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3章 子どもの終わり
第38話 森には青年が潜んでいる
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朝の1時間だけ、俺はステータスをアップするという副業をしていた。だいたい毎日3人ぐらいは利用する。少し値段を高く設定しているのは、利用者が増えすぎるのを避けるためである。
安くしすぎると初心者冒険者でも利用できるようになってしまう。自分の力量を見極めていない冒険者は、調子に乗って強敵に挑む無謀なことをしてしまうのだ。
冒険は全て自己責任だけど、俺がステータスを上げた冒険者が死んだら俺の目覚めが悪い。
だから初心者冒険者には手を出せない金額で設定していた。
ちなみにステータスをアップさせた冒険者が魔物を倒すと、俺にも経験値が入った。
この世界ではパーティに経験値が振り分けられるのではなく、共闘した人に経験値が振り分けられる。ステータスをアップさせた事で俺も共闘判定が出るらしい。
みんなには経験値の白い煙は見えていないけど、俺は毎日3人以上の冒険者から経験値を貰っていた。弟子を含めたら5人以上である。
朝の1時間だけで十分に暮らしていける。ちょっと贅沢もできる。だけど俺達は贅沢はしなかった。お金の使い方は後ほど。
それでも俺は森に入る。決して魔物を倒すのが趣味という訳ではない。
森に入る理由があるのだ。
ネネちゃんを育てるため、というのもある。
それに、この国はオークキング到来以降、騎士団の人数が減り、防衛力が弱っている。
強い冒険者は国からのクエストで、接近した強敵を倒さなくてはいけなかった。
国からのクエストを受けるのは俺を含めて3人だけだった。
本来なら騎士団の仕事だけど、今は俺達が担っている。国を守るという事は、そこに住む家族を守るという事だった。
森の中にネネちゃんと入った。
ネネちゃんは子ども用の小さな剣を腰につけている。クルクルツインテールに剣。それにフリフリスカートを着ていた。彼女はフリフリスカートじゃないと外に出たがらない。生粋の女の子である。
そして銀のプロテクター(子ども用)を付けていた。アンバランスなのに、ネネちゃんは着こなしていた。
「森に入ったら気配を探って」
と俺が言う。
ネネちゃんが目を瞑る。
「目は瞑らなくていいんだよ」
と俺が言う。
「だって目を瞑ったほうが音に集中できるもん」
とネネちゃんが言った。
「周りを見渡して」と俺が言う。
「魔物の足跡はないか? 息遣いは聞こえないか? 足音は聞こえないか?」と俺が言ったところで、俺はかすかな違和感を覚えた。
風が吹いてないのに、草が揺れている。
「何もいないよ」とネネちゃんが言った。
シッ、と俺は人差し指に口を当てて声を出すな、というジェスチャーをした。
俺は目を凝らして当たりを見渡す。
足音も、息遣いも聞こえないのに、違和感だけが俺達の周辺にはあった。
ネネちゃんが歩き始めようとした。
「離れちゃダメだ」と俺が言った時には遅かった。
何もない空間から、1人の青年が現れてネネちゃんを抱えた。
ネネちゃんは勇者の子である。相当強いステータスを持っている。ネネちゃんを抱えている青年は、相当に強いのだろう。
彼は白い甲冑を着ていた。それは騎士団の格好だった。
「クロス」と俺は言った。
目の前でネネちゃんを抱えた青年はクロスだった。
「ネネから手を離せ」
と俺は言った。
「先生、まだわからないんですか? この国には防衛力として、もう1人勇者が必要なんです」とクロスが真剣な声で言った。
オークキング戦で彼は無様に死んでいった騎士団を見て、この国を守るのは自分しかいないと決断した。俺のところで2年ぐらい修行をしてから騎士団に入り、すぐに頭角を表した。彼は入団1年たらずで騎士団長になった。
そしてことあるごとにネネちゃんを誘拐しようとする。この国を守る戦力(騎士団)がほしいらしいのだ。
ネネちゃんは幼いのに、明らかに別次元に強い。幼い頃から騎士団で育てることができれば、国を守るための兵器になるとクロスは思っているのだ。
「ネネの人生はネネのモノだ。お前が決めることじゃない」と俺は言った。
「先生は何もわかっていない。この国にはこの子の力が必要なんだ」
自分の血管が切れる音がした。
パパ助けて、とネネちゃんが言った。
その声は不安そうだった。
「お前が子どもの未来を勝手に決めるな」
と俺は怒鳴っていた。
安くしすぎると初心者冒険者でも利用できるようになってしまう。自分の力量を見極めていない冒険者は、調子に乗って強敵に挑む無謀なことをしてしまうのだ。
冒険は全て自己責任だけど、俺がステータスを上げた冒険者が死んだら俺の目覚めが悪い。
だから初心者冒険者には手を出せない金額で設定していた。
ちなみにステータスをアップさせた冒険者が魔物を倒すと、俺にも経験値が入った。
この世界ではパーティに経験値が振り分けられるのではなく、共闘した人に経験値が振り分けられる。ステータスをアップさせた事で俺も共闘判定が出るらしい。
みんなには経験値の白い煙は見えていないけど、俺は毎日3人以上の冒険者から経験値を貰っていた。弟子を含めたら5人以上である。
朝の1時間だけで十分に暮らしていける。ちょっと贅沢もできる。だけど俺達は贅沢はしなかった。お金の使い方は後ほど。
それでも俺は森に入る。決して魔物を倒すのが趣味という訳ではない。
森に入る理由があるのだ。
ネネちゃんを育てるため、というのもある。
それに、この国はオークキング到来以降、騎士団の人数が減り、防衛力が弱っている。
強い冒険者は国からのクエストで、接近した強敵を倒さなくてはいけなかった。
国からのクエストを受けるのは俺を含めて3人だけだった。
本来なら騎士団の仕事だけど、今は俺達が担っている。国を守るという事は、そこに住む家族を守るという事だった。
森の中にネネちゃんと入った。
ネネちゃんは子ども用の小さな剣を腰につけている。クルクルツインテールに剣。それにフリフリスカートを着ていた。彼女はフリフリスカートじゃないと外に出たがらない。生粋の女の子である。
そして銀のプロテクター(子ども用)を付けていた。アンバランスなのに、ネネちゃんは着こなしていた。
「森に入ったら気配を探って」
と俺が言う。
ネネちゃんが目を瞑る。
「目は瞑らなくていいんだよ」
と俺が言う。
「だって目を瞑ったほうが音に集中できるもん」
とネネちゃんが言った。
「周りを見渡して」と俺が言う。
「魔物の足跡はないか? 息遣いは聞こえないか? 足音は聞こえないか?」と俺が言ったところで、俺はかすかな違和感を覚えた。
風が吹いてないのに、草が揺れている。
「何もいないよ」とネネちゃんが言った。
シッ、と俺は人差し指に口を当てて声を出すな、というジェスチャーをした。
俺は目を凝らして当たりを見渡す。
足音も、息遣いも聞こえないのに、違和感だけが俺達の周辺にはあった。
ネネちゃんが歩き始めようとした。
「離れちゃダメだ」と俺が言った時には遅かった。
何もない空間から、1人の青年が現れてネネちゃんを抱えた。
ネネちゃんは勇者の子である。相当強いステータスを持っている。ネネちゃんを抱えている青年は、相当に強いのだろう。
彼は白い甲冑を着ていた。それは騎士団の格好だった。
「クロス」と俺は言った。
目の前でネネちゃんを抱えた青年はクロスだった。
「ネネから手を離せ」
と俺は言った。
「先生、まだわからないんですか? この国には防衛力として、もう1人勇者が必要なんです」とクロスが真剣な声で言った。
オークキング戦で彼は無様に死んでいった騎士団を見て、この国を守るのは自分しかいないと決断した。俺のところで2年ぐらい修行をしてから騎士団に入り、すぐに頭角を表した。彼は入団1年たらずで騎士団長になった。
そしてことあるごとにネネちゃんを誘拐しようとする。この国を守る戦力(騎士団)がほしいらしいのだ。
ネネちゃんは幼いのに、明らかに別次元に強い。幼い頃から騎士団で育てることができれば、国を守るための兵器になるとクロスは思っているのだ。
「ネネの人生はネネのモノだ。お前が決めることじゃない」と俺は言った。
「先生は何もわかっていない。この国にはこの子の力が必要なんだ」
自分の血管が切れる音がした。
パパ助けて、とネネちゃんが言った。
その声は不安そうだった。
「お前が子どもの未来を勝手に決めるな」
と俺は怒鳴っていた。
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