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第4章 リザベートの結婚狂想曲
12【婚活パーティーと令嬢】
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<<とある男爵令嬢視点>>
わたしは、法衣男爵家の3女です。
姉2人は既に他家に嫁いでいます。
男爵と言ってもお城勤めの貴族なんて、入ってくるものより、出ていくものの方が多いので、家計に余裕があるわけではありません。
ある日、派閥のリーダーである侯爵家の令嬢が、写真を撮ろうと言い出しました。
なんでも、ライバル派閥の令嬢達が写真を撮って、カトウ運輸のマサル会頭に送ったらしいのです。
負けず嫌いな彼女が、それを見逃すはずはありません。
でも写真って金貨10枚もするのですよ。
写真って、精緻な肖像画で自分の写真を持っていると幸せになれるとか、想い人と写真を交換すると両想いになれるとか、噂が広まっています。
正直撮って欲しいですが、うちの家計では、かなり痛い額です。
家に帰ってから、親に言い出せないでいると、どこかで話しを聞いてきたのでしょう、お母様が「これを持って行ってらっしゃい。」と金貨10枚を渡してくださいました。
「あなたはいつも我慢ばかりするのだから、たまにはわがままを言ってもいいのですよ。」
わたしは、その言葉が嬉しくて、お母様に抱きついていました。
しばらくして、婚活パーティーの日になりました。
あまり派手では無く、落ち着いた色合いの衣装を着たわたしは、お母様に頂いたバラのブローチを付けて、会場に向かいました。
会場内は、落ち着いた雰囲気でわたし好みです。
中は所狭しと机や椅子が置いてあり、派閥で固まるようなスペースはありません。
「しようがないわね。皆さん、ここではバラバラで行動しましょう。」
侯爵令嬢の声にわたしは1人で歩き出しました。
壁沿いに人が集まっています。
壁一面に写真が貼ってあります。
わたしの写真もありました。
少し恥ずかしかったけど、一番大好きなドレスにお母様が整えてくれた髪型が良く似合っていてお気に入りの逸品です。
本当は、送りたくなかったのですが、皆さんが送るというので、泣く泣く手放したものです。
でも、こうしていろんな人に見られて恥ずかしい反面、嬉しい気持ちもあり、これはこれで良かったと思います。
さて、どうしましょうかね。
いつも派閥の皆さんと一緒のわたしは、1人で行動することがあまり無いので、こういう時に困ってしまいます。
とりあえず、読書コーナーに行きましょう。
本を読むのは大好きです。
わたしは席に座って、本を開きます。
「すいません、横に座ってもよろしいでしょうか?」
本に夢中になって気が付きませんでした。
「はい、どうぞ。」
横に広がっている本を片付けながら返事をします。
「サイモン草ですね。あなたも薬草がお好きですか?」
サイモン草を知っているなんて、この人何者?
