55 / 63
私はもしかして〇〇えもん?
しおりを挟む
溢れかえっているストローにまみれながら、まだ目を開けないリュークに、一本のストローをさした容器を差し出す。
先ほど、ストローの山に囲まれて、呆然としていたのだが、リュークの『水をくれ…』という言葉を聞いて、我にかえった。
自分も今はそれどころでは無いのだ。
「リューク……飲んで」
唇に当たったものに気が付いて、リュークが口を開けた。
「吸うの、それを……リューク」
彼がゴクゴクと水を飲み始める。
少し自分の顔が高揚した。
だってシモンに無事だと言われても、こうやって美味しそうに水を飲むリュークを見て、やっとそれが確認できて、安心したのだ。
体の力が抜けていく。
ただ熱のショックのせいかリュークは目も開けられない。
その間に自分は、顔をレオさんの方を向いて、例の山を指差しながら、「す、好きなのを使ってみて…」と言った。
レオさんも自分と同じようにストローの山から一本だけとり、それを水が入った容器にさし、マテオくんに水を飲ませ始めた。
レオさんも自分の起こした珍事に唖然としているらしかったが、今はそれを追求している場合では無いと悟っているっぽかった。
目の前の寝ている男が「ああ…」と低い唸るような声を出した。
「──うまい…」
そして、ゆっくりと目を開いた。
彼の綺麗な空色の目が見えた。
自分とリュークの目線が合わさる。
自分の体が埋まるくらいのストローとパンティさんの体をした本当の片山咲を見て、リュークが固まった。
「──お、俺は死んだのか?」
「な、何を言っているの!! 生きてる! ばか!」
「ではなぜ…サキが…」
リュークが自分をじっと見ながら声を出した。
彼の手が自分の手を握りしめる。
彼が一生懸命に頭を回転させているのがわかった。
あの眉間にまた深いシワができていた。
「ああ、そうか…君は…パンティさんだったんだな」
ふぅうっと大きなため息をリュークがついた。
「──すまん、本当に悪かった」
自分は無言になった。
だって
また再会したのに。
この人
また謝るの……。
その理由さえ言わずに…。
考えもせずに、気が付いたら、バシンをリュークの胸を叩いていた。
「ぐえっ」と音がした。
無傷とシモンが言っていたが、どうやらあの火の攻撃からそれなりのダメージは受けているらしかった。
「ご、ごめんなさい、リューク。痛かった?」
「ごほっ、いや、君を人生で失うと思った時より痛いものはない」
リュークが自分に叩かれた胸を抑えながら、咳き込みながら答えた。
赤面する。
だってこんな甘い言葉、辛い。
いや、嬉しい。
ごほんとシモンが咳をする。
「あの申し訳ありませんが、まだ戦闘中ですので、ここも時期に危なくなるかもしれません…」
シモンはもう少し、ここから安全な所に一時的に避難しようと言ってきた。
そうだ。
まだあの悪魔がこの世界にいるのだ。
気がつかなかったが、すでに殿下はここを去っていて、あの魔神のような者と一緒に対峙していた。
彼のいつもキラキラとした金髪が火の粉をかぶりながら、闘っているのが見えた。
アマイくんとエントや他の騎士団が皆、闘っている。
「ばか、王子! 何やってんのよ!」
「サキ様、ここから離れた方がいいと思います」
「ちょっとシモン、王子ってなんか魔術とか、なんか特技みたいの、あるの?」
「……残念ながら、ありません。ただリュークやサキ様があんなに頑張っているのに、私が命を張らなくどうすると言われて、先ほど…行かれてしまい…」
「私も今あちらに行きます。ですから、ここから皆様は避難を…」
シモンは身支度をしながら、ザック大尉に指示をしている。
ザック大尉は我々を安全な所に誘導させると言い出した。
「サキ様が出された奇跡のものは、残念ながら、戦闘にはちょっと役にはたてなさそうなので…」
ストローの山を指差して、シモンが苦笑いをする。
今、自分は何が自分に起きているのか、ようやく理解した。
この光景。
見たことがある。
エントは言っていた。
『そんなものを持って大丈夫なのですか?』と…。
アマイくんも言っていた。
『あなたしかできない…』
まるで本当の啓示を受けているようだった。
あのタペストリーは実は自分に向けての手紙だったのかもしれないと…。
だってそこには日本人の私にしかわからないようなこけし女が…ある物を持っているのだから。
まさかっと思ったけれど、
冗談かと思ったけれど、
どうやらそうでは無いらしい。
みんなが自分たちの動向を見守る中、今まで見たことがなかった自分のポケットを覗き込んだ。
今までパンティさんだった時は、頭が邪魔して見れなかったのだ。
その中身を見て、手が震えた。
な、なるほど。
そ、そういうことですか。
びっくりしてポケットを閉じる。
やっぱり自分の勘は当たっていた。
自分のプランをみんなに言う。
みんなが固まっている。
「そんなこと、できるんですか? サキさん 」
「ただそれをするためにはかなり近くに行かなくてはならないですね」
レオさんの疑問にシモンが冷静に対応する。
まだアマイくんやエントと竜、他の騎士団があの悪魔と戦っている様子を見ながら、みんなが思案した。
ただどう考えても、アマイモンというふざけた名前の奴の方が優勢だった。
シモンがまた遠慮しがちに言葉を発した。
「あの……大変、申し訳ないのですが、サキ様。この中の誰かに…その、キスをして頂けないでしょうか? そうすれば元聖女だった貴方からのご加護を受けらえるはずです……。その者を近くまで一緒に連れて行ってください」
え?
