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だから、その美少女って誰よ

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 なにか悶々とする気持ちが抑えられない。
 先程から、あのちょっとチャラ男系の男、ジンって子の時間なのだか、さっきから、昨晩会った『パンティさんの知り合いの美少女』について、熱く語っている。

 「はぁぁ……、パンティさん……ツレないな~。だから、名前だけでいいから教えてよ、あのの!!」
 「……っ、実は知らないんです」
 「……ぜってぇ、嘘ついている。あんな美少女に会って名前を聞かないなんてありえない……」

 なんだろう。
 こいつの話を聞いていると、マジにムカついてきた。
 ありえないのはお前の方だと言いたい。

 『おらおら、どうだ。これでも、アンタ、わたしの事、美少女っていうのかよ!』

 とでも、啖呵をきりながら、このパンダの着ぐるみを脱ぎたくなる。

 だって、したいでしょ?
 この美的感覚がおかしい男をどうにか成敗したいと思うのは、自分の性格がひねくれているわけではないと思いたい。

 でも、もしかして、この国には変な趣向の持ち主が多いのかも?っという気にもなる。

 レオさんにしても、マテオくん、エリカちゃんもそして、このジンって子も本当の咲、自分の姿を美少女と褒め称えていた。

 先程から彼の演説が止まらない。
 自分があの美少女に相応しいか、自画自賛をしているジンを放っておいて、ある定説をたてた。

 もしかして、本来の咲の姿はこの国の一部のマニア受けなのかな?

 果たして、それを確かめる事がいいことなのか考えてみた。
 否だ。
 どう考えても、それがマニア受けしても、ナニトクなの?

 状況の悪化しか考えられない。
 聖女様としてもモテモテを経験をして、結果、大失敗だ。

 すでにパンティさんのモテ具合で、体も精神的にも精一杯だ。
 ここでマニアが参戦してきたら、もう混乱?ということしか頭にない。

「ねえっっぇ、パンティさん!! 聞いているの?」

 はあっと意識が戻る。
 まずい、全く聞いていなかった。

「ごめんなさい。ぼやっとしてました」
「え、本当に聞いていなかったの? もう……」

 少し不可解そうな顔をジンさんがしていた。

「あ、もしかして……って……。いや、なんでもない。そう言えば、疲れただろ……。なにせあのロアン殿下とシモン様がスケジュールにもう記入してあるのを見て、団員全員が驚いたよ。でも、俺が一番びっくりしたのが、あの堅物のザック大尉もパンティさんにメロメロにさせられちゃったことだよ。すごいよ、ある意味……」

 なぜっ?と聞いたら、このカウンセリングを終えたザック大尉が、演習場で団員達をビシバシと鍛えあげた挙句、皆に宣言したい。

『パンティさんに、不届きな真似したやつは俺が殺す……』

 俺、それ聞いて笑っちゃいましたとほざいているジンを横目に、さぁーーと血の気が引いていく。
 なぜこんな悪いフラグが立ちすぎていく世界にまた来てしまったのだろうかと……。
 やはりパンダがいけないの?
 本来のギリJKの自分に戻るべきなんでは?っと思ってくる。
 思い切って口を開けた。
 ザック大尉と会ってから、聞いてみたかったことだ。

「……ザック大尉ってやっぱり、その肩書きからすごい方なんですか?」

 実は彼とは初対面ではない。
 それをどうやって聞き出そうかと思ったのだが、それをジンが勝手に説明してきてくれた。

「普段はそんなに目立たないんだ……なにせ、あのリューク大将の下で働くと、誰でも霞んじゃうんだよ。でもすごい人だぞ。一応、あの聖女様の護衛の候補だったんだ。この王国の公爵の地位でありながらもその奢らない性格はあのリューク大将と肩を並べると言われているくらいだ。二人とも騎士としての憧れの人だぞ。それに惚れられたパンティさんは、さらにすげぇーよ。ああ、でも気をつけたほうが、いいぞ。パンティの取り合いで上官が殺し合いなんて、シャレにもならないからな……」