かなりの薬草オタクと見ました。
「ええ、あなたも薬草のお詳しいのですね。」
同志を見つけたようでちょっと嬉しかった私は、微笑みながら答えます。
彼は、満面の笑みを浮かべ、手に取った分厚い本のタイトルを見せてきました。
「サンテべ著 薬草大全ですか。こんな貴重な本もここにあったのですね。」
「そうなんです。僕も見つけた時は驚きました。
それで、係の人に聞いてみたんです。そしたら、ここのパーティーの責任者でした。
彼女も本が好きで、きっと『本好きな人見知りさん』がたくさんいるだろうと、このコーナーを作ったらしいんですが、自分の趣味が入ってしまい、 ナーラ領のカトウ運輸図書館 にある蔵書をかなり持ってきたということでした。
ナーラ領のカトウ運輸図書館 ってご存知ですか? 王立図書館 にも負けないくらいの蔵書があるみたいです。
この本みたいに、普通は見れないような貴重な本も、自由に見れるらしいですよ。
一度行ってみたいなあ。」
「わたしも行ってみたいです。」
そんな会話をしながら2人で自分達のことや薬草について話し込んでしまいました。
彼は、王都に本店を持つ商店の3男だそうです。
小さい頃、妹が不治の病で倒れてから、それを直そうと一生懸命薬草の勉強をしたそうです。
妹さんは残念でしたが、他にも苦しんでいる子供達のために、薬草専門の商会作りたいと頑張っているとのことです。
今日は、取引先でもあるカトウ商会が新しく写真館を始めたので、写真を撮った絡みで来たと言っていました。
「わたしも、小さい時に病気で死にそうになったらしいんですが、たまたま薬草に詳しいお医者様が居られて、助けてもらいました。
わたしも、あなたのような仕事のお手伝いが出来たらうれしいです。」
「わたしの名前は、ペーターです。お名前を伺っても?」
「アイリスです。」
「アイリスさん、わたしと結婚を前提にお付き合いして頂けませんでしょうか?」
「お友達からでもよろしいでしょうか。」
「もちろんです。」
そこから先はあっというまでした。
貴族とは言え、法衣男爵家の3女。政略的に嫁ぐ必要もありません。
ペーターさんは、わたしの両親に挨拶に来られ、両親も一目で気に入ってくれたようです。
それから3ケ月のお付き合いを経て、わたし達は結婚しました。
あの時壁に貼ってあったわたし達の2枚の写真と、新たにプレゼントして頂いた2人で写った写真は、2人の新居に大切に貼ってあります。
新婚旅行には、ナーラ領のカトウ運輸図書館に行きました。
あの時の本好きな責任者さんに結婚の報告をしたら、なんとトラック馬車に乗せてもらってナーラ領に行けることになったんです。
王家ですら数台しか持っていないという貴重な馬車です。
快適な新婚旅行になったことは言うまでもありません。
途中、何度も写真を撮って頂きました。
この写真は、次回の婚活パーティーで披露するようです。
トラック馬車での新婚旅行は、王都でブームになるかも知れませんね。
わたしは、法衣男爵家の3女です。
姉2人は既に他家に嫁いでいます。
男爵と言ってもお城勤めの貴族なんて、入ってくるものより、出ていくものの方が多いので、家計に余裕があるわけではありません。
ある日、派閥のリーダーである侯爵家の令嬢が、写真を撮ろうと言い出しました。
なんでも、ライバル派閥の令嬢達が写真を撮って、カトウ運輸のマサル会頭に送ったらしいのです。
負けず嫌いな彼女が、それを見逃すはずはありません。
でも写真って金貨10枚もするのですよ。
写真って、精緻な肖像画で自分の写真を持っていると幸せになれるとか、想い人と写真を交換すると両想いになれるとか、噂が広まっています。
正直撮って欲しいですが、うちの家計では、かなり痛い額です。
家に帰ってから、親に言い出せないでいると、どこかで話しを聞いてきたのでしょう、お母様が「これを持って行ってらっしゃい。」と金貨10枚を渡してくださいました。
「あなたはいつも我慢ばかりするのだから、たまにはわがままを言ってもいいのですよ。」
わたしは、その言葉が嬉しくて、お母様に抱きついていました。
しばらくして、婚活パーティーの日になりました。
あまり派手では無く、落ち着いた色合いの衣装を着たわたしは、お母様に頂いたバラのブローチを付けて、会場に向かいました。
会場内は、落ち着いた雰囲気でわたし好みです。
中は所狭しと机や椅子が置いてあり、派閥で固まるようなスペースはありません。
「しようがないわね。皆さん、ここではバラバラで行動しましょう。」
侯爵令嬢の声にわたしは1人で歩き出しました。
壁沿いに人が集まっています。
壁一面に写真が貼ってあります。
わたしの写真もありました。
少し恥ずかしかったけど、一番大好きなドレスにお母様が整えてくれた髪型が良く似合っていてお気に入りの逸品です。
本当は、送りたくなかったのですが、皆さんが送るというので、泣く泣く手放したものです。
でも、こうしていろんな人に見られて恥ずかしい反面、嬉しい気持ちもあり、これはこれで良かったと思います。
さて、どうしましょうかね。
いつも派閥の皆さんと一緒のわたしは、1人で行動することがあまり無いので、こういう時に困ってしまいます。
とりあえず、読書コーナーに行きましょう。
本を読むのは大好きです。
わたしは席に座って、本を開きます。
「すいません、横に座ってもよろしいでしょうか?」
本に夢中になって気が付きませんでした。
「はい、どうぞ。」
横に広がっている本を片付けながら返事をします。
「サイモン草ですね。あなたも薬草がお好きですか?」
サイモン草を知っているなんて、この人何者?
