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Main story
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もう少し前に合流していれば説明する手間が省けたのに。
民人と林さんに昨夜から今朝にかけて動いた状況を簡単に話していると、ちょうど学校に着いた。
「何と言うかまぁ……、頑張れ」
「クスクス、ニヤニヤ」
民人には同情され、林さんには面白がられた。
助けてくれよとは言わないので、これ以上面倒な事にならないように見守ってほしい。
教室に入り、みんなに挨拶をして自分の席へ。昨日くっ付けたままになっている机を離しておく。
「えー、そのままでいいじゃん」
羽那子の声を聞いてか、教室がシーンとする。
あれだ、羽那子の意図が分からないからだ。からかいなのか、嫉妬なのか、天然なのか。
下手に地雷を踏んでしまうと自分の身が危険に曝されるからな。その気持ちは分かるけど、であれば聞き耳を立てて様子を窺うのではなく放っておいてくれ。
「小学生ちゃうんやからおかしいやろ」
苦笑いしながらツッコミを入れる東条さん改め美紀。
俺と美紀の席の配置が窓際で一番奥、そして一番後ろなので黒板とは反対方向。見られると必然的に見て来る奴の顔が見える。
チラチラと見ていても堂々と見ていても、全部分かる。ストレス。
「鈴井君さっき東条さんの事美紀って呼び捨てにしてた」
「藤村さんはそれでいいのかな」
「むしろ言わせようとしてたっぽいよ、そういう癖なんじゃ……」
「止めろよ、はなちゃんはそんな子じゃない!」
「あんたに羽那子の何が分かるのよ」
ストレス!
思い切り怒鳴ってやろうかと思ったが、民人が俺の方へ来て手で抑えろとジェスチャーする。
「なぁ美紀ちゃん、昨日の授業は前の学校より進んでた? それとも遅れてたか?」
おお、率先して美紀の事を名前で呼ぶ事で俺だけが名前呼びしている訳ではないぞというアピール!
お前が親友で良かったよ……。
「そやなぁ、ちょっとだけ進んでる気がするわ」
「そうなんだ、じゃあ伊千郎君が手取り足取り教えてあげないとねぇ」
ニタニタ笑う林さん。せっかく民人がファインプレーしてくれてんのに!
「放課後にいっくんの部屋でみんなで勉強会しようよ! ちょうどテストも近い事だし。
あ、あたし超良い事言った!」
ザワザワザワ……
良い事言うのは時と場合を考えろ! クラスがさっき以上にざわめいてんじゃねぇか!!
羽那子のその発言の後、何を言ってももう無駄だと感じたのか、民人は自分の席に戻ってしまった。
ありがとう、お前はよくやってくれた。
「ハハハ、何回か転校の経験してるけど、こんなに注目されるんはさすがに初めてやな……」
「何というか、……お疲れ」
「イチローも巻き込まれてしもて大変やな。
はなちゃん、公平に平等にしようとしてくれてんのはすごい嬉しいんやけど、そこまでしてもらうと逆に気ぃ遣うわ」
「巻き込まれるも何もいっくんは当事者だし、何がきっかけで記憶が戻るかも分からないし」
羽那子が後ろを向いて俺の机に肘を乗せ、頬杖付きながら俺をジト目で見る。声量が小さいのは、一応俺の記憶がないという事をクラス中に知らせるべきでないという配慮からか。
しかし、クラスの連中から見るとこうなる。
「めっちゃ睨んでるよ!」
「バチバチやり合ってんだよやっぱ!」
「ザ・三角関係」
「いいなぁ顔が良い奴は」
「伊千郎は顔だけじゃなく性格も良いからな……」
下げられているのか、それとも上げられているのかよく分からない陰口。反応に困るから聞こえないフリしておこう。
「このクラスは仲が良さそうでええわ。イチローだけやなくはなちゃんも民人君もりなりんさんも良くしてくれるし安心やわ」
「さんはいらないわよー」
林さんも自分の席に座ったまま、こちらを振り返り会話に参加して来る。
「で、勉強会やるでしょ?」
「んー……、ああ。美紀が良ければ」
「ありがたいけどホンマにええの?」
うちは特に問題ない、と思う。
ただでさえ羽那子という来客があるくらいだから。
「そうやなくて、伊千香ちゃん的に」
「あー、それがあったか」
