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八章 明日へ
3.結局、桜子の心配は振り出しに戻ったんです。
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桜子は、さっきまでフミカに許嫁がいるって話に「許嫁って、どんな人~!? 」って興味津々って感じだったけど、
「でも残念だな~。フミカちゃんなら安心だし、私もフミカちゃんのこと大好きなのにな~」
なんて、本気で残念、って顔してる。
お世辞とかじゃなく、ホントにそう思ってくれてるって分かる。
二人が結婚して、桜子が「お義母さん」になったら、親同士、私たちは私たちで旅行とか行きましょうね~。そしたらきっと楽しいね~。って昔桜子は言ってた。‥俺のことも、「女として」好いてくれてるんだろう。
付き合いも長いし、‥特別な付き合いだったしね。
だけど、現実問題、フミカがここで結婚するのは無理なんだ。
好きとか嫌いとかいう問題じゃなく‥
無理なんだよ。
‥フミカ、戸籍も無いんだよ‥。
まあ、‥言うまい。わざわざ桜子に気まずい想いはさせたくない。
それに、‥言っても仕方ないし、言わないでもいいことだ。
フミカも、嫌な気持ちになるだろうしね。
この世界は、‥この世界の全部の国がそうかは分からないが‥、戸籍が無いと何も出来ないようだ。
学校にも行けない。家も借りられない。結婚も出来ない。
日本昔話なんて見てたら、
ある日急に、嫁の来てもなかった貧乏息子の所に
「嫁にして下さい」
って、人外な別嬪が来た‥っていう話が結構あったが、‥時代が変わったってことなんだろう。
‥それとも、あの人外‥鶴の化身だったり、雪女だったりは戸籍があったのか?! もしや魔法的なもので、そういうもんも用意したのか!? そして、貧乏息子は婚姻届け的な物を役所的なところに出したのか??
この人何処の人だろ? ちょっと役所に戸籍謄本取り寄せて~。
とか?
‥そんなわけねえ気がする。
そんなんに時間をかけてる間に別嬪は心変わりして、隣のもうちょっとイケメンで甲斐性のある村人と結婚してしまう‥!! いそげ、貧乏息子‥ここは、とりあえず既成事実だ‥!! ってばあちゃんが‥
ああ、そうか。それで、書類は先延ばしに事実婚で結婚してるって状態か。
すみません。ふざけました。‥そういえば、婚姻の書類は別として、‥戸籍は、昔だからって無いこともない気がするな。お寺やなんかに、江戸時代からの家系図残ってる人いるもんな。それともそれって、そこそこの家の人だけって話‥とか?
ヨクワカンナイケド。
戸籍とか、系図とかそういう家族の歴史を証明するもの‥。
そういうの‥自分たちには無いから、ちょっとすごいなって思ったんだ。
俺の育った村の子供たちは、ほとんどが孤児で、両親の名前を知らない。
とにかく、自分で生きていく術を身に着けて、自分で生きていけなければならない。
そして、‥でも愛した人ができたなら、家族をもったりするんだ。
その子供が誰かと出会い、やがて結婚して子供が‥自分にとっては孫が‥出来る。(だけど、子供が結婚したら自分の家庭を持つから、子供の子供を自分の身内‥って感覚で世話することは無いんだ。子供が結婚したら、苗字も自分でつけるしね)
だけど、家族だ。
自分の後には、系譜が出来る。
‥だけど、自分の前の系譜は分からない。
俺は、桜子の両親も、その兄弟も、桜子の祖父母も、その兄弟も知っている。
そして、それは全部息子である翔‥カツラギにも共通するものだ。
俺たちと同じく孤児だったカツラギは、その魂そのままで、翔っていう桜子の息子になることによって、今まで持ったこともなかった「それまで」を得て、‥会ったこともない人たちが家族になった。
両親が、そして祖父母が家族だって可愛がってくれる。「家族っぽいもの」じゃなく、血のつながった家族‥。
今まで知らなかった人が、家族になるんだ。
翔も桜子も全部を持っている。正樹も‥両親たちは今はもう死んじゃってるけど、持ってた。‥持ってた記憶だって、親との思い出だってずっと失われず、ある。
血の繋がり‥家族も先祖も、‥戸籍も。
そして、‥全部持っているから学校だって行けるし、結婚だって出来る。
フミカは全部持っていない。‥持っていないから、学校にも行けないし、結婚だって‥こっちでは出来ない。
