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はっきりが大事
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超子は私が飼っている三毛猫のポワロを、たまに私の住むアパートまで見に来るのだが、その時の彼女はずっとデレデレしていて、まるで子供である。
「…先生、有難ね。ポワロも喜んでいると思うわ。学校で飼うのが無理だから、先生が引き受けてくれて、本当、感謝してるけど、嫌々じゃなかった?」
私は即答した。
「全然嫌じゃなかったよ。猫を飼うのは初めてだったから、大丈夫かなとは思ったけど、教え子が可愛いと言っているんだし、それなら、となって飼ってみたら、可愛いのなんの…癒されるし、大人しい割には凄くじゃれてくる時もあるし、いや、たまらないよ」
と言って笑うと、超子がおねだりを始めた。
「…先生、実はね、私、また三毛猫を見つけてね。帰る途中にある公園の前を通ると、必ずいるのよ。可愛いし、ポワロよりも大人しいの。良ければ、またお願い出来ないかな?」
私は再び即答した。
「悪いけど、無理だ。前にも話したように、大家の意向でペットを飼うのは禁止なのだが、超子らのお願いだし、私も飼ってみたいと思い、大家に頼んで、ポワロは引き受けた。だが、大家のことを考えると、いくら大人しい猫だとしても、これ以上はきついんだ。分かってくれないか」
超子は明らかに残念そうな顔をしたが、私が真剣に話しているのを見て、笑みを浮かべた。
「…先生、甘えちゃってごめんね。ポワロをお願いした時だって、本来なら駄目だったのに、受け入れてくれたんだもの。分かった。私、親から断られて、ポワロは飼えなかったけど、また聞いてみる。それで無理なら、他をあたってみるね」
私は済まないなと言うと、超子は首を横に振った。
「ううん、いいの。それよりも先生が正直に言ってくれて良かったと思って…私、ポワロを無理言って飼って貰ったことを忘れてた。ごめんなさい。残念なんて思ったら、先生に失礼な話だしね」
そう言って、超子は深々と頭を下げると、爽やかに去っていった。
いわゆるお嬢様である彼女の家でペットを飼おうと思えば飼えるのかも知れないが、超子が飼いたいと望んでも、親御さんは何がしかの理由で飼えないと言っている訳で、子供を甘やかしていないことがよく分かる…超子には言っていないが、私がポワロを飼うことになった直後、超子の母親から丁寧なお礼の電話を貰ったので、親御さんからしてきちんと礼節が出来ていることは間違いない…やはり礼を重んじることは大切なのだなぁ…。
と頭を巡らせていると、ポワロが膝の上に乗って来て、じっと私をうらめしそうに見ていた…さっきの猫の話を聞いていたのだろうか、まさか理解しているはずは無いが、無理なものは無理なのだ、分かってくれ、ポワロよ。
数日後、超子が嬉しそうに職員室にやって来た。
「先生、両親が例の猫を飼ってもいいって言ってくれたの!動物に構っていることが大学受験に響くといけないからって拒んでいたらしいんだけど、生徒会と勉強の両立が出来ているからって、許してくれたのよ!」
そう言うと、満面の笑みを見せて、また深々とお辞儀をして、教室に戻っていった超子の姿を見送ると、そうだ、ポワロにも早く伝えてやりたいなと思った。
すると、超子が笑顔で戻って来た。
「…先生、お願いがあるんだけど、今度の猫の名前、考えてくれる?」
手を合わせて頼まれたからには引き受けない訳にはいかないと思い、快諾したのだが、さて、どうしたものだろう…三毛猫ホームズからヒントを得てポワロと名付けたとなると、次も名探偵の名前が妥当な気がする…じゃあ、アニメから借用してコナンにするか…いや、ホームズを生んだのがコナン・ドイルだから、それは違うな…なかなか手強いぞ、これは…。
私はこういう時にこそ素早く決断し、実行しなければいけないと痛感したのだった。