 ええええ!!
 ジン、なんてことを!! さらっと言ってくれるんだと思ってくる。
 でも、ジンだけはあの謎の美少女に幻想を持っているせいか、ほかの人たちに比べて、かなりパンティさんに対する執着は少ない。

「あの、ジンさん、変な質問していいですか?」
「おう、なんだ。あの女紹介してくれるなら、答えてやってもいいけど……」
「……」
「わかったよ。なんだよ」

「あの、私って、見た目、そんなに可愛いですか?」
「……」

「あ、すみません。おかしい質問ですよね。あの近所のおばさんとかおじさんとか、子供達にモテるのはいいんですけど、こんなに騎士団でもてはやされるとは……全く」

 ジンが頭を掻きながら、「マジかよ……」とか言っている。

「……パンティさん、最初は嫌味かと思ったけど、マジでそんなことを言っているの?」
「……?」
「俺ね、昨日あの騎士団の寮舎の入り口で、リューク大将と立っていたパンティさんを見て、マジで心臓が止まりそうなくらいに感動したよ」
「え?」
「……生まれて初めて、こんな可愛らしいものがこの世に存在するんだって感動したんだ」
「……え、えええ、ええええ?」
「なんだ、それ、全く自覚ないのかよ。今まで、パンティさんはどうやってそのナリで生きてきたんだ? パンティさんの親は同じ姿ではないのか……?」
「……ち、違います。たぶん……」
「たぶんってどう言うことだよ?」
「……実は、会ったことがないのでよくわかりません」
「え? どういうことだ」

「あの……実は、産まれてすぐに、ちょっと知らない人に預けられたというか……。でも、全く自分の両親は恨んでいないんです。だって、私にとってもステキな名前をつけてくれたんですから!」
「お前……」

 そう、私が自分の名前にこだわる理由は、それが唯一の両親からの贈り物だからだ。
 だから、本当は人からきちんとその名前で呼ばれたいのだ。
 会ったことのない自分の親が、どんな人なのか、全く知らない。
 
 でも、わたしの名前を紙に書いて一緒に産着に挟んでくれたのだ。
 それだけでも、私は嬉しかった。
 
「パンティさん……。本当の名前、パンティじゃないでしょ?」
「……!!!」

「でも、それをみんなに言わない何か理由がある……」
「!!!!」
「なんで俺がそんなことがわかるかって? いつも俺って能天気だと思っているでしょ? だって、さっき、ぼおぉーーとしていた時、俺、何回、君の名前を呼んだかわかっている……? だけど、君はまったく反応しなかった。まるでただの固まっただったよ」

「なっ……!」
「もしそんな自分の名前が重要だったら、もしかして、パンティって、嘘の名前なのかと少し疑問に思ったんだ」

「まずいよ、 ……。その名前が偽名で、しかも保証人が大将だ。俺、報告しないとまずいな。すぐに騎士団から、追い出されるよ……」

 ジンって子をなめていた。
 完全に。
 こんなに鋭い子だとは気がつかなかった。

「だからさぁ、偽名の話は、俺の胸のうちに止めておくからさあ、今度、あのに会わせてよ。それで、このことは秘密にしておく。どう考えても君って隠者には見えないし……」

 がーーん。
 やられた。

 先手を打たれた。

 がっくりとしたパンダが仕方なく声を漏らした。
「わかりました……。名前のことは秘密にしてください……」

 いえーーいっ、やったーー!!と喜んでいるジンが疎ましい。

「出来るだけ、早くね。他の奴らにぜってぇに先越されたくねえから!! あんな美少女、普通は放って置かないでしょ!!」と言って彼は出て言った。

 クソォ!!! 
 アマイくん、絶対に早く見つけてやる!!

 出てこい! 魔術師!!!!

 っていうか、その美少女って本当に誰よ!

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