翔とフミカはいわば一緒に育ってきた兄妹みたいなもんだった。
でも、元から持ってるものが全然違う。
フミカだけは、何も持っていない。
「でも、やっぱり、許嫁には勝てないもんな~」
フミカから、平凡で優しい幼馴染で許嫁なナツカの話を「素敵!! 」って聞いてた桜子は、ふう、ってうっとりしたため息をついた。
ナツカがいるからとかじゃなく‥
フミカと翔‥カツラギが結婚するようなことなんて、絶対にない。
フミカもカツラギも嫌がるだろうし‥そんなことになったら、アララキが泡吹いて倒れる。
「翔も、やっぱりお父さんとお母さんが友達ってのも複雑だよね。あはは」
って困ったような顔して笑ってる桜子。
複雑‥ってことじゃない。
別に友達だろうと、好きなら結婚することもあるだろう。実際、俺とアララキは幼馴染同士だけど結婚した。(結婚式はまだだけど)
そういう話じゃ‥ない。
仲がいいと恋愛は、別の話だって話。
フミカとカツラギは価値観や恋愛観が全然違う。それって、恋愛に発展するのに障害になる。
価値観が全然違っても、友達でいることは出来る。
コイツはこういう奴だ。
困ったやつなんだ。
女にだらしなくってさ。‥私はそういう気持ちわかんないや。
だけど、‥カツラギはそういう奴だから仕方ないね。個性だからね。
その「違った価値観」を個性って見れるのは、‥だけど友達だからだって思う。
友達なら許せる。でも、恋人なら?
恋人なら、‥相手の事好きなら‥きっと許せない。
好きになったら、きっと独占したくなって、‥きっと許せなくなる。
カツラギだって、変わるかもしれない。フミカの事好きになったなら‥今までとは違って、フミカだけってなるかもしれない。でも、今までのカツラギは消えない。‥その「記憶」はきっと真面目なフミカを傷つける。
仕方が無い。過去は過去。今は違う。
どんなに、自分に言い聞かせても、だ。
仲がいいままでいたいから、フミカはカツラギの恋愛について口出さない。‥考えない。
恋愛や結婚って、「そういうこと考えないといけない関係」じゃない? ‥寧ろ、そういうことが一番大事になってくるような関係だ。
そういうのの価値観が全然違う二人は、結婚なんて出来ないし、そうなると、わざわざ‥お互いのパーソナルスペースに踏み込むべきじゃない。
ってか、ホントに、二人は全然そんなんじゃない。
フミカにはフミカの幸せがあって、カツラギにはカツラギの幸せがある。
二人にとって、今の関係が一番幸せなんだ。
‥フミカの幸せ‥。
「フミカの幸せってなんだろ‥。ここでは‥俺はフミカを幸せに出来ないんだな‥」
鳥に戻って、桜子の家の庭にある巣に帰って、眠る前‥。
つい、呟いていた。
今まで、何もフミカの為にしてやれなかった。
したといったら、魔法を教えた位だ。
隣で眠る支度をして丸くなっていたフミカが首だけひょこんとあげて俺を見る。
「‥我の幸せは、‥我が幸せかどうかは我が決める。サカマキには分かるまいよ。‥我はな。それなりに幸せだ。サカマキが魔法を教えてくれて、こっちの字も教えてくれた。
字が分かれば、こっちの本は、無料で読める。読み放題だ。(図書館のこと)
桜子のフリして‥武術を学んだこともあった。
今だって
桜子の家でテレビを見ることが出来る。
マグロ漁師のことを知ることも出来た。
全部知らない事ばかりだった。あっちにいたら一生知らないままだった。
今‥我は幸せなんだ」
そう言って、丸まって眠る体制をとる。
ふわふわの‥小さな鳥。‥頼りない姿。それが今はやけに不安げに見えた。
「フミカ‥フミカ‥。俺‥」
ただ、‥堪らない気持ちになった。
フミカが、ふ‥と微笑んだのが分かった。
「母親がサカマキで、良かったと思う。サカマキの事もっと知れた。‥もっと好きになった。
それに、サカマキが神獣で良かった。
そうじゃなかったら、鳥の姿で空を飛べることは出来なかっただろうからな
人の姿と鳥の姿と‥楽しみが2倍じゃ」
くくっ
楽しそうに、フミカが笑う。
‥その表情は見えなかったが、その声は明るかった。
だのに
「フミカ‥」
俺の声は、
自分でもわかる位に頼りなくって‥
「誰がなんて言おうと、サカマキが否定しようと‥
我は幸せだし。毎日楽しいんだ」
フミカが顔を上げる。鳩の‥華奢な首をちょっと上げて、首を傾げる。
‥ただそれだけの動きだったんだけど‥でも、フミカの想いは‥俺に届いた。
フミカの‥優しさに胸がいっぱいになった。
‥フミカ‥!!
