私、異世界で獣人になりました!

 昔から、人とは違うことを自覚していた。
 人としておかしいと思えるほどの身体能力。
 視力も聴力も嗅覚も、人間とは思えないほどのもの。
 早く、早くといつだって体を動かしたくて仕方のない日々。

 ただ、だからこそ、私は異端として、家族からも、他の人達からも嫌われていた。

 『化け物』という言葉だけが、私を指す呼び名。本当の名前なんて、一度だって呼ばれた記憶はない。

 妹が居て、弟が居て……しかし、彼らと私が、まともに話したことは一度もない。

 父親や母親という存在は、衣食住さえ与えておけば、後は何もしないで無視すれば良いとでも思ったのか、昔、罵られた記憶以外で話した記憶はない。

 どこに行っても、異端を見る目、目、目。孤独で、安らぎなどどこにもないその世界で、私は、ある日、原因不明の病に陥った。


『動きたい、走りたい』


 それなのに、皆、安静にするようにとしか言わない。それが、私を拘束する口実でもあったから。


『外に、出たい……』


 病院という名の牢獄。どんなにもがいても、そこから抜け出すことは許されない。
 私が苦しんでいても、誰も手を差し伸べてはくれない。


『助、けて……』


 救いを求めながら、病に侵された体は衰弱して、そのまま……………。



「ほぎゃあ、おぎゃあっ」


 目が覚めると、私は、赤子になっていた。しかも……。


「まぁ、可愛らしい豹の獣人ですわねぇ」


 聞いたことのないはずの言葉で告げられた内容。

 どうやら私は、異世界に転生したらしかった。



以前、片翼シリーズとして書いていたその設定を、ある程度取り入れながら、ちょっと違う世界を書いております。

言うなれば、『新片翼シリーズ』です。

それでは、どうぞ!
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