そのステップは必要ですか?  ~精霊の愛し子は歌を歌って溺愛される~

一 ことり

文字の大きさ
295 / 492
第3部

ナナナナナナナナナナナナ、ナオ!

しおりを挟む
 「ナナナナナナナナナナナナ、ナオ! おっ、お清め、セ、セックスって! 自分が言っていることの意味をわかってる?」

 ヴァレリラルドの絶叫を、

 「うん」

 アシェルナオは天真爛漫な笑顔で受け止める。

 精霊の愛し子そのものの無垢な愛くるしさに溢れたアシェルナオからセックスという言葉が出てきて、なおかつ意味をわかっていると言われたヴァレリラルドは激しく動揺していた。 

 「みょんちゃんが言ってる意味ならわかるよ? 同じことをするって意味だよね?」

 驚愕に震えるヴァレリラルドに、アシェルナオは首を傾げる。

 その笑顔とセックスという言葉が結びつかずに、ヴァレリラルドはアシェルナオの肩に手をおいて、間近で見つめあう。

 「みょんちゃん? ナオ、どんな夢を見たのか、最初から最後まで言いなさい」

 「ん? いいよ?」

 異世界のことに興味があるのかな?と思いながら、アシェルナオはさっき見た夢を話した。

 「……でね、ながっちに舐められた指を、優人がウェットティッシュで綺麗にふき取ってくれたんだ。でもすぐに僕の指を自分の口に入れるんだよ? それを見ていたみょんちゃんが、『これが世に言うお清めセックス……うひゃーっ初めて見たよー!』って騒いで、食堂中が静かになって、それからなんだかざわざわしてた、っていう思い出が夢に出て来たんだ」