無意識に、涙が頬を伝った。
「感謝してる」
「‥俺こそ‥! 」
ありがとう‥。
俺は、柄にもなく‥泣きながらフミカの羽に自分の羽を重ねた。(いや柄にもなくってほど、無味乾燥な生活送ってるとも思えないし、昔より感情も増えたとおもってるんだけどね。‥あと、年とってのか、このごろ昔に比べて涙もろくなった。きっと、フミカとナツカの結婚式なんかに出たら、ずっと泣いてそう‥)
そんな感動の場面なのに‥。
「幸せならよかったじゃないか。でも正直、私は、フミカと私の立場が反対でなくて良かった、って思っています。フミカが桜子の子供として生れていたら、私がアララキの子供でした。
アララキ似になっても‥顔には不満はありませんよ。でも、きっと面白くなかった‥と思います。
アララキと以前の私の顔だったら、顔の傾向は違いますが、恋愛における攻めの方向性は‥そう変わらないでしょ?
きっと、私いろいろ工夫しよう‥とか考えなかったでしょうね。
労せず獲物は捕まえられるでしょうし。
だけど、この新しい顔での恋愛は、いろいろ新発見があって、面白いですよ
私も感謝してます」
掃き出し窓から顔を出したカツラギが、そんなこと
ケロッとした顔して言うんだ。
「でも残念だな~。フミカちゃんなら安心だし、私もフミカちゃんのこと大好きなのにな~」
なんて、本気で残念、って顔してる。
お世辞とかじゃなく、ホントにそう思ってくれてるって分かる。
二人が結婚して、桜子が「お義母さん」になったら、親同士、私たちは私たちで旅行とか行きましょうね~。そしたらきっと楽しいね~。って昔桜子は言ってた。‥俺のことも、「女として」好いてくれてるんだろう。
付き合いも長いし、‥特別な付き合いだったしね。
だけど、現実問題、フミカがここで結婚するのは無理なんだ。
好きとか嫌いとかいう問題じゃなく‥
無理なんだよ。
‥フミカ、戸籍も無いんだよ‥。
まあ、‥言うまい。わざわざ桜子に気まずい想いはさせたくない。
それに、‥言っても仕方ないし、言わないでもいいことだ。
フミカも、嫌な気持ちになるだろうしね。
この世界は、‥この世界の全部の国がそうかは分からないが‥、戸籍が無いと何も出来ないようだ。
学校にも行けない。家も借りられない。結婚も出来ない。
日本昔話なんて見てたら、
ある日急に、嫁の来てもなかった貧乏息子の所に
「嫁にして下さい」
って、人外な別嬪が来た‥っていう話が結構あったが、‥時代が変わったってことなんだろう。
‥それとも、あの人外‥鶴の化身だったり、雪女だったりは戸籍があったのか?! もしや魔法的なもので、そういうもんも用意したのか!? そして、貧乏息子は婚姻届け的な物を役所的なところに出したのか??
この人何処の人だろ? ちょっと役所に戸籍謄本取り寄せて~。
とか?
‥そんなわけねえ気がする。
そんなんに時間をかけてる間に別嬪は心変わりして、隣のもうちょっとイケメンで甲斐性のある村人と結婚してしまう‥!! いそげ、貧乏息子‥ここは、とりあえず既成事実だ‥!! ってばあちゃんが‥
ああ、そうか。それで、書類は先延ばしに事実婚で結婚してるって状態か。
すみません。ふざけました。‥そういえば、婚姻の書類は別として、‥戸籍は、昔だからって無いこともない気がするな。お寺やなんかに、江戸時代からの家系図残ってる人いるもんな。それともそれって、そこそこの家の人だけって話‥とか?
ヨクワカンナイケド。
戸籍とか、系図とかそういう家族の歴史を証明するもの‥。
そういうの‥自分たちには無いから、ちょっとすごいなって思ったんだ。
俺の育った村の子供たちは、ほとんどが孤児で、両親の名前を知らない。
とにかく、自分で生きていく術を身に着けて、自分で生きていけなければならない。
そして、‥でも愛した人ができたなら、家族をもったりするんだ。
その子供が誰かと出会い、やがて結婚して子供が‥自分にとっては孫が‥出来る。(だけど、子供が結婚したら自分の家庭を持つから、子供の子供を自分の身内‥って感覚で世話することは無いんだ。子供が結婚したら、苗字も自分でつけるしね)
だけど、家族だ。
自分の後には、系譜が出来る。
‥だけど、自分の前の系譜は分からない。
俺は、桜子の両親も、その兄弟も、桜子の祖父母も、その兄弟も知っている。
そして、それは全部息子である翔‥カツラギにも共通するものだ。
俺たちと同じく孤児だったカツラギは、その魂そのままで、翔っていう桜子の息子になることによって、今まで持ったこともなかった「それまで」を得て、‥会ったこともない人たちが家族になった。
両親が、そして祖父母が家族だって可愛がってくれる。「家族っぽいもの」じゃなく、血のつながった家族‥。
今まで知らなかった人が、家族になるんだ。
翔も桜子も全部を持っている。正樹も‥両親たちは今はもう死んじゃってるけど、持ってた。‥持ってた記憶だって、親との思い出だってずっと失われず、ある。
血の繋がり‥家族も先祖も、‥戸籍も。
そして、‥全部持っているから学校だって行けるし、結婚だって出来る。
フミカは全部持っていない。‥持っていないから、学校にも行けないし、結婚だって‥こっちでは出来ない。
翔とフミカはいわば一緒に育ってきた兄妹みたいなもんだった。
でも、元から持ってるものが全然違う。
フミカだけは、何も持っていない。
「でも、やっぱり、許嫁には勝てないもんな~」
フミカから、平凡で優しい幼馴染で許嫁なナツカの話を「素敵!! 」って聞いてた桜子は、ふう、ってうっとりしたため息をついた。
ナツカがいるからとかじゃなく‥
フミカと翔‥カツラギが結婚するようなことなんて、絶対にない。
フミカもカツラギも嫌がるだろうし‥そんなことになったら、アララキが泡吹いて倒れる。
「翔も、やっぱりお父さんとお母さんが友達ってのも複雑だよね。あはは」
って困ったような顔して笑ってる桜子。
複雑‥ってことじゃない。
別に友達だろうと、好きなら結婚することもあるだろう。実際、俺とアララキは幼馴染同士だけど結婚した。(結婚式はまだだけど)
そういう話じゃ‥ない。
仲がいいと恋愛は、別の話だって話。
フミカとカツラギは価値観や恋愛観が全然違う。それって、恋愛に発展するのに障害になる。
価値観が全然違っても、友達でいることは出来る。
コイツはこういう奴だ。
困ったやつなんだ。
女にだらしなくってさ。‥私はそういう気持ちわかんないや。
だけど、‥カツラギはそういう奴だから仕方ないね。個性だからね。
その「違った価値観」を個性って見れるのは、‥だけど友達だからだって思う。
友達なら許せる。でも、恋人なら?
