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第四章 恋の身支度
102.聖女、マヨネーズの異変 ※聖愛視点
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「王都の街って賑やかなんですね」
私は校外実習の準備の時間を使って下町に寄っていた。
聖女召喚されてから城か学園にしか行ったことがなかったため、とても新鮮な気持ちになった。
「聖愛は来たことがないから知らないだろうが、商店街は普段から賑やかなところが多いんだ」
少し鼻につく物言いだが、普段の商店街はもっと賑やかで騒がしいところらしい。
説明されなくてもそれぐらいはわかることなのに、殿下は得意げに説明する。
むしろ国の都市なのに静かな商店街が存在するなら教えて欲しい。
「魔物の討伐準備に忙しいんですね」
「さすが聖女様は聡明な方だ」
殿下の周りにいる彼らも私を煽てるように声をかけてくる。
魔物の討伐が近づいて、みんな準備に追われているのだろう。
バタバタしているところを見ると、ついついあの看護師さんがいないかと探してしまう。
「そういえば、聖愛が探していたマヨネーズっていう物を入手したぞ」
「えっ?」
あまりの嬉しさに殿下の手を握ってしまった。
頼られて嬉しいのだろう。
子どものような笑みを浮かべている。
「それは楽しみですね」
私も看護師さんに会えると思うと、つい笑ってしまう。
ただ、現実はうまくはいかなかった。
「マヨネーズを作っているのは男性なんですか?」
「ああ、俺が発明した新しい調味料だ」
殿下と共に買いに行くとそこは住居街の奥にある小さな牧場だった。
異世界の牛と鶏の見た目には驚いたが、どの子も体がボロボロになっていた。
「聖愛はこれが食べたかったんだろ?」
「ええ、そうですね」
私は看護師さんに会いたかっただけだ。
今彼女はどんな生活をしているのだろうか。
どこで何をしているのかは殿下達に聞いてもわからない。
だから、マヨネーズを手がかりに探していた。
結局は、情報があっても会うことすらできなかった。
「今日は貴族様がたくさん買われていきますね」
「ああ、きっと最近話題になっているから気にはなっているのだろう」
「またご贔屓にお願いします」
少し気持ち悪い笑みを浮かべて男は殿下に媚を売っていた。
私達はそのまま校外実習の集合場所に向かうと、すでにたくさんの生徒がいた。
その中には親友である彼女もいた。
「このマヨネーズって変わったにおいがするけど、結構美味しい調味料なんだな」
生徒達は先生が来るまでマヨネーズの味見をしていた。
「あなた達貴族だということを忘れたのかしら?」
「クジャ公爵令嬢、ごきげんよう」
すぐにマヨネーズを隠して挨拶するが、彼女もマヨネーズが気になるのだろう。
それに気づいた男達はマヨネーズを彼女に渡していた。
「聖愛も気になるなら食べてみたらどうだ? 味見をしてみたが変わった味だぞ」
振り返れば殿下やその友達もマヨネーズを興味深そうに味見をしていた。
「ありがとうございます」
私はマヨネーズを受け取ってみたが、明らかに知っているマヨネーズとは違い気持ち悪さを感じた。
この間"獣臭い"と聞いていたが、たしかに変わったにおいがする。
においからすでに美味しくないと分かってしまうほどだ。
「君達、校外実習の前なのに気が抜けているぞ」
担任の先生が来たため私は急いで蓋を閉めた。
「これから校外実習を始める。森に着く前にも魔物が出てくるため、グループ揃って気を抜かないよう挑みなさい」
「聖愛は俺らが守るから安心してくれ」
「将来騎士団長になる俺もいるからな」
別に守ってもらわなくても、自分で戦う力は持っている。
「ええ、頼りにしています」
出発前に面倒なことになってもやりづらいため、ここはこの人達を頼らないといけないのだろう。
三人に向けて優しく微笑んだ。
どことなく三人は嬉しそうにしていた。
私は殿下とその側近である二人とともに森へ向かった。
