規格外で転生した私の誤魔化しライフ 〜旅行マニアの異世界無双旅〜

ケイソウ

文字の大きさ
14 / 29

13話 逃亡者

しおりを挟む


 翌朝。少し遅く起きた私は、残り物のパンをかじりながら珈琲をれる。
 今日の仕事は午後からなので、腐れ女子の醜態しゅうたいさらしてしまった事を反省し、出勤の前にこれからの事を考えようと思う。

 異世界へ来てまだそう月日は経っていないのに、あれやこれやの不思議体験は数多くあった。
 マンモを倒し、冒険者になり、樵の仕事、巡回警備のボランティア、ギルドのイベント、罠にハマった牢屋体験、王宮見学ツアー、兵士との練習試合、そして、魔獣の討伐。
 これでダンジョン攻略とか言ったら、男の冒険活劇の何物でもない。確かに、男を想定して異世界へ飛ばされたんだろう。でも実際のところ、女性には変わりないので、もうちょっとこうゆるっとね、異世界を楽しみながら歳を重ねたいのだ。
 
 当初から苦労を強いられたパンツ不足。何が楽しくて毎日洗濯せにゃならんのかと、いて出るのは愚痴ばかり。衣類大国にも関わらず、衣類不足とか言語道断。
 今回の魔獣討伐で改善はされるだろうが、見込みは見込みであって、すぐさま衣類が増えるとは考えにくい。これはもう国外へ探しに出た方が得策と考えるのがセオリーでしょ。
 マンモ退治でお金も冒険者カードもある。ならば仕事も辞めてパンツ充実生活を目指す旅に出よう。
 題して、"パンツ充実無双旅"決まりだな。

 善は急げ、何か事が起きる前に、お頭のカイルに仕事のことを話してみよう。
 そう言えば、今日の待ち合わせ場所はライラの店だった。ついでに昼食も取れるし一石二鳥だ。
 
 戸締りをして、少し早いが王都へ向かった。

 街に着くと、相変わらず買い物客で賑わっている。しかし、いつもとは違う雰囲気が漂う。
 彼方此方あちらこちらで人々が肩を寄せ合い、噂話だろうか、ヒソヒソと難しい顔でお喋りを交わす。
 事なかれ主義の私は、耳を傾けることなくライラの店へ直行した。
 昼時で店の中も客で賑わっているだろうと、ドアを開けるて見ると、客はまばらで静かだ。
 中へ入ると、カイルとライラがカウンターに座っていたので、近寄って声を掛ける。

「こんにちはライラ。カイルが一番乗りか。なあ、今日はお客さんが少ない様だけど……」

「あら紅ちゃん。それどころじゃないわよ。お客も街の皆んなもショックで塞ぎ込んでるのよ。どうなっちゃうのかしらねぇ。紅ちゃんはどう思う?」

 どうと言われでも、何の話かちっとも分からない。街の人達の噂話と関係があるのだろうか。

「何かあったの? 街の様子がいつもと違うのは感じたけど。塞ぎ込むとか、よっぽどの事だよね?」

「あら、知らないの? 王女様が隣国へ嫁がれる事になったのよ。皆んな団長さんとの結婚を楽しみにしてたのにね。さっきアルが来て話してたわ」

 アルかあ。あいつも暇人だなあ。だが王女の結婚とは驚きだ。でもそうなるとライはどうなるのだろう。婚約破棄ではないのだから、このまま団長を続けられると思うんだけど。
 それにしても随分と急な嫁入りだ。

「ねえ、なんで王女様は隣国へ嫁ぐことを承諾したんだ? 団長さんと何かあったとか?」

「ああ、それはなあ、元々は隣国の王子と婚約していたんだが、こっちの大将がふらっと居なくなっちまってな、仕方なく王女が後を継ぐことになって、団長さんに婚約者と言う白羽の矢が立ったんだよ」

