黒板の怪談

星宮歌

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第二章 答えを求めて

第三十二話 いじめ

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 鹿野田恭子、という知り合いは、彼らには存在しない。しかし、鹿野田透という名前の同級生ならば、とても身近に居る。
 同じ、『鹿野田』という名字。それは、この現状の中で無関係だとは考えづらい。ただし、二十年前の記録ということは、彼らが知る鹿野田透が生まれる前に存在していた人だということでもある。


「もし、家族とかだったらと思うと、どうしたら良いのかと思って……」


 この『鹿野田恭子』の年齢は不明だが、少なくとも成人した大人であることは確かだ。そうなると、鹿野田にとっては祖母だとか、父親の姉や妹という可能性とてある。


「なるほど。だが、例え家族だとしても、面識は無いだろう。それほど気にしなくても良いと思うが……」


 そう言いながら、資料をめくった芦田は、そこでピタリと動きを止める。


「ソレがなかったら、私も教えてたよ」


 そこには、鹿野田恭子の懺悔が書かれていた。過去に、一人の同級生を集団のいじめによって死に至らしめてしまった、という内容が……。


『こういう時は、懺悔が必要なのかもしれない。

 私は、十数年前、いじめられている男の子を見て見ぬふりしてしまった。

 集団のいじめというのは恐ろしい。

 庇えば、私がそのいじめの対象になったかもしれない。

 そう思ったからこその行動だったが、きっと、あの子にとっては私のその行動すらもいじめの一貫だった。

 その日、彼は自殺した。

 学校は騒ぎになったし、色々な事情聴取がアンケートという形で配られもした。

 あの日、私が無視をしなければ、彼は生きていたんだろうか?

 今でも、あの日のことが忘れられない』


 毎日の記録とは別に書かれたその内容は、きっと、この世の中ではありふれたもの。そして、本当はありふれていてはいけないもの。


「いじめ、か……」


 そう、芦田が呟いた直後だった。


 カツン……カツン……カツン……。


 急に、近い距離でその音が響き始めた。しかもそれは、この図書室が面している廊下方面ではなく、この真下。つまりは、今から向かおうとしていた地下室だった。
 悪いことはさらに続き、先程までは何ともなかったはずの図書室の電灯が、チカチカと点滅しだし、ついには真っ暗になってしまう。


 カツン、カツン、カツン、カツン。


「戻るぞっ」


 小さく叫んだ芦田の声で、望月と杉下はすぐに動き出す。


「何で!? 懐中電灯もつかないっ」

「優愛ちゃんっ、このまま行くわよっ」


 急に暗くなったせいで、目は全く慣れてはいないだろうに、それでもどうにか望月の手を探り当てた杉下は、一緒に鹿野田達が居るはずの場所を目指す。


 カツカツカツカツカツカツカツカツ……。


「鹿野田っ、中田っ」

「うん、とにかくここを出ようーっ」

「と、扉はこっちだよっ」


 鹿野田も中田も、その異常には気づいていた。その上で、中田は鹿野田に肩を貸し、扉を開けて三人を誘導する。


 カカカカカカカカカカカカ。


 地下室がどれだけの広さだったのかは不明だが、ソレは、随分と凄まじい速度で距離を詰めてきていた。


「急げ!」


 先に鹿野田と中田が扉から廊下へ飛び出し、芦田は望月と杉下を待って、二人が廊下へ出たことを確認してすぐにその後へ続く。
 しかし、再び廊下を走り出した五人は、さほど進まないうちにその足を止めることとなった。


「寧子、ちゃん……?」


 廊下のど真ん中で、俯いて立ち尽くす清美の姿が、そこにはあった。
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