52 / 56
3章 子どもの終わり
第52話 vs魔人化したクロス
しおりを挟む
均衡していた戦いはクロスの登場で傾いてしまった。
クロスの魔人化には少し……いや、かなり動揺してしまった。
その隙をつかれてしまったのだ。
魔人化したクロスが黒い翼を広げて、俺に飛びかかって来た。
明らかに彼は強くなっていた。
「クロス、正気を戻せ」
と俺はクロスのパンチを受けながら叫んだ。
「俺は強いんだ先生。俺は強いんだ先生」
と魔人化したクロスがボゾボゾと呟いている。
「わかった。わかったから」
「アンタは何一つわかってねぇ」
「わかってやれなくて悪かった」
「アンタのやり方じゃあ、この国は守れない」
と魔人側についたクロスが言う。
「国を守りたかったら正気に戻れ」
と俺が言う。
「無理に決まってるんじゃん」と楽しそうにサリバンが言った。
「貴方が、この子をこんな風にさせたんだ~よ」
サリバンに後ろに周り込まれた。
クロス1人でいっぱいいっぱいなのに、サリバンも相手にできない。
後ろからサリバンの攻撃を受けた。
一度、攻撃を受けると前からのクロスの攻撃も受け止める事ができなくなってしまう。
リンチだった。
スキルを出す隙もない。
ダメージだけが加算していく。
「先生」とアイリの叫び声が聞こえた。
視界が徐々に小さくなっていく。
その小さくなった視界の中にアイリがコチラに向かって来ているのが見えた。
来たらダメだ、自分の戦いに集中するんだ、と俺は思った。口に出して言いたいけど、もう言葉も出ない。
アイリは後ろからゴーレムに攻撃された。
アイリ!!!
俺の力が切れた。
フェニックスの祝福のスキルも解除してしまう。
俺は真下に向かって落ちて行く。
地面に落ちた。
クロスが馬乗りになって、俺の顔面を殴っていた。
「先生、アイリ」とマミが叫んだ。
彼女がコチラに少し気をとられた瞬間、戦っていた怪獣がマミに爆発系の魔法攻撃を出した。
体が動かない。
キーン、という耳鳴りがする。
俺のことを殴っているクロスの顔を見た。
クロスは魔人化して肌がドス黒くなっていた。歯だって尖って剥き出しになっている。
クロスの鋭くなってしまった目から涙がボロボロと溢れ落ちていた。
その泣き顔を見て、俺が間違っていたんだと気づく。
俺は幸せになれ、という教育方針だった。
世の中には誰かのために何かをしたい人だっているのだ。そのためなら犠牲になっても構わない人もいるのだ。
クロスはみんなを守るために、ただ強くなりたかっただけなのだ。
ごめんクロス、俺が間違っていた。
お前には誰かのために強くなれ、って言ってあげればよかった。
ただ俺はクロスに幸せになってほしかった。
家庭を持つのもいい。好きな商売をするのもいい。趣味に時間を使うのもいい。そんな当たり前のことをしてほしかった。
親に捨てられ、仲間は死んでいき、3人で必死に生きていたお前達が、世界で1番の幸せを手に入れてほしい、と近くにいた大人だから思ったんだ。
3人の先生だから幸せを願わずにはいられなかったんだ。
だから誰かのために強くなれ、と俺は言えなかったのだ。
自分のために人生を使って欲しかった。
せめて俺のために幸せになってくれ、とクロスに言えば良かった。
クロスの教育の仕方に俺は後悔をした。3人とも同じというわけにはいかないのだ。
殴られて視界が揺れていた。
そういえばサリバンはどこいった?
