田中角栄氏に倣おう!

キタさん

文字の大きさ
上 下
6 / 18

食わず嫌いはいけない!

しおりを挟む
時期は8月の終わりを迎え、超子の生徒会長振りも板に付いてきたのだが、誰にでも愛想良く接する超子にも苦手な人物がいた。

私らが住む地域は近隣の学校同士が交流をはかり、色々な情報交換を行っていた。

とは言っても、学校の生徒全員が一同に会するのは物理的にきついので、生徒会の正副会長や書記など、それぞれの学校の代表数人が集まり、きたんの無い意見を交わしていたが、超子が言う人物はその中にいるらしい。

会合はまだ始まって浅く、3ヶ月単位で開催学校は持ち回る訳だが、我が校は今年初めてであり、私は超子が苦手な人物にまだ会ったことは無かった。

超子はため息混じりに言う。

「…私もね、立場的にも道徳的にも人間を嫌ってはいけないと分かっているんだけど、彼だけはどうしても苦手で…」

どうやら彼と言うのが、超子が避けたい存在らしく、相手が男性だと分かった。

「その男子は生徒会長なのかい?」

私が質問すると、超子は首を横に振った。

「それがね、副会長なのよ。私が嫌なのは副会長なのに、自校の会長に失礼な態度をとったことで、あれでは会長が可哀想だわ…会長は会長なりの案を出しているのに、横から口を出して否定してしまうのよ」

私は興味深く感じた。

「…例えば、どんなことだね?」

超子は顔をしかめながら、答えた。

「…そうね、例えば、会長が皆で近所の除草やゴミ拾いを行うのはどうかと3ヶ月前の集まりの時に提案したら、それはまずいと思います、時期尚早ではないでしょうかなんて言うのよ。まだ話し合ってもいないのによ。会長は気が弱そうな男子だから黙ってしまったけど…」

超子は明らかに憤っていたが、私はなるほどと言って、冷静に発言した。

「…超子の言いたいことは分かるし、確かに話し合ってもいないうちに、というのは気になるな…だが、彼にも言い分があるかも知れないし、性格に起因している場合もあるだろう。3ヶ月前に初めて会ったんだから、まだ彼のことをよく分からなくても当然だしな。ま、次の会合に私も出席するから、彼のことをよく見ておくよ…あ、それから、セクハラでは無いのだが、あまり苦々しい顔をしていると、綺麗な顔が台無しになるぞ」

先生、何、言ってるのと超子は言って、恥ずかしそうな表情を見せたが、しっかりしているとはいえ、女子高生の片鱗を覗かせた。

さて、数校の集まりの日がやってきて、今年の議長である超子が座る席から始まり四方に各高校の代表者らが顔を並べた。

超子は少し緊張気味に述べた。

「皆さん、今日はお集まり頂き、有難うございます。先の会合の時と同じ顔触れですので、私たちの自己紹介は行わなくて大丈夫だと思いますが、そこに座っているのは私のクラスの担任教師で、オブザーバー的な役割をしてくれることになっております」

オブザーバーときたか…超子はやはりあがっているようだが、真面目な彼女のことだから真剣な発言であることも間違いないだろう。

そして、各校が議題を出し合い、書記がスラスラとホワイトボードに書いていく中、例の生徒会長が発言した。

「実は先日、私は副会長らと協力して、あるアプリを開発しまして…まだ本格的な活用は行っていませんが、すでに実施されているオンラインで数校を結ぶ取り組みがそのアプリを使いますと、より便利になると考え…」

