【書籍化決定】超リアルなVRMMOのNPCに転生して年中無休働いていたら、社畜NPCと呼ばれていました

k-ing ★書籍発売中

文字の大きさ
上 下
150 / 150
第四章

150.NPC、キシャの装備を作る

しおりを挟む
 早速、鍛冶炉の魔石に魔力を込めて、使い心地の確認をする。

「おー、火の調節がめちゃくちゃ楽だな」

 温度を変えるためには一手間増える。

 空気を入れて火力を増したり、時間を置いて冷却させるために時間がかかってしまう。

 いくら魔法で代用したり、素早く動いたとしても限度がある。

 その工程が魔力ですぐに変われば時間短縮ができる。

 日常生活で魔法をあまり使うことがないため、魔力はいくらでもあるからな。

「ヴァーちゃんこれはなに?」

 マスオは作ったばかりの部品を手に取り、楽しそうに振り回している。

「あー、それはジョイント部分に使うやつで左右に揺れるのを軽減させるためだ」

 猛禽類の翼の根本にある骨は円球形になっており可動域が広い。

 その特性を活かして、180度動く構造になっている。

 間にはスライムのゼリーを塗り込むことで、摩擦で削れるのを防いでいるため、たくさん動いても問題はない。

 イメージとしては人間の股関節に近い。

「ごぶこぼ! みてみて!」

 ヴァイルはもう一つの部品を握り、勢いよく手を放した。

「「うげっ!?」」

 大きく飛び跳ねたコイルがごぶたんとこぼたんに直撃する。

「スプリングコイルとして使えそうだな」

 火を吹くトカゲの尻尾をクルクルとコイル状に巻いて、形を固定させることで大きなバネを作った。

 あとは柱とスプリングコイルをくっつけて、鎧に固定させることでキシャの装備が完成する。

「これは本当に装備なのか?」
「オレ様こんなやつを鎧を身に纏って戦うのは嫌だぞ」

 さすがに亀の甲羅みたいな鎧を二人に着させるつもりはない。

 二人はそれぞれ体にあった装備を作るつもりだ。

 鬼と狼男に甲冑を着させたら、絶対かっこいいからな。

「縄で座面を吊り下げれば完成だな」

 四つの柱に縄を結んで座面を吊るせば、まるでハンモックのような変わった椅子が完成した。

 左右の横揺れは円球型のジョイントとハンモック構造で防ぎ、スプリングコイルが上下運動を吸収する。

 試作品だがひとまず形になって良かった。

「じゃあ、すぐに戻ってくるけど……うげっ!?」

 俺はキシャの装備を持って、そのまま部屋から出ようとしたが出られなかった。

 キシャの装備に柱と椅子が付いているため、大きくなってしまう。

 部屋をいくつも抜けて、外に出ることを忘れていた。

「ボスってどこか抜けているな」
「おおお、オレ様はもちろん気づいていたぞ?」
「ほんとか?」
「ぐぬぬぬ……」

 俺は一旦弓に持ち替えて、弓を放つ準備をする。

「何をする気だ?」

「もちろんリフォーム――」

「ダメ! せっかく一緒に部屋を作った思い出があるのに……」

 悲しそうな顔でマスオは俺を見ていた。

 確かに一緒に魔物を倒して、洞窟を広くして部屋を使った仲だ。

 ここには俺との思い出が詰まっているのだろう。

 俺も思い出は大事にしたい派だからな。

「あっ、ちょっと待っててね! 帰還石を使えばすぐに移動できるはず」

 急いで素材庫に行くと、何か石のようなものを持ってきた。

 手に持っていたのは魔石とは異なり、どこか宝石に近い見た目をしている。

 魔石は形の整っていない石に近いが、帰還石はダイアモンドカットされて形が整っているようだ。

「これに魔力をこめると外に出られるよ」

 まるでゲームにある洞窟を一瞬で抜けられるアイテムに似ている。

「これは外にしか出られないのか?」

「んー、帰還石ってそういう仕組みだからね」

 どういう仕組みで外に出られるのだろうか。

 帰還って名前に着くぐらいだから、家に帰る仕組みはないのかな?