 懐かしいなぁ、と微笑むアシェルナオに、ヴァレリラルドは声が聞こえるほど、はぁぁぁぁっとため息を吐いた。

 「前のところでも罪作りだったんだね、ナオ……。驚いたけど安心したよ……」

 しかし、みょんちゃんとは女性? 女性がセックスという言葉を……それにしても指を吸われた、いや、舐められ、いや、口に入れられたとは。私もまだしたことないのに。

 実際に性的な何かをしたわけではなくてほっとしたが、なんという危ない環境で育っていたのかとヴァレリラルドの胸中は複雑だった。

 「ん? 罪作り? 僕?」

 アシェルナオは、きょとんとした顔になる。

 きっと当時も指を舐められた意味がわかっていなかったのだろう、と、ヴァレリラルドは異世界の優人と長瀬に心底同情した。

 ふと沸き起こったいたずら心のままに、ヴァレリラルドは右手でアシェルナオの左手を取り、中指と薬指の二本をパクリ、と口に含んだ。

 「ひゃっ、ヴァル、それは夢、というか前の世界であったことで」

 長瀬や優人の時は特段何も思わなかったが、好きな人に指を舐められてアシェルナオは胸がドキドキした。

 ヴァレリラルドはアシェルナオの反応が嬉しくて、口の中の指を舌でなぞる。

 「いやぁっ、もう、やめて、ヴァル」

 背中がぞくぞくする、初めて感じる感覚に、アシェルナオは顔を真っ赤にして指を引き抜く。

 「美味しかった」

 悪びれずに言うヴァレリラルドに、アシェルナオは恥ずかしくなって、一緒に寝ていたリングダールをヴァレリラルドとの間に挟んだ。

 「ヴァル、意地悪しちゃだめ」

 真っ赤な顔で「めっ」と言うアシェルナオに、結婚したらリングダールは寝台には入れないようにしよう。そう決心したヴァレリラルドだった。




 ヴァレリラルドが帰ると、入れ替わりでオリヴェルとパウラが入ってきた。

 「アシェルナオ、お顔が元気になってるわね」

 枕をクッションにして上半身を起こしているアシェルナオの顔を見たパウラが寝台の横に来て抱きしめる。

 「はい。ドーさんが慰めてくれて、ヴァルが元気にしてくれました」

 ほんのり頬を染めるアシェルナオに、あら、とパウラが微笑み、オリヴェルは眉を顰める。

 「アシェルナオ、今日は風の日だ。明日の火の日はお休みをして、体調を万全にして明後日の婚約式に臨みなさい」

 これは決定事項だよ、とオリヴェルに言われ、アシェルナオは素直に頷いた。

 「はい。でも……」

 「でも?」

 「僕、学園で倒れてしまってからスヴェンたちに会ってません。みんな、心配してるかもです」

 迷惑をかけてしまっただろう学友たちのことを思い、アシェルナオは目を伏せた。

 「ナオ様、スヴェンたちからお見舞いのお手紙が届いていますよ。お返事を書いて安心させてあげたらどうですか?」

 テュコがトレイに数通の手紙とペーパーナイフを乗せて運んできた。

 「お手紙? 書く! あ、その前に読む!」

 会えなくても手紙で気持ちが伝えられる、と、元気な声をあげるアシェルナオに、オリヴェルもパウラも胸をなでおろした。 


※※※※※※※※※※※※※※※※

お声がけ、エール、ありがとうございます(。uωu))
励みになります(。uωu))
しおりを挟む
感想 141

あなたにおすすめの小説

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も皆の小話もあがります。 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新! プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

あなたと過ごせた日々は幸せでした

蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。

使用人と家族たちが過大評価しすぎて神認定されていた。

ふわりんしず。
BL
ちょっと勘とタイミングがいい主人公と 主人公を崇拝する使用人(人外)達の物語り 狂いに狂ったダンスを踊ろう。 ▲▲▲ なんでも許せる方向けの物語り 人外(悪魔)たちが登場予定。モブ殺害あり、人間を悪魔に変える表現あり。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜

小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」 魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で――― 義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!

イケメンな先輩に猫のようだと可愛がられています。

ゆう
BL
八代秋(10月12日) 高校一年生 15歳 美術部 真面目な方 感情が乏しい 普通 独特な絵 短い癖っ毛の黒髪に黒目 七星礼矢(1月1日) 高校三年生 17歳 帰宅部 チャラい イケメン 広く浅く 主人公に対してストーカー気質 サラサラの黒髪に黒目

人質5歳の生存戦略! ―悪役王子はなんとか死ぬ気で生き延びたい!冤罪処刑はほんとムリぃ!―

ほしみ
ファンタジー
「え! ぼく、死ぬの!?」 前世、15歳で人生を終えたぼく。 目が覚めたら異世界の、5歳の王子様! けど、人質として大国に送られた危ない身分。 そして、夢で思い出してしまった最悪な事実。 「ぼく、このお話知ってる!!」 生まれ変わった先は、小説の中の悪役王子様!? このままだと、10年後に無実の罪であっさり処刑されちゃう!! 「むりむりむりむり、ぜったいにムリ!!」 生き延びるには、なんとか好感度を稼ぐしかない。 とにかく周りに気を使いまくって! 王子様たちは全力尊重! 侍女さんたちには迷惑かけない! ひたすら頑張れ、ぼく! ――猶予は後10年。 原作のお話は知ってる――でも、5歳の頭と体じゃうまくいかない! お菓子に惑わされて、勘違いで空回りして、毎回ドタバタのアタフタのアワアワ。 それでも、ぼくは諦めない。 だって、絶対の絶対に死にたくないからっ! 原作とはちょっと違う王子様たち、なんかびっくりな王様。 健気に奮闘する(ポンコツ)王子と、見守る人たち。 どうにか生き延びたい5才の、ほのぼのコミカル可愛いふわふわ物語。 (全年齢/ほのぼの/男性キャラ中心/嫌なキャラなし/1エピソード完結型/ほぼ毎日更新中)

処理中です...