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第一章
秋穂の真実 3
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「ちょっ、怖い! ななせ、高いとこダメ!」
「知ってる。だからこうしたの。あんた一メートル上でも怖がりのビビリだから。七星!」
その声と勢いに七星のスイッチが入ってしまう。
そう殴られて喜ぶ方のスイッチが。
「はい……」
着替えて。
早く、そうせかされて。
「ちょっと、なんでそれ、痛いって!」
「ばか、MRIとか取る時にやけるでしょ。 ほら、口開けろ!」
「はいー」
抵抗できない。
舌も、耳も。
金具が全部外されていく。
「ほら、下着付けてーああ……出来ないのか。いい、しばらくメス犬七星だかんね、樹乃が御主人様。命令には絶対服従! 返事は?」
あ、足りないか。
そう言われていつものように平手打ちが来る。
だめ、それしたら、抵抗できなくなる。
よけようとする前に、完全発動。
「はい……樹乃様」
「よし。こういう時に使えばいいのかなるほど。樹乃が死ぬとか言わなくてもいいんじゃん。七星だけスイッチ入れて樹乃が命令したら。へー‥‥‥。これからこうしよう」
樹乃は新発見だと考えて喜んでる。
七星の心の中ではふざけんな! そう叫んでいるがこれも居心地は悪くない。
罪悪感を感じなくて済む。
こうしていれば、二人とも暴力をふらずに側にいれれる。
もう首輪してよ、ななせに。ばか樹乃。
心の中でななせはそう叫んでいた。
「はい、病院行くよ」
「だから、怖いって!!?」
悲鳴を上げる七星を肩に担いで樹乃は階下の扉を開けて絶句してしまった。
予想はしていたが、まさかこんな昼日中からそんなことをしているなんて。
「兄貴‥‥‥何してんの?」
「あ、樹乃。なんで降りてきたのさ。見るなよ‥‥‥」
「きゃっ」
階下では友紀と秋穂が愛し合おうとしていた。
秋穂は恥じらいを見せて服を直そうとするが、友紀は上半身裸のままで七星を担ぎ上げている樹乃を見て呆れた顔をしていた。
「なんだ、七星は荷物になったのか?」
「あーもう、うるさいな。二人で好きなことしてるとこ、邪魔してごめん。こっちはほっといてよ。さっさと出て行くから‥‥‥ねえ、遠矢は?」
「兄さんをつけなさい。樹乃は妹なんだからさ、遠矢は出かけたよ。お前こそ、なんで七星、担いでるのさ? 新しいプレイか?」
「‥‥‥うるさいよ、エロ友紀。それに、秋穂姉さんも、その主体性のなさは感心しないわ。いい加減にどっちかにしたらどう? 兄貴たち、一卵性双生児なんだからもし産まれても、どっちの子供かわかんないじゃん」
御主人様モードの樹乃は無敵だった。
友紀は子供の話まで持ちだされ、秋穂とともに顔を見合わせて絶句してしまう。
罪なことをしているという実感があるのか、二人は樹乃から顔を逸らしていた。
ああ、めんどくさい。
さっさと要件を済ませて出て行こう。
樹乃は遠矢も含めたこの三人夫婦のいじいじとした隠れるような愛し合い方を好きになれなかった。
「ねえ、金貸して。七星のバカが右腕動かないの黙ってダンベル上げたから。もうヤバイの」
「え? 大丈夫なのかい? 病院に行くならまあ‥‥‥いいけどさ、秋穂?」
「あ、はい。ちょっと待って財布、どこだったかな‥‥‥」
昨夜、自分が殴ったからとは、樹乃は一言も言わない。
あくまで事故で押し通す気だった。
それを樹乃に抱き上げられた七星は黙って見ていたが、ぽつりと一言呟いてしまう。
「じゅの、悪い奴……」
七星に突っ込まれた樹乃は、うるさいよと頬をはたいて黙らせた。
まだまだ無敵モードは全開だった。
「黙れ、メス犬七星。誰のせいでもいいの! 余計なこと言わない!」
七星にだけ聞こえるように命令。
樹乃のその横暴ぶりも、七星は嫌じゃないようだった。
「はい、じゅの……不満だけど。さま」
「あーそう。後から完全にしつけてやるわ。ねーお金!」
「待てって。ほら、これで足りるのか?」
「んー‥‥‥、多分。ありがとう、兄貴」
物みたいにして七星を担ぎ、愛車で樹乃は家を後にする。
こんなめんどくさい現場はさっさと立ち去るに限るのだ。
「見られたね、秋穂」
「そうね、友紀。子供、かー出来てたら、産んでいい?」
「秋穂、遠矢といる時と三人でいる時だけ旦那様とか、古い言葉使うの止めたらっていうか、遠矢ともしてるんだろ?」
友紀は妻の変わりように呆れたように言う。
「だって、遠矢君はずっとあの秋穂しか知らないし。さきに友紀と恋人なってたのも知らないし‥‥‥お風呂は入るけど。キスも何もしてこないよ。遠矢君は、ただ、黙って介護するだけ。寝る時も離れてる。あの遊園地も、本当は来なかったら良かったのに」
そこまで言うか?
友紀は少しイラっとした。
「だって、そうしたら‥‥‥お父さんにお願いしてあんな滅茶苦茶なこと言わさなくて良かったのに」
「秋穂‥‥‥」
「ねえ、友紀も同罪だよ? 秋穂と友紀は同じ。秋穂のお父さんと遠矢君が一番の被害者」
「おい、もうやめろって」
「だって、秋穂は友紀だけを欲しいんだもの。その為ならなんでもする」
その狂った笑顔に、友紀は少しだけ狂った世界線の愛を見た。
「知ってる。だからこうしたの。あんた一メートル上でも怖がりのビビリだから。七星!」
その声と勢いに七星のスイッチが入ってしまう。
そう殴られて喜ぶ方のスイッチが。
「はい……」
着替えて。
早く、そうせかされて。
「ちょっと、なんでそれ、痛いって!」
「ばか、MRIとか取る時にやけるでしょ。 ほら、口開けろ!」
「はいー」
抵抗できない。
舌も、耳も。
金具が全部外されていく。
「ほら、下着付けてーああ……出来ないのか。いい、しばらくメス犬七星だかんね、樹乃が御主人様。命令には絶対服従! 返事は?」
あ、足りないか。
そう言われていつものように平手打ちが来る。
だめ、それしたら、抵抗できなくなる。
よけようとする前に、完全発動。
「はい……樹乃様」
「よし。こういう時に使えばいいのかなるほど。樹乃が死ぬとか言わなくてもいいんじゃん。七星だけスイッチ入れて樹乃が命令したら。へー‥‥‥。これからこうしよう」
樹乃は新発見だと考えて喜んでる。
七星の心の中ではふざけんな! そう叫んでいるがこれも居心地は悪くない。
罪悪感を感じなくて済む。
こうしていれば、二人とも暴力をふらずに側にいれれる。
もう首輪してよ、ななせに。ばか樹乃。
心の中でななせはそう叫んでいた。
「はい、病院行くよ」
「だから、怖いって!!?」
悲鳴を上げる七星を肩に担いで樹乃は階下の扉を開けて絶句してしまった。
予想はしていたが、まさかこんな昼日中からそんなことをしているなんて。
「兄貴‥‥‥何してんの?」
「あ、樹乃。なんで降りてきたのさ。見るなよ‥‥‥」
「きゃっ」
階下では友紀と秋穂が愛し合おうとしていた。
秋穂は恥じらいを見せて服を直そうとするが、友紀は上半身裸のままで七星を担ぎ上げている樹乃を見て呆れた顔をしていた。
「なんだ、七星は荷物になったのか?」
「あーもう、うるさいな。二人で好きなことしてるとこ、邪魔してごめん。こっちはほっといてよ。さっさと出て行くから‥‥‥ねえ、遠矢は?」
「兄さんをつけなさい。樹乃は妹なんだからさ、遠矢は出かけたよ。お前こそ、なんで七星、担いでるのさ? 新しいプレイか?」
「‥‥‥うるさいよ、エロ友紀。それに、秋穂姉さんも、その主体性のなさは感心しないわ。いい加減にどっちかにしたらどう? 兄貴たち、一卵性双生児なんだからもし産まれても、どっちの子供かわかんないじゃん」
御主人様モードの樹乃は無敵だった。
友紀は子供の話まで持ちだされ、秋穂とともに顔を見合わせて絶句してしまう。
罪なことをしているという実感があるのか、二人は樹乃から顔を逸らしていた。
ああ、めんどくさい。
さっさと要件を済ませて出て行こう。
樹乃は遠矢も含めたこの三人夫婦のいじいじとした隠れるような愛し合い方を好きになれなかった。
「ねえ、金貸して。七星のバカが右腕動かないの黙ってダンベル上げたから。もうヤバイの」
「え? 大丈夫なのかい? 病院に行くならまあ‥‥‥いいけどさ、秋穂?」
「あ、はい。ちょっと待って財布、どこだったかな‥‥‥」
昨夜、自分が殴ったからとは、樹乃は一言も言わない。
あくまで事故で押し通す気だった。
それを樹乃に抱き上げられた七星は黙って見ていたが、ぽつりと一言呟いてしまう。
「じゅの、悪い奴……」
七星に突っ込まれた樹乃は、うるさいよと頬をはたいて黙らせた。
まだまだ無敵モードは全開だった。
「黙れ、メス犬七星。誰のせいでもいいの! 余計なこと言わない!」
七星にだけ聞こえるように命令。
樹乃のその横暴ぶりも、七星は嫌じゃないようだった。
「はい、じゅの……不満だけど。さま」
「あーそう。後から完全にしつけてやるわ。ねーお金!」
「待てって。ほら、これで足りるのか?」
「んー‥‥‥、多分。ありがとう、兄貴」
物みたいにして七星を担ぎ、愛車で樹乃は家を後にする。
こんなめんどくさい現場はさっさと立ち去るに限るのだ。
「見られたね、秋穂」
「そうね、友紀。子供、かー出来てたら、産んでいい?」
「秋穂、遠矢といる時と三人でいる時だけ旦那様とか、古い言葉使うの止めたらっていうか、遠矢ともしてるんだろ?」
友紀は妻の変わりように呆れたように言う。
「だって、遠矢君はずっとあの秋穂しか知らないし。さきに友紀と恋人なってたのも知らないし‥‥‥お風呂は入るけど。キスも何もしてこないよ。遠矢君は、ただ、黙って介護するだけ。寝る時も離れてる。あの遊園地も、本当は来なかったら良かったのに」
そこまで言うか?
友紀は少しイラっとした。
「だって、そうしたら‥‥‥お父さんにお願いしてあんな滅茶苦茶なこと言わさなくて良かったのに」
「秋穂‥‥‥」
「ねえ、友紀も同罪だよ? 秋穂と友紀は同じ。秋穂のお父さんと遠矢君が一番の被害者」
「おい、もうやめろって」
「だって、秋穂は友紀だけを欲しいんだもの。その為ならなんでもする」
その狂った笑顔に、友紀は少しだけ狂った世界線の愛を見た。
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