「じゃあ今日帰ってあたしがちゃんと話して、明日から勉強会って事にする?」
そういう事になった。
民人と林さんに昨夜から今朝にかけて動いた状況を簡単に話していると、ちょうど学校に着いた。
「何と言うかまぁ……、頑張れ」
「クスクス、ニヤニヤ」
民人には同情され、林さんには面白がられた。
助けてくれよとは言わないので、これ以上面倒な事にならないように見守ってほしい。
教室に入り、みんなに挨拶をして自分の席へ。昨日くっ付けたままになっている机を離しておく。
「えー、そのままでいいじゃん」
羽那子の声を聞いてか、教室がシーンとする。
あれだ、羽那子の意図が分からないからだ。からかいなのか、嫉妬なのか、天然なのか。
下手に地雷を踏んでしまうと自分の身が危険に曝されるからな。その気持ちは分かるけど、であれば聞き耳を立てて様子を窺うのではなく放っておいてくれ。
「小学生ちゃうんやからおかしいやろ」
苦笑いしながらツッコミを入れる東条さん改め美紀。
俺と美紀の席の配置が窓際で一番奥、そして一番後ろなので黒板とは反対方向。見られると必然的に見て来る奴の顔が見える。
チラチラと見ていても堂々と見ていても、全部分かる。ストレス。
「鈴井君さっき東条さんの事美紀って呼び捨てにしてた」
「藤村さんはそれでいいのかな」
「むしろ言わせようとしてたっぽいよ、そういう癖なんじゃ……」
「止めろよ、はなちゃんはそんな子じゃない!」
「あんたに羽那子の何が分かるのよ」
ストレス!
思い切り怒鳴ってやろうかと思ったが、民人が俺の方へ来て手で抑えろとジェスチャーする。
「なぁ美紀ちゃん、昨日の授業は前の学校より進んでた? それとも遅れてたか?」
おお、率先して美紀の事を名前で呼ぶ事で俺だけが名前呼びしている訳ではないぞというアピール!
お前が親友で良かったよ……。
「そやなぁ、ちょっとだけ進んでる気がするわ」
「そうなんだ、じゃあ伊千郎君が手取り足取り教えてあげないとねぇ」
ニタニタ笑う林さん。せっかく民人がファインプレーしてくれてんのに!
「放課後にいっくんの部屋でみんなで勉強会しようよ! ちょうどテストも近い事だし。
あ、あたし超良い事言った!」
ザワザワザワ……
良い事言うのは時と場合を考えろ! クラスがさっき以上にざわめいてんじゃねぇか!!
羽那子のその発言の後、何を言ってももう無駄だと感じたのか、民人は自分の席に戻ってしまった。
ありがとう、お前はよくやってくれた。
「ハハハ、何回か転校の経験してるけど、こんなに注目されるんはさすがに初めてやな……」
「何というか、……お疲れ」
「イチローも巻き込まれてしもて大変やな。
はなちゃん、公平に平等にしようとしてくれてんのはすごい嬉しいんやけど、そこまでしてもらうと逆に気ぃ遣うわ」
「巻き込まれるも何もいっくんは当事者だし、何がきっかけで記憶が戻るかも分からないし」
羽那子が後ろを向いて俺の机に肘を乗せ、頬杖付きながら俺をジト目で見る。声量が小さいのは、一応俺の記憶がないという事をクラス中に知らせるべきでないという配慮からか。
しかし、クラスの連中から見るとこうなる。
「めっちゃ睨んでるよ!」
「バチバチやり合ってんだよやっぱ!」
「ザ・三角関係」
「いいなぁ顔が良い奴は」
「伊千郎は顔だけじゃなく性格も良いからな……」
下げられているのか、それとも上げられているのかよく分からない陰口。反応に困るから聞こえないフリしておこう。
「このクラスは仲が良さそうでええわ。イチローだけやなくはなちゃんも民人君もりなりんさんも良くしてくれるし安心やわ」
「さんはいらないわよー」
林さんも自分の席に座ったまま、こちらを振り返り会話に参加して来る。
「で、勉強会やるでしょ?」
「んー……、ああ。美紀が良ければ」
「ありがたいけどホンマにええの?」
うちは特に問題ない、と思う。
ただでさえ羽那子という来客があるくらいだから。
「そうやなくて、伊千香ちゃん的に」
「あー、それがあったか」
「じゃあ今日帰ってあたしがちゃんと話して、明日から勉強会って事にする?」
そういう事になった。
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