キス?
はあ?
その時、レオ、ザック大尉、シモン、皆が自分を凝視していた。
そうか、聖女の母乳が効果があるとしたら、キスで触れあっちゃってもオッケーなのかもしれないとわかった。
え、でも…キス!!!!
おい、こんな修羅場っていうか土壇場で、そんなみんな…照れたような顔、いらないから!!
ど、どうしようっと思っていたら、いきなり手をぐいっと引かれた。
「だめだ、サキは俺のものだ……」
低い声が響いた。
少し焦げた匂いがした。
みんなが「おい!待て リューク!!」と言っている間に、リュークの唇が自分のに触る。
チュッと音がした。
軽いものだった。
彼が自分の後頭部をぐいっと掴みながら、ちょっと唇を離す。
あ、こ、これでもう終わり!?
び、びっくりしたけど、初キス。
しかも、リュークとだ。
超恥ずかしかったけれど、これならまあ大丈夫っと思った。
「ごめんな。サキ」
え?
またなんで謝るの?
彼の瞳の青色が揺れていた。
あっと思っているうちに再び彼の唇が自分を襲う。
ああ!!
そっか!
リュークの謝りの意味を今、全身を痺れるような感覚に落としていく甘いキスを受けながら、自分は悟った。
体の中の液体!!
そ、そういうこと!?
そう思っていた瞬間、リュークの唇は自分をさも美味しいものかのように食べ始めた。
先ほど、ストローの山に囲まれて、呆然としていたのだが、リュークの『水をくれ…』という言葉を聞いて、我にかえった。
自分も今はそれどころでは無いのだ。
「リューク……飲んで」
唇に当たったものに気が付いて、リュークが口を開けた。
「吸うの、それを……リューク」
彼がゴクゴクと水を飲み始める。
少し自分の顔が高揚した。
だってシモンに無事だと言われても、こうやって美味しそうに水を飲むリュークを見て、やっとそれが確認できて、安心したのだ。
体の力が抜けていく。
ただ熱のショックのせいかリュークは目も開けられない。
その間に自分は、顔をレオさんの方を向いて、例の山を指差しながら、「す、好きなのを使ってみて…」と言った。
レオさんも自分と同じようにストローの山から一本だけとり、それを水が入った容器にさし、マテオくんに水を飲ませ始めた。
レオさんも自分の起こした珍事に唖然としているらしかったが、今はそれを追求している場合では無いと悟っているっぽかった。
目の前の寝ている男が「ああ…」と低い唸るような声を出した。
「──うまい…」
そして、ゆっくりと目を開いた。
彼の綺麗な空色の目が見えた。
自分とリュークの目線が合わさる。
自分の体が埋まるくらいのストローとパンティさんの体をした本当の片山咲を見て、リュークが固まった。
「──お、俺は死んだのか?」
「な、何を言っているの!! 生きてる! ばか!」
「ではなぜ…サキが…」
リュークが自分をじっと見ながら声を出した。
彼の手が自分の手を握りしめる。
彼が一生懸命に頭を回転させているのがわかった。
あの眉間にまた深いシワができていた。
「ああ、そうか…君は…パンティさんだったんだな」
ふぅうっと大きなため息をリュークがついた。
「──すまん、本当に悪かった」
自分は無言になった。
だって
また再会したのに。
この人
また謝るの……。
その理由さえ言わずに…。
考えもせずに、気が付いたら、バシンをリュークの胸を叩いていた。
「ぐえっ」と音がした。
無傷とシモンが言っていたが、どうやらあの火の攻撃からそれなりのダメージは受けているらしかった。
「ご、ごめんなさい、リューク。痛かった?」
「ごほっ、いや、君を人生で失うと思った時より痛いものはない」
リュークが自分に叩かれた胸を抑えながら、咳き込みながら答えた。
赤面する。
だってこんな甘い言葉、辛い。
いや、嬉しい。
ごほんとシモンが咳をする。
「あの申し訳ありませんが、まだ戦闘中ですので、ここも時期に危なくなるかもしれません…」
シモンはもう少し、ここから安全な所に一時的に避難しようと言ってきた。
そうだ。
まだあの悪魔がこの世界にいるのだ。
気がつかなかったが、すでに殿下はここを去っていて、あの魔神のような者と一緒に対峙していた。
