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第四章
149.NPC、愛称の才能がある
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「うぉー! 本当に工房部屋があるんだな!」
洞窟の中を言われた通りに移動すると、やっと工房部屋に着いた。
大きな鍛治炉だけではなく、ハンマーや金床などの道具まで全て揃っていた。
しかも、魔力で操作する鍛冶炉なのか大きな魔石が付いていた。
魔力の操作に慣れている俺としてはそちらの方がありがたい。
鍛冶炉の管理はブギーがやっていたからな。
「あれは遊びに来たサラマンダーの魔石だよ!」
どうやら火を吹くトカゲから出てくる魔石が置いてあるらしい。
確かに火を吹いた時に何かに使えないかと思ったが、魔石を鍛治炉に利用するとは思わなかった。
俺が知らない魔石の使い方がここにはあるのかもしれない。
知っている魔石の使い方なんて、飲食店の呼び出しベルに活用するぐらいだ。
「もう俺をあそこで焼き切ってくれ。鬼焼肉にしてくれ……」
「おい、正気に戻るんだ! オレ様の犬焼肉の方が味はうまいはずだ!」
ここに来るまでに鬼のごぶたんと狼男のこぼたんは何度も防犯装置に巻き込まれていた。
その度に聖職者スキルで回復させていたが、まだまだ精神的に訓練が必要なんだろう。
ずっと今にも死にそうなほど顔色が青白く活気もない。
「この工房部屋をしばらく使ってもいいか?」
「いつでも使っていいよ! 僕達はマブダチだからな!」
これでキシャの装備が作れそうだ。
お礼にごぶたんとごぼたんの武器や防具も作ってあげよう。
俺がいない間に防犯装置に巻き込まれたら可哀想だしな。
多少の装備が整っていたら、あんな酷い目に遭うこともないだろう。
「そういえば、工房部屋から素材庫まで遠くないか?」
吸い込まれた魔物の素材は洞窟の入り口側にあったが、工房部屋は奥の方にある。
ユーマのような勇者であれば一気に運べるが、キシャの装備ってなると大きくなるため、何度も移動する必要が出てくる。
「んー、少し待っててね!」
少年は大きく手を挙げると再び壁が動き出す。
まるで洞窟が生きているかのように、洞窟内の構造が変わっていく。
「じゃーん! 隣の部屋に移動させました!」
さっきまでなかった扉を開けると、隣に素材庫が隣接されていた。
本当に少年は特殊な力を持っているようだ。
これでいくらでも装備を作ることができるだろう。
「さすが少年だな! ありがとう!」
お礼を伝えるとどこか悲しそうな顔をしている。
何か間違ったことをしたのだろうか?
「ボスはひどいですね」
「さすがにマブダチのことを少年って言うのは、オレ様もしないぞ」
ごぶたんとこぼたんがこっちをみて、コソコソと話している。
どうやら呼び方を間違えてしまったようだ。
確かに見た目はナース服を着ているから、ほぼ少女にしか見えない。
むしろ、勘違いさせるようにナース服を勧めたやつが許せないな。
「ああ、少年じゃなくて少女――」
「ちーがーうー!」
「何が違うんだ?」
少年は怒ってその場でジタバタとしている。
「僕はマスターなの!」
「マスター?」
「そうだよ! ここではマスターって呼ばれてるの!」
きっと喫茶店のマスターみたいに店主って呼ばれたいのだろうか。
小さい時ってごっこ遊びとか楽しいもんね。
ただ、喫茶店でもないのにマスターって呼ぶのは抵抗感がある。
「ニックネームをつけるのはどうだ?」
「ニックネーム?」
「お互いに呼びやすい名前をつけるってことだ」
少年は目を輝かせいた。
正直自分で提案したものの、俺も誰かに愛称をつけたことがない。
今までやりたかった愛称決めに、俺も心がウキウキする。
それにせっかくならマブダチらしく、愛称で呼んだ方が仲良くなれる気がした。
俺にそんな存在は今までいなかったしな。
「ヴァイトだから……」
「マスターだから……」
お互いに顔を見合わせていると良い名前が浮かび上がった。
少女と間違われないように、中性的な名前よりは男性っぽい方が良いだろう。
名前で仲間外れにされることってあるからな。
「せーの!」
掛け声を合わせて、同じタイミングで愛称を発表する。
「マスオ!」
「ヴァーちゃん!」
ん?
今度は俺が女性っぽい愛称になるのか?
