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第8話:社交界へのお誘い
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ジークハルトの婚約者として国王公認となったシズリアは、ジークハルトと共に別宅に戻っていた。
本宅で過ごせば良いのにと言う両親に申し訳なく思いながらも、まだボロを出す恐れがあるため別宅での特訓を続けなければならないのだ。
ジークハルトは盗賊の鎮圧など任務があるとのことで留守にしがちなため、シズリアは使用人達や教育係の先生達と過ごす。
そして一週間が経った頃、早速貴族令嬢達が集まる茶会への招待状が届いた。
「シズリア様、アーザー子爵家のエレミー嬢から茶会の招待状が来ています」
「誰なの…早すぎない?」
まだ婚約から一週間しか経っていない、しかしついにジークハルトが嫁を貰うらしいという話はあっという間に広まっていた。
妻の座を狙っていた女達が黙っているはずもなく、シズリアの元には招待状だけでなく挨拶の手紙も何通か届いている。
「えーっと、アーザー子爵…あ、これか」
分厚い貴族名鑑を開き確認すると、五十年ほど前から子爵位に就いている家系のようだ。
王家の下に公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵。
公爵家に嫁ぐシズリアは、王族の次に地位の高い女性となる。
そのため子爵令嬢エレミーからの招待状には強制力などないのだが、今後避けられない付き合いとなるため早めに顔を見ておくのも手だ。
「エレミー嬢はアーザー家の三女で18歳、っと」
シズリアが屋敷に来るまでは淡々と仕事をこなすだけだったという使用人達。
しかし今は嬉々として貴族令嬢達の噂話を聞いて周り、情報収集をしてきてくれている。
日々増えていく報告書に目を通すのがシズリアの日課の一つになっていた。
「マース男爵の次女ハール様と仲がよろしいらしいので、きっとご一緒だと思いますよ」
追加情報を教えてくれたのは、侍女のキリア。
彼女はジークハルトと同い年の乳兄妹なのだという。
ジークハルトの母ディアナは、産後しばらく体を崩し子育てが思うようにできなかった。
公爵夫人なのだからそれでいいという周囲の声に、我が手で育てたかったのだと泣き暮らしたそうだ。
ちなみにキリアは既に人妻で、夫婦仲も良好。
キリアの夫は宝石商で、仕入れや商売のために各地を飛び回り何に数回しか会えないのだとか。
「特に問題行動のある御令嬢ではないようですが、このタイミングで真っ先に招待状を送ってきたということは警戒した方が良さそうですね」
「嫌味とか言われるのかしら、楽しみだわ!」
ワクワクしているシズリアの表情を見て、心配していた使用人達は驚いた。
しかしそれでこそジークハルトの妻に相応しいとキリアは思う。
夜、帰宅したジークハルトに茶会に誘われたことを報告した。
「そうか、早いものだな…舐められるなよ」
ニヤリと笑うジークハルト、なかなかいい性格をしている。
シズリアも笑顔で頷き、気合を入れるのであった。
本宅で過ごせば良いのにと言う両親に申し訳なく思いながらも、まだボロを出す恐れがあるため別宅での特訓を続けなければならないのだ。
ジークハルトは盗賊の鎮圧など任務があるとのことで留守にしがちなため、シズリアは使用人達や教育係の先生達と過ごす。
そして一週間が経った頃、早速貴族令嬢達が集まる茶会への招待状が届いた。
「シズリア様、アーザー子爵家のエレミー嬢から茶会の招待状が来ています」
「誰なの…早すぎない?」
まだ婚約から一週間しか経っていない、しかしついにジークハルトが嫁を貰うらしいという話はあっという間に広まっていた。
妻の座を狙っていた女達が黙っているはずもなく、シズリアの元には招待状だけでなく挨拶の手紙も何通か届いている。
「えーっと、アーザー子爵…あ、これか」
分厚い貴族名鑑を開き確認すると、五十年ほど前から子爵位に就いている家系のようだ。
王家の下に公爵、侯爵、伯爵、子爵、男爵。
公爵家に嫁ぐシズリアは、王族の次に地位の高い女性となる。
そのため子爵令嬢エレミーからの招待状には強制力などないのだが、今後避けられない付き合いとなるため早めに顔を見ておくのも手だ。
「エレミー嬢はアーザー家の三女で18歳、っと」
シズリアが屋敷に来るまでは淡々と仕事をこなすだけだったという使用人達。
しかし今は嬉々として貴族令嬢達の噂話を聞いて周り、情報収集をしてきてくれている。
日々増えていく報告書に目を通すのがシズリアの日課の一つになっていた。
「マース男爵の次女ハール様と仲がよろしいらしいので、きっとご一緒だと思いますよ」
追加情報を教えてくれたのは、侍女のキリア。
彼女はジークハルトと同い年の乳兄妹なのだという。
ジークハルトの母ディアナは、産後しばらく体を崩し子育てが思うようにできなかった。
公爵夫人なのだからそれでいいという周囲の声に、我が手で育てたかったのだと泣き暮らしたそうだ。
ちなみにキリアは既に人妻で、夫婦仲も良好。
キリアの夫は宝石商で、仕入れや商売のために各地を飛び回り何に数回しか会えないのだとか。
「特に問題行動のある御令嬢ではないようですが、このタイミングで真っ先に招待状を送ってきたということは警戒した方が良さそうですね」
「嫌味とか言われるのかしら、楽しみだわ!」
ワクワクしているシズリアの表情を見て、心配していた使用人達は驚いた。
しかしそれでこそジークハルトの妻に相応しいとキリアは思う。
夜、帰宅したジークハルトに茶会に誘われたことを報告した。
「そうか、早いものだな…舐められるなよ」
ニヤリと笑うジークハルト、なかなかいい性格をしている。
シズリアも笑顔で頷き、気合を入れるのであった。
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