虐げられた黒髪令嬢は国を滅ぼすことに決めましたとさ

くわっと

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四章 呪いと反乱

97.兄の症状

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「お久しぶり、と言うほどではありませんね」

「何をしに来た、オルコット?」

「いえ、妹としてお兄様が心配になり様子を見に来ただけです」

お兄様の症状は、残念ながらあまり進行していませんでした。
クルクルとグルグルと、雑に白い布が右腕に被さっているだけ。お父様よりは大分軽い進行です。

あぁ、つまらない。
大声をあげて、
使用人の皆様も心配させているから、もっと酷い、酷い有様だと思っていたのに。
たかだが右腕だけとは。

「どうせ笑いに来たのだろう、この醜い姿を」

お兄様は元々醜いので大差ありません、とは言葉にしません。
卑屈なお兄様ならば、ご自身で勘違いして邪推しているかもしれませんが。

「笑う訳がないでしょう。貴方は私のお兄様なのですから」

醜くても、
小狡くても、
虐げても。

この人が私の兄である事実は変わらないのです。
ただ、兄であるだけで、それ以上でもそれ以下でもありません。

兄だから、大切に思う、とか。
兄だから、何をされても許す、とか。

そんなことは、そんなつまらないことは、小指のささくれ程に、思っていません。

私はぐるぐるになったお兄様の右腕を取ります。
躊躇なく、だけれど丁寧に。

「おい、何をーー」

お兄様の制止も無視し、観察を行います。
お父様はもちろん、街の人々もこんな中途半端な状態でいることはありませんでした。
お兄様は発症して間もない、ということもあるかもしれませんが、腕一本、それもこんな覆い隠せる程度で済んでいます。

結果には、必ず理由があります。
その理由を解き明かすためには、まずは情報です。

腐臭のような異臭に不快感を抱きつつ、お兄様のぐるぐるを解いていきます。
焼け爛れたのような皮膚が露わになります。
だけれど、それは一部分でぐるぐるにする程もない、私からしてみれば隠す程でもない外傷ーーいえ、外症です。

「やめろ、見るんじゃない!」

お兄様は解き放たれた右腕で、乱暴に私を払いのけます。
作業に集中していたので、思い切り頬をぶたれる形になりました。

久しぶりの、肉体的な痛み。
けど、次はありません。
次の恐怖に恐れおののくことはありません。

「どうして、どうしてこんなことにーー」

お兄様は白布を急いで巻き直し、ぶつぶつと呟いています。
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