 そういう経緯をちゃんと教えろ。無駄な筋書きを想像したではないか。馬鹿ライ。

「えっ、大将ってこの国の王子? じゃなに、王女が嫁ぐってことは王子が戻って来たってこと?」

「そういうことだ。団長さんもホッとしてんじゃないのかなあ。例え相手が王女であっても、さほど好いてもいない女性と結婚なんぞしたいと思わないさ。わしなら御免ごめんだね」

 流石は私の救世主カイル様、よく心情を見抜いていらっしゃる。

「そう言われると、王女様の横で笑ってる団長さん見たことないわねえ。じゃあさ、団長さんはずっと我慢してたのね。なんだか可哀想……」
 
 ライラが悲しそうな面持ちで話す。王宮の裏事情とでも言うべきか。

「だとすると、王女様は政略結婚になるとか?」

「いや、王女様と隣国の王子は相思相愛だったんだよ。だからきっと、王女様は喜んでいると思うぜ」

 そういう事か。ならある意味、王女も被害者側なんだろう。お人形とか言って悪かったかな。
 とちらにせよ、ライも王女も救われたわけだ。

 それにしても、この国の王子はなぜ居なくなってしまったんだろう。大体の察しは付くが、でもさ、責任逃れはちょっとねえ。一応は次期王様なんだし、被害者出しちゃってるし、相当な悪よのう。

「カイルはさ、逃げた王子のこと知ってるのか?」

「おう、知ってるぜ。団長さんと寸分違わぬ剣術の使い手でなあ、良い男なんだよ」

 ほうほう、悪人ではなさそうだ。

「ちょっとばかし野生児みてぇなところがあってよ、王族にはいないタイプだな。細長い剣を縦横無尽に疾らせて、そりゃあ見事だぞ」

 細長い剣? あれ、どっかで……。

「背の高い、団長さんとはまた違う、黒髪に凛々しい顔のイケメンって奴さ」

 黒髪……もしや!

「ええっと、王子は何で逃げていたのかな?」

「あれは確か、1日に何十件という見合いが嫌になってだと聞いたがな。平民にも冒険者にも親切で優しいとくりゃ、女どもが放っておくわけがない。それにイケメンとなりゃ尚更だ」

 どうしよう、もの凄く心当たりのある人物なんだけども。ならさ、どうして捕まったのかな。なんかそれも心当たりがあるですけど……。

「そのイケメン王子は何で捕まったの、かな?」

「ああ、何だったかなあ……」

 そこへライラが呆れた顔でカイルに話す。

「もう、さっきアルが息巻いてたでしょ。団長さんが取っ捕まえたって。もう忘れちゃったの?」

 ああ、最悪。恩を仇で返してしまったらしい。おそらく、王子とはレオのことだろう。
 ならライとレオも幼馴染で……もう今更そんなことはどうでもいい。
 だって知らなかったし、関係ないし、もうどうにもならないし。でも一応その勇者の名前は聞こう。

「へ、へえ~、団長さんがあ。で、王子の名は?」

「レオエルド・アラウザル王子だ。皆んなレオ様と呼んでるなあ。まあ、紅は知らんだろうけど」

 やっぱり。実は知っているのだお頭。私は相当ヤバい立場にいるみたいなのだよ。
 なにね、シャツが原因でふたりを会わせちまったらしいんで。でですね、ライには絶対怒られそうな予感と、レオには呪いを掛けられる可能性がありそうなのだよ。なので早急にとんずらこきます。

 私はどさくさに紛れて、考えていた事をさっそく申し出た。

「あの、カイル。突然なんだけど、実は、仕事を辞めて旅に出たいんだ。もの凄くお世話になったカイルには申し訳ないと思ってる。でも、このままで終わりたくないんだよ。許して欲しい」

 私の突然の申し出に、ふたりは唖然としている。私にとってカイルとライラは父親であり、姉のような存在だ。随分と支えられて来た。自分勝手なのは承知している。でも旅の夢は捨てられない。
 動機は不純なんで答えられませんが。

「アハハハ! 許すも何も、お前の人生だ。好きにすれば良いさ。紅はこんな小っぽけな街で収まっちゃいけない器なんだよ。こっちこそ仕事にかこつけて縛っちまって悪かったな。でも必ず帰って来いよ」

