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第一章
14.怯えて失禁までしたくせによくそこまで考えられますね
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沈黙が痛い。
だから、それを自ら破った。
「クルヌギアに自分だけ帰らなくちゃいけない理由があるの?もしかして、そこにいい相手がいるとか?人助けでオレを連れて行っても物凄く嫉妬深いからケンカになる?」
「突飛なことを」
「だって。添い遂げる相手がいないから、『神との添い寝」という神事が行われるんだって先生は言っていたけれど、形骸化しているのは事実のようだし、だったらさっきの土人形達に言わないだけでクルヌギアでの先生の状況だって変わっているかもしれない」
「貴方の頭の回転によさには、舌を巻きます。怯えて失禁までしたくせによくそこまで考えられますね」
「あれは……すみません」
スエンが黙り込んだので、森羅も黙った。
彼が多少迷惑そうに「じゃあ、クルヌギアに一緒に来ますか?」と言ってくれるのを待った。
でも、スエンが森羅に発した言葉は、
「昨晩のことは忘れてください。神事が円滑に進むように気を使っただけです。ましてや同衾する予定もありませんでした」
言葉が鋭い刃のように胸に刺さる。
思わずその部分を抑えた。
勘違いするなと突き放されるのは辛い。
でも、この痛み初めてでは無い気がする。
スエンの声が振ってきた。
「シンラ。顔を上げて」
この男、自分がこうやって胸を抑えているのも演技なのだと思っているのかもしれない。森羅にはそれが悲しかった。
「行く宛が無いと言うのは本当ですか?」
無慈悲な男の顔を見ずに頷く。
「やっぱり、故郷で悪いことをしたせいで戻れない?『神との添い寝』役を終えただけでは禊にはならないのでしょうか?一体、どんな大罪を?」
「違うって。あんた、どこまでオレを疑うつもりなんだ!」
いつの間にか、神様のことをあんた呼ばわりだ。
常識はそれなりにある方だと思う。
でも、怒りと悲しみがそれをふっ飛ばしてしまう。
相手からはふうっと、面倒くさそうなため息。
「じゃあ、付いてきなさい」
スエンが森羅を追い越した。
いい結果になった気がしない。
それでも、大きな背中を追いかけていく。
キ国の街は赤茶けていた。
整然と四方に道が通っていて、角ばった建物がいくつもある。
神殿へ繋がる大きな通りは土産物屋だろうか。牛や羊など動物を象った置物がからからと置かれてある。素材は、貝だったり、骨だったり、土だったり。
だから、それを自ら破った。
「クルヌギアに自分だけ帰らなくちゃいけない理由があるの?もしかして、そこにいい相手がいるとか?人助けでオレを連れて行っても物凄く嫉妬深いからケンカになる?」
「突飛なことを」
「だって。添い遂げる相手がいないから、『神との添い寝」という神事が行われるんだって先生は言っていたけれど、形骸化しているのは事実のようだし、だったらさっきの土人形達に言わないだけでクルヌギアでの先生の状況だって変わっているかもしれない」
「貴方の頭の回転によさには、舌を巻きます。怯えて失禁までしたくせによくそこまで考えられますね」
「あれは……すみません」
スエンが黙り込んだので、森羅も黙った。
彼が多少迷惑そうに「じゃあ、クルヌギアに一緒に来ますか?」と言ってくれるのを待った。
でも、スエンが森羅に発した言葉は、
「昨晩のことは忘れてください。神事が円滑に進むように気を使っただけです。ましてや同衾する予定もありませんでした」
言葉が鋭い刃のように胸に刺さる。
思わずその部分を抑えた。
勘違いするなと突き放されるのは辛い。
でも、この痛み初めてでは無い気がする。
スエンの声が振ってきた。
「シンラ。顔を上げて」
この男、自分がこうやって胸を抑えているのも演技なのだと思っているのかもしれない。森羅にはそれが悲しかった。
「行く宛が無いと言うのは本当ですか?」
無慈悲な男の顔を見ずに頷く。
「やっぱり、故郷で悪いことをしたせいで戻れない?『神との添い寝』役を終えただけでは禊にはならないのでしょうか?一体、どんな大罪を?」
「違うって。あんた、どこまでオレを疑うつもりなんだ!」
いつの間にか、神様のことをあんた呼ばわりだ。
常識はそれなりにある方だと思う。
でも、怒りと悲しみがそれをふっ飛ばしてしまう。
相手からはふうっと、面倒くさそうなため息。
「じゃあ、付いてきなさい」
スエンが森羅を追い越した。
いい結果になった気がしない。
それでも、大きな背中を追いかけていく。
キ国の街は赤茶けていた。
整然と四方に道が通っていて、角ばった建物がいくつもある。
神殿へ繋がる大きな通りは土産物屋だろうか。牛や羊など動物を象った置物がからからと置かれてある。素材は、貝だったり、骨だったり、土だったり。
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