1440分恋人コース金貨40枚

藤雪たすく

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あるひ

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「くくく……よくぞここまで辿り着いた……だが我を配下の魔物達と同じと思わぬ方がいい。我に忠誠を誓うのであらば命だけは助けてやろう。歯向かうのであれば、我の腕の中でその命『ジリリリリリ……』

つい数ヶ月前、父親から譲り受けた魔王の座。
勇者や他の魔王が攻め込んで来る日に備えて日々考え抜いたカッコいい決め台詞。

暗雲も雷鳴も、マントをたなびかせる風も……演出は完璧だったのに!!
この日の為に用意した全てを……無機質なベルの音に邪魔された。

「何だ!?この音は!!せっかくの決め台詞を!!」

地団駄を踏む俺に抑揚のない声で心の籠もってない謝罪。

「あぁ……悪いな。俺だ」

城に配置した数多の魔物達を倒し俺の前に立つ勇者は、鞄から時計を取り出すとそのベルを止めた。

「時間だ。帰るわ……」

やる気のなさそうな目をした勇者だとは思ったが……ここまで来て帰るって何だ!?

「ちょっと待てぇっ!!何で帰るんだよ!?魔王戦だぞ!?」

「ん?残業代出ねぇから……」

は……?

「続きはまた明日聞いてやる」

呆気にとられる俺を置いて、勇者は本当に帰っていった。

ーーーーーー

「何なんだあいつは!?」

「アルファス坊っちゃま!!落ち着いて!!」

手当り次第に物を投げる俺を、勇者に受けた傷から回復した家臣達が慌てて止めに入る。

数いる魔王の中で俺が一番新参だし、年齢もまだ魔王としては子供と揶揄される年齢だ……だが!!

「人間なんかにバカにされたんだぞ!?あんな弱くて短命な生き物に!!落ち着いていられるか!!」

「坊っちゃま!!」

「坊っちゃまじゃない!!魔王様だ!!」

子供扱いする宰相に呪いの壷を投げつけた。

「明日また来ると言っていたな……俺を侮辱した事をあの世で詫びさせてやる!!」

ーーーーーー

次の日、朝5時に目が覚めてしまった。

顔を洗って身支度を整え王座に座ってヤツを待った。

「ぼ……魔王様、お食事の準備が整いました」

「食事中にあいつが来たらまたバカにされるから……いらない!!」

………………。

…………………………。

いつまでたっても勇者が現れる気配は無い。

昼ご飯も食べずに待っていたのに!!
どっぷりと日は暮れてしまった。

「何でこねぇんだよ!!」

呪いの宝箱を蹴り飛ばす。

「坊っちゃま!!勇者の顔を覚えている者を偵察に向かわせておりますので!!空腹でイライラしてるんですね!?夕飯の準備はできておりますので、早くお席へ!!」

「…………わかった」

腹が減ってはなんとやらだしな……鳴り続けるお腹を押さえて食堂へ向かった。

ーーーーーー

食事が終わる頃、一匹の魔物が飛び込んで来た。

「坊っちゃま~!!あの不届きな勇者を見つけましたぁ~!!」

「何!?本当か!!良くやった!!それで奴はいま何処に居る!?」

「B6853-6093の地点、ここから四時間ほどです。マーキングしてきたので坊っちゃまの転移魔法で一瞬です……ですが今は「待ってろ勇者!!」

「駄目~っ!!坊っちゃま~っ!!」

配下の魔物からマーキングピンを奪うとすぐに勇者の元へ飛んだ。

「見つけたぞ!!勇者!!もう逃がさ……ぎゃあああぁっ!!」

指を突きつけた先にいた勇者は……勇者は……。

せっ……性交中だった。
ベッドの上で腰を振っている。

「あっ!!誰!?勇者様っ!!あ、あ、あっ……!!」

「見られて興奮したのか?こんなに締め付けて……」

「やんっ!!違っ……あん!!あぁっ!!」

よく見れば喘がされているのも男じゃないか!!

にょわわわわっ!?

何……何を……っ!?

顎が外れる程驚いた。

俺の登場に、止めるどころか俺に見せるかの様に抱いていた男を持ち上げ、結合部を見せつけながら、さらに激しく腰を突き上げ始めた。

「勇者様っ!!もっと!!もっとぉっ!!」

肉と肉が激しくぶつかり合う音がする。
勇者は、やっと俺の方を向いたけど……昨日とおなじ興味なさそうな視線。

勇者……勇者なんだよな?

「おい……見てわかる通り取り込み中だ。用があるなら後にしろ」

「○×□△□○×△~っ!!」

声にならない声を上げて窓から飛び出すと、耳を押さえて窓の下にしゃがみこんだ。
何なんだ!?何なんだよ!!あの勇者は!!

勇者とは清廉潔白で高潔で慈愛に満ちたものじゃ無いのか!?
少なくとも父からはそう聞いていたぞ!?

あんな!!あんな……っ!!

先程の光景が頭によみがえる。

うわぁぁ~っ!!

頭から追い出そうと必死になるほど鮮明に色濃く思い出されて、勇者の引き締まった体、じっとりと汗が滲み髪の張り付いた顎のライン、小馬鹿にしたような薄く笑みをたたえた唇……俺には向けなかった真剣な瞳。

……ぐはっ!!

……勇者め……なんて攻撃だ。
心に大きなダメージを負った。

ーーーーーー

顔を膝に埋めて踞っていると背後で窓の開く音がした。

呼ぶ様にコンコンとノックの音がして振り返ると、風呂上がりらしく石鹸の香りをさせて勇者が立っていた。

「貴様!!よくも「近所迷惑。中に入れ」

言われるまま窓を乗り越えて室内へ入る。

勇者の石鹸の匂いに混じって情交の後の臭いが充満していて気分が悪い。

「……お前の恋人はどうした?」

人質にとってやろうと思ったのに、室内には勇者しかいなかった。

「恋人?……ただの客だ」

人間はただの客人とあんな事をするのか!?
人間恐るべし……父から聞いていたのと随分違う。

「それで……何の用だ?次の客を取りに行きたいんだ。手短に済ませろ」

なんて横柄な態度。

「貴様!!今日もう一度来ると言っておきながら我を待たせるとはいい度胸だ!!我から直々に出向いてやったんだ!!光栄に思え!!」

「…………」

やる気の無い目でじっと見詰められる。

「約束を反故にした理由を聞いてやっても良いんだ……ぞ?」

「あ?帰ってお前の懸賞金確認したら最低ランクだったから別の魔王のとこに行った」

ゴンッと大岩を頭に落とされた様なダメージを受けた。

「な……な……ば、馬鹿にするな!!俺だって魔王ランク世界10位の父上の血を継いでるんだぞ!!いつかは俺だってランキング上位に入れるんだ!!」

「……はいはい。じゃあそうなった時に討伐しに行ってやる。気が済んだなら帰れ。次の客を探しに行く時間が惜しい」

シッシッと動物を追いやる様に手を振られる。

「お……俺だって客だろうが!!」

「ん?何だ客なのか?俺を買いにきたのか?」

買い?何の事だ?買収すると言うことか?
金を出せばこいつを配下に出来るのか?

……面白い。配下に加えイビり倒してやろう。

「いくら欲しい?金ならいくらでもあるぞ?」

勇者の顎を指で持ち上げ、魔王らしくしろと身に付けさせられていた装飾品を見せつけた。

「30分即イキコース金貨1枚。60分ベッドコース金貨2枚。180分抜き放題コース金貨5枚にプラス1枚で潮吹き体験も追加出来るぞ」

「は?抜き?潮?」

「お薦めは120分金貨4枚の恋人コースだな。価格の割に俺が楽だ。どれにする?」

良くわからない事を早口でまくし立てられた。

「え?じゃ……じゃあ最後ので……」

「OK。交渉成立だな……呼び名はどうする?」

呼び名?俺はまだ魔王としての実績はないから二つ名は持ってない。

「何でも良い、なんて呼ばれたいんだ?」

「えっと……アルファス?」
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