
「えっ……?」
「な、なんで?」
「ユミリア?」
それぞれが、自分の言葉を否定したユミリアに困惑を隠せない。
「それと、イルト様、イルト様も、その場所に行ってはダメ」
「どうして?」
さすがに、僕もユミリアがなぜ拒絶するのか分からない以上、ユミリアの心情の推測などできない。
「ねぇ、皆。さっき言ってた捜索なり、護衛なり、待機なり、収集なりが終わった後、どうするつもりだった?」
そう言われて思い浮かべるのは、ユミリアを前に報告する自分の姿。しかし、それのどこが不味いのか全く分からない。
「……分からない? なら、やっぱり、侵食速度が……」
最初の言葉は、僕達への問いかけ。しかし、後の言葉は、ユミリアの独り言らしく、僕の耳でも、ほとんど聞こえない。そして……。
「ごめんなさい」
その一言が僕達の耳に届いた直後、ユミリアの気配が、その部屋から消えてしまった。
「ユミリア……」
「ごめんなさいっ、ごめんなさいっ」
今にも泣き出しそうな表情で、僕やセイ、コウ、ローランを拒絶するユミリア。いや、それだけではない、先ほどまでは、ユミリアの父であるガイアスも、母であるミリアも、そして、大切なメイドであるはずのメリー達に対しても、拒絶していた。しかし……。
「姉上っ、大丈夫だよっ。ほら、落ち着こう?」
七歳になる、ユミリアの弟、ギリアだけは、ユミリアに拒絶されなかった。
それに嫉妬しなかったかといえば、嘘になるが、それでも、今はユミリアの側に誰も居ないよりは安心できる。それがたとえ、他の男であろうとも、ユミリアと父親が同じ兄弟であるのならば、我慢くらいできる。
「ユミリア、僕は、あの小屋があった場所を調べに行くつもりだよ」
ユミリアが落ち着いたのを見計らって、僕は、扉越しにしか声をかけられない愛しい婚約者へと声をかける。
「あそこには、何もありませんよ?」
「ユミリアはないと思っていても、もしかしたら見落としているだけかもしれない」
幾分か落ち着きを取り戻したユミリアの声に安心しながら、僕は、扉を開けたい衝動をグッと堪える。
「ユミリア様の護衛は、俺がこのままここで担当する」
「っ、ぼく、ユミリアと遊びたいけど、我慢するっ。ここで、一緒に待つ!」
「ぼ、僕は……仕方がないから、何か素材を集めてきてあげるよっ」
そして、続いたローラン達の言葉に安心していると、扉越しに、鋭い声が響く。
「ダメッ」
「えっ……?」
「な、なんで?」
「ユミリア?」
それぞれが、自分の言葉を否定したユミリアに困惑を隠せない。
「それと、イルト様、イルト様も、その場所に行ってはダメ」
「どうして?」
さすがに、僕もユミリアがなぜ拒絶するのか分からない以上、ユミリアの心情の推測などできない。
「ねぇ、皆。さっき言ってた捜索なり、護衛なり、待機なり、収集なりが終わった後、どうするつもりだった?」
そう言われて思い浮かべるのは、ユミリアを前に報告する自分の姿。しかし、それのどこが不味いのか全く分からない。
「……分からない? なら、やっぱり、侵食速度が……」
最初の言葉は、僕達への問いかけ。しかし、後の言葉は、ユミリアの独り言らしく、僕の耳でも、ほとんど聞こえない。そして……。
「ごめんなさい」
その一言が僕達の耳に届いた直後、ユミリアの気配が、その部屋から消えてしまった。
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