かなりの薬草オタクと見ました。
「ええ、あなたも薬草のお詳しいのですね。」
同志を見つけたようでちょっと嬉しかった私は、微笑みながら答えます。
彼は、満面の笑みを浮かべ、手に取った分厚い本のタイトルを見せてきました。
「サンテべ著 薬草大全ですか。こんな貴重な本もここにあったのですね。」
「そうなんです。僕も見つけた時は驚きました。
それで、係の人に聞いてみたんです。そしたら、ここのパーティーの責任者でした。
彼女も本が好きで、きっと『本好きな人見知りさん』がたくさんいるだろうと、このコーナーを作ったらしいんですが、自分の趣味が入ってしまい、 ナーラ領のカトウ運輸図書館 にある蔵書をかなり持ってきたということでした。
ナーラ領のカトウ運輸図書館 ってご存知ですか? 王立図書館 にも負けないくらいの蔵書があるみたいです。
この本みたいに、普通は見れないような貴重な本も、自由に見れるらしいですよ。
一度行ってみたいなあ。」
「わたしも行ってみたいです。」
そんな会話をしながら2人で自分達のことや薬草について話し込んでしまいました。
彼は、王都に本店を持つ商店の3男だそうです。
小さい頃、妹が不治の病で倒れてから、それを直そうと一生懸命薬草の勉強をしたそうです。
妹さんは残念でしたが、他にも苦しんでいる子供達のために、薬草専門の商会作りたいと頑張っているとのことです。
今日は、取引先でもあるカトウ商会が新しく写真館を始めたので、写真を撮った絡みで来たと言っていました。
「わたしも、小さい時に病気で死にそうになったらしいんですが、たまたま薬草に詳しいお医者様が居られて、助けてもらいました。
わたしも、あなたのような仕事のお手伝いが出来たらうれしいです。」
「わたしの名前は、ペーターです。お名前を伺っても?」
「アイリスです。」
「アイリスさん、わたしと結婚を前提にお付き合いして頂けませんでしょうか?」
「お友達からでもよろしいでしょうか。」
「もちろんです。」
そこから先はあっというまでした。
貴族とは言え、法衣男爵家の3女。政略的に嫁ぐ必要もありません。
ペーターさんは、わたしの両親に挨拶に来られ、両親も一目で気に入ってくれたようです。
それから3ケ月のお付き合いを経て、わたし達は結婚しました。
あの時壁に貼ってあったわたし達の2枚の写真と、新たにプレゼントして頂いた2人で写った写真は、2人の新居に大切に貼ってあります。
新婚旅行には、ナーラ領のカトウ運輸図書館に行きました。
あの時の本好きな責任者さんに結婚の報告をしたら、なんとトラック馬車に乗せてもらってナーラ領に行けることになったんです。
王家ですら数台しか持っていないという貴重な馬車です。
快適な新婚旅行になったことは言うまでもありません。
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この写真は、次回の婚活パーティーで披露するようです。
トラック馬車での新婚旅行は、王都でブームになるかも知れませんね。
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