おじいちゃんではなくて、おばあちゃんになるとは思いもしなかった。
ただ、少年はマスオと呼ばれて嬉しそうだ。
「いやいや、さすがにマスオはないだろ……」
「オレ様もマスオは――」
「みんな、これからは僕のことをマスオって呼ぶんだよ!」
「「あっ……はい」」
洞窟にいる少年の名前は〝マスオ〟になった。
「じゃあ、しばらく工房部屋を借りるぞ」
ここにきた目的を忘れてはいけない。
早くキシャの装備を作らないと、チェリーに怒られるからな。
洞窟の中を言われた通りに移動すると、やっと工房部屋に着いた。
大きな鍛治炉だけではなく、ハンマーや金床などの道具まで全て揃っていた。
しかも、魔力で操作する鍛冶炉なのか大きな魔石が付いていた。
魔力の操作に慣れている俺としてはそちらの方がありがたい。
鍛冶炉の管理はブギーがやっていたからな。
「あれは遊びに来たサラマンダーの魔石だよ!」
どうやら火を吹くトカゲから出てくる魔石が置いてあるらしい。
確かに火を吹いた時に何かに使えないかと思ったが、魔石を鍛治炉に利用するとは思わなかった。
俺が知らない魔石の使い方がここにはあるのかもしれない。
知っている魔石の使い方なんて、飲食店の呼び出しベルに活用するぐらいだ。
「もう俺をあそこで焼き切ってくれ。鬼焼肉にしてくれ……」
「おい、正気に戻るんだ! オレ様の犬焼肉の方が味はうまいはずだ!」
ここに来るまでに鬼のごぶたんと狼男のこぼたんは何度も防犯装置に巻き込まれていた。
その度に聖職者スキルで回復させていたが、まだまだ精神的に訓練が必要なんだろう。
ずっと今にも死にそうなほど顔色が青白く活気もない。
「この工房部屋をしばらく使ってもいいか?」
「いつでも使っていいよ! 僕達はマブダチだからな!」
これでキシャの装備が作れそうだ。
お礼にごぶたんとごぼたんの武器や防具も作ってあげよう。
俺がいない間に防犯装置に巻き込まれたら可哀想だしな。
多少の装備が整っていたら、あんな酷い目に遭うこともないだろう。
「そういえば、工房部屋から素材庫まで遠くないか?」
吸い込まれた魔物の素材は洞窟の入り口側にあったが、工房部屋は奥の方にある。
ユーマのような勇者であれば一気に運べるが、キシャの装備ってなると大きくなるため、何度も移動する必要が出てくる。
「んー、少し待っててね!」
少年は大きく手を挙げると再び壁が動き出す。
まるで洞窟が生きているかのように、洞窟内の構造が変わっていく。
「じゃーん! 隣の部屋に移動させました!」
さっきまでなかった扉を開けると、隣に素材庫が隣接されていた。
本当に少年は特殊な力を持っているようだ。
これでいくらでも装備を作ることができるだろう。
「さすが少年だな! ありがとう!」
お礼を伝えるとどこか悲しそうな顔をしている。
何か間違ったことをしたのだろうか?
「ボスはひどいですね」
「さすがにマブダチのことを少年って言うのは、オレ様もしないぞ」
ごぶたんとこぼたんがこっちをみて、コソコソと話している。
どうやら呼び方を間違えてしまったようだ。
確かに見た目はナース服を着ているから、ほぼ少女にしか見えない。
むしろ、勘違いさせるようにナース服を勧めたやつが許せないな。
「ああ、少年じゃなくて少女――」
「ちーがーうー!」
「何が違うんだ?」
少年は怒ってその場でジタバタとしている。
「僕はマスターなの!」
「マスター?」
「そうだよ! ここではマスターって呼ばれてるの!」
きっと喫茶店のマスターみたいに店主って呼ばれたいのだろうか。
小さい時ってごっこ遊びとか楽しいもんね。
ただ、喫茶店でもないのにマスターって呼ぶのは抵抗感がある。
「ニックネームをつけるのはどうだ?」
「ニックネーム?」
「お互いに呼びやすい名前をつけるってことだ」
少年は目を輝かせいた。
正直自分で提案したものの、俺も誰かに愛称をつけたことがない。
今までやりたかった愛称決めに、俺も心がウキウキする。
それにせっかくならマブダチらしく、愛称で呼んだ方が仲良くなれる気がした。
俺にそんな存在は今までいなかったしな。
「ヴァイトだから……」
「マスターだから……」
お互いに顔を見合わせていると良い名前が浮かび上がった。
少女と間違われないように、中性的な名前よりは男性っぽい方が良いだろう。
名前で仲間外れにされることってあるからな。
「せーの!」
掛け声を合わせて、同じタイミングで愛称を発表する。
「マスオ!」
「ヴァーちゃん!」
ん?
今度は俺が女性っぽい愛称になるのか?
おじいちゃんではなくて、おばあちゃんになるとは思いもしなかった。
ただ、少年はマスオと呼ばれて嬉しそうだ。
「いやいや、さすがにマスオはないだろ……」
「オレ様もマスオは――」
「みんな、これからは僕のことをマスオって呼ぶんだよ!」
「「あっ……はい」」
洞窟にいる少年の名前は〝マスオ〟になった。
「じゃあ、しばらく工房部屋を借りるぞ」
ここにきた目的を忘れてはいけない。
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