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Main story
罠か、いやマジか
しおりを挟む今日は特に大きなトラブルもなくあっという間に放課後に。
他のクラスから美紀の顔を見に来る奴が男女共にいたが、美紀自身慣れたもので手を振ったりスルーしたりと適当に対応していた。
俺や羽那子、民人と林さんが回りにいるからか、近付いて声を掛けようというのがいなかったので良かった。
五人で一緒に下校し、林さんと民人とは途中で別れた。我が家の前まで三人で帰り、そこで美紀とお別れ。
「じゃあどうなったかまた連絡するから。明日は一緒に勉強しようねー」
「えらい軽いけど大丈夫かいな……。
イチロー、無理せんでええからね」
「おう、気を付けてな」
玄関で美紀を見送り、羽那子と家へ入る。
何か当たり前のように二人で靴を脱いでいるが、俺にとっては違和感しかないんだよなぁ。
母さんにただいまを言った後、階段を上って部屋に戻る。後ろから羽那子がついてくる。
「いっちゃんまだ帰ってないね。じゃあ先に着替えて来るか」
俺の部屋の窓を開けて手を伸ばし、ベランダの柵に掴まる羽那子。
危なくて目が離せない。仕方ない、薄いピンク色の生地が見えたがこれは不可抗力だ。幼馴染の行動を見守っていただけだからこれは仕方がないんだ。
ベランダから窓を開けて自分の部屋に入り、こっちを見て舌を出しながらカーテンを閉める羽那子。
……俺も着替えよう。
着替え終わり、ベッドで横になりスマホを触っていると階段を上がる足音が聞こえて来た。
伊千香かな? と思っていると、足音は伊千香の部屋をスルーして俺の部屋の前で止まり、そして扉が開いた。
「いっちゃんまだ帰って来ないねー」
「いやいや窓から出てったなら窓から入って来いよ一貫性のない奴だな!」
うちの玄関がお前の靴でいっぱいになるんじゃないか? ある程度溜まって来たらまとめて家に持って帰るのか?
羽那子はハイハイと気のない返事をしながらこちらへ近付いてベッドへダイブ。俺の隣に横になった。
「今日のご飯は天ぷらうどんだから今は何もする事ないんだってー。
いっちゃんが帰って来たら起こしてー」
枕を取って頭を乗せ、掛布団を抱き枕のようにして脚で挟む。
何でわざわざ俺のベッドの俺の隣で寝るのか。
こいつの中ではいつもこうだったのか、小さい頃からこれが当たり前だったのか。
俺が数日前までの俺ではない事を知っていてもなお同じ行動をするのは何故か。
突如現れたライバルに塩を送るような事をするのはどうしてか。生来の性格なのか。
何で無防備に寝顔を晒せるのか。
そして、何でこんなに良い匂いがするのか……。
「はぁ……、しんど」
連日考える事ばかりで頭が痛くなる。俺だって昼寝しようかなって思ってたのに、こいつの隣で寝れる訳ないじゃん。
むしろ眠気なんて吹っ飛んだわ。血圧上がって頭痛いわ。
ゆっくりと寝返りをうち、こちらに身体を向ける羽那子。
また襟ぐりの開いたTシャツを着ている。少し覗き込めば全てが見通せるような恰好。
先ほどカーテンを閉めた時の舌を出した表情を思い出す。
これは罠か? いやマジか?
もし罠でも見れるもん見れるなら儲けものなんじゃないのか? いやダメだろう。
羽那子の寝顔を見ながら葛藤していると、不意に部屋の扉が開く。
ビックリしてそちらを向くと、眉間に皺を寄せながらこちらを見る伊千香の姿が。
いやこれは違うんだ、ただ寝てるだけで何もないんだ。
というか言い訳する方が疑われる? そもそも昨日の朝は何のリアクションもなかったが。
こちらから声を掛けられず見つめ合う事数秒。
「……バカ!!!」
バンッ!!!
「そうは言われてもだな……」
妹よ、俺はどうすればいいんだ?
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