 社畜にとったら出退勤の時間短縮は大事だって聞くぐらいだしな。

 俺は帰還石を鑑定することにした。

【鑑定結果】

アイテム名:帰還石
効果:登録した場所に瞬時に移動できる加工された魔石。
スロット1:ダンジョン入り口
スロット2:
スロット3:

 ダンジョンはここの洞窟の名前だろう。

 これからはダンジョンよりマスオ家とかの方が、わかりやすい気がする。

「あと二つ空き枠があるってことは移動場所の登録ができるのか」

 バビット達がいる町とアラン達三兄弟がいる町を登録したら、キシャを使わなくてもすぐに移動できる気がする。

 それだけでだいぶ移動時間が短縮できるからな。

「帰還石も一応魔石の分類になるのか。加工された魔石って……」

 アイテムの説明に加工された魔石と書いてあった。

 ってことは魔石自体を加工すれば、いくらでも帰還石が作れる。

 いつかは魔石を加工する技術を持った人に弟子入りしたいと前から思っていたからな。

 その技術があるとわかっただけで、俺は社畜バイトニスト魂が疼く。

「ん? これは僕が作った――」
「さすがはマブタチ! 持つものは友達だな」

 まさか魔石を加工できる人物が目の前にいるとは、思いもしなかった。

 ぜひとも弟子入りしたいぐらいだ。

「俺に帰還石の作り方を教えてくれ!」

「簡単だけどいいのー?」

「ああ、ずっと会いたかった人にやっと出会えたからな!」

「ほんと? 僕も初めて頼られて嬉しいな」

 キラキラと嬉しそうに笑うマスオ。

 本当に俺達って良い関係になりそうだな。

「マスター気づいているかな?」
「何が……?」
「利用されていることに……。ああ、お前もバカだったな」
「ゴブリンに言われたくねーよ!」
「今は鬼だ! コボルトめ!」
「オレ様は狼男だぞ!」
「くくく、狼男って……」

 どうやらごぶたんとこぼたんも、俺達が仲良くなったことを喜んでくれているようだ。
しおりを挟む
感想 22

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(22件)

獅蘭
2024.11.06 獅蘭

最新話に爆笑してしまいました……ヴァイトが神認定されてる……確かに超人ではあるけれど……。
お兄ちゃんが神様認定された妹…、事実知ったら心境どうなるんだろう……。
まず、リアル兄であることに驚愕と号泣は何となく理解できます。
もし…さくらがさくらのままだったら…絶対にさくら……⁉︎って、ヴァイトは言ってたな……

解除
みけつ
2024.10.31 みけつ

久しぶりに読み返したけどやっぱり面白い
でも内容変わった…?
はじまりの街で書類まとめてのくだり魔物たちの異常発生の原因云々のくだり
無くなったんかな
あれはあれで面白かったけど
展開早くなって読みやすくなった気もする

k-ing ★書籍発売中
2024.11.01 k-ing ★書籍発売中

みけつ様

はじめはチュートリアルなのでスローライフ中心ですが、元がVRMMOの世界でプレイヤーが参加してからテンポは上げていますね・:*+.\(( °ω° ))/.:+

解除
獅蘭
2024.06.10 獅蘭

一気に読みました。
い、一応BL表記注意のはあったほうがいいかもです!

ヴァユマ……ハマりそうなのですが、どうしてくれますか……((

k-ing ★書籍発売中
2024.06.10 k-ing ★書籍発売中

獅蘭様

感想ありがとうございます!
BL表記があるとこれだと物足りないんですよね……。
BLというよりはブロマンス。
勝手に周囲がBLに引き込もうとしているだけなのでね笑

そこはハマってくださいwwww

解除

あなたにおすすめの小説

もふもふで始めるVRMMO生活 ~寄り道しながらマイペースに楽しみます~

ゆるり
ファンタジー
☆第17回ファンタジー小説大賞で【癒し系ほっこり賞】を受賞しました!☆ ようやくこの日がやってきた。自由度が最高と噂されてたフルダイブ型VRMMOのサービス開始日だよ。 最初の種族選択でガチャをしたらびっくり。希少種のもふもふが当たったみたい。 この幸運に全力で乗っかって、マイペースにゲームを楽しもう! ……もぐもぐ。この世界、ご飯美味しすぎでは? *** ゲーム生活をのんびり楽しむ話。 バトルもありますが、基本はスローライフ。 主人公は羽のあるうさぎになって、愛嬌を振りまきながら、あっちへこっちへフラフラと、異世界のようなゲーム世界を満喫します。 カクヨム様でも公開しております。

女神の代わりに異世界漫遊  ~ほのぼの・まったり。時々、ざまぁ?~

大福にゃここ
ファンタジー
目の前に、女神を名乗る女性が立っていた。 麗しい彼女の願いは「自分の代わりに世界を見て欲しい」それだけ。 使命も何もなく、ただ、その世界で楽しく生きていくだけでいいらしい。 厳しい異世界で生き抜く為のスキルも色々と貰い、食いしん坊だけど優しくて可愛い従魔も一緒! 忙しくて自由のない女神の代わりに、異世界を楽しんでこよう♪ 13話目くらいから話が動きますので、気長にお付き合いください! 最初はとっつきにくいかもしれませんが、どうか続きを読んでみてくださいね^^ ※お気に入り登録や感想がとても励みになっています。 ありがとうございます!  (なかなかお返事書けなくてごめんなさい) ※小説家になろう様にも投稿しています

野草から始まる異世界スローライフ

深月カナメ
ファンタジー
花、植物に癒されたキャンプ場からの帰り、事故にあい異世界に転生。気付けば子供の姿で、名前はエルバという。 私ーーエルバはスクスク育ち。 ある日、ふれた薬草の名前、効能が頭の中に聞こえた。 (このスキル使える)   エルバはみたこともない植物をもとめ、魔法のある世界で優しい両親も恵まれ、私の第二の人生はいま異世界ではじまった。 エブリスタ様にて掲載中です。 表紙は表紙メーカー様をお借りいたしました。 プロローグ〜78話までを第一章として、誤字脱字を直したものに変えました。 物語は変わっておりません。 一応、誤字脱字、文章などを直したはずですが、まだまだあると思います。見直しながら第二章を進めたいと思っております。 よろしくお願いします。

【完結】VRMMOでチュートリアルを2回やった生産職のボクは最強になりました

鳥山正人
ファンタジー
フルダイブ型VRMMOゲームの『スペードのクイーン』のオープンベータ版が終わり、正式リリースされる事になったので早速やってみたら、いきなりのサーバーダウン。 だけどボクだけ知らずにそのままチュートリアルをやっていた。 チュートリアルが終わってさぁ冒険の始まり。と思ったらもう一度チュートリアルから開始。 2度目のチュートリアルでも同じようにクリアしたら隠し要素を発見。 そこから怒涛の快進撃で最強になりました。 鍛冶、錬金で主人公がまったり最強になるお話です。 ※この作品は「DADAN WEB小説コンテスト」1次選考通過した【第1章完結】デスペナのないVRMMOで〜をブラッシュアップして、続きの物語を描いた作品です。 その事を理解していただきお読みいただければ幸いです。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

憧れのテイマーになれたけど、何で神獣ばっかりなの⁉

陣ノ内猫子
ファンタジー
 神様の使い魔を助けて死んでしまった主人公。  お詫びにと、ずっとなりたいと思っていたテイマーとなって、憧れの異世界へ行けることに。  チートな力と装備を神様からもらって、助けた使い魔を連れ、いざ異世界へGO! ーーーーーーーーー  これはボクっ子女子が織りなす、チートな冒険物語です。  ご都合主義、あるかもしれません。  一話一話が短いです。  週一回を目標に投稿したと思います。  面白い、続きが読みたいと思って頂けたら幸いです。  誤字脱字があれば教えてください。すぐに修正します。  感想を頂けると嬉しいです。(返事ができないこともあるかもしれません)  

異世界転生したのだけれど。〜チート隠して、目指せ! のんびり冒険者 (仮)

ひなた
ファンタジー
…どうやら私、神様のミスで死んだようです。 流行りの異世界転生?と内心(神様にモロバレしてたけど)わくわくしてたら案の定! 剣と魔法のファンタジー世界に転生することに。 せっかくだからと魔力多めにもらったら、多すぎた!? オマケに最後の最後にまたもや神様がミス! 世界で自分しかいない特殊個体の猫獣人に なっちゃって!? 規格外すぎて親に捨てられ早2年経ちました。 ……路上生活、そろそろやめたいと思います。 異世界転生わくわくしてたけど ちょっとだけ神様恨みそう。 脱路上生活!がしたかっただけなのに なんで無双してるんだ私???

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。