彼のいつもキラキラとした金髪が火の粉をかぶりながら、闘っているのが見えた。
アマイくんとエントや他の騎士団が皆、闘っている。
「ばか、王子! 何やってんのよ!」
「サキ様、ここから離れた方がいいと思います」
「ちょっとシモン、王子ってなんか魔術とか、なんか特技みたいの、あるの?」
「……残念ながら、ありません。ただリュークやサキ様があんなに頑張っているのに、私が命を張らなくどうすると言われて、先ほど…行かれてしまい…」
「私も今あちらに行きます。ですから、ここから皆様は避難を…」
シモンは身支度をしながら、ザック大尉に指示をしている。
ザック大尉は我々を安全な所に誘導させると言い出した。
「サキ様が出された奇跡のものは、残念ながら、戦闘にはちょっと役にはたてなさそうなので…」
ストローの山を指差して、シモンが苦笑いをする。
今、自分は何が自分に起きているのか、ようやく理解した。
この光景。
見たことがある。
エントは言っていた。
『そんなものを持って大丈夫なのですか?』と…。
アマイくんも言っていた。
『あなたしかできない…』
まるで本当の啓示を受けているようだった。
あのタペストリーは実は自分に向けての手紙だったのかもしれないと…。
だってそこには日本人の私にしかわからないようなこけし女が…ある物を持っているのだから。
まさかっと思ったけれど、
冗談かと思ったけれど、
どうやらそうでは無いらしい。
みんなが自分たちの動向を見守る中、今まで見たことがなかった自分のポケットを覗き込んだ。
今までパンティさんだった時は、頭が邪魔して見れなかったのだ。
その中身を見て、手が震えた。
な、なるほど。
そ、そういうことですか。
びっくりしてポケットを閉じる。
やっぱり自分の勘は当たっていた。
自分のプランをみんなに言う。
みんなが固まっている。
「そんなこと、できるんですか? サキさん 」
「ただそれをするためにはかなり近くに行かなくてはならないですね」
レオさんの疑問にシモンが冷静に対応する。
まだアマイくんやエントと竜、他の騎士団があの悪魔と戦っている様子を見ながら、みんなが思案した。
ただどう考えても、アマイモンというふざけた名前の奴の方が優勢だった。
シモンがまた遠慮しがちに言葉を発した。
「あの……大変、申し訳ないのですが、サキ様。この中の誰かに…その、キスをして頂けないでしょうか? そうすれば元聖女だった貴方からのご加護を受けらえるはずです……。その者を近くまで一緒に連れて行ってください」
え?
キス?
はあ?
その時、レオ、ザック大尉、シモン、皆が自分を凝視していた。
そうか、聖女の母乳が効果があるとしたら、キスで触れあっちゃってもオッケーなのかもしれないとわかった。
え、でも…キス!!!!
おい、こんな修羅場っていうか土壇場で、そんなみんな…照れたような顔、いらないから!!
ど、どうしようっと思っていたら、いきなり手をぐいっと引かれた。
「だめだ、サキは俺のものだ……」
低い声が響いた。
少し焦げた匂いがした。
みんなが「おい!待て リューク!!」と言っている間に、リュークの唇が自分のに触る。
チュッと音がした。
軽いものだった。
彼が自分の後頭部をぐいっと掴みながら、ちょっと唇を離す。
あ、こ、これでもう終わり!?
び、びっくりしたけど、初キス。
しかも、リュークとだ。
超恥ずかしかったけれど、これならまあ大丈夫っと思った。
「ごめんな。サキ」
え?
またなんで謝るの?
彼の瞳の青色が揺れていた。
あっと思っているうちに再び彼の唇が自分を襲う。
ああ!!
そっか!
リュークの謝りの意味を今、全身を痺れるような感覚に落としていく甘いキスを受けながら、自分は悟った。
体の中の液体!!
そ、そういうこと!?
そう思っていた瞬間、リュークの唇は自分をさも美味しいものかのように食べ始めた。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
1,871
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる