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吸引力はイマイチかと思ったら、結構すごかった件
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あっという間だった。
手元にガタガタとまだ音をたてる掃除機を見つめる。
***
五分前。
じっと目の先にただ立ち尽くしている巨大な悪魔を見た。
掃除機はただ吸い込む騒音だけを出していた。
全ては自分と、この手元の掃除機ちゃんにかかっていた。
火竜とアマイモンがお互いの出方を観察するかのように、じっとしている硬直状態の中に自分が侵入する。
ただ熱さだけは半端じゃない。
エントもまるで空を舞うように騎士団と一緒に、あたりを這いずるオークを倒すのに援護していた。
彼は体からツタを自由自在に出し、しかも草木の動きでさえ少し操れるようだった。
エントの技でコケたオークを殿下が仕留めていく。
目線で「早くいけ!」とロアン殿下が合図をしてきた。
その必死な姿にちょっとグッとくる。
彼が魔術とか使えない、肩書き以外はただの人って知っているから、尚更だ。
アマイくんは、火竜の横に立ち、悪魔の巨人と対峙している。
そして、アマイくんを捕まえるかのように巨人が腕を動かすが、動作が鈍いせいか、アマイくんもギリギリで逃げている。
そこに自分が入る。
リュークの背中を見ながらだ。
少し怖さに身が震えた。
そして、後方で援護に駆けつけた騎士団のメンバーと殿下の刀がオークの甲冑に当たる金属音を聴きながら、さらに前進する。
アマイモンの奴が口が開くたびに、奴の口から火が放たれる。
それだけは注意しなくてはならなかった。
「なんか喋っているっぽいけど、迷惑だよね。歩く火炎放射器みたいだよ」
「ああ、あれは探し物をしているんだと思う……」
リュークが答えた。
「え? 探し物? それ探して、それを返してあげればいいんじゃないの?」
「それは難しいな。奴がうんっとは言わないよ」
「やつ? なに、それ」
早くと速されて、掃除機をアマイモンに向けた。
ああ、まずい。
奴が口を開いている。
話そうとしているのだ。
ごめん!
アマイモン!!
「火竜さん! どいて!! また今度、落語、話してあげるから!!!」
近距離にいた火竜に叫ぶ。
それに頷くかのごとく、火竜が羽を広げ、そこを去る。
アマイくんも自分の持っているものを見て、「え、それってヤバイじゃん」とか言いながら、そこから風の如くに消え去った。
「お願い! うまくいって!」
そう思いながら、掃除機の柄を奴に向けた。
今までに聞いたことがないくらいの掃除機の騒音が増した。
ブォンっという音がエコーになって空気の中を駆けていく。
空気が一瞬、歪んだ気がした。
数秒後、まるで怠いのに仕方がなく動いてやっているぞっていう感じで、掃除機の騒音がする。
ボコボコと何かが音を立てていた。
スイッチを止めようとして掃除機を見ると、点滅するランプが見えて、その意味を考えて笑えてきた。
あれだ。
フルってサインだ。
つまり、中のフィルターのお取り換えサインがついている。
掃除機の中のバックがいっぱいなのだ。
プッと吹き出してしまった。
この頼りないバーゲン品のような掃除機が、巨大な悪魔をあっという間に吸い込んだのだ。
そりゃーゴミ袋もいっぱいになるでしょうと思った。
そうだよね。
悪魔を吸い込んじゃったんだから…。
安心していたのも束の間で、溜まりが動きを見せた。
渦の輪郭の回転がだんだんと速度を速める。
「時間がきたか……」
リュークがボソッと言葉を話す。
そして、手をかざして自分の騎士団に皆、下がるように指示をする。
すると、足元の石ころが、後ろから前に転がり始めて、それに気を取られていたら、顔をあげたら、すでに目の前から、オークも、溜まりと呼ばれる大きな空中に浮かぶ渦も、魔物は全て消え失せていた。
手元にガタガタとまだ音をたてる掃除機を見つめる。
***
五分前。
じっと目の先にただ立ち尽くしている巨大な悪魔を見た。
掃除機はただ吸い込む騒音だけを出していた。
全ては自分と、この手元の掃除機ちゃんにかかっていた。
火竜とアマイモンがお互いの出方を観察するかのように、じっとしている硬直状態の中に自分が侵入する。
ただ熱さだけは半端じゃない。
エントもまるで空を舞うように騎士団と一緒に、あたりを這いずるオークを倒すのに援護していた。
彼は体からツタを自由自在に出し、しかも草木の動きでさえ少し操れるようだった。
エントの技でコケたオークを殿下が仕留めていく。
目線で「早くいけ!」とロアン殿下が合図をしてきた。
その必死な姿にちょっとグッとくる。
彼が魔術とか使えない、肩書き以外はただの人って知っているから、尚更だ。
アマイくんは、火竜の横に立ち、悪魔の巨人と対峙している。
そして、アマイくんを捕まえるかのように巨人が腕を動かすが、動作が鈍いせいか、アマイくんもギリギリで逃げている。
そこに自分が入る。
リュークの背中を見ながらだ。
少し怖さに身が震えた。
そして、後方で援護に駆けつけた騎士団のメンバーと殿下の刀がオークの甲冑に当たる金属音を聴きながら、さらに前進する。
アマイモンの奴が口が開くたびに、奴の口から火が放たれる。
それだけは注意しなくてはならなかった。
「なんか喋っているっぽいけど、迷惑だよね。歩く火炎放射器みたいだよ」
「ああ、あれは探し物をしているんだと思う……」
リュークが答えた。
「え? 探し物? それ探して、それを返してあげればいいんじゃないの?」
「それは難しいな。奴がうんっとは言わないよ」
「やつ? なに、それ」
早くと速されて、掃除機をアマイモンに向けた。
ああ、まずい。
奴が口を開いている。
話そうとしているのだ。
ごめん!
アマイモン!!
「火竜さん! どいて!! また今度、落語、話してあげるから!!!」
近距離にいた火竜に叫ぶ。
それに頷くかのごとく、火竜が羽を広げ、そこを去る。
アマイくんも自分の持っているものを見て、「え、それってヤバイじゃん」とか言いながら、そこから風の如くに消え去った。
「お願い! うまくいって!」
そう思いながら、掃除機の柄を奴に向けた。
今までに聞いたことがないくらいの掃除機の騒音が増した。
ブォンっという音がエコーになって空気の中を駆けていく。
空気が一瞬、歪んだ気がした。
数秒後、まるで怠いのに仕方がなく動いてやっているぞっていう感じで、掃除機の騒音がする。
ボコボコと何かが音を立てていた。
スイッチを止めようとして掃除機を見ると、点滅するランプが見えて、その意味を考えて笑えてきた。
あれだ。
フルってサインだ。
つまり、中のフィルターのお取り換えサインがついている。
掃除機の中のバックがいっぱいなのだ。
プッと吹き出してしまった。
この頼りないバーゲン品のような掃除機が、巨大な悪魔をあっという間に吸い込んだのだ。
そりゃーゴミ袋もいっぱいになるでしょうと思った。
そうだよね。
悪魔を吸い込んじゃったんだから…。
安心していたのも束の間で、溜まりが動きを見せた。
渦の輪郭の回転がだんだんと速度を速める。
「時間がきたか……」
リュークがボソッと言葉を話す。
そして、手をかざして自分の騎士団に皆、下がるように指示をする。
すると、足元の石ころが、後ろから前に転がり始めて、それに気を取られていたら、顔をあげたら、すでに目の前から、オークも、溜まりと呼ばれる大きな空中に浮かぶ渦も、魔物は全て消え失せていた。
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