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食わず嫌いはいけない!
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時期は8月の終わりを迎え、超子の生徒会長振りも板に付いてきたのだが、誰にでも愛想良く接する超子にも苦手な人物がいた。
私らが住む地域は近隣の学校同士が交流をはかり、色々な情報交換を行っていた。
とは言っても、学校の生徒全員が一同に会するのは物理的にきついので、生徒会の正副会長や書記など、それぞれの学校の代表数人が集まり、きたんの無い意見を交わしていたが、超子が言う人物はその中にいるらしい。
会合はまだ始まって浅く、3ヶ月単位で開催学校は持ち回る訳だが、我が校は今年初めてであり、私は超子が苦手な人物にまだ会ったことは無かった。
超子はため息混じりに言う。
「…私もね、立場的にも道徳的にも人間を嫌ってはいけないと分かっているんだけど、彼だけはどうしても苦手で…」
どうやら彼と言うのが、超子が避けたい存在らしく、相手が男性だと分かった。
「その男子は生徒会長なのかい?」
私が質問すると、超子は首を横に振った。
「それがね、副会長なのよ。私が嫌なのは副会長なのに、自校の会長に失礼な態度をとったことで、あれでは会長が可哀想だわ…会長は会長なりの案を出しているのに、横から口を出して否定してしまうのよ」
私は興味深く感じた。
「…例えば、どんなことだね?」
超子は顔をしかめながら、答えた。
「…そうね、例えば、会長が皆で近所の除草やゴミ拾いを行うのはどうかと3ヶ月前の集まりの時に提案したら、それはまずいと思います、時期尚早ではないでしょうかなんて言うのよ。まだ話し合ってもいないのによ。会長は気が弱そうな男子だから黙ってしまったけど…」
超子は明らかに憤っていたが、私はなるほどと言って、冷静に発言した。
「…超子の言いたいことは分かるし、確かに話し合ってもいないうちに、というのは気になるな…だが、彼にも言い分があるかも知れないし、性格に起因している場合もあるだろう。3ヶ月前に初めて会ったんだから、まだ彼のことをよく分からなくても当然だしな。ま、次の会合に私も出席するから、彼のことをよく見ておくよ…あ、それから、セクハラでは無いのだが、あまり苦々しい顔をしていると、綺麗な顔が台無しになるぞ」
先生、何、言ってるのと超子は言って、恥ずかしそうな表情を見せたが、しっかりしているとはいえ、女子高生の片鱗を覗かせた。
さて、数校の集まりの日がやってきて、今年の議長である超子が座る席から始まり四方に各高校の代表者らが顔を並べた。
超子は少し緊張気味に述べた。
「皆さん、今日はお集まり頂き、有難うございます。先の会合の時と同じ顔触れですので、私たちの自己紹介は行わなくて大丈夫だと思いますが、そこに座っているのは私のクラスの担任教師で、オブザーバー的な役割をしてくれることになっております」
オブザーバーときたか…超子はやはりあがっているようだが、真面目な彼女のことだから真剣な発言であることも間違いないだろう。
そして、各校が議題を出し合い、書記がスラスラとホワイトボードに書いていく中、例の生徒会長が発言した。
「実は先日、私は副会長らと協力して、あるアプリを開発しまして…まだ本格的な活用は行っていませんが、すでに実施されているオンラインで数校を結ぶ取り組みがそのアプリを使いますと、より便利になると考え…」
すると、くだんの副会長が口を挟んだ。
「…会長、それはまだ早いかと…」
私はハッとして、超子を見ると、副会長を横目で睨んでいる彼女の姿があった。
私はお節介かと思ったが、ここはハッキリと言っておくべきところだろうとも感じた。
「…まぁ、会長の話を聞いてみてもいいかと思うのだが、どうだろう?」
私の口出しに少し驚いたようだったが、副会長は頭を下げて、ゆっくりと言った。
「…申し訳ありません。私はどうもせっかちでいけません。ただ、決して会長の意見を否定している訳では無いことだけは分かって頂きたいのです。会長からも話があったように、私もせんえつながら、アプリの作成に携わらせて頂きましたが、ウイルスの問題など、まだ課題が残っていますので、もう少し時間を置いてからが良いと思ったのです…」
そして、副会長は再び頭を下げ、会長にも謝罪した。
私は分かりましたと副会長に言った後、超子を見ると、複雑な表情をしていた。
それから様々な議題が提示され、様々な意見が飛び交うといったように、充実した会議になったと私は満足した。
会合が終わると、議長である超子のもとに例の副会長が歩み寄った。
「…改めまして、本日は申し訳ありませんでした。繰り返しになりますが、私は、はやる性格で、度々、会長に対しても失礼な態度をとってしまいます。会長にも伝えましたが、以後、気を付けますので、よろしくお願い致します」
超子は丁寧過ぎるお詫びに面食らい、明らかに恐縮していた。
ちなみに、超子は副会長に、会長が出した除草の提案をやめさせた理由を尋ねると、5月の終わりはすでに暑くなっていて、熱中症のことを考えると、控えたほうが良いのではないかと思ったからと答えた。
そんなこんなで、超子の副会長の見る目は変わり、だいぶ打ち解けたようだが、やはり人は外見だけで判断してはいけないと、痛感した。
