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第一章 社畜、パパになる

15.社畜、リーゼントの特技に驚く

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「これはどういうことだ……」

「ワアオ!」

 リーゼントとともにたくさんの物を抱えてゴボタのところに戻ると、拠点の姿が全く変わっていた。

「ゴボォ!」

 ゴボタは俺達に気づいたのか、走ってかけつけてきた。

 体は泥だらけだが、決して泥遊びをしていたのではないとわかるほどだ。

「これ全部ゴボタがやったのか?」

「ゴボォ!」

 手で胸を叩いて、誇らしげに立っている。

 俺は薬草もどきの地面を掘るように頼んでいた。

 それのなのに、いつのまにか小さな池ができており、元々あった土を使って壁のようなものを作っていた。

「泥を使ったんだな」

 薬草もどきの下にある土は水分を多く含んでいる。

 その泥と土を混ぜることで、程よく柔らかい土を作っていたのだ。

 今はまだ水分を多く含んでいるが、乾いた時にどこまで頑丈になるのかはわからない。

 ただ、視線を遮るには問題ないレベルだろう。

「ゴボタはすごいな!」

 俺は頑張ったゴボタの頭を撫でて褒める。

「にひひ!」

 ゴボタも嬉しいのか、俺に抱きついて顔をスリスリとしている。

 はぁー。

 我が子が可愛い。

 もう勝手に我が子認定しているが、ここまで懐いていたら我が子で良いだろう。

 この世界から帰る時に一緒にゴボタも連れて行けるのだろうか。

 リーゼントも置いていくわけにはいかないだろうしな。

 ただ、俺の服に顔をスリスリしたから服が汚れてしまった。

「ボス、オラも頑張ったんですよ!」

 リーゼントも褒められていないことに気づいたのか、ツルと枝を持ってきた。

 尻尾がブンブンと動いている。

「リーゼントもよくやったぞ」

「わふわふ!」

「ははは、なんだそれ!」

 聞いたこともない独特な笑い方に、つい俺は笑ってしまう。

 さっきよりも尻尾が高速に動いて、見えないぐらいブンブンしているため、よほど嬉しいのだろう。

「じゃあ、あとは屋根を作るだけだな」

 俺達は採ってきた木の枝をツルで縛ることにした。

「まずは枝を綺麗に並べ……」

 ゴボタとリーゼントに指示を出そうと思ったら、すでに綺麗に木の枝を並べていた。

 二人でどっちが先に速く動けるのか競い合っているようだ。

 また変な方向にいかなければ良いが……。

 危険なことも気にせずにやってしまうため、俺としてはヒヤヒヤしてしまう。

「並べたらツルで何度か巻きつけて固定すれば良いんだよな?」

 正直ツルで木の枝が固定されるのかと思ってしまう。

 だって、ロープじゃなくてただのツルだぞ?

 それでもあの集落で出来ていたなら、俺達でもできるはずだ。

 ここで活躍したのはリーゼントだった。

「編み込んだ方が良いぞ!」

 リーゼントは器用に前足を使って、ツルを編み込んでいく。

 強度自体は比較的ありそうだが、編み込むことでさらに強さが増しているように感じた。

「ひょっとしたらハンモックも作れるんじゃないか?」

「ハンモック?」

「はんもくん?」

 ゴボタが言うと、どこかの少年みたいな名前に聞こえる。

 俺は地面にハンモックの構造を書いていく。

 周囲には木が多いため、そこに固定すればできそうだ。

「それなら間に木がないとクルクルしちゃうぞ?」

「どういうことだ?」

 リーゼントは爪を出すと、地面に図面を描いていく。

 ええ、リーゼントが描いているのは図面だ。

 ただ編み込んだツルを木に結んだだけでは、広がらないためクルクルと丸まってしまう。

 それを防ぐためにハンモックの前後に木を取り付けることで、真ん中の寝る部分が大きく広がるのだ。

 その図面のわかりやすさに俺とゴボタは驚いて言葉も出ない。

「これでしっかりツルを編み込めば簡単――」

「よし、リーゼントくん。君をハンモック係に任命しよう」

「屋根は作らなくても良いのか?」

「あー、今日は屋根で明日からハンモック係だな」

「犬使いが荒いぞ」

「そっ……そうだよな」

 ただ、快適な生活をするにはリーゼントが欠かせないような気がした。

 俺とゴボタでは、ツルの編み込み方も知らないからな。

 三つ編みをしろと言われてもできる気がしない。

「はぁー、スクーターに乗れたらな……」

 リーゼントはスクーターと俺をチラチラと見ていた。

 リーゼントにとってスクーターは大事な相棒だからな。

「よし、絶対にガソリンを探してくる!」

「ワォ?」

 本当にできるのかという目で俺を見ている。

 正直口が先に動いていたため、石油があるのかわからない。

 ただ、俺の中で謎の半透明の板で気になっている項目があったからな。

 それにこれから全振りしたら、石油が出てくるかもしれない。

 むしろそれに賭けるしかなかった。

「リーゼントさまああああ、お願いします」

 俺は両手を合わせてお願いをすると、ため息を吐いてこっちを見ていた。

「ボスが言うなら仕方ないな」

 そう言ってリーゼントは早速木の枝とツルを使って屋根を作り出した。

 尻尾がブンブンと振っているため、細かい作業が好きなんだろう。

「りーじぇっと、かわいいね」

「ああ、素直なやつだからな」

 俺とゴボタはそんなリーゼントの後ろ姿を眺めていた。
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