恋人なら、‥相手の事好きなら‥きっと許せない。
好きになったら、きっと独占したくなって、‥きっと許せなくなる。
カツラギだって、変わるかもしれない。フミカの事好きになったなら‥今までとは違って、フミカだけってなるかもしれない。でも、今までのカツラギは消えない。‥その「記憶」はきっと真面目なフミカを傷つける。
仕方が無い。過去は過去。今は違う。
どんなに、自分に言い聞かせても、だ。
仲がいいままでいたいから、フミカはカツラギの恋愛について口出さない。‥考えない。
恋愛や結婚って、「そういうこと考えないといけない関係」じゃない? ‥寧ろ、そういうことが一番大事になってくるような関係だ。
そういうのの価値観が全然違う二人は、結婚なんて出来ないし、そうなると、わざわざ‥お互いのパーソナルスペースに踏み込むべきじゃない。
ってか、ホントに、二人は全然そんなんじゃない。
フミカにはフミカの幸せがあって、カツラギにはカツラギの幸せがある。
二人にとって、今の関係が一番幸せなんだ。
‥フミカの幸せ‥。
「フミカの幸せってなんだろ‥。ここでは‥俺はフミカを幸せに出来ないんだな‥」
鳥に戻って、桜子の家の庭にある巣に帰って、眠る前‥。
つい、呟いていた。
今まで、何もフミカの為にしてやれなかった。
したといったら、魔法を教えた位だ。
隣で眠る支度をして丸くなっていたフミカが首だけひょこんとあげて俺を見る。
「‥我の幸せは、‥我が幸せかどうかは我が決める。サカマキには分かるまいよ。‥我はな。それなりに幸せだ。サカマキが魔法を教えてくれて、こっちの字も教えてくれた。
字が分かれば、こっちの本は、無料で読める。読み放題だ。(図書館のこと)
桜子のフリして‥武術を学んだこともあった。
今だって
桜子の家でテレビを見ることが出来る。
マグロ漁師のことを知ることも出来た。
全部知らない事ばかりだった。あっちにいたら一生知らないままだった。
今‥我は幸せなんだ」
そう言って、丸まって眠る体制をとる。
ふわふわの‥小さな鳥。‥頼りない姿。それが今はやけに不安げに見えた。
「フミカ‥フミカ‥。俺‥」
ただ、‥堪らない気持ちになった。
フミカが、ふ‥と微笑んだのが分かった。
「母親がサカマキで、良かったと思う。サカマキの事もっと知れた。‥もっと好きになった。
それに、サカマキが神獣で良かった。
そうじゃなかったら、鳥の姿で空を飛べることは出来なかっただろうからな
人の姿と鳥の姿と‥楽しみが2倍じゃ」
くくっ
楽しそうに、フミカが笑う。
‥その表情は見えなかったが、その声は明るかった。
だのに
「フミカ‥」
俺の声は、
自分でもわかる位に頼りなくって‥
「誰がなんて言おうと、サカマキが否定しようと‥
我は幸せだし。毎日楽しいんだ」
フミカが顔を上げる。鳩の‥華奢な首をちょっと上げて、首を傾げる。
‥ただそれだけの動きだったんだけど‥でも、フミカの想いは‥俺に届いた。
フミカの‥優しさに胸がいっぱいになった。
‥フミカ‥!!
無意識に、涙が頬を伝った。
「感謝してる」
「‥俺こそ‥! 」
ありがとう‥。
俺は、柄にもなく‥泣きながらフミカの羽に自分の羽を重ねた。(いや柄にもなくってほど、無味乾燥な生活送ってるとも思えないし、昔より感情も増えたとおもってるんだけどね。‥あと、年とってのか、このごろ昔に比べて涙もろくなった。きっと、フミカとナツカの結婚式なんかに出たら、ずっと泣いてそう‥)
そんな感動の場面なのに‥。
「幸せならよかったじゃないか。でも正直、私は、フミカと私の立場が反対でなくて良かった、って思っています。フミカが桜子の子供として生れていたら、私がアララキの子供でした。
アララキ似になっても‥顔には不満はありませんよ。でも、きっと面白くなかった‥と思います。
アララキと以前の私の顔だったら、顔の傾向は違いますが、恋愛における攻めの方向性は‥そう変わらないでしょ?
きっと、私いろいろ工夫しよう‥とか考えなかったでしょうね。
労せず獲物は捕まえられるでしょうし。
だけど、この新しい顔での恋愛は、いろいろ新発見があって、面白いですよ
私も感謝してます」
掃き出し窓から顔を出したカツラギが、そんなこと
ケロッとした顔して言うんだ。
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