視界の端にサリバンが見えた。
ユキリンを楽しそうに殴っている。
もう動く力も残っていない。
ココにいるのは、俺達の全戦力だった。
負けた。
ネネちゃん。
美子さん。
ごめん負けちゃった。
クロスの魔人化には少し……いや、かなり動揺してしまった。
その隙をつかれてしまったのだ。
魔人化したクロスが黒い翼を広げて、俺に飛びかかって来た。
明らかに彼は強くなっていた。
「クロス、正気を戻せ」
と俺はクロスのパンチを受けながら叫んだ。
「俺は強いんだ先生。俺は強いんだ先生」
と魔人化したクロスがボゾボゾと呟いている。
「わかった。わかったから」
「アンタは何一つわかってねぇ」
「わかってやれなくて悪かった」
「アンタのやり方じゃあ、この国は守れない」
と魔人側についたクロスが言う。
「国を守りたかったら正気に戻れ」
と俺が言う。
「無理に決まってるんじゃん」と楽しそうにサリバンが言った。
「貴方が、この子をこんな風にさせたんだ~よ」
サリバンに後ろに周り込まれた。
クロス1人でいっぱいいっぱいなのに、サリバンも相手にできない。
後ろからサリバンの攻撃を受けた。
一度、攻撃を受けると前からのクロスの攻撃も受け止める事ができなくなってしまう。
リンチだった。
スキルを出す隙もない。
ダメージだけが加算していく。
「先生」とアイリの叫び声が聞こえた。
視界が徐々に小さくなっていく。
その小さくなった視界の中にアイリがコチラに向かって来ているのが見えた。
来たらダメだ、自分の戦いに集中するんだ、と俺は思った。口に出して言いたいけど、もう言葉も出ない。
アイリは後ろからゴーレムに攻撃された。
アイリ!!!
俺の力が切れた。
フェニックスの祝福のスキルも解除してしまう。
俺は真下に向かって落ちて行く。
地面に落ちた。
クロスが馬乗りになって、俺の顔面を殴っていた。
「先生、アイリ」とマミが叫んだ。
彼女がコチラに少し気をとられた瞬間、戦っていた怪獣がマミに爆発系の魔法攻撃を出した。
体が動かない。
キーン、という耳鳴りがする。
俺のことを殴っているクロスの顔を見た。
クロスは魔人化して肌がドス黒くなっていた。歯だって尖って剥き出しになっている。
クロスの鋭くなってしまった目から涙がボロボロと溢れ落ちていた。
その泣き顔を見て、俺が間違っていたんだと気づく。
俺は幸せになれ、という教育方針だった。
世の中には誰かのために何かをしたい人だっているのだ。そのためなら犠牲になっても構わない人もいるのだ。
クロスはみんなを守るために、ただ強くなりたかっただけなのだ。
ごめんクロス、俺が間違っていた。
お前には誰かのために強くなれ、って言ってあげればよかった。
ただ俺はクロスに幸せになってほしかった。
家庭を持つのもいい。好きな商売をするのもいい。趣味に時間を使うのもいい。そんな当たり前のことをしてほしかった。
親に捨てられ、仲間は死んでいき、3人で必死に生きていたお前達が、世界で1番の幸せを手に入れてほしい、と近くにいた大人だから思ったんだ。
3人の先生だから幸せを願わずにはいられなかったんだ。
だから誰かのために強くなれ、と俺は言えなかったのだ。
自分のために人生を使って欲しかった。
せめて俺のために幸せになってくれ、とクロスに言えば良かった。
クロスの教育の仕方に俺は後悔をした。3人とも同じというわけにはいかないのだ。
殴られて視界が揺れていた。
そういえばサリバンはどこいった?
