【完結】遠き星にて

紙志木

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シュイの腕の中でうとうとしながら、ハルトは伝えないといけない事があるのを思い出した。

「シュイ」

シュイの方を振り向くと、目を閉じて寝息を立てて眠っていた。隔離室ではゼリィ切れもあってゆっくり休めなかったのだろう。ハルトはシュイの腕からゆっくり抜け出すと、シュイにそっとブランケットを掛けた。




ハルトはラバースーツを着てマントを拾い上げるとリビングに出た。椅子に座ってぼんやりとこれまであった事を思い返す。

不意にドアのロックが解除され、短髪の統制局員が部屋に入ってきた。顔を強張らせて立ち上がるハルトに微笑む。

「N48199とD51764が隔離室から出されて部屋で謹慎になった。名はゾルドとロイカと言ったか」

警戒して後じさるハルトを宥めるように片手を挙げると、局員は続けて言った。

「色々あったが、君達には感謝している。君達のお陰で統制局員も含めた全員にペンシルが支給されることになったのだから。だが、局員も一枚岩では無い。身辺には十分に注意することだな」

局員は最後はハルトの背後に向けて言った。ハルトが振り返ると、シュイが腕を組んで壁にもたれて立っていた。眼光が刺すように鋭い。

「そう睨むな。E001があまりに可愛いから、少し味見をしただけだろう。D51764に邪魔をされたがね」

シュイからゆらりと怒気が立ち上るのが見えるようだった。
局員はそれには構わぬ様子で、くすりと笑って踵を返すと部屋を出て行った。



「あの、シュイ...」

シュイは壁から背中を離すと数歩でハルトまでの距離を詰め、ハルトを腕に抱きしめた。思わず腕に力がこもる。

「一体、何人の男を虜にすれば気が済む」

「僕、そんな...」

シュイは盛大な溜息を吐くと腕を緩めた。ハルトの下顎を掴んで上向かせると、触れるだけの口付けをする。先刻あれだけ乱れた姿を見せておきながら、これだけで頬を赤らめるハルトが可愛い。
ハルトは何度か長い睫毛を瞬かせると、美しく潤んだ瞳でシュイを見上げた。

「シュイ、僕と地球へ行かない?」

「地球へ?」

「評議会の議員が地球へ行くポッドを用意してくれると言ったんだ。僕は、シュイと一緒に行きたい」

シュイが考え込むように目を伏せた。ハルトが不安になり始めた頃、シュイが目を開いた。大きな手をハルトの顔に添えて親指で頬をすり、と撫でる。

「ああ、行こう。ハルトと離れるのは考えられない」

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