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第二章

30.ウトゥさんは、目覚めた瞬間に駆け出せそうですね

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(絶大な人気を誇る神様とその真逆の存在がカップルだったらそりゃあ、ひた隠しにしたいのも分かるけれど)
 部屋に引き返そうとすると暗い廊下で二つの目が光っている。
 側まで行くと茶トラのニャーゴで、与えられた私室にするりと入ってくる。
 寝台に上がると、ニャーゴは我が物顔で飛び上がってきて足元で丸くなった。
 毛布をかぶる。
 治りきらない火傷で皮膚がじくじく痛み始めた。
「う、……うう」
 唸りながら身体を丸める。
 さっさと貰った軟膏を塗ってしまえばいい。
 それで、楽になれるのだから。
 けれど、それは嫌だった。
 スエンが作った薬で楽になるより、それをわざと塗らずに痛みにまみれたい気分だった。
 理由は分からない。

 朝になった。
 といっても夜しか無いクルヌギアでは、ハジバミ油の灯火具が点ったら朝、消えたら夜なので、逆転現象には正直慣れていない。体内時計も乱れがちだ。
 意地を張って軟膏を塗らなかったせいで完全に寝不足だった。目覚めてしまったのは、ドタンバタンと何度も扉を開けしめする赤髪男のせいだった。
(何しているんだ、この神様?)
 ウトゥは、森羅が暫時与えられた勝手に部屋に入ってきて部屋の棚から粘土板を運び出している。
 ぼーっとした頭で挨拶もせずに黙って眺めていると、
「よう。黒焦げ土人形。お目覚めか」
 声をかけられて、さっと顔をそらす。
 確かに目が覚めた。
 昨夜のスエンとこの男の裸の抱擁が思い出されたからだ。
「いつも寝起きはそんななのか?」
「ウトゥさんは、目覚めた瞬間に駆け出せそうですね」
「お前、オレが何しているのか聞かねえの?部屋から物が持ち出されているんだぜ?」
 試すような言い方にムッとした。
「別に、聞かなくたってわかるので」
「ほお。それはそれは。なら、お前の推測が合っているかどうか判断してやるから、話してみろよ。自信無いっていうなら無理強いはしないけどさ」
 どうやら、自分はネアカな神様からの煽り耐性はないようだ。
 森羅は怒りの息を付いた。
「オレのせいでクルヌギアに調査団が派遣されるかもしれないとウトゥさんは言っていました。そういう情報が入ってくる立場にいるのでしょう、貴方は。ということは、先生と一緒にいれば自分の身だって危うくなるはず。でも、変装するでもなく堂々とやってきた。だったら、先生と会っていたとしても怪しまれない大義名分があるということです。そして、運び出している粘土板は、ここに作業台のような
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