視界の端にサリバンが見えた。
ユキリンを楽しそうに殴っている。
もう動く力も残っていない。
ココにいるのは、俺達の全戦力だった。
負けた。
ネネちゃん。
美子さん。
ごめん負けちゃった。
20
お気に入りに追加
165
あなたにおすすめの小説
異世界転移「スキル無!」~授かったユニークスキルは「なし」ではなく触れたモノを「無」に帰す最強スキルだったようです~
夢・風魔
ファンタジー
林間学校の最中に召喚(誘拐?)された鈴村翔は「スキルが無い役立たずはいらない」と金髪縦ロール女に言われ、その場に取り残された。
しかしそのスキル鑑定は間違っていた。スキルが無いのではなく、転移特典で授かったのは『無』というスキルだったのだ。
とにかく生き残るために行動を起こした翔は、モンスターに襲われていた双子のエルフ姉妹を助ける。
エルフの里へと案内された翔は、林間学校で用意したキャンプ用品一式を使って彼らの食生活を改革することに。
スキル『無』で時々無双。双子の美少女エルフや木に宿る幼女精霊に囲まれ、翔の異世界生活冒険譚は始まった。
*小説家になろう・カクヨムでも投稿しております(完結済み
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
そよ風と蔑まれている心優しい風魔法使い~弱すぎる風魔法は植物にとって最高です。風の精霊達も彼にべったりのようです~
御峰。
ファンタジー
才能が全てと言われている世界で、両親を亡くしたハウは十歳にハズレ中のハズレ【極小風魔法】を開花した。
後見人の心優しい幼馴染のおじさんおばさんに迷惑をかけまいと仕事を見つけようとするが、弱い才能のため働く場所がなく、冒険者パーティーの荷物持ちになった。
二年間冒険者パーティーから蔑まれながら辛い環境でも感謝の気持ちを忘れず、頑張って働いてきた主人公は、ひょんなことからふくよかなおじさんとぶつかったことから、全てが一変することになる。
――世界で一番優しい物語が今、始まる。
・ファンタジーカップ参戦のための作品です。応援して頂けると嬉しいです。ぜひ作品のお気に入りと各話にコメントを頂けると大きな励みになります!
孤児による孤児のための孤児院経営!!! 異世界に転生したけど能力がわかりませんでした
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はフィル
異世界に転生できたんだけど何も能力がないと思っていて7歳まで路上で暮らしてた
なぜか両親の記憶がなくて何とか生きてきたけど、とうとう能力についてわかることになった
孤児として暮らしていたため孤児の苦しみがわかったので孤児院を作ることから始めます
さあ、チートの時間だ
【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた
きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました!
「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」
魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。
魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。
信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。
悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。
かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。
※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。
※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です
覚えた魔法は異世界召喚魔法!?
もぐら
ファンタジー
いつもと同じ日常を過ごしていた主人公は、クラスごと異世界に飛ばされてしまった。
他のクラスメイトは、チートと呼ばれるような力を手に入れているなか主人公は能力の使い方が分からなく弱者と呼ばれていた。しかし、それは常識では考えられない能力だった!
素人なもので展開遅くてすいません。
9話くらいからメインに入っていきます。
ノベルバでも同じタイトルでだしています。
ブリードスキル いじめられっこ覚醒! いじめられスキルで異世界でも怖くありません……
石のやっさん
ファンタジー
虐められ自殺までした僕が異世界転移......もう知らない。
主人公である竜崎聖夜はクラスで酷いイジメにあっていた。
その執拗なイジメに耐えかねて屋上から飛び降り自殺をした瞬間。
聖夜のクラスが光輝き女神イシュタスの元に召喚されてしまう。
話しを聞くと他の皆は既に異世界ルミナスに転移ずみ。
聖夜は自殺し、死んでいたので蘇生したぶん後になったのだと言う。
聖夜は異世界ルミナスに行きたくなかったが、転移魔法はクラス全員に掛かっているため、拒否できない。
しかも、自分のジョブやスキルは、クラスの情報でイシュタスが勝手に決めていた。
そのステータスに絶望したが……実は。
おもいつきで書き始めたので更新はゆっくりになるかも知れません。
いじめられっこ覚醒! いじめられスキルで異世界でも怖くありません……
からタイトルを『ブリードスキル いじめられっこ覚醒! いじめられスキルで異世界でも怖くありません……』に変更しました。
カクヨムコン9に出品予定でしたが、期間内に10万文字まで書けそうも無いのでカクヨムコン出品取り消しました。
いつもの電車を降りたら異世界でした 身ぐるみはがされたので【異世界商店】で何とか生きていきます
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
電車をおりたら普通はホームでしょ、だけど僕はいつもの電車を降りたら異世界に来ていました
第一村人は僕に不親切で持っているものを全部奪われちゃった
服も全部奪われて路地で暮らすしかなくなってしまったけど、親切な人もいて何とか生きていけるようです
レベルのある世界で優遇されたスキルがあることに気づいた僕は何とか生きていきます
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる