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第223話
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「虎の妖魔よ、貴様に問う。
貴様にとって、真実の悪は何だ」
「っ…………えっ?」
魁蓮の問いかけに、虎珀は目を見開く。
まさか、質問を質問で返されるとは思わなかった。
それに、魁蓮がしているその質問は、今関係あるのだろうか。
色々とつっこみたいところだが、虎珀は顎に手を当て考える。
「真実の、悪……」
これまで、虎珀は己が考えた善悪を貫いてきた。
たとえ世間が善だと考えているものでも、自分が悪だと感じればそれは悪であって、そこに正解なんてものは求めない。
自分が考えるものが、全てだった。
だから、本当の正しさなんてものからは、虎珀はとうの昔に外れていたのだろう。
それ故に、この質問はとても難しい。
深く考えたことの無い内容に、虎珀は「うーん」と唸り始める。
(悪、じゃなくて……本当のって意味、だよな……)
自分にとっては悪であっても、それが本当の意味での悪なのか、なんて正直分からない。
それを判断できるほどの権力も頭脳も持ち合わせていないのだから。
だからぶっちゃけて言えば……
「分からない、だろう?」
「っ!!!!!」
虎珀は、魁蓮の言葉に顔を上げた。
そう、まさに虎珀が見出した答えだった。
いくら考えても本当の正解が出てこないし、かと言って導き出された答えも正しいのか謎だ。
結果、分からない。
それを、見透かされるなんて。
虎珀が驚いて固まっていると、魁蓮は目を細めた。
「それで合っている……間違いではない」
「……えっ?」
魁蓮の言葉に、虎珀はポカンとする。
分からない、という答えが合っているとは、どういうことなのだろうか。
そんな答え、なにも解決できるわけが無い。
虎珀が魁蓮の言葉を待っていると、魁蓮は廃村を見渡し、そしてそのまま遠くを見つめた。
「真実の悪が何か、それは我にも分からん。
そも、真実の悪というものが存在するのかすら……」
「っ……………………」
「だが知っているか?世間は、我こそが真実の悪だと定義付けている。ククッ、実に忌々しい者共だ。
この世にある厄災も、不幸も、全ては我が呼び寄せた呪いだとなぁ」
そう言いながら、魁蓮は不気味な笑みを浮かべた。
遠くを見つめながら、目を細め、綺麗な弧を描くように口角をあげている。
どれだけ綺麗な顔でも、何か不穏なものを含んだ笑顔は、こんなにも不気味に見えてしまうのだろうか。
心というものは、思いというものは、中々に厄介だ。
隠そうとしても、完全に隠すことは出来ないのだから。
「虎の妖魔よ。貴様は、そのままでいい」
「……?」
「この世には、変えようのない善と悪がある。それらを定義付けたのは、紛れもなく世間であり、時代の変化だ。だが、何もそれらに縛られる必要は無い」
「……えっ……」
ふと、魁蓮がそんなことを口にした。
虎珀が片眉をあげて疑問を抱いていると、魁蓮は虎珀へと視線を向ける。
「司雀から、貴様の話を聞いた。
己が感じる正しさを信じ、己が悪だと感じる全てを排除する生き方をしているらしいな。そこに種族の壁は無く、ただ己が定義した善と悪だけが存在している、と」
「……司雀……?」
その名前に、虎珀は聞き覚えがあった。
龍禅との日々があまりにも濃く、時々忘れそうにはなっていたのだが。
今から半年以上前に、その名前を名乗った妖魔に出会った気がする。
虎珀がその妖魔との会話を思い出していると、魁蓮は片眉を上げた。
「ん……?何だ、言葉を交わしただろう?」
「えっ」
「……あぁ……成程な。
はぁ……司雀め。また己だけ名乗り、立場を明かさぬまま聞き出したか……ったく、無駄な遠慮をしおって」
魁蓮は頭を抱えながら、そう愚痴をこぼす。
この時、虎珀はある答えを導き出していた。
妖魔の世界には、王などの制度は無い。
誰かが統治するような種族の世界でも無いため、人間とは違い、誰か1人を王として呼ぶのは実に珍しいこと。
だが虎珀は、この半年間で王と呼ばれる存在を2回耳にした。
1回目は、司雀という妖魔が言っていた、彼の主人である人物のこと。
そして2回目は、龍禅がいつか殺したいと追い求めている「鬼の王」のこと。
(……てことは、つまり……)
虎珀がひとつの答えに辿り着いた時。
まるでそれを見計らったかのように、魁蓮が口を開いた。
「司雀という妖魔を、覚えているか?