「確かにノーというのは勇気がいる。しかし、逆に信頼度はノーで高まる場合もある。ノーとイエスははっきり言ったほうが、長い目で見れば信用されるということだ」との田中氏の言葉を基にして、書かせて頂きました。
「…先生、有難ね。ポワロも喜んでいると思うわ。学校で飼うのが無理だから、先生が引き受けてくれて、本当、感謝してるけど、嫌々じゃなかった?」
私は即答した。
「全然嫌じゃなかったよ。猫を飼うのは初めてだったから、大丈夫かなとは思ったけど、教え子が可愛いと言っているんだし、それなら、となって飼ってみたら、可愛いのなんの…癒されるし、大人しい割には凄くじゃれてくる時もあるし、いや、たまらないよ」
と言って笑うと、超子がおねだりを始めた。
「…先生、実はね、私、また三毛猫を見つけてね。帰る途中にある公園の前を通ると、必ずいるのよ。可愛いし、ポワロよりも大人しいの。良ければ、またお願い出来ないかな?」
私は再び即答した。
「悪いけど、無理だ。前にも話したように、大家の意向でペットを飼うのは禁止なのだが、超子らのお願いだし、私も飼ってみたいと思い、大家に頼んで、ポワロは引き受けた。だが、大家のことを考えると、いくら大人しい猫だとしても、これ以上はきついんだ。分かってくれないか」
超子は明らかに残念そうな顔をしたが、私が真剣に話しているのを見て、笑みを浮かべた。
「…先生、甘えちゃってごめんね。ポワロをお願いした時だって、本来なら駄目だったのに、受け入れてくれたんだもの。分かった。私、親から断られて、ポワロは飼えなかったけど、また聞いてみる。それで無理なら、他をあたってみるね」
私は済まないなと言うと、超子は首を横に振った。
「ううん、いいの。それよりも先生が正直に言ってくれて良かったと思って…私、ポワロを無理言って飼って貰ったことを忘れてた。ごめんなさい。残念なんて思ったら、先生に失礼な話だしね」
そう言って、超子は深々と頭を下げると、爽やかに去っていった。
いわゆるお嬢様である彼女の家でペットを飼おうと思えば飼えるのかも知れないが、超子が飼いたいと望んでも、親御さんは何がしかの理由で飼えないと言っている訳で、子供を甘やかしていないことがよく分かる…超子には言っていないが、私がポワロを飼うことになった直後、超子の母親から丁寧なお礼の電話を貰ったので、親御さんからしてきちんと礼節が出来ていることは間違いない…やはり礼を重んじることは大切なのだなぁ…。
と頭を巡らせていると、ポワロが膝の上に乗って来て、じっと私をうらめしそうに見ていた…さっきの猫の話を聞いていたのだろうか、まさか理解しているはずは無いが、無理なものは無理なのだ、分かってくれ、ポワロよ。
数日後、超子が嬉しそうに職員室にやって来た。
「先生、両親が例の猫を飼ってもいいって言ってくれたの!動物に構っていることが大学受験に響くといけないからって拒んでいたらしいんだけど、生徒会と勉強の両立が出来ているからって、許してくれたのよ!」
そう言うと、満面の笑みを見せて、また深々とお辞儀をして、教室に戻っていった超子の姿を見送ると、そうだ、ポワロにも早く伝えてやりたいなと思った。
すると、超子が笑顔で戻って来た。
「…先生、お願いがあるんだけど、今度の猫の名前、考えてくれる?」
手を合わせて頼まれたからには引き受けない訳にはいかないと思い、快諾したのだが、さて、どうしたものだろう…三毛猫ホームズからヒントを得てポワロと名付けたとなると、次も名探偵の名前が妥当な気がする…じゃあ、アニメから借用してコナンにするか…いや、ホームズを生んだのがコナン・ドイルだから、それは違うな…なかなか手強いぞ、これは…。
私はこういう時にこそ素早く決断し、実行しなければいけないと痛感したのだった。
「確かにノーというのは勇気がいる。しかし、逆に信頼度はノーで高まる場合もある。ノーとイエスははっきり言ったほうが、長い目で見れば信用されるということだ」との田中氏の言葉を基にして、書かせて頂きました。
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