 カイルは大笑いと共に、呆気あっけなく私私を解放してくれた。器が大きいのはカイルの方だ。こんな私に帰る場所を開けて置いてくれる。有難い……。

「カイル、ありがとう! 必ず帰ってくる。その時はまたやとって下さい。約束だよ」

「ああ、約束だ。気を付けてな。仲間達には儂から言っとく。その様子だと直ぐに立つんだろ? こっちの事は気にせず、早く帰って支度しろ」

「うん、そうする。ライラも元気で。また必ず食べに来るよ。下着、助かりました」

「ハァ、もうお父さん物分かり良過ぎ。ま、だから私もこうやってお店を出せてるんだけどね。紅ちゃんと離れるのは悲しいけど、大人しく待ってるわ。男には十分気を付けるのよ。襲われたら張り倒してやんなさい。じゃ、いってらっしゃい」

「ありがとうライラ。じゃあ、行ってきます。皆さんによろしく!」

 期待していた食事にあり付けないまま、名残惜しくも店を後にした。
 その後、ダグの店で旅に必要な物を揃えようとも思ったが、ライ達に見つかっては元も子もない。
 石鹸の話も聞きたかったが、今となっては諦めるしかない。正体がバレていないことを祈ろう。


 私は犯罪者ではない……逃亡者なのだ。



 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界人生を楽しみたい そのためにも赤ん坊から努力する

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前は朝霧 雷斗(アサギリ ライト) 前世の記憶を持ったまま僕は別の世界に転生した 生まれてからすぐに両親の持っていた本を読み魔法があることを学ぶ 魔力は筋力と同じ、訓練をすれば上達する ということで努力していくことにしました

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

長女は家族を養いたい! ~凍死から始まるお仕事冒険記~

灰色サレナ
ファンタジー
とある片田舎で貧困の末に殺された3きょうだい。 その3人が目覚めた先は日本語が通じてしまうのに魔物はいるわ魔法はあるわのファンタジー世界……そこで出会った首が取れるおねーさん事、アンドロイドのエキドナ・アルカーノと共に大陸で一番大きい鍛冶国家ウェイランドへ向かう。 魔物が生息する世界で生き抜こうと弥生は真司と文香を護るためギルドへと就職、エキドナもまた家族を探すという目的のために弥生と生活を共にしていた。 首尾よく仕事と家、仲間を得た弥生は別世界での生活に慣れていく、そんな中ウェイランド王城での見学イベントで不思議な男性に狙われてしまう。 訳も分からぬまま再び死ぬかと思われた時、新たな来訪者『神楽洞爺』に命を救われた。 そしてひょんなことからこの世界に実の両親が生存していることを知り、弥生は妹と弟を守りつつ、生活向上に全力で遊んでみたり、合流するために路銀稼ぎや体力づくり、なし崩し的に侵略者の撃退に奮闘する。 座敷童や女郎蜘蛛、古代の優しき竜。 全ての家族と仲間が集まる時、物語の始まりである弥生が選んだ道がこの世界の始まりでもあった。 ほのぼののんびり、時たまハードな弥生の家族探しの物語

神様、ありがとう! 2度目の人生は破滅経験者として

たぬきち25番
ファンタジー
流されるままに生きたノルン伯爵家の領主レオナルドは貢いだ女性に捨てられ、領政に失敗、全てを失い26年の生涯を自らの手で終えたはずだった。 だが――気が付くと時間が巻き戻っていた。 一度目では騙されて振られた。 さらに自分の力不足で全てを失った。 だが過去を知っている今、もうみじめな思いはしたくない。 ※他サイト様にも公開しております。 ※※皆様、ありがとう! HOTランキング1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※ ※※皆様、ありがとう! 完結ランキング(ファンタジー・SF部門)1位に!!読んで下さって本当にありがとうございます!!※※

【完結】追放された転生聖女は、無手ですべてを粉砕する

ゆきむらちひろ
ファンタジー
「祈るより、殴る方が早いので」 ひとりの脳筋聖女が、本人にまったくその気がないまま、緻密に練られたシリアスな陰謀を片っ端から台無しにしていく痛快無比なアクションコメディ。 ■あらすじ 聖女セレスティアは、その類稀なる聖なる力(物理)ゆえに王都から追放された。 実は彼女には前世の記憶があって、平和な日本で暮らしていたしがないOLだった。 そして今世にて、神に祈りを捧げる乙女として王国に奉仕する聖女に転生。 だがなぜかその身に宿ったのは治癒の奇跡ではなく、岩をも砕く超人的な筋力だった。 儀式はすっぽかす。祈りの言葉は覚えられない。挙句の果てには、神殿に押し入った魔物を祈祷ではなくラリアットで撃退する始末。 そんな彼女に愛想を尽かした王国は、新たに現れた完璧な治癒能力を持つ聖女リリアナを迎え入れ、セレスティアを「偽りの聖女」として追放する。 「まあ、田舎でスローライフも悪くないか」 追放された本人はいたって能天気。行く先も分からぬまま彼女は新天地を求めて旅に出る。 しかし、彼女の行く手には、王国転覆を狙う宰相が仕組んだシリアスな陰謀の影が渦巻いていた。 「お嬢さん、命が惜しければこの密書を……」 「話が長い! 要点は!? ……もういい、面倒だから全員まとめてかかってこい!」 刺客の脅しも、古代遺跡の難解な謎も、国家を揺るがす秘密の会合も、セレスティアはすべてを「考えるのが面倒くさい」の一言で片付け、その剛腕で粉砕していく。 果たしてセレスティアはスローライフを手にすることができるのか……。 ※「小説家になろう」、「カクヨム」、「アルファポリス」に同内容のものを投稿しています。 ※この作品以外にもいろいろと小説を投稿しています。よろしければそちらもご覧ください。

赤ん坊なのに【試練】がいっぱい! 僕は【試練】で大きくなれました

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕の名前はジーニアス 優しい両親のもとで生まれた僕は小さな村で暮らすこととなりました お父さんは村の村長みたいな立場みたい お母さんは病弱で家から出れないほど 二人を助けるとともに僕は異世界を楽しんでいきます ーーーーー この作品は大変楽しく書けていましたが 49話で終わりとすることにいたしました 完結はさせようと思いましたが次をすぐに書きたい そんな欲求に屈してしまいましたすみません

最強スキル『忍術』で始めるアサシン教団生活

さとう
ファンタジー
生まれつき絶大な魔力を持つハーフィンクス公爵家に生まれた少年、シャドウ。 シャドウは歴代最高と言われるほど絶大な魔力を持っていたが、不幸なことに魔力を体外に放出する才能が全くないせいで、落ちこぼれと呼ばれ冷遇される毎日を送っていた。 十三歳になったある日。姉セレーナ、妹シェリアの策略によって実家を追放され、『闇の森』で魔獣に襲われ死にかける。 だが、シャドウは救われた……世界最高峰の暗殺者教団である『黄昏旅団』最強のアサシン、ハンゾウに。 彼は『日本』から転移した日本人と、シャドウには意味が理解できないことを言う男で、たった今『黄昏旅団』を追放されたらしい。しかも、自分の命がもう少しで尽きてしまうので、自分が異世界で得た知識を元に開発した『忍術』をシャドウに継承すると言う。 シャドウはハンゾウから『忍術』を習い、内に眠る絶大な魔力を利用した『忍術』を発動させることに成功……ハンゾウは命が尽きる前に、シャドウに最後の願いをする。 『頼む……黄昏旅団を潰してくれ』 シャドウはハンゾウの願いを聞くために、黄昏旅団を潰すため、新たなアサシン教団を立ちあげる。 これは、暗殺者として『忍術』を使うアサシン・シャドウの復讐と、まさかの『学園生活』である。

転生令嬢の食いしん坊万罪!

ねこたま本店
ファンタジー
   訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。  そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。  プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。  しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。  プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。  これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。  こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。  今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。 ※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。 ※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。

処理中です...