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恋ってウソだろ?! 72
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妙な沈黙の中、佐々木がパソコンのキーを無闇に叩くばかりで、直子もいつものおしゃべりをしかけてくることもなく、電話を取り、電話をかけ、書類を作り、プリントアウトし、黙々と自分の仕事をこなした。
沢村はと言えば、ただ何も言わず、待っていた。
佐々木には沢村の意図がわからなかった。
わざわざ直子もいるのに、考えなしの行動を取る理由は一体なんだろうと。
岡田マリオンとめでたくハッピーな時間を過ごしているはずではないか。
今更俺に何の用や?!
イライラして思わずキータッチが乱暴になる。
感情抜きに考えれば、以前良太が言っていたように、本当に仕事を依頼したいのかもしれないし。
あるいは、佐々木が会うのを拒絶したから、今度はマリオンとまた意気投合してホテルで一夜を明かしてしまったことでも報告にきたのだろうか。
それを自分に言う必要などないはずだ。
案外、誰か意気投合した相手とホテルの部屋で過ごすのは、沢村にとって日常茶飯事的なことなのかもしれないし。
パソコンに向かっていても、沢村の視線を感じ、正直、全く仕事ははかどるはずもなかった。
さらにはくだらないことを山と考えさせられた佐々木は、ついにオフィスを逃げ出すことにした。
「プラグインに行って来る」
「はい、行ってらっしゃい」
お客様はどうするのかという目で直子の声に送られつつも、愛車ボルボを出してプラグインに向かう佐々木を、沢村の車は追ってきた。
「あいつ! ほんまにどういうつもりや!」
プラグインに着くと、車を駐車スペースに置いて降りた佐々木に、沢村が駆け寄ってくる。
「待てって、佐々木さん!」
勢い沢村は佐々木の腕を掴んだ。
途端、佐々木は動くことができなくなった。
ドクドクと互いの鼓動が交じり合い、恐ろしいことに沢村がそのまま佐々木を抱きしめるだろうことが、佐々木の脳裏に浮かんだ。
その時藤堂の車が近づいてくるのに気づいた佐々木は、ようやく沢村の手を振り切った。
「ストーカーみたいなアホなマネやめてんか?!」
「俺は……」
佐々木は藤堂の車に走り寄り、その窓を叩いた。
「すみません、ドア、開けてください」
車は停まり、佐々木は助手席に乗り込んだ。
「ついでにちょっとこの辺りぐるっと一周していただけませんか?」
「佐々木さん? え、一体どうしたんだ?」
唐突な佐々木の発言に、さほど驚きもせず、藤堂は駐車場からまた道路へとハンドルを切った。
「実はストーカーに追われているんです」
藤堂は傍らに立っている沢村に気づいていた。
「ストーカー? 俺には関西タイガースの沢村選手に見えるけど……」
「気のせいですわ。日本を代表するアスリートがそんなアホなマネするわけないやないですか。お願いですから出して下さい」
言葉は穏やかだが、切羽詰った佐々木の雰囲気に促されて、藤堂はそのままアクセルを踏んだ。
沢村はと言えば、ただ何も言わず、待っていた。
佐々木には沢村の意図がわからなかった。
わざわざ直子もいるのに、考えなしの行動を取る理由は一体なんだろうと。
岡田マリオンとめでたくハッピーな時間を過ごしているはずではないか。
今更俺に何の用や?!
イライラして思わずキータッチが乱暴になる。
感情抜きに考えれば、以前良太が言っていたように、本当に仕事を依頼したいのかもしれないし。
あるいは、佐々木が会うのを拒絶したから、今度はマリオンとまた意気投合してホテルで一夜を明かしてしまったことでも報告にきたのだろうか。
それを自分に言う必要などないはずだ。
案外、誰か意気投合した相手とホテルの部屋で過ごすのは、沢村にとって日常茶飯事的なことなのかもしれないし。
パソコンに向かっていても、沢村の視線を感じ、正直、全く仕事ははかどるはずもなかった。
さらにはくだらないことを山と考えさせられた佐々木は、ついにオフィスを逃げ出すことにした。
「プラグインに行って来る」
「はい、行ってらっしゃい」
お客様はどうするのかという目で直子の声に送られつつも、愛車ボルボを出してプラグインに向かう佐々木を、沢村の車は追ってきた。
「あいつ! ほんまにどういうつもりや!」
プラグインに着くと、車を駐車スペースに置いて降りた佐々木に、沢村が駆け寄ってくる。
「待てって、佐々木さん!」
勢い沢村は佐々木の腕を掴んだ。
途端、佐々木は動くことができなくなった。
ドクドクと互いの鼓動が交じり合い、恐ろしいことに沢村がそのまま佐々木を抱きしめるだろうことが、佐々木の脳裏に浮かんだ。
その時藤堂の車が近づいてくるのに気づいた佐々木は、ようやく沢村の手を振り切った。
「ストーカーみたいなアホなマネやめてんか?!」
「俺は……」
佐々木は藤堂の車に走り寄り、その窓を叩いた。
「すみません、ドア、開けてください」
車は停まり、佐々木は助手席に乗り込んだ。
「ついでにちょっとこの辺りぐるっと一周していただけませんか?」
「佐々木さん? え、一体どうしたんだ?」
唐突な佐々木の発言に、さほど驚きもせず、藤堂は駐車場からまた道路へとハンドルを切った。
「実はストーカーに追われているんです」
藤堂は傍らに立っている沢村に気づいていた。
「ストーカー? 俺には関西タイガースの沢村選手に見えるけど……」
「気のせいですわ。日本を代表するアスリートがそんなアホなマネするわけないやないですか。お願いですから出して下さい」
言葉は穏やかだが、切羽詰った佐々木の雰囲気に促されて、藤堂はそのままアクセルを踏んだ。
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