すると、くだんの副会長が口を挟んだ。

「…会長、それはまだ早いかと…」

私はハッとして、超子を見ると、副会長を横目で睨んでいる彼女の姿があった。

私はお節介かと思ったが、ここはハッキリと言っておくべきところだろうとも感じた。

「…まぁ、会長の話を聞いてみてもいいかと思うのだが、どうだろう?」

私の口出しに少し驚いたようだったが、副会長は頭を下げて、ゆっくりと言った。

「…申し訳ありません。私はどうもせっかちでいけません。ただ、決して会長の意見を否定している訳では無いことだけは分かって頂きたいのです。会長からも話があったように、私もせんえつながら、アプリの作成に携わらせて頂きましたが、ウイルスの問題など、まだ課題が残っていますので、もう少し時間を置いてからが良いと思ったのです…」

そして、副会長は再び頭を下げ、会長にも謝罪した。

私は分かりましたと副会長に言った後、超子を見ると、複雑な表情をしていた。

それから様々な議題が提示され、様々な意見が飛び交うといったように、充実した会議になったと私は満足した。

会合が終わると、議長である超子のもとに例の副会長が歩み寄った。

「…改めまして、本日は申し訳ありませんでした。繰り返しになりますが、私は、はやる性格で、度々、会長に対しても失礼な態度をとってしまいます。会長にも伝えましたが、以後、気を付けますので、よろしくお願い致します」

超子は丁寧過ぎるお詫びに面食らい、明らかに恐縮していた。

ちなみに、超子は副会長に、会長が出した除草の提案をやめさせた理由を尋ねると、5月の終わりはすでに暑くなっていて、熱中症のことを考えると、控えたほうが良いのではないかと思ったからと答えた。

そんなこんなで、超子の副会長の見る目は変わり、だいぶ打ち解けたようだが、やはり人は外見だけで判断してはいけないと、痛感した。


「世の中には、会って話をし、付き合えば、その人間がよくわかるのに、知らないまま食わず嫌い、毛嫌いしている場合が多い。互いに自戒すべきことだよ」との田中氏の言葉を基にして、書かせて頂きました。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

声劇・シチュボ台本たち

ぐーすか
大衆娯楽
フリー台本たちです。 声劇、ボイスドラマ、シチュエーションボイス、朗読などにご使用ください。 使用許可不要です。(配信、商用、収益化などの際は 作者表記:ぐーすか を添えてください。できれば一報いただけると助かります) 自作発言・過度な改変は許可していません。

マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子

ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。 Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

可愛すぎるクラスメイトがやたら俺の部屋を訪れる件 ~事故から助けたボクっ娘が存在感空気な俺に熱い視線を送ってきている~

蒼田
青春
 人よりも十倍以上存在感が薄い高校一年生、宇治原簾 (うじはられん)は、ある日買い物へ行く。  目的のプリンを買った夜の帰り道、簾はクラスメイトの人気者、重原愛莉 (えはらあいり)を見つける。  しかしいつも教室でみる活発な表情はなくどんよりとしていた。只事ではないと目線で追っていると彼女が信号に差し掛かり、トラックに引かれそうな所を簾が助ける。  事故から助けることで始まる活発少女との関係。  愛莉が簾の家にあがり看病したり、勉強したり、時には二人でデートに行ったりと。  愛莉は簾の事が好きで、廉も愛莉のことを気にし始める。  故障で陸上が出来なくなった愛莉は目標新たにし、簾はそんな彼女を補佐し自分の目標を見つけるお話。 *本作はフィクションです。実在する人物・団体・組織名等とは関係ございません。

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

令嬢の名門女学校で、パンツを初めて履くことになりました

フルーツパフェ
大衆娯楽
 とある事件を受けて、財閥のご令嬢が数多く通う女学校で校則が改訂された。  曰く、全校生徒はパンツを履くこと。  生徒の安全を確保するための善意で制定されたこの校則だが、学校側の意図に反して事態は思わぬ方向に?  史実上の事件を元に描かれた近代歴史小説。

フリー声劇台本〜1万文字以内短編〜

摩訶子
大衆娯楽
ボイコネのみで公開していた声劇台本をこちらにも随時上げていきます。 ご利用の際には必ず「シナリオのご利用について」をお読み頂ますようよろしくお願いいたしますm(*_ _)m

処理中です...