45 / 124
第四章 恋の身支度
96.偽聖女、テバサキを守る
しおりを挟む
「何をしているんですか! その手を離してください!」
急いでテバサキの元へ向かい男性の手を弾く。
「怪我はしていない?」
『クウェ!』
どうやらテバサキは無事のようだ。
男性に対して威嚇をしているのか羽を大きく広げて、ヘンテコな踊りをしていた。
ただ、その姿が可愛いため何も言う気にはなれない。
「こいつが勝手に襲って――」
「てばしゃきは何もしてないぽ!」
「そもそもお前らが俺の鶏を盗んだからだ!」
盗んだことには間違いないだろう。
ただ、処分してくれと言われたため、その先どうしようが私達の勝手だ。
「私達が盗んだという証拠があって言ってるのか?」
ちびっこ達と遊んでいたレナードも様子を見にきた。
「うっ……」
貴族に平民が逆らったら不敬罪になると誰もが知っている。
流石に騎士であるレナードが貴族かもしれないと思っていたら、何も言えないのだろう。
「俺は悪くないからな」
そう言って男はその場から去って行った。
あの人は何しに孤児院まで来たのだろうか。
それだけが疑問に残る。
「もうあそこで卵を買うのをやめるわ」
「前から野蛮な人だとは思っていたけど、実際に見たら距離を置きたくなるわね」
たくさんは作れないが、テバサキが卵を産むためマヨネーズを作ることはできる。
「とりあえず中に戻りましょうか。テバサキもしばらくは気をつけてね」
『クウェ!』
心配しないでくれと言っているのだろう。
羽をパタパタとしていたら、卵がポロンと落ちてきた。
相変わらずどのタイミングで産卵しているのだろうか。
鶏って一日に1個しか産まないと思っていたが、テバサキは何個もどこからか卵を出してくる。
きっと魔物だから私が考えられない生態をしているのだろう。
今日はなるべく外で遊ばないように声をかけて、孤児院の中で過ごすことにした。
「そういえばそろそろ魔物が出てくるわね」
「うちの夫も毎日ため息ばかり吐いているわよ」
マヨネーズを作りながらする会話は、主に最近のニュースだ。
「毎年学園の生徒達もいるから、冒険者はピリつくのよ」
「学園の生徒ですか?」
「ああ、マミ先生は知らないですよね。学園に通う生徒は経験のために魔物討伐に校外学習として参加するんですよ」
「それがちょうどこの時期なんです」
どうやら学園では魔物が溢れるこの時期を狙って、魔物討伐の経験を積むらしい。
アルヴィンとレナードもお互いにどっちが多く倒せるか争っていたと懐かしそうに話していた。
「冒険者とは関わらないようにしていても、貴族のご子息やご令嬢と揉め事にならないかとヒヤヒヤするらしいわ」
「中には魔物を倒して楽しんでいるやつが多いからな」
冒険者が魔物を倒しているタイミングで、学園に通う学生が気にせず魔法を放ってくることもあるらしい。
「中々貴族と関わるって大変なんですね」
「俺はもう貴族じゃないので安心してくださいね」
アルヴィンは熱い視線で私を見つめてくる。
勘違いだとわかっていても、どこか本気になってしまいそうだ。
「話してないで手を動かしてくださいね」
私は誤魔化すようにマヨネーズを作ることだけに集中することにした。
「ふふふ、アルヴィンさんその調子ですよ」
小さな声で主婦達は楽しそうにアルヴィンとの会話を楽しんでいた。
急いでテバサキの元へ向かい男性の手を弾く。
「怪我はしていない?」
『クウェ!』
どうやらテバサキは無事のようだ。
男性に対して威嚇をしているのか羽を大きく広げて、ヘンテコな踊りをしていた。
ただ、その姿が可愛いため何も言う気にはなれない。
「こいつが勝手に襲って――」
「てばしゃきは何もしてないぽ!」
「そもそもお前らが俺の鶏を盗んだからだ!」
盗んだことには間違いないだろう。
ただ、処分してくれと言われたため、その先どうしようが私達の勝手だ。
「私達が盗んだという証拠があって言ってるのか?」
ちびっこ達と遊んでいたレナードも様子を見にきた。
「うっ……」
貴族に平民が逆らったら不敬罪になると誰もが知っている。
流石に騎士であるレナードが貴族かもしれないと思っていたら、何も言えないのだろう。
「俺は悪くないからな」
そう言って男はその場から去って行った。
あの人は何しに孤児院まで来たのだろうか。
それだけが疑問に残る。
「もうあそこで卵を買うのをやめるわ」
「前から野蛮な人だとは思っていたけど、実際に見たら距離を置きたくなるわね」
たくさんは作れないが、テバサキが卵を産むためマヨネーズを作ることはできる。
「とりあえず中に戻りましょうか。テバサキもしばらくは気をつけてね」
『クウェ!』
心配しないでくれと言っているのだろう。
羽をパタパタとしていたら、卵がポロンと落ちてきた。
相変わらずどのタイミングで産卵しているのだろうか。
鶏って一日に1個しか産まないと思っていたが、テバサキは何個もどこからか卵を出してくる。
きっと魔物だから私が考えられない生態をしているのだろう。
今日はなるべく外で遊ばないように声をかけて、孤児院の中で過ごすことにした。
「そういえばそろそろ魔物が出てくるわね」
「うちの夫も毎日ため息ばかり吐いているわよ」
マヨネーズを作りながらする会話は、主に最近のニュースだ。
「毎年学園の生徒達もいるから、冒険者はピリつくのよ」
「学園の生徒ですか?」
「ああ、マミ先生は知らないですよね。学園に通う生徒は経験のために魔物討伐に校外学習として参加するんですよ」
「それがちょうどこの時期なんです」
どうやら学園では魔物が溢れるこの時期を狙って、魔物討伐の経験を積むらしい。
アルヴィンとレナードもお互いにどっちが多く倒せるか争っていたと懐かしそうに話していた。
「冒険者とは関わらないようにしていても、貴族のご子息やご令嬢と揉め事にならないかとヒヤヒヤするらしいわ」
「中には魔物を倒して楽しんでいるやつが多いからな」
冒険者が魔物を倒しているタイミングで、学園に通う学生が気にせず魔法を放ってくることもあるらしい。
「中々貴族と関わるって大変なんですね」
「俺はもう貴族じゃないので安心してくださいね」
アルヴィンは熱い視線で私を見つめてくる。
勘違いだとわかっていても、どこか本気になってしまいそうだ。
「話してないで手を動かしてくださいね」
私は誤魔化すようにマヨネーズを作ることだけに集中することにした。
「ふふふ、アルヴィンさんその調子ですよ」
小さな声で主婦達は楽しそうにアルヴィンとの会話を楽しんでいた。
応援ありがとうございます!
85
お気に入りに追加
3,994
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。