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第9話:初めてのお茶会
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お茶会当日。
場所はアーザー子爵の屋敷とのことで、シズリアはキリアを連れて貴族街まで馬車で向かう。
ジークハルトと住む別宅は王都の郊外あるため、貴族達の屋敷からは遠いのだ。
アーザー子爵の屋敷に着くと、出迎えた執事らしき人物がシズリアを上から下まで観察した。
(すごーく失礼だと思うんだけど、反応したら負けかしら)
無礼な視線を笑顔で受け流すシズリア。
案内され中庭へ行くと、若い女性の姿が三人。
(あれはオツーサ男爵家のカレン様です)
情報になかった人物に気付き、キリアがそっと耳打ちする。
現在この国には男爵家が五つ、子爵家は四つあるらしい。
伯爵が二つ、侯爵と公爵が一つ。
アームス大陸という広大な土地全土に広がる、レヴェンシス王国というのがシズリアが飛ばされてきた国だ。
広い国土を納めるため、東西南北に分けられそれぞれに辺境伯がいるらしい。
地位としては伯爵の上で侯爵の下、という扱いになると教わった。
(ほとんどの貴族は王城の側に住みたがって、こんな立派な貴族街ができたって教科書に書いてあったわね)
ここを攻め込まれたらこの国の権力者は壊滅状態になるだろう、それでも貴族達は身を寄せ合って権力を競い合っているのだとジークハルトが呆れた様子で話してくれたのだ。
(さて、子爵と男爵家が二つ。仲良くしたいと思ってくれてるなら嬉しいけど、どうにもそんな感じじゃないわねー)
アーザー家の執事の様子からしても、友好的とは思えない。
令嬢達が待つテーブルに近づいたシズリアは、その予感が的中した事を知る。
「お招きいただきありがとうございます。…あら?」
恐らくシズリアの席であろう椅子が濡れているのだ。
キリアが眉を吊り上げ口を開こうとするのをシズリアは制する。
「昨夜の雨が残っているのかしら、お庭の草木がキラキラしていて綺麗だものね」
他の椅子もテーブルも綺麗なのに、一脚だけ濡れているのだから偶然のはずはない。
先制攻撃のつもりなのだろうが、元いた世界で古臭い画鋲攻撃などを経験してきたシズリアにとっては可愛いものである。
(レストランのバイトしてて靴に画鋲入れられた時は笑ったわ…あれはなんでだったかしら。そうだ、よく来るイケメン客が私の名前を覚えてたから、だった)
くだらない嫉妬事件として彼女の中では笑い話の一つになっている。
にこやかなシズリアの様子に、エレミー達は戸惑いを隠せない。
「え、あ…ええ、土砂降りでしたものね。すぐに片付けさせますわ、少々お待ちください」
素直に引いてくれるらしい、シズリアはにっこり微笑んだ。
「お茶会に招いて頂くのは初めてで、とても楽しみにしておりましたの。よろしくお願いいたしますね、エレミー・アーザー様」
そしてシズリアは他の二人の名前も呼ぶ。
「ハール・マース様」
「カレン・オツーサ様」
まだ彼女達が名乗っていないにも関わらず、顔と名前が一致するシズリア。
三人が息を飲む音が聞こえた。
場所はアーザー子爵の屋敷とのことで、シズリアはキリアを連れて貴族街まで馬車で向かう。
ジークハルトと住む別宅は王都の郊外あるため、貴族達の屋敷からは遠いのだ。
アーザー子爵の屋敷に着くと、出迎えた執事らしき人物がシズリアを上から下まで観察した。
(すごーく失礼だと思うんだけど、反応したら負けかしら)
無礼な視線を笑顔で受け流すシズリア。
案内され中庭へ行くと、若い女性の姿が三人。
(あれはオツーサ男爵家のカレン様です)
情報になかった人物に気付き、キリアがそっと耳打ちする。
現在この国には男爵家が五つ、子爵家は四つあるらしい。
伯爵が二つ、侯爵と公爵が一つ。
アームス大陸という広大な土地全土に広がる、レヴェンシス王国というのがシズリアが飛ばされてきた国だ。
広い国土を納めるため、東西南北に分けられそれぞれに辺境伯がいるらしい。
地位としては伯爵の上で侯爵の下、という扱いになると教わった。
(ほとんどの貴族は王城の側に住みたがって、こんな立派な貴族街ができたって教科書に書いてあったわね)
ここを攻め込まれたらこの国の権力者は壊滅状態になるだろう、それでも貴族達は身を寄せ合って権力を競い合っているのだとジークハルトが呆れた様子で話してくれたのだ。
(さて、子爵と男爵家が二つ。仲良くしたいと思ってくれてるなら嬉しいけど、どうにもそんな感じじゃないわねー)
アーザー家の執事の様子からしても、友好的とは思えない。
令嬢達が待つテーブルに近づいたシズリアは、その予感が的中した事を知る。
「お招きいただきありがとうございます。…あら?」
恐らくシズリアの席であろう椅子が濡れているのだ。
キリアが眉を吊り上げ口を開こうとするのをシズリアは制する。
「昨夜の雨が残っているのかしら、お庭の草木がキラキラしていて綺麗だものね」
他の椅子もテーブルも綺麗なのに、一脚だけ濡れているのだから偶然のはずはない。
先制攻撃のつもりなのだろうが、元いた世界で古臭い画鋲攻撃などを経験してきたシズリアにとっては可愛いものである。
(レストランのバイトしてて靴に画鋲入れられた時は笑ったわ…あれはなんでだったかしら。そうだ、よく来るイケメン客が私の名前を覚えてたから、だった)
くだらない嫉妬事件として彼女の中では笑い話の一つになっている。
にこやかなシズリアの様子に、エレミー達は戸惑いを隠せない。
「え、あ…ええ、土砂降りでしたものね。すぐに片付けさせますわ、少々お待ちください」
素直に引いてくれるらしい、シズリアはにっこり微笑んだ。
「お茶会に招いて頂くのは初めてで、とても楽しみにしておりましたの。よろしくお願いいたしますね、エレミー・アーザー様」
そしてシズリアは他の二人の名前も呼ぶ。
「ハール・マース様」
「カレン・オツーサ様」
まだ彼女達が名乗っていないにも関わらず、顔と名前が一致するシズリア。
三人が息を飲む音が聞こえた。
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