あれは我の側近であり、我の良き理解者だ。我がこの世に誕生した頃より、我の傍で仕えている。司雀のことだ……貴様と接触した際、我の名は一度も出さなかったのだろう」
「っ!……やっぱり、あの妖魔が言っていた主人って……あんたのことだったんだな」
薄々勘づいていたことだが、やはり以前司雀が言っていた「我が主」というのは、鬼の王で間違いないようだ。
たまたまとはいえ、虎珀は知らず知らずのうちにとんでもない立場にいる妖魔と接触していたようだ。
【それと……我が主については、実際にお会いしてからの方が良いでしょう。先にその存在の正体を明かしてしまうと、大抵の方は怖気付いて、会ってくれないので】
(そういうことか……今になって、理解した……)
司雀の、あの言葉の意味。
先に正体を知ってしまえば、誰も会いたがらない。
当然だろう、こんな恐怖の塊と言わんばかりの存在、誰が率先して会いたがるものか。
きっとそれは司雀も分かっていたことで、だからあえて鬼の王のことは言わなかったのだろう。
今は偶然会ってしまったとはいえ、虎珀も司雀の言う主の正体と、その主の情報をそれなりに持っていれば、たとえ会いたいと言われても首を横に振る。
なぜなら鬼の王の、会いたいという言葉は、きっと己の死を連想するから。
虎珀はギュッと拳を握ると、魁蓮を見つめた。
「……あんたが、その側近からどんな話を聞いたかは知らないが……俺は世間に流れる自分の噂も、他者から持たれている印象も、全く興味が無い。
そこに偽りがあったとしても、撤回する気もない。だから、あんたが聞いた俺の情報ってのが真実かは分からない」
自分の考えに自信がない訳では無い。
かと言って、理解して貰えるようなものとも思っていなかった。
いつだって、信じられるのは自分だけ。
どんな出会いを経験しても、結局最後に残るのは……自分の意思だけだ。
「そのままの俺でいいと言ってくれたことは、感謝する。批判されるより、悪い気はしないしな。
それに……俺はずっとこの価値観を貫き通すつもりだ。言われなくても、俺はこのままでいる。変わることは無い」
「……………………」
口先だけの感謝を述べ、虎珀は目を伏せた。
正直、鬼の王に褒められたからと言って、嬉しいかと言われればそうでも無い。
だって、今までしてきた行動は、誰かに褒められるためにしていた訳では無いのだ。
全て、自分がしたいと思っていたことをしていただけであって。
共感なんて、必要ない。
(同じ意見の奴なんて、いらねぇ……)
その時………魁蓮がおもむろに口を開いた。
「もし、今の己を変わらず貫き通すつもりならば、一つだけ忠告してやろう。
大切なものだけは、決して作るな」
「………………っ?」
虎珀の中に、新たな疑問が生まれる。
鬼の王がする忠告とは思えない発言、虎珀は伏せていた目を上げて、再び魁蓮を見据えた。
すると、顔を上げた先にあった魁蓮は……いつもと変わらない冷静な表情なのだが、どこか切なさが滲んでいるように見える。
その僅かな変化に虎珀が気づくと、ふと、優しい風が吹いてきた。
少しひんやりとした風は、虎珀を見つめる魁蓮の長羽織をゆらゆらと揺らし、優雅さを感じさせている。
「大切なものを、作るなって……どういう……」
沈黙に耐えられなくなった虎珀は、恐る恐る尋ね返した。
すると魁蓮は、再び遠くを見つめた。
その瞳には、微かな光が宿っていた。
「ただの経験談だ、話すことでもない。
今の己を変えたくないのならば、必要以上に周りに関心を持たぬ事だな」
「っ……」
「ただ、これだけは言える。
大切なものが己の手から零れ落ち、そして欠片すら残さず消えた時……全てが、悪に見える。今まで善と感じていたものも、全てだ。
世間、生物……そして、今まで信じていた己もな」
そう話す魁蓮の表情は、悲しそうだった。
言葉から察するに、彼は大切なものがあったのだろうか。
そしてそれが、今は…………。
この世に誕生して100年あまり、一体彼は、その年月の間に何を見てきたのだろう。
虎珀が言葉を失っていると、魁蓮は妖力を全身に込め始めた。
「すまんな、無駄話が過ぎた」
「……いや、別に……」
「我はそろそろ行く。城で司雀を待たせていたことを忘れていた。怒らせると、少々面倒でな」
「…………………………」
魁蓮は瞬間移動の準備を済ませた後、何かを思い出したように虎珀に向き直った。
「言い忘れていた。虎の妖魔よ、貴様と行動を共にしている妖魔とやらに伝えてくれ。
我は貴様が殺しに来る時を、待っていると」
「っ!?」
「ククッ、またな」
そう言うと魁蓮は、フッと姿を消した。
直後、廃村に漂っていた恐怖の圧は一瞬で消え、元の廃村の空気に戻った。
ただ、その場に取り残された虎珀は、すぐに動くことは出来なかった。
「殺しに来るのを待ってるって……何で……」
虎珀は、魁蓮の言葉が理解できなかった。
初めて対面した鬼の王。
だが虎珀が感じたのは、世間が抱く印象とはまるで違うもので……
虎珀が感じた鬼の王は……
不器用な優しさを持つ、孤独を纏った男だった。
貴様にとって、真実の悪は何だ」
「っ…………えっ?」
魁蓮の問いかけに、虎珀は目を見開く。
まさか、質問を質問で返されるとは思わなかった。
それに、魁蓮がしているその質問は、今関係あるのだろうか。
色々とつっこみたいところだが、虎珀は顎に手を当て考える。
「真実の、悪……」
これまで、虎珀は己が考えた善悪を貫いてきた。
たとえ世間が善だと考えているものでも、自分が悪だと感じればそれは悪であって、そこに正解なんてものは求めない。
自分が考えるものが、全てだった。
だから、本当の正しさなんてものからは、虎珀はとうの昔に外れていたのだろう。
それ故に、この質問はとても難しい。
深く考えたことの無い内容に、虎珀は「うーん」と唸り始める。
(悪、じゃなくて……本当のって意味、だよな……)
自分にとっては悪であっても、それが本当の意味での悪なのか、なんて正直分からない。
それを判断できるほどの権力も頭脳も持ち合わせていないのだから。
だからぶっちゃけて言えば……
「分からない、だろう?」
「っ!!!!!」
虎珀は、魁蓮の言葉に顔を上げた。
そう、まさに虎珀が見出した答えだった。
いくら考えても本当の正解が出てこないし、かと言って導き出された答えも正しいのか謎だ。
結果、分からない。
それを、見透かされるなんて。
虎珀が驚いて固まっていると、魁蓮は目を細めた。
「それで合っている……間違いではない」
「……えっ?」
魁蓮の言葉に、虎珀はポカンとする。
分からない、という答えが合っているとは、どういうことなのだろうか。
そんな答え、なにも解決できるわけが無い。
虎珀が魁蓮の言葉を待っていると、魁蓮は廃村を見渡し、そしてそのまま遠くを見つめた。
「真実の悪が何か、それは我にも分からん。
そも、真実の悪というものが存在するのかすら……」
「っ……………………」
「だが知っているか?世間は、我こそが真実の悪だと定義付けている。ククッ、実に忌々しい者共だ。
この世にある厄災も、不幸も、全ては我が呼び寄せた呪いだとなぁ」
そう言いながら、魁蓮は不気味な笑みを浮かべた。
遠くを見つめながら、目を細め、綺麗な弧を描くように口角をあげている。
どれだけ綺麗な顔でも、何か不穏なものを含んだ笑顔は、こんなにも不気味に見えてしまうのだろうか。
心というものは、思いというものは、中々に厄介だ。
隠そうとしても、完全に隠すことは出来ないのだから。
「虎の妖魔よ。貴様は、そのままでいい」
「……?」
「この世には、変えようのない善と悪がある。それらを定義付けたのは、紛れもなく世間であり、時代の変化だ。だが、何もそれらに縛られる必要は無い」
「……えっ……」
ふと、魁蓮がそんなことを口にした。
虎珀が片眉をあげて疑問を抱いていると、魁蓮は虎珀へと視線を向ける。
「司雀から、貴様の話を聞いた。
己が感じる正しさを信じ、己が悪だと感じる全てを排除する生き方をしているらしいな。そこに種族の壁は無く、ただ己が定義した善と悪だけが存在している、と」
「……司雀……?」
その名前に、虎珀は聞き覚えがあった。
龍禅との日々があまりにも濃く、時々忘れそうにはなっていたのだが。
今から半年以上前に、その名前を名乗った妖魔に出会った気がする。
虎珀がその妖魔との会話を思い出していると、魁蓮は片眉を上げた。
「ん……?何だ、言葉を交わしただろう?」
「えっ」
「……あぁ……成程な。
はぁ……司雀め。また己だけ名乗り、立場を明かさぬまま聞き出したか……ったく、無駄な遠慮をしおって」
魁蓮は頭を抱えながら、そう愚痴をこぼす。
この時、虎珀はある答えを導き出していた。
妖魔の世界には、王などの制度は無い。
誰かが統治するような種族の世界でも無いため、人間とは違い、誰か1人を王として呼ぶのは実に珍しいこと。
だが虎珀は、この半年間で王と呼ばれる存在を2回耳にした。
1回目は、司雀という妖魔が言っていた、彼の主人である人物のこと。
そして2回目は、龍禅がいつか殺したいと追い求めている「鬼の王」のこと。
(……てことは、つまり……)
虎珀がひとつの答えに辿り着いた時。
まるでそれを見計らったかのように、魁蓮が口を開いた。
「司雀という妖魔を、覚えているか?
あれは我の側近であり、我の良き理解者だ。我がこの世に誕生した頃より、我の傍で仕えている。司雀のことだ……貴様と接触した際、我の名は一度も出さなかったのだろう」
「っ!……やっぱり、あの妖魔が言っていた主人って……あんたのことだったんだな」
薄々勘づいていたことだが、やはり以前司雀が言っていた「我が主」というのは、鬼の王で間違いないようだ。
たまたまとはいえ、虎珀は知らず知らずのうちにとんでもない立場にいる妖魔と接触していたようだ。
【それと……我が主については、実際にお会いしてからの方が良いでしょう。先にその存在の正体を明かしてしまうと、大抵の方は怖気付いて、会ってくれないので】
(そういうことか……今になって、理解した……)
司雀の、あの言葉の意味。
先に正体を知ってしまえば、誰も会いたがらない。
当然だろう、こんな恐怖の塊と言わんばかりの存在、誰が率先して会いたがるものか。
きっとそれは司雀も分かっていたことで、だからあえて鬼の王のことは言わなかったのだろう。
今は偶然会ってしまったとはいえ、虎珀も司雀の言う主の正体と、その主の情報をそれなりに持っていれば、たとえ会いたいと言われても首を横に振る。
なぜなら鬼の王の、会いたいという言葉は、きっと己の死を連想するから。
虎珀はギュッと拳を握ると、魁蓮を見つめた。
「……あんたが、その側近からどんな話を聞いたかは知らないが……俺は世間に流れる自分の噂も、他者から持たれている印象も、全く興味が無い。
