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第一夜
008.赤の君との初夜(三)
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精液がローションの代わりになると、ついさっきまで信じていた。前言を撤回しなければならない。巨根の前では、その精液でさえ焼け石に水なのだと。
「オーウェ、ごめ、ちょっ」
無理無理無理無理!! 「おいで」なんて格好よく言ったけど、無理なものは無理!
尖端を迎え入れただけで、裂けそう。めちゃくちゃ痛い。これ、ちゃんとほぐさないとダメなやつだ。
見るからに童貞のオーウェンに、そんなテクニックなんてないだろう。期待はできない。じゃあ、「指入れて。二本に増やして。三本目をお願い」と誘導しなければならない、と……筆下ろしのお姉さんかよ! 巨根の童貞なんて荷が重すぎる!
オーウェンは何度も尖端をいじめられて小刻みに震えているけれど、腰を掴んで無理にわたしの中に埋め込もうとはしない。とりあえず、成り行きを見守ってくれている感じ。
「……痛むのか?」
「あ、うん、少し」
「少し? ものすごく痛がっているように見えるが」
あー、もう、一回出したからちょっと賢者になっちゃってんのね。余裕が出てきたのね。精液と同時に余裕まで出しちゃうなんて! もう!
「イズミ殿が痛がることを強いたくはない」
「でも」
「わかった。自分のこれが勃起している限り、イズミ殿が行為を止められないと言うのなら、今すぐ落ち着かせよう」
言って、オーウェンは眉間にシワを寄せて何事かブツブツと呟き始める。円周率や素数ではないみたいだけど、確かに熱杭が柔らかくなってくる。大きさはほぼ変わらないみたいだから、萎えてても巨根だということなのだろう。恐ろしいことだ。
「オーウェン、わたし、口でもできるよ? 口の中に出す?」
「……イズミ殿。自分は射精をしたいわけではない。あなたに痛い思いをさせてまで、愚かな欲を貫きたいわけではない」
完全に萎えた彼の上に乗ったまま、そっと口づける。柔らかく迎えてくれる唇は、どこまでも優しい。
あぁ、そっか。わたしは間違えていたんだ。空回りしていたんだ。恥ずかしい。初夜だというのに、心を通わせるより、体の結びつきを優先させてしまった。「普通」はそうじゃないのに。わたしには普通がわからないから。
「オーウェン、ごめんなさい。せっかくの初夜だったのに」
「謝る必要なんてない。イズミ殿、自分はあなたを大切に思っている。関係を急ぐことはない。時間ならたっぷりあるのだから」
大切に思っている――その言葉が「聖女」に向けられたものであるとわかってはいるけれど、少し勘違いするくらいなら、いいよね。だって、オーウェンの腕の中は熱くて、とても居心地がいいのだから。ちょっと甘えるくらい、いいよね。
「オーウェン」
「何だ?」
「一緒に寝よ? 疲れちゃった」
オーウェンはわたしを横に抱き、軽々と持ち上げた。わ、お姫様抱っこ! お姫様抱っこ!
恥ずかしくて微動だにできないでいると、柔らかなベッドに横たえられる。それから、オーウェンはタオルを濡らして持ってきてくれる。給湯システムみたいな設備があることを、今知ったわ。
「拭かせてくれないか?」
「いやいやいや、自分でやるよ、拭くよ!」
「大丈夫だ。冷たくはないから」
「そうじゃない、そうじゃなくて!」
オーウェンはタオルを渡してくれないため、仕方なく処理を任せる。程よく温かいタオルで下腹部を拭いてくれるオーウェンを、恥ずかしくて直視できない。わたしの体は綺麗なものじゃないから、そんなに見られていないといいんだけど。
オーウェンは自分の残滓も処理をし、服やブーツを脱いで、ベッドに潜り込んでくる。
「イズミ殿」と耳元で囁くのは反則だなぁ。甘えたような、優しい低い声。うー、反則だ。めっちゃ下腹部に響く。
広いベッドの上、抱き合って眠る。穏やかな時間だ。
本当はもっと気持ち良くさせてあげるつもりだったんだけど、大きすぎて挿入らないのは仕方ない。次は口でしてあげよう。そうしよう。
眠るまで、オーウェンと何度もキスをする。彼はキスを気に入ってくれたらしい。それはいいことだ。わたしもキスは好き。
「おやすみ、イズミ殿」
「オーウェンもおやすみなさい」
蓄光石のランプは、少しずつ暗くなっていく。わたしはランプが完全に消える前に眠ってしまった。
優しい彼氏が欲しいと思ったことはある。束縛しない、殴らない、蹴らない、髪を引っ張らない、首を絞めない、包丁を持ち出さない、そんな優しい彼氏がいたら、なんて幸せなんだろう。街行くカップルを見て、バイト先の子の惚気話を聞いて、羨ましいと思ったことなんて数え切れない。
でもね、うまくはいかないんだ。
たぶん、わたしがダメな女だから。
だから、ダメな男しか寄ってこない。
仕方ないんだ。そういうものだから。破れ鍋に綴じ蓋ってやつだから。わたしはずっと、ダメな男と一緒に生きるしかないんだ。
だからこれは、わたしの願望が詰まった夢なんだ。わたしはダメな男しか選べないから、他人に選んでもらえるなんて、本当に都合がいいんだもの。顔だけじゃなくて性格までイケメンな男の人がわたしの夫だなんて、夢に決まっている。
と、目が覚めるまで思っていた。
思っていた。
「おはよう、イズミ殿」
オーウェンの優しい笑顔が目に飛び込んでくるまでは。
「オーウェ、ごめ、ちょっ」
無理無理無理無理!! 「おいで」なんて格好よく言ったけど、無理なものは無理!
尖端を迎え入れただけで、裂けそう。めちゃくちゃ痛い。これ、ちゃんとほぐさないとダメなやつだ。
見るからに童貞のオーウェンに、そんなテクニックなんてないだろう。期待はできない。じゃあ、「指入れて。二本に増やして。三本目をお願い」と誘導しなければならない、と……筆下ろしのお姉さんかよ! 巨根の童貞なんて荷が重すぎる!
オーウェンは何度も尖端をいじめられて小刻みに震えているけれど、腰を掴んで無理にわたしの中に埋め込もうとはしない。とりあえず、成り行きを見守ってくれている感じ。
「……痛むのか?」
「あ、うん、少し」
「少し? ものすごく痛がっているように見えるが」
あー、もう、一回出したからちょっと賢者になっちゃってんのね。余裕が出てきたのね。精液と同時に余裕まで出しちゃうなんて! もう!
「イズミ殿が痛がることを強いたくはない」
「でも」
「わかった。自分のこれが勃起している限り、イズミ殿が行為を止められないと言うのなら、今すぐ落ち着かせよう」
言って、オーウェンは眉間にシワを寄せて何事かブツブツと呟き始める。円周率や素数ではないみたいだけど、確かに熱杭が柔らかくなってくる。大きさはほぼ変わらないみたいだから、萎えてても巨根だということなのだろう。恐ろしいことだ。
「オーウェン、わたし、口でもできるよ? 口の中に出す?」
「……イズミ殿。自分は射精をしたいわけではない。あなたに痛い思いをさせてまで、愚かな欲を貫きたいわけではない」
完全に萎えた彼の上に乗ったまま、そっと口づける。柔らかく迎えてくれる唇は、どこまでも優しい。
あぁ、そっか。わたしは間違えていたんだ。空回りしていたんだ。恥ずかしい。初夜だというのに、心を通わせるより、体の結びつきを優先させてしまった。「普通」はそうじゃないのに。わたしには普通がわからないから。
「オーウェン、ごめんなさい。せっかくの初夜だったのに」
「謝る必要なんてない。イズミ殿、自分はあなたを大切に思っている。関係を急ぐことはない。時間ならたっぷりあるのだから」
大切に思っている――その言葉が「聖女」に向けられたものであるとわかってはいるけれど、少し勘違いするくらいなら、いいよね。だって、オーウェンの腕の中は熱くて、とても居心地がいいのだから。ちょっと甘えるくらい、いいよね。
「オーウェン」
「何だ?」
「一緒に寝よ? 疲れちゃった」
オーウェンはわたしを横に抱き、軽々と持ち上げた。わ、お姫様抱っこ! お姫様抱っこ!
恥ずかしくて微動だにできないでいると、柔らかなベッドに横たえられる。それから、オーウェンはタオルを濡らして持ってきてくれる。給湯システムみたいな設備があることを、今知ったわ。
「拭かせてくれないか?」
「いやいやいや、自分でやるよ、拭くよ!」
「大丈夫だ。冷たくはないから」
「そうじゃない、そうじゃなくて!」
オーウェンはタオルを渡してくれないため、仕方なく処理を任せる。程よく温かいタオルで下腹部を拭いてくれるオーウェンを、恥ずかしくて直視できない。わたしの体は綺麗なものじゃないから、そんなに見られていないといいんだけど。
オーウェンは自分の残滓も処理をし、服やブーツを脱いで、ベッドに潜り込んでくる。
「イズミ殿」と耳元で囁くのは反則だなぁ。甘えたような、優しい低い声。うー、反則だ。めっちゃ下腹部に響く。
広いベッドの上、抱き合って眠る。穏やかな時間だ。
本当はもっと気持ち良くさせてあげるつもりだったんだけど、大きすぎて挿入らないのは仕方ない。次は口でしてあげよう。そうしよう。
眠るまで、オーウェンと何度もキスをする。彼はキスを気に入ってくれたらしい。それはいいことだ。わたしもキスは好き。
「おやすみ、イズミ殿」
「オーウェンもおやすみなさい」
蓄光石のランプは、少しずつ暗くなっていく。わたしはランプが完全に消える前に眠ってしまった。
優しい彼氏が欲しいと思ったことはある。束縛しない、殴らない、蹴らない、髪を引っ張らない、首を絞めない、包丁を持ち出さない、そんな優しい彼氏がいたら、なんて幸せなんだろう。街行くカップルを見て、バイト先の子の惚気話を聞いて、羨ましいと思ったことなんて数え切れない。
でもね、うまくはいかないんだ。
たぶん、わたしがダメな女だから。
だから、ダメな男しか寄ってこない。
仕方ないんだ。そういうものだから。破れ鍋に綴じ蓋ってやつだから。わたしはずっと、ダメな男と一緒に生きるしかないんだ。
だからこれは、わたしの願望が詰まった夢なんだ。わたしはダメな男しか選べないから、他人に選んでもらえるなんて、本当に都合がいいんだもの。顔だけじゃなくて性格までイケメンな男の人がわたしの夫だなんて、夢に決まっている。
と、目が覚めるまで思っていた。
思っていた。
「おはよう、イズミ殿」
オーウェンの優しい笑顔が目に飛び込んでくるまでは。
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