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32.飼い主、スキルを知る ※一部マービン視点

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「それで今後のことだが、なるべくマービンと一緒に過ごしてもらっても構わないか?」

「いっしょに?」

「ああ。さすがに子ども一人で居させるわけにはいかないからな。また紅蓮の冒険団がなにをやらかすかわからないから、落ち着くまでは一緒に行動してくれ」

 紅蓮の冒険団は警備隊に一旦引き渡される形となった。

 そこで色々と話を聞くことになっている。

 悪いことをしたら警備隊に捕まるってのは、こういうことを言うんだね。

 実際に起きていることって知らなかったな。

 ちなみに僕がお金と交換されたってやつも悪いことらしい。

『俺がココロを守るからな!』
『僕がココロを守るから安心してね!』
『私から離れるんじゃないわよ!』

 ケルベロスゥも僕を守ろうと張り切っているようだ。

「俺はもう少し話があるから冒険者ギルドの中で待ってて」

「受付のお姉さんに声をかけるとジュースがもらえるからな!」

「はーい!」

 僕達は部屋を出て、受付のお姉さんに会いにいくことにした。

 ♢

「はぁー、一気に疲れた気がする」

「お前達には迷惑をかけたな」

 今回の件で紅蓮の冒険団は冒険者の資格を失う。

 シュバルツとケルベロスゥが何もやっていないからだ。

 魔獣と動物のことを信じるのかと言われそうだが、それだけ紅蓮の冒険団は小さな罪を重ねてきたらしい。

 命がけだったが、冒険者ギルドは俺達のおかげで毒を排除できたってことだな。

「それにしても中々すごい話を聞いたな」

「未だにスキルが継承されるって思っている人がいるってことだな」

 昔からスキルは親から継承されると言われてきた。

 それでもココロのように稀に先祖返りと呼ばれる存在もいる。

 ただ、その話も100年近く前の話のため、よほどのことがない限りスキルで捨てられることはないと思っていた。

 スキルは遺伝よりも環境に左右される。

 どうやって生きたいか子どもの頃に思い描いたことにスキルは反応すると、最近は言われるようになった。

 親とスキルが似るのは、子どもが親の仕事を見ているから影響するんだろう。

 現に俺のスキルは親達とは異なっている。

 それに教会では両親達に説明があるくらいだ。

 それなのにココロは捨てられたと言っていた。

 他には何か理由があるのだろうか。

「スキルは本人の才能みたいなものだから、そこまで気にしないはずなんだけどね」

「よほど田舎に住んでいたんだろうな」

「ここも田舎だけどな」

 この町も国の外れにある方だ。

 それよりも遠くにある田舎町にココロは住んでいたことになる。

 閉鎖的な町になればなるほど、今では間違えと言われている知識も常識として存在している。

 それがココロを苦しめたのだろう。

「さすが王都で働いていた騎士様は違うな」

「もう引退した身だぞ」

「ははは、あの時の怪我がなければな」

「俺は町の人を守ることが出来たから後悔はないぞ」

 そうは言っても肩にある傷が時折痛むことがある。

 魔物から市民を守った俺は一種の英雄と呼ばれる存在になった。

 肩の傷も騎士の勲章っていえばカッコよく聞こえる。ただ、剣を握れなくなった体は引退するしかなかった。

 それに守らなければいけない大事なものを守ることができなかった。

 もう後悔しても遅いからな……。

 騎士を辞めてからは相棒だったシュバルツと放浪しているときに、乗合馬車の仕事をすることになった。

 俺としては相棒に馬車を引っ張ってもらうことは嫌だった。

 でも、シュバルツ自身がそれを望んでいた。

 彼も人のために役に立つことがしたかったのだろう。

 俺と性格が似ているからな。

「とりあえずあの子のことをしばらくは頼むぞ」

「ああ。元騎士が騎士道に誓ってココロを守るさ。ただ、俺よりもしっかりした番犬がいるけどな」

「ははは、あのミツクビウルフだったら安心だな」

「まるで本当にケルベロスみたいだしね。話せる魔獣って神獣くらいかと思ってたよ」

 神獣といえば童話に出てくる伝説の魔獣だ。

 体の色は白くて、毛は艶々としたフェンリルがそれにあたる。

 実際にそいつらが存在するかはわからない。

 ただ、話せるということはそれに近しいものがあるのだろう。

 魔物ってまだまだ知らないことが多いからな。

 今もずっと魔物の研究は進んでいる。

「じゃあ、紅蓮の冒険団を早く捕まえてくれよ」

「ああ。警備隊とともにすぐに捕まえて話を聞いておく」

 俺の親友であるシュバルツを何度も殺そうとしたやつを俺は生かしておくつもりはないからな。

 せめての償いとして、全てを失って新しく生きて欲しい。

 新しく生きることがどれだけ大変だったのか自分が一番知っているからな。

 それにココロにどれだけ助けられたと思っているのか。

 その分だけでも償ってもらいたいものだ。

 ギルドマスターは防音の魔道具の魔力を遮断する。

 すると冒険者ギルド内が騒がしくなっていることに気づいた。

 ココロとケルベロスゥ達が遊んでいるのか?

 扉に手をかけると勝手に開いた。

「ギルドマスターへ報告です。紅蓮の冒険団が現れましたが、すぐに逃げて行きました」

「なに!?」

 俺はギルドマスターとともにココロの元へ向かう。

 入り口にいるシュバルツも大丈夫だろうか。

「ココロ大丈夫か!?」

 俺はココロに声をかけると、ゆっくりと振り返った。

 そこには真っ赤に染まったココロ達が立っていた。
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