そこに偽りがあったとしても、撤回する気もない。だから、あんたが聞いた俺の情報ってのが真実かは分からない」
自分の考えに自信がない訳では無い。
かと言って、理解して貰えるようなものとも思っていなかった。
いつだって、信じられるのは自分だけ。
どんな出会いを経験しても、結局最後に残るのは……自分の意思だけだ。
「そのままの俺でいいと言ってくれたことは、感謝する。批判されるより、悪い気はしないしな。
それに……俺はずっとこの価値観を貫き通すつもりだ。言われなくても、俺はこのままでいる。変わることは無い」
「……………………」
口先だけの感謝を述べ、虎珀は目を伏せた。
正直、鬼の王に褒められたからと言って、嬉しいかと言われればそうでも無い。
だって、今までしてきた行動は、誰かに褒められるためにしていた訳では無いのだ。
全て、自分がしたいと思っていたことをしていただけであって。
共感なんて、必要ない。
(同じ意見の奴なんて、いらねぇ……)
その時………魁蓮がおもむろに口を開いた。
「もし、今の己を変わらず貫き通すつもりならば、一つだけ忠告してやろう。
大切なものだけは、決して作るな」
「………………っ?」
虎珀の中に、新たな疑問が生まれる。
鬼の王がする忠告とは思えない発言、虎珀は伏せていた目を上げて、再び魁蓮を見据えた。
すると、顔を上げた先にあった魁蓮は……いつもと変わらない冷静な表情なのだが、どこか切なさが滲んでいるように見える。
その僅かな変化に虎珀が気づくと、ふと、優しい風が吹いてきた。
少しひんやりとした風は、虎珀を見つめる魁蓮の長羽織をゆらゆらと揺らし、優雅さを感じさせている。
「大切なものを、作るなって……どういう……」
沈黙に耐えられなくなった虎珀は、恐る恐る尋ね返した。
すると魁蓮は、再び遠くを見つめた。
その瞳には、微かな光が宿っていた。
「ただの経験談だ、話すことでもない。
今の己を変えたくないのならば、必要以上に周りに関心を持たぬ事だな」
「っ……」
「ただ、これだけは言える。
大切なものが己の手から零れ落ち、そして欠片すら残さず消えた時……全てが、悪に見える。今まで善と感じていたものも、全てだ。
世間、生物……そして、今まで信じていた己もな」
そう話す魁蓮の表情は、悲しそうだった。
言葉から察するに、彼は大切なものがあったのだろうか。
そしてそれが、今は…………。
この世に誕生して100年あまり、一体彼は、その年月の間に何を見てきたのだろう。
虎珀が言葉を失っていると、魁蓮は妖力を全身に込め始めた。
「すまんな、無駄話が過ぎた」
「……いや、別に……」
「我はそろそろ行く。城で司雀を待たせていたことを忘れていた。怒らせると、少々面倒でな」
「…………………………」
魁蓮は瞬間移動の準備を済ませた後、何かを思い出したように虎珀に向き直った。
「言い忘れていた。虎の妖魔よ、貴様と行動を共にしている妖魔とやらに伝えてくれ。
我は貴様が殺しに来る時を、待っていると」
「っ!?」
「ククッ、またな」
そう言うと魁蓮は、フッと姿を消した。
直後、廃村に漂っていた恐怖の圧は一瞬で消え、元の廃村の空気に戻った。
ただ、その場に取り残された虎珀は、すぐに動くことは出来なかった。
「殺しに来るのを待ってるって……何で……」
虎珀は、魁蓮の言葉が理解できなかった。
初めて対面した鬼の王。
だが虎珀が感じたのは、世間が抱く印象とはまるで違うもので……
虎珀が感じた鬼の王は……
不器用な優しさを持つ、孤独を纏った男だった。
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