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10.考えない、が1番楽
しおりを挟む「面をあげよ」
決して大きな声ではないが思わず息を飲むような、低く響く声に促されゆっくりと顔をあげる。
目の前には強行軍で3日もしないうちに帰国してくださった国王陛下が険しい表情で玉座に居た。
取り急ぎ、教えて貰った付け焼き刃のカーテシーを披露し名乗る。緊張のあまり何を喋ったかあまり記憶がないが、人が変わったように厳しくなったペルル直伝の挨拶は無意識でもそれなりに動けるぐらいには体に染み付いているようだ。
「此度の件、サージュより報告を受けておる。後ほど念の為改めて仔細を問うが、我が息子の自分勝手な行いにより貴殿の人生をおおいに狂わせてしまったことまずは謝罪させて頂く。」
申し訳なかった、との言葉と共に頭を下げられ動揺する。
そう簡単に頭を下げる事が許されるような方ではないはずだ。
生まれてこの方王族なんてものと関わらずに生きてきた人間にこう言った場合の対応なんて分からずキョドキョドと不審な動きをしてしまう。
「あ、あの、もう本当に今更というか。来てしまったものはどうしようもないというか…そもそもこの場にいる皆様に非は無いと申しますか…
とにかく様々なご支援を頂き、今は問題なく生活をさせて頂いておりますので、あの、どうぞお気になさらないでください…」
なんて返答したらいいかなんて誰も教えてくれなかったと涙目になるも、頭を下げさせたままじゃダメな事だけは分かるので必死に言葉を紡ぐ。
実際問題、正直言葉通りなのだ。
不安、不満、恐怖、怒り、色々な感情が無いわけではないが、当事者でない人に当たるべきじゃないというくらいには冷静さを取り戻してはいるし、何より現状はそれなりに守られている。
確かに暴走を止めることは出来なかったのか、とか育て方間違ってるんちゃう?とか言いたいことがないとは言わないが、
謝って欲しい相手は第2王子サマただ1人なので、とりあえず言葉を飲み込む。
そこについては次にあった時にブチ切れよう。本人に。
「寛大なお心に感謝する。しかし親としてやるべき事はあるだろう。できる限りの支援は私の名において保証する。聖女候補とも話をした後に、第2王子についてはそれなりの贖罪をしてもらう。もし、望む罰があるのであれば希望を伺おう。」
深いため息と共に眉間を揉みながら尚も国王陛下は言葉を続ける。
「とはいえ聖女と成りうる女性を呼び出してしまった以上、これを禁術を破り勝手に召喚してしまったと言うのが広まるのはあまり良い状況とは言えぬ。聖女候補殿、ミヤシロ殿の身の安全を考えても国の意思としての召喚とし、国賓として迎え入れることが最善でないかと考えている。表向きには第2王子を国の為に聖女召喚を単独で行った勇者であるかのように語ることになるだろう。貴女方の心を省みない話である事は重々承知しているが、国民の不信感は国を殺す。貴女方の生活の保証の為にもこの様な形になることを了承頂きたい。」
流れるように語られる内容に、必死で追いつこうとするも、結局子供が可愛い親による減刑なのか、心から国を思っての動きなのか真偽は読めず…
まぁそうだよね。たかだか二十何年生きただけの小娘が多くの命の上で生きてる国王陛下と渡り合うなんて出来るはずもないわけで。
死にたくない、痛い苦しいは嫌だが解消されるのであれば一旦思考を停止して全部を諦めて受け入れちゃった方が早いんじゃない???
未成年の奏ちゃんの保護者代わりにちょっとでもと色々頑張って考えたけど、チートな能力もないし、元のスペックが高い訳でもない私が今出来ることなんて何も無いわけで…
「私と、聖女候補様の命の保証を頂けるのであれば、どうぞよろしい様に進めてくださいませ。」
諦めて流されて様子をみますか。
応援ありがとうございます!
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