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五章.周辺事情
9.千佳の認識
しおりを挟むくれちゃんが、この頃おかしい。
否。学校以外は殆どあの魔性の女さくらのところに行っているのは相変わらずだし、習い事だって相変わらず大忙しだ。
ただ、表情が変わった。
優しくなったというか、少し笑顔が増えた。
好きな人でもできたんだろうか。そういえば、この前ないことに(若干! )おしゃれをして出かけて行ったことがあったっけ。
もしかしてデートだろうか。
もしかして‥あの時のくれちゃんにちょっと似た男?!
あの時は、「いや、気のせいだ。くれちゃんが男の人を連れ込むはずはない」と思って「気のせい」「さっき見たのはくれちゃん」って思うことにしたんだけど、やっぱり気のせいじゃなくてくれちゃんの彼氏だったのかな。
え? でもどんなに探したけど、他人が入って来た形跡はなかったんだけど‥。
もしかして、霊的な物??
そんな馬鹿な。
それはそうとしても、あの人は‥ちょっといただけないなあ。
顔が似すぎてるのって、どうだよ。夫婦は似てくるっていうし、もしかして思いのほか付き合いが長くて顔まで似て来たとしてもあれじゃ、兄妹っていっても通るレベルでしょ。
もっと、(おかしいんだけど)ぴったりな表現としては「くれちゃんの男版」
そう! くれちゃんの男版って感じ!
え~。
無いわあ。
「あの、さ」
夕飯の時、千佳はやたら言いにくそうに口を開いた。
「ん? 」
紅葉は気にしていないようだったが、そのいつもと違う様子に両親は千佳の顔を見る。
「いや、あ。大したことじゃないからご飯食べ終わってから聞く。
それよりさ、もうすぐ修学旅行だけど、その‥班とか決まった? 一緒にまわる‥」
無理に話題を変えようとしたら‥
また気になること出てきちゃった!
班分け!
もしかして、あの人(くれちゃんの男版)も一緒か?!
ごくり、と思わず唾をのんで千佳は姉の様子をうかがう。
「うん! 決まったよ。ホント楽しみだよ」
ふわりと花が咲く様に紅葉が笑う。
ほら、笑顔が変わった。
千佳はまた動揺した。
‥前みたいな、作った笑顔じゃなくなって今は自然な感じ。
‥くれちゃんは私にばれてないと思ってるだろうけど、気付いてるんだからね。作った笑顔だって。
何かを隠して、一生懸命我慢してるんだって。
‥いつか、話してくれたらって思ってたのに、もう解決したってことかな。
それもそれで、複雑な千佳だった。
(なんせ、心は『くれちゃんの保護者』だから)
「小西さんと野上さんの三人で回るんだよ」
と嬉しそうな顔で言った。
「女の子? 」
父親が聞くと、
紅葉は「当たり前の事」って顔で‥首を傾げた。
「そうだよ? 」
「女の子三人? 」
母親がちょっと「なあんだ」って顔をする。
母親的には、「恋バナの一つも聞きたい」って感じなんだろう。
だけど、父親的には‥そんなの聞きたくない。
「‥というか、その名前今まで聞いたことないけど」
正確には、紅葉の口からは誰の名前も聞いたことないんだけど‥。
紅葉にはちょっと人見知りなところがあるから心配だって母親は思ってるわけで‥
大丈夫なの? 適当に組まされたんじゃないの?
って、ちょっと心配になる。
紅葉は「大丈夫だよ? 」ってちょっと驚いた顔で母親を見、
「友達になってくれたんだ。いい子たちだよ」
ちょっと恥ずかしそうに微笑む。
「うん? 」
千佳は両親の顔をこっそりと盗み見する。
‥この二人、なんかくれちゃんに遠慮(?)してるよねえ‥
特に、友達と聞いた時の二人の様子。あからさまに、「腫れ物に触る」ような感じだったぞ。なんだろ。「友達いないだろうから、そっとしておいてやれ」かな。(それも大概失礼だな)
だが、どうやらこの反応の意味するところが両親それぞれ違うようだった。
母親は恋バナ聞きたい‥でカムフラージュしてるけど、「大丈夫? 友達いる? 」って心配してるのが分かる。
でも、
父親は友達が女の子だけと聞いてあからさまにほっとしているって感じ。
‥この人、くれちゃんに彼氏がいるって聞いたらどうなるんだろ‥。
もうすぐ聞くかもよ~。
でも‥まあ‥父さんには急に知らせるのは止めてあげないとな‥。
‥よかった、両親の前で「あの人、誰? 」とか聞かなくて。
「‥小西さんも野上さんも小学校から一緒よね」
母親が何かを思い出しながら言った。
「そうそう」
紅葉が頷く。
あ、そうなんだ。母さんそんなこと覚えてるんだ。
驚いたのは、千佳だ。
そんなこと、覚えてるもんなんだ!
「‥大丈夫なの? 」
母親は僅かに眉を寄せて、心配そうな表情で言った。
紅葉の目をじっと見つめて、まるで「私に気付かいとか要らないからね。正直に言ってね」って言ってるかの様だった。
母親の言葉を聞いた紅葉の顔が一瞬、ほんの一瞬曇った。
‥「大丈夫なの? 」
千佳の表情が硬くなった。
‥何。大丈夫なの? って。何が大丈夫じゃないの?
「小西さんも野上さんも、何も知らないよ。その話はいいじゃん? 」
紅葉が苦笑いして、話を終わらせようとする。
何を? 「小野さんも野上さんも」何を知らないの?
母親と紅葉の様子から、何となく聞きにくい様子が感じられので、千佳はそれを聞けなかった。しかし、気になって仕方がなかった。
「それに、子供の時の話だよ。本人たちももう忘れているよ」
紅葉の「もうその話は止めてくれ」オーラに母親もはっとしたような表情をして、「ごめんね」と言い
「そ、そうね。ごめんね。‥まあ。修学旅行の買い物とか行かないとね。今度の日曜日に行きましょうか」
話しを変えた。
「分かった」
紅葉が苦笑いで答える。
これで、もう「さっきの話」は終わりだ。
千佳が明るい口調で
「私も行く。買い物。欲しいものあるし~! 」
話しに入って来る。
「それに、くれちゃんに任せてたら可愛いもの買えないでしょ! 」
こんな時、末っ子っていうのはムードメーカー‥じゃないけど、場を切り替えたり明るくいたりする役目を引き受けなきゃダメなのよ。
末っ子っていうのも、なかなか大変なんだからね!
決して、ついて行って親に買ってもらうのが目的では、ないよ?
そこでボソリ‥
「‥父さんも行こうかな」
父さんも「頑張ってみた」みたいだけど‥
「要らないと思う」
と、ここだけはびっしり言わせてもらう。ちょっと、しょげた父さんの顔とか可哀想だけど。
「千佳。さっき言ってた話って? 」
部屋の扉がノックされて、紅葉がちょこりと顔を出した。
「私の方は、まあ、いいんだよ。大したことじゃないから」
とは言ったけど、千佳は紅葉が来て嬉しそうだ。
うきうきと部屋に招き入れて、ベッドを勧める。
二人でベッドに座って話をする。そう言えば、ついこないだまでこんなこともなかったな。
もっと、他人行儀だったような気がする。
千佳は思った。
一度気付けば、違和感はあれも、これも、だ。
「あのね」
ぼそり、と紅葉が口を開いた。
千佳が紅葉を見る。紅葉の目が少し不安そうに見えた。
‥どうしよう。心配させるだけではないか。話すのをやめようか?
でも、隠すのは違う気がする。
紅葉は、一度大きく息を吐いた。そして
「私、小学校の時、いじめって程じゃないけど、なんか言ってくる子とかいて。あの時はちょっと落ち込んだりしたこととかあったから、それで母さんその時の事気にしてるんだよ。ホントに昔の話なのにね」
ぼそぼそと話し始めた。
「いじめ! 」
千佳は思わずベッドから立ちあがって叫んでしまった。
「いや、そんなに大したことじゃないから。
‥ただ、私の目の色ってちょっと変わってるでしょ。そのことで、怖がらせちゃったんじゃないかな」
紅葉がそんな千佳を座らせながら、困った様に笑った、
「何処が変なのさ」
千佳の興奮は収まらない。
‥本当に、何それ! 腹が立つ! 何よ! いじめって! 誰、私が殴ってやるわ!
「この目ね。この頃は、随分色が落ち着いて来たけど。それこそ、小学校に入ったばっかりの頃はもっと金に近い程、色が薄かったんだよ」
そうだっけ。そういえばそうだった気がする。
千佳が首を傾げた。
「そのことを言われて、‥落ち込んだりしてて」
その時のことが思い出されて、頭が少し痛くなった。
‥紅葉ちゃんの目、怖い。
‥肉食動物の目だな! 。
別に手を出されるわけじゃなかったけど‥凄く嫌だった。
だから前髪を伸ばして目を隠して俯いて暮らすことが多かったんだけど、ある日下校途中に西遠寺の本家の人が私に会いに来て‥
これは‥この目はっ!
って驚いたんだ。
本家の人が言うには、「この目は西遠寺の力の象徴」ならしいのだ。
裏と呼ばれる養子を進められたんだけど、当主である桜様が私を見て「この子は、西遠寺の直系の娘です」と言ったの。
母さんに親戚の話を聞いたことなんて‥そういえばなかった。
きっと話したくないんだろうから‥って聞かなかったのに、母さんと私の意志に反して聞くことになっちゃった。
桜様は私を見て、「間違いなく、姉の子だ。そっくりだもの」って‥涙を流しながら言ったんだ。
父さんが「父さんと母さんの結婚を母さんの家が反対してたから駆け落ちして結婚したんだ」って言ってたけど‥まさか母さんの実家が西遠寺だったなんて‥思わなかった。
だけど、(私がそのことを知ったことを)その時は、母さんには言わなかった。
だから、私は桜様にもそのことを黙っていてほしいって言ったの。
そのことって‥「私が母さんの実家が西遠寺だって知ったこと」「今回ここで会ったこと」
そのことを黙っててって。
桜様はだから、母さんの方に「娘が産まれたなら会わせてほしい」って連絡を入れたんだ。
まるで、私のことなんて知らないように、だ。
その電話を聞いて、母さんは「何故私がここにいるってわかったの」なんて今更なこと、勿論じゃないけど言わなかった。
西遠寺なら探そうと思えば、不可能なんてない。
今まで探さなかっただけなんだってわかるから。
「変わった目をした子供の噂があなたにも聞こえて来たのね」
母さんは桜様にそう言ったらしい。ただ、それだけ。
桜様と母さんが話したのはその時だけだったらしい。
西遠寺のお偉いさんは、家出した母さんが桜様と会うことを快しとはしなかったようだ。お兄様が亡くなられた今、桜様にとってはたった一人のご姉妹なのに。
でもそれは、母さんにとってもそう。
だから、私は頑張って後継者になって‥いつか二人のわだかまりみたいなものをとく手伝いが出来たらいいなって思ったんだ。
どうやるか‥とかはわかんないんだけど、あの頃は私が後継者になればさえ、なんとかなるって思ってたんだ。
目の話は‥いつしか「小学校の頃の嫌な思い出」から、「桜様に出会った切っ掛け」に変わっていた。
目標が出来て忙しくなったから‥思えば、子供たちの悪口に気持ちを割かれることもなくなっていた。
‥なんだけど‥
紅葉の回想の時間を「落ち込んでいる」と勘違いした千佳は、
「そんな事って! その人たちには関係ないじゃん! それに、くれちゃんの目は綺麗だよ! 」
怒気を含んだ声で叫んだ。
千佳の声でふと、紅葉は正気に戻った。
‥しまった、余計に心配させてしまった。
しかし、心配してくれたことについては、素直に嬉しかった。
「いや、ごめん。でも、ありがとう」
嬉しくって恥ずかしくって、お礼を言った声が思った以上に小声になってしまったのは‥我ながら驚いた。
頬を赤らめて俯く紅葉を視線の片隅に見ながら、
‥もしかして、くれちゃんが大人しくなってあんまり話さなくなったのって、それが原因?
‥事故以降のことって勝手に思ってたけど、そういえば、事故以前も少しおかしかったかも‥。
千佳は、考察を深めた。
紅葉についてもそのことと一緒に思い出した(正確には分かった)ことがあった。
‥ああそうか。私は事故に遭った時、それを忘れたかったんだ。
気にしてないって思ってただけで‥こころはずっと傷ついてた。
だから、忘れちゃおうって‥こころが「記憶することを拒否した」んだ。
‥結果、全部忘れちゃってたんだけど。
だから、そのこと‥目の事‥を思い出した時、記憶が戻ったのか。(全て戻ったのは、「自分の顔」を見たときだったけど)
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