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第75話:合同デート
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ツェーザルとサクリスの交流は、まずは手紙のやりとりから始まった。
サクリスが日々のことを綴った手紙を寄越せば、ツェーザルもそれに返信を書く。
ツェーザルから積極的に動く事はないまま三ヶ月が過ぎたある日。
「…奥様、少し宜しいでしょうか」
庭でアイリスと遊んでいたシズリアに、ツェーザルが声を掛けた。
「どうしたの?」
「…サクリス様の事なのですが」
ツェーザルによると、近々城下町に旅芸人が来るらしく、サクリスがそれを見に行きたいと言っている。
しかし二人きりで会う勇気が出ないのでシズリアとジークハルトも同行してくれないか、と。
「サクリス様は素の貴方で良いと言ったのでしょう?二人で行っても問題ないと思うけれど…」
「会話が浮かばないし、どう接したらいいかわからないんですよ…」
「私も役に立てる気はしないけれど、それでもよければ」
その晩ジークハルトにも相談したところ、とても乗り気で承諾してくれた。
そして迎えた、合同デート当日。
アイリスは留守番で、キリアがライラックと共に遊んでくれる事になった。
「御機嫌ようシズリア様、ジークハルト様」
「御機嫌ようサクリス様、お天気が良くて良かったわね」
淡いグリーンのワンピース姿で現れたサクリスは、可憐な乙女そのもの。
(サクリス様可愛い!緑を選んだのはツェーザルの瞳の色だからかしら?)
チラリとツェーザルに視線をやり頬を染めるサクリスの様子は実に愛らしく、シズリアは母のような姉のような気持ちになる。
ツェーザルのほうは反応に困っているようで、軽い挨拶を交わした後は無言。
シズリアはジークハルトに目で合図し、彼のエスコートで先に会場へと足を踏み入れた。
広場を貸し切って行われる今回のショーは、椅子も用意されているが基本的には立ち見だ。
早い時間だったためちょうど空いており、最前列に座る事ができた。
それを見てツェーザルもサクリスに手を差し伸べる。
「お足元に気をつけて」
「…ありがとうございます」
ツェーザルの手を取り赤面するサクリス。
初々しい姿を微笑ましく思いながら見守るシズリアに、ジークハルトも微笑みかける。
「あのサクリス嬢があんなにわかりやすい顔をするとはな」
「可愛らしいですよね」
「俺にはお前の方が可愛いが」
「…それは、どうも」
毎度のことながら、よく照れずに言えるものだ。
シズリアは照れ臭くて顔を背けたが、ジークハルトが覗き込んでくる。
「照れたのか?」
「そりゃあ照れますよ」
「嫌か?」
「嫌ではないですけど…」
そんなやりとりをしていると、後ろからサクリスが話しかけてきた。
「お二人とも仲がよろしいですわよね、素敵ですわ」
「そうだろう、大切な妻だからな」
「そういえば、こういうところに来るのはアイリスが生まれてからは初めてですわね。今度はあの子も連れてきてあげたいわ」
「妊娠中にサーカスに行って以来か」
「懐かしいですわね」
二人の距離を縮めたあの日から、もう一年以上が経つ。
シズリアとジークハルトは懐かしさに目を細めた。
サクリスが日々のことを綴った手紙を寄越せば、ツェーザルもそれに返信を書く。
ツェーザルから積極的に動く事はないまま三ヶ月が過ぎたある日。
「…奥様、少し宜しいでしょうか」
庭でアイリスと遊んでいたシズリアに、ツェーザルが声を掛けた。
「どうしたの?」
「…サクリス様の事なのですが」
ツェーザルによると、近々城下町に旅芸人が来るらしく、サクリスがそれを見に行きたいと言っている。
しかし二人きりで会う勇気が出ないのでシズリアとジークハルトも同行してくれないか、と。
「サクリス様は素の貴方で良いと言ったのでしょう?二人で行っても問題ないと思うけれど…」
「会話が浮かばないし、どう接したらいいかわからないんですよ…」
「私も役に立てる気はしないけれど、それでもよければ」
その晩ジークハルトにも相談したところ、とても乗り気で承諾してくれた。
そして迎えた、合同デート当日。
アイリスは留守番で、キリアがライラックと共に遊んでくれる事になった。
「御機嫌ようシズリア様、ジークハルト様」
「御機嫌ようサクリス様、お天気が良くて良かったわね」
淡いグリーンのワンピース姿で現れたサクリスは、可憐な乙女そのもの。
(サクリス様可愛い!緑を選んだのはツェーザルの瞳の色だからかしら?)
チラリとツェーザルに視線をやり頬を染めるサクリスの様子は実に愛らしく、シズリアは母のような姉のような気持ちになる。
ツェーザルのほうは反応に困っているようで、軽い挨拶を交わした後は無言。
シズリアはジークハルトに目で合図し、彼のエスコートで先に会場へと足を踏み入れた。
広場を貸し切って行われる今回のショーは、椅子も用意されているが基本的には立ち見だ。
早い時間だったためちょうど空いており、最前列に座る事ができた。
それを見てツェーザルもサクリスに手を差し伸べる。
「お足元に気をつけて」
「…ありがとうございます」
ツェーザルの手を取り赤面するサクリス。
初々しい姿を微笑ましく思いながら見守るシズリアに、ジークハルトも微笑みかける。
「あのサクリス嬢があんなにわかりやすい顔をするとはな」
「可愛らしいですよね」
「俺にはお前の方が可愛いが」
「…それは、どうも」
毎度のことながら、よく照れずに言えるものだ。
シズリアは照れ臭くて顔を背けたが、ジークハルトが覗き込んでくる。
「照れたのか?」
「そりゃあ照れますよ」
「嫌か?」
「嫌ではないですけど…」
そんなやりとりをしていると、後ろからサクリスが話しかけてきた。
「お二人とも仲がよろしいですわよね、素敵ですわ」
「そうだろう、大切な妻だからな」
「そういえば、こういうところに来るのはアイリスが生まれてからは初めてですわね。今度はあの子も連れてきてあげたいわ」
「妊娠中にサーカスに行って以来か」
「懐かしいですわね」
二人の距離を縮めたあの日から、もう一年以上が経つ。
シズリアとジークハルトは懐かしさに目を細めた。
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