近くには先生もいるし、みんなで行動する予定になっているから問題はないだろう。
その時までそう思っていた。
私は校外実習の準備の時間を使って下町に寄っていた。
聖女召喚されてから城か学園にしか行ったことがなかったため、とても新鮮な気持ちになった。
「聖愛は来たことがないから知らないだろうが、商店街は普段から賑やかなところが多いんだ」
少し鼻につく物言いだが、普段の商店街はもっと賑やかで騒がしいところらしい。
説明されなくてもそれぐらいはわかることなのに、殿下は得意げに説明する。
むしろ国の都市なのに静かな商店街が存在するなら教えて欲しい。
「魔物の討伐準備に忙しいんですね」
「さすが聖女様は聡明な方だ」
殿下の周りにいる彼らも私を煽てるように声をかけてくる。
魔物の討伐が近づいて、みんな準備に追われているのだろう。
バタバタしているところを見ると、ついついあの看護師さんがいないかと探してしまう。
「そういえば、聖愛が探していたマヨネーズっていう物を入手したぞ」
「えっ?」
あまりの嬉しさに殿下の手を握ってしまった。
頼られて嬉しいのだろう。
子どものような笑みを浮かべている。
「それは楽しみですね」
私も看護師さんに会えると思うと、つい笑ってしまう。
ただ、現実はうまくはいかなかった。
「マヨネーズを作っているのは男性なんですか?」
「ああ、俺が発明した新しい調味料だ」
殿下と共に買いに行くとそこは住居街の奥にある小さな牧場だった。
異世界の牛と鶏の見た目には驚いたが、どの子も体がボロボロになっていた。
「聖愛はこれが食べたかったんだろ?」
「ええ、そうですね」
私は看護師さんに会いたかっただけだ。
今彼女はどんな生活をしているのだろうか。
どこで何をしているのかは殿下達に聞いてもわからない。
だから、マヨネーズを手がかりに探していた。
結局は、情報があっても会うことすらできなかった。
「今日は貴族様がたくさん買われていきますね」
「ああ、きっと最近話題になっているから気にはなっているのだろう」
「またご贔屓にお願いします」
少し気持ち悪い笑みを浮かべて男は殿下に媚を売っていた。
私達はそのまま校外実習の集合場所に向かうと、すでにたくさんの生徒がいた。
その中には親友である彼女もいた。
「このマヨネーズって変わったにおいがするけど、結構美味しい調味料なんだな」
生徒達は先生が来るまでマヨネーズの味見をしていた。
「あなた達貴族だということを忘れたのかしら?」
「クジャ公爵令嬢、ごきげんよう」
すぐにマヨネーズを隠して挨拶するが、彼女もマヨネーズが気になるのだろう。
それに気づいた男達はマヨネーズを彼女に渡していた。
「聖愛も気になるなら食べてみたらどうだ? 味見をしてみたが変わった味だぞ」
振り返れば殿下やその友達もマヨネーズを興味深そうに味見をしていた。
「ありがとうございます」
私はマヨネーズを受け取ってみたが、明らかに知っているマヨネーズとは違い気持ち悪さを感じた。
この間"獣臭い"と聞いていたが、たしかに変わったにおいがする。
においからすでに美味しくないと分かってしまうほどだ。
「君達、校外実習の前なのに気が抜けているぞ」
担任の先生が来たため私は急いで蓋を閉めた。
「これから校外実習を始める。森に着く前にも魔物が出てくるため、グループ揃って気を抜かないよう挑みなさい」
「聖愛は俺らが守るから安心してくれ」
「将来騎士団長になる俺もいるからな」
別に守ってもらわなくても、自分で戦う力は持っている。
「ええ、頼りにしています」
出発前に面倒なことになってもやりづらいため、ここはこの人達を頼らないといけないのだろう。
三人に向けて優しく微笑んだ。
どことなく三人は嬉しそうにしていた。
私は殿下とその側近である二人とともに森へ向かった。
近くには先生もいるし、みんなで行動する予定になっているから問題はないだろう。
その時までそう思っていた。
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