「世の中には、会って話をし、付き合えば、その人間がよくわかるのに、知らないまま食わず嫌い、毛嫌いしている場合が多い。互いに自戒すべきことだよ」との田中氏の言葉を基にして、書かせて頂きました。
私らが住む地域は近隣の学校同士が交流をはかり、色々な情報交換を行っていた。
とは言っても、学校の生徒全員が一同に会するのは物理的にきついので、生徒会の正副会長や書記など、それぞれの学校の代表数人が集まり、きたんの無い意見を交わしていたが、超子が言う人物はその中にいるらしい。
会合はまだ始まって浅く、3ヶ月単位で開催学校は持ち回る訳だが、我が校は今年初めてであり、私は超子が苦手な人物にまだ会ったことは無かった。
超子はため息混じりに言う。
「…私もね、立場的にも道徳的にも人間を嫌ってはいけないと分かっているんだけど、彼だけはどうしても苦手で…」
どうやら彼と言うのが、超子が避けたい存在らしく、相手が男性だと分かった。
「その男子は生徒会長なのかい?」
私が質問すると、超子は首を横に振った。
「それがね、副会長なのよ。私が嫌なのは副会長なのに、自校の会長に失礼な態度をとったことで、あれでは会長が可哀想だわ…会長は会長なりの案を出しているのに、横から口を出して否定してしまうのよ」
私は興味深く感じた。
「…例えば、どんなことだね?」
超子は顔をしかめながら、答えた。
「…そうね、例えば、会長が皆で近所の除草やゴミ拾いを行うのはどうかと3ヶ月前の集まりの時に提案したら、それはまずいと思います、時期尚早ではないでしょうかなんて言うのよ。まだ話し合ってもいないのによ。会長は気が弱そうな男子だから黙ってしまったけど…」
超子は明らかに憤っていたが、私はなるほどと言って、冷静に発言した。
「…超子の言いたいことは分かるし、確かに話し合ってもいないうちに、というのは気になるな…だが、彼にも言い分があるかも知れないし、性格に起因している場合もあるだろう。3ヶ月前に初めて会ったんだから、まだ彼のことをよく分からなくても当然だしな。ま、次の会合に私も出席するから、彼のことをよく見ておくよ…あ、それから、セクハラでは無いのだが、あまり苦々しい顔をしていると、綺麗な顔が台無しになるぞ」
先生、何、言ってるのと超子は言って、恥ずかしそうな表情を見せたが、しっかりしているとはいえ、女子高生の片鱗を覗かせた。
さて、数校の集まりの日がやってきて、今年の議長である超子が座る席から始まり四方に各高校の代表者らが顔を並べた。
超子は少し緊張気味に述べた。
「皆さん、今日はお集まり頂き、有難うございます。先の会合の時と同じ顔触れですので、私たちの自己紹介は行わなくて大丈夫だと思いますが、そこに座っているのは私のクラスの担任教師で、オブザーバー的な役割をしてくれることになっております」
オブザーバーときたか…超子はやはりあがっているようだが、真面目な彼女のことだから真剣な発言であることも間違いないだろう。
そして、各校が議題を出し合い、書記がスラスラとホワイトボードに書いていく中、例の生徒会長が発言した。
「実は先日、私は副会長らと協力して、あるアプリを開発しまして…まだ本格的な活用は行っていませんが、すでに実施されているオンラインで数校を結ぶ取り組みがそのアプリを使いますと、より便利になると考え…」
すると、くだんの副会長が口を挟んだ。
「…会長、それはまだ早いかと…」
私はハッとして、超子を見ると、副会長を横目で睨んでいる彼女の姿があった。
私はお節介かと思ったが、ここはハッキリと言っておくべきところだろうとも感じた。
「…まぁ、会長の話を聞いてみてもいいかと思うのだが、どうだろう?」
私の口出しに少し驚いたようだったが、副会長は頭を下げて、ゆっくりと言った。
「…申し訳ありません。私はどうもせっかちでいけません。ただ、決して会長の意見を否定している訳では無いことだけは分かって頂きたいのです。会長からも話があったように、私もせんえつながら、アプリの作成に携わらせて頂きましたが、ウイルスの問題など、まだ課題が残っていますので、もう少し時間を置いてからが良いと思ったのです…」
そして、副会長は再び頭を下げ、会長にも謝罪した。
私は分かりましたと副会長に言った後、超子を見ると、複雑な表情をしていた。
それから様々な議題が提示され、様々な意見が飛び交うといったように、充実した会議になったと私は満足した。
会合が終わると、議長である超子のもとに例の副会長が歩み寄った。
「…改めまして、本日は申し訳ありませんでした。繰り返しになりますが、私は、はやる性格で、度々、会長に対しても失礼な態度をとってしまいます。会長にも伝えましたが、以後、気を付けますので、よろしくお願い致します」
超子は丁寧過ぎるお詫びに面食らい、明らかに恐縮していた。
ちなみに、超子は副会長に、会長が出した除草の提案をやめさせた理由を尋ねると、5月の終わりはすでに暑くなっていて、熱中症のことを考えると、控えたほうが良いのではないかと思ったからと答えた。
そんなこんなで、超子の副会長の見る目は変わり、だいぶ打ち解けたようだが、やはり人は外見だけで判断してはいけないと、痛感した。
「世の中には、会って話をし、付き合えば、その人間がよくわかるのに、知らないまま食わず嫌い、毛嫌いしている場合が多い。互いに自戒すべきことだよ」との田中氏の言葉を基にして、書かせて頂きました。
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