Cassandra

ライト@あご割れガンマン

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本編

ep.2 降下

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ーーー現在空域・???
ーーー惑星N.Fでの開戦より、20分前。

若い女性オペレーターが
アナウンスをかける。
  「惑星N.F(ナチュラルフォレスト)
大気圏内に突入します。」

ドス効いた声の男性が、
アナウンスの声に続き
「やっぱりな、ここで正解だ。レーダ反応がビンビン来てるぜ。」

すると、カツカツとヒールを鳴らし
艶めかしく黒髪を揺らす女性が
手を前へとかざし号令を出した。
「これより、惑星N.F内での掃討作戦を開始する。各員配置に付け!」

「「了解!!」」


ーーーー現在惑星N.F 居住タワー 周辺。


『ヒュ~♪ナイスダンスだったぜ、
アクロバティックスター。』

   俺の機体に直接通信が入った。

ーーーそれも、軽い、
緊張感の欠けらも無い。

ボロボロになった1体が
浮力を失ったように下に落ちていった。

『ドン』と通信音声から射撃音がする。

ワンテンポ置き、目の前の1体が爆発し四散する。

『もっ匹撃墜っと。』

緊迫した状況には似合わない程、
ソイツの声はやけに上機嫌だった。
  覚えがある、たしか少し前のシュミレーション訓練の時にスコアボードで本名の隣に表記があった。

ーー撃墜王ーー

  態度はふざけているが、、
このパイロット、腕は確かだ。

複数体に追われ絶望的だったさっきの状況を
たった2発の援護射撃でひっくり返した。

  ーーー何処から撃っているんだ?

そんな疑問を浮かべていると
『お!大量大量!!通信、切るぜ。』
 
一方的に通信を切られた後、
拠点のタワー上部から
かすかに射撃音が聞こえた。

  「あんな遠くから、、。」
タワー上部から俺の居る場所までは
軽く2~3kmは離れている。
射撃が苦手な俺にはとてもじゃないが真似出来ない。


ーーー残るは1体。

こいつを潰せば先に出撃した
部隊の応援に行ける。

...さっきの様子からして、コアが弱点か...?

   そんな疑問を確かめるように、
俺はマシンガンを構え。
ブースターを2割増しに前進ーー
ーーー射程内まで接近。

  俺は射撃戦闘が苦手な為、
接近しないと当てられる自身が無かった。
ーーそれに、、

「こんだけ近づいちまえば撃つ暇もねぇだろ」

残る1体のコアに向けて
マシンガンを発射する。

「ぅおらァァァァ!!」

  ガガガガッと乾いた発射音を奏で、マシンガンは薬莢を吐き出しながら敵へと弾丸を浴びせる。

  すると先程のような、
装甲に当たった様なカツカツという音ではなく。

中心部に当たった時には、
『バキバキバキ!』石を砕いた時のような。
鉱石を割るような、そんな音がしている。

これはーー!
ーー確実に効いている。
中心部、ココが弱点だ。ーー

《ヴミ゛ィィィィ!!!》
化け物は変な鳴き声を立てて
ブルブルと震え出す。

  推測が確信に変わる。
次の瞬間には、俺はさらに接近し、
マシンガンのファイアーレートを上げると
吐き出す弾丸の全てを、ほぼゼロ距離で浴びせる。
  俺の技量では全弾命中とはいかなかったが、
ガリガリと音をたて、コアをすり減らして行く。
ーー削りきってくれるか。

『ーー残弾数、残り20%ーー』

  ーーーまじか。
間に合うのか?
不安が背筋を刺す、、。

警告後、わずかな間を置き

『カチカチカチ。』

ーーは?

『ーー残弾数、0%、
             補給を推奨します。ーー』

と、クソッタレが..
ほんとにこの%ゲージは正確なのか?

   マガジンを交換すべきだが、
その間に逃げられる、もしくは反撃される可能性が高い。
   ...この距離だ、
反撃されるのは特にまずい。
逃げられたなら別個体と合流されてしまうだろう。

  なら、やる事はひとつしかない、
ーーー接近戦。

 この機体には、ブレードやナイフ等の白兵戦に備えた装備はない。
  本来、白兵戦を想定などしていない。

ーーが、
操縦訓練で機体を使った白兵戦闘は習っただろ。
『盾』だって使いようだ。

「ツ、オラァ!!」
キュインと、駆動音をたて
  マニピュレートレバー隣の
推力レバーをフルで前方へと動かすーー

ーー盾を構え、残ったコアを潰す様に、
、、突きつけた。

「チタン製の爪の味はどうだ?」

『メキョリ』と気色悪い音を吐き出すも
爆発には至らない。

  おそらく、貫通力が足らないのだ。

「チッ、、」

突き刺さったままのシールドを
腕からパージし、後方へと飛翔する。

「これならっ...」

  推力レバーを思い切り前方に押し込み
ブースターを唸らせ前進。
機体の前で、
小刻みに震える異形に向けて、

「...どうだ!!」

  ブースターの推力がかかった脚部のパワーをそのまま脚先に乗せ、
シールドに向かって蹴りを放つ。

『パキッ』と何かが砕けた音がした。

『前方物体より、高エネルギー反応。』

ーーーうぉ?!

  蹴った勢いを活かし後ろへと再度飛翔する。
勿論、フルブーストだ。
ーーーー離れた瞬間。
  前方の敵は熱膨張が起きた金属のように
膨らみ、、

、、爆散した。

  ようやく1体撃破した。
「ふぅ...」
ため息が出る。

  拠点のタワーの天辺から
オレンジの線がまた1つ、2つ。
2体の異形が墜ちる。

「すごいな。」
思わず呟く。
  さすがは撃墜王の名を自分で語るだけのことはある。

  俺も本隊へ合流しなくては、
弾除けぐらいにはなるかと方向転換しようとした時だった、

『おい、カリム!大丈夫か?』
無線通信が入る。

先に出撃していた先輩だった。
「アルマさん、無事でしたか!!」

アルマと呼ばれる男性は安堵の溜息をつき
『ああ、こっちはなんとか大丈夫だ。
そっちも無事で良かった!
機体、いつもみたいに飛ばしすぎてないか?
エネルギーの残量は大丈夫か?』

俺の心配をしてくれている、優しい先輩だ。
「大丈夫ですよアルマさん!
まだ30%以上は余って...」

  ppp...
『ーーN.F前哨基地の全クルー、パイロットに通達する。ーー』

非登録回線からの
オープンチャンネルでの通信、
普段ならありえないが。。。


